筆者の所属していたソフトハウスの役職者は、某メーカーのISからの出向者で成り立っており、また顧客企業の役職者も、某メーカーからの出向者が主でした。ISも経理部も資材部も総務部もそうです。だから、広く考えれば、みんな仲間ということです。ISについては、こちらの役職者たちと顧客企業ISの役職者たちは、昔一緒に仕事をした、とか、上司と部下の関係だったとか、そういうケースが良くありました。
当初はこの程度でしたが、だんだん、もっと大きな問題に気づくようになりました。顧客の開発予算が少なく、その開発を受けると赤字になるという場合でも、結局は受託してしまうのです。政策として、赤字で受注することはあります。トータルで見て利益が出るということでもいいわけですから、メインフレーム時代に話題になった、ハードをたったの1円で売り、その赤字分をソフト開発の受託で賄うといった極端な例が思いつきます。他にも、自分達にとって初めて使う言語での開発なので、問題が発生する心配を呑んでもらうのと交換に安く受注するとか、開発は安く受けておいて、続けて受託する運用・保守費でカバーするといったものです。
赤字で受託するにしても何の努力もしないわけではなく、優先度の低い開発項目の削減を求めるとか、複雑な帳票を作る替わりに、データをExcelシートに出力できるようにしてそこから先の加工はユーザ自身に任せるとか、そういったことで工数を減らそうとはしますが、最終的に「これだけはどうしても必要、だが、予算はこれだけしかない!」と言い切られると、「わかりました」と答えてしまうのです。理由は、我々のミッションはグループ企業のシステム化を推進することだから、です。「向こうも業績が厳しくてぎりぎりの予算でやってるんだから、やってあげないとね」といった言葉も聞かれました。こうして、無理なスケジュールで無理な規模のシステム化が始まります。
もっと凄いことがあって、グループ内のソフトハウスは実は一つだけではなく複数ありました。そして、これまでのシステムはA社に開発も運用も任せていたが、次の新しいシステムを作ろうとした時に、B社に依頼するという場合も当然あります。勿論、グループ外のソフトハウスに依頼することもあります。ある時、私の所属していたソフトハウスで運用していた某企業のメインフレームシステムがあったのですが、オープン化の波に押されて新システムを開発することになりました。ところが某企業は、別のグループ内ソフトハウスに開発させると言い出したのです。それは規模も大きく、難しい物件のようでしたが、社長が「なにがなんでもうちで取る」と我を通し、親会社のIS出身の人脈をフル稼動し、結局、その物件を受託することに成功しました。しかし、その結果、数度に渡る納期の遅延、低品質に顧客が怒り、数億の違約金を取られるまでに発展しました。グループ企業なのにです。筆者が退職する時も、まだ開発が完了しておらず、あまりにも進捗が悪いので体制の見直しを行ったものの未だに稼動にこぎつけていないらしいのです。これも無理なスケジュール、無理な規模、そして技術力の無さを上層部が把握していない上に、メンツを守ろうとしたことのつけでしょう。その社長は、今は定年退職しそれなりの退職金を受け取ってのうのうとしていることでしょう。
金を払えば客であることに異存はないのですが、金さえ払えば、あとはそっちでちゃんとやれと言わんばかりの態度にはほとほと呆れ返りました。とにかく、なぁなぁなのです。情報システムの素養のない人間が、あーだこーだ発言しているのを聞いただけではシステムにはできません。事細かに場合分けをして、事細かに内容を確認していきます。それを、忙しいからといって打ち合わせの時間をなかなか取ろうとしなかったり、次の会議までに、これらの疑問点の内容を検討しておいてくれと頼んでおいても、時間が取れなかったという理由で、その会議の場で初めて検討する始末。時は刻々と過ぎていくのでした。