システムを作るとはどういうことか

creation date:2003/2/6
last update date:2003/2/6

物を買う

通常、物を買う時は、カタログを見たり実際に目で見て、これをくれと注文します。気に入るものがなければ、もっと安いもの、もっと別の色、もっと小さ目のもの、もっと丸みのあるもの、もっと簡単に操作できるもの、もっと多機能な物、といった要望を店員に伝え、店員が別の商品を紹介してくれて、それが気に入れば買います。気に入らない部分があっても、予算や他の商品と比較し、妥協して買うこともありますね。

ちょっと、複雑な注文を考えましょう。例えばパソコンです。パソコンは、店頭に出ているスペックと同じ物を買うだけではありません。基本仕様に対して、CD-RドライブをDVDドライブにするとか、128MHzのメモリにさらに128MHzを増設するとか、CPUを最新のものにするとか、Diskを増設するとか、ディスプレーは今もっているのを使うから要らないとか、オプションを重ねた注文をすることができます。必ずしも店の在庫に客の注文と同じ物があるわけではないですから、メーカーにオーダーが流れます。メーカーでは、客の希望通りに、組み立てて出荷します。

また、自動車も販売店で実際に見て車種を決めますが、そこで持ち帰れるわけではなく、メーカーへ注文し、組み立てられたら納品という流れになります。ここでも、カーナビを付けるか、CDにするかMDにするか、カセットデッキはどうするか、シートは基本仕様のままでいくのか、車体の色はどうか、外車であればハンドルは右か左かといったところを細かく検討して注文します。

パソコンであっても、自動車であっても、実際に目で見たのとは別の商品として届けられます。そこで、問題になることはほとんどないでしょう。DVDにしたはずが、CD-Rだったということはあるかもしれませんが、注文通りの仕様になっていれば、まずクレームは発生しないと思います。

また、いろいろなオプションを組み合わせる時に、欲しいものは何でも付けてしまうということは、通常有り得ません。たいていの場合、予算が決まっているからです。パソコンなら25万円、自動車なら130万円といった、消費者それぞれの都合による上限が決まっています。ですから、あれを付ければこちらは駄目、これを削ればあれが付けられるといった葛藤の中、あれこれ工夫し、どうにか納得のできる購入ができるようにします。購入時はあきらめて、余裕ができたら、新しいパーツを組み込もうという考えもあるでしょう。カーナビは、あとで買えばいいやとか、Diskは容量が足りなくなったら買い足そうと思うことで、初期購入額を抑える努力をするはずです。

情報システムの購入(パッケージ製品)

ところが、情報システムの場合、どうしても簡単にはいきません。できあいのパッケージ製品では、その機能と価格に納得できれば購入して、すぐに使えるわけですが、「機能」を確認するのが大変です。基本的な機能はきちんとあります。商売というのは須らく同じような流れで進むからです。物を仕入れて、在庫にし、注文を受けて、出荷する、といったことです。仕入れる前に、注文を受けてそれに基づいて仕入れるとか、商品を仕入れるのではなく、材料を仕入れて自分で作って在庫にするとか、部品を仕入れて組み立ては自分で行うとか、パターンはいろいろですけども、基本の流れは同じです。ですが、自分の業務のパターンにあうパッケージを見つけたとしても、それがそのまま使える保証はどこにもありません。たいてい気に入らないところがあります。しかしそれは実際に使って評価してみないとわかりません。最近は、評価版を無料で利用できるようにしてくれているのが一般的でしょう。

情報システムの購入(新規開発)

パッケージでは物足りないので、新たに作ってしまおうということも多くあります。初めに、どんな機能が欲しいか、どういう画面にしたいか、どういう帳票が必要かを検討し、決まったら、情報システム部やソフトハウスに発注します。これなら、気に入るものができるはずです。

情報システム購入の問題点

特に新規開発では、カスタムメイドですから、先述した商品購入とは違いもありますが、お金を払って欲しいものを手に入れるという構造は同じです。ですから、限られた予算の中で検討し、最終形を決めます。ところが、情報システムの場合には、いくつか問題があります。

まず、関係部署間の問題です。部門Aはこうしたい、部門Bはそれでは駄目だ、といった各部門のエゴがぶつかりあって、仕様がまとまらないことがあります。また、情報システム化は、業務そのものの再構築も並行して行いますから、今まで部門Cで担当していたことを部門Dでやった方がよい、とか、顧客の要望に応えるために新たに出荷予定日を知らせる機能をつけて、それを部門Eで担当してもらおうといった話が出てくると、新しい仕事が増える部門は反発します。ですから、「4-1.参画させるメンバーと体制」で述べたプロジェクトマネージャーがきちんと調整したり、会社全体を考えた仕組み作りを推進することが重要なのです。

次に、予算の問題です。情報システムは、注文をつければ、それなりに作れてしまいます。開発担当者が「それは無理です」と答える場合、技術的に不可能というよりは、予算、納期、パフォーマンスから無理がある、という意味にとった方が正しいです。ほとんどの社員は、現行の情報システムのどこかしらに不満を持っており、機会がある度に改善要望を提出しています。ですから、新規開発となると俄然、不満点をすべて解決しようとするものです。ですから、とにかく、注文をつけまくるのですが、注文を増やせば増やすほど、それは費用に跳ね返ってくるのです。自分の車やパソコンを買う時はしっかり妥協するのに、経費節減の必要性があれば昼休みに照明を消したりエアコンの温度を調整したり、生産性をあげるために業務改善を繰り返したりするのに、会社の情報システムに関しては、どうしたわけか妥協をしなくなります。予算は限られているのですから、しっかり取捨選択をしなければなりません。プロジェクトマネージャー、メンバー全員が、この点を認識する必要があります。

それに、開発が始まってから、仕様を変更することもよくあります。確かに、机上だけで仕様を決めれば、後になって、これでは駄目だとなることがあるのもわかります。しかし、スケジュールの後期の仕様変更が多くなれば、プログラム修正、作り直し、テストのやり直しのため作業時間が増大し、その分、費用に加算されます。また、同時にスケジュールの遅延を招きますし、品質の低下も否めません。このようなリスクをきちんと把握していなければ、情報システムの購入は失敗するだけです。中には、失敗していても失敗していないふりをして、上層部にうまく誤魔化して報告してしまうプロジェクトもありましたから、困ったものです。