これは、パソコン批評のVol6に掲載された投稿の提出原稿です。 created 96/11/7
GUIベースのパソコンOSではポインタの操作が必要不可欠である。同時にマン・マシ ンユーザーインターフェースの観点からも重要なデバイスである。しかし、標準装備 されてくるデバイスは可もなく不可もなくといったものが多いのも事実だ。そこで、 リプレイス用として販売されているポインティングデバイスについて、コスト(ハー ドウェアの価格+慣れるまでの時間)に見合うだけのメリットがあるのかどうか、そ して将来的にマウスに取って替わるものがあり得るのかどうかについて考える。
検証のポイントはなじみやすさ(自由に操作できるようになるまでの時間)、慣れた 後での操作感。メリットとデメリットあるいは、向いているアプリケーションや使用 方法である。
すべての製品が、マウスポートに接続し電源を投入することで問題なく使うことがで きた。
ペンマウスだけがD-sub9ピンコネクタで後はミニDIN6ピンのコネクタを使っている。 トラックマンマーブルにはミニDIN6→D-sub9ピン、ペンマウスにはD-sub9ピン→ミニ DIN6ピンの変換コネクタが付属していた。また、ペンマウスには専用の小型マウスパ ッドも付いていた。
その名の通りマイクロソフト純正のマウスである。エルゴノミックデザインが取り入 れられている。大き目でボディが湾曲していることと、左ボタンが大きめでボタンの 右端に突起があること、裏返すとボールの位置がNECのマウスと比べて前方に位置し ていることなどが外見的特徴だ。見ただけでは、使いやすさは変わらないという第一 印象を持った。
しかし、使ってみるとその印象は変わってしまった。違和感なく使えることはいうま でもないが、見た目以上に操作感が良いのに驚いた。右手で使うことを前提として作 った左のカーブが親指にフィットしてホールド感がよい。また、左ボタンが右方向ま できていることで、斜めにマウスを握った状態でボタンを押す際に自然に押すことが できる。右手でマウスを操作する場合少し左に傾けて握るということを意識したデザ インがされている。普通に握った状態でボタンに指が当たるので、ボタン操作を繰り 返しても指が疲れにくい。また、ボールが前方に位置することで手首を机に固定して 指先でマウスを操作した場合のトラック量が多くできることもマウスを多用する場合 はメリットとなる。
残念な点が2つある。一つは大きすぎるという点だ。アメリカ人サイズをそのまま持 ち込まれたら困る。これは、手の小さいユーザーには致命的といってもいいくらいだ 。もう一つは、ボタンの位置だ。NECの純正マウスに比べて楽なことは間違いないが 、左ボタンが今の右ボタンの位置で右ボタンが右の局面に沿った形だとさらによかっ ただろう。
このテストで、エルゴノミックデザインの有効性を実感できた。しかし、マイクロソ フトマウスは大きすぎることとボタンの位置が中途半端ということで、標準のマウス を置き換えるメリットは余りないだろう。
非常にインパクトの強い外観だ。パームレストを兼ねた大きな本体にその名の通り大 理石風に黒い点々の入ったえんじ色のボールがついている。ボールの回転検出にこの 点々を使って光学的に検出しているらしい。このため、トラックボールの弱点である ボールやローラーの汚れに強いというメリットがあるそうだ。実際、ボールを直接手 で触るトラックボールにとって手の脂によってほこりを集めてしまうことで動作不良 を起こすことがよくあった。また、ローラーを使っていないのでボールの回転がスム ーズだ。形状的には、エルゴノミックデザインを大胆に取り入れた左右非対称の3D曲 面デザインだ。本体手前の広くなっているところに手のひらを置くと、親指にはボー ル、人差し指、中指、薬指にはボタンが当たるようになっている。残念ながら、この デバイスも少し大きすぎる。手のひらを一番しっくりするところに置くとボタンまで が遠く感じる。
特徴的なのは、ボタンが3つ有ることと、専用の設定用ソフトをインストールするこ とで様々な設定が可能になることだ。2つ目3つ目のボタンに機能を割り当てたり、 ポインタの形状や大きさをコントロールすることができる。Windows95、Windows3.1 、MS-DOSに対応のソフトが選べるが、対応するOSバージョンによって設定できる機能 は異なっている。液晶モノクロノートでのテストでは、ポインタの色を反転させたり 、ポインタ移動時にポインタを大きくするという機能が付加されることで、ポインタ を見失うことが激減した。カラーのブラウン管モニタでは特にメリットにはならない かもしれないが液晶モニタでは特に便利な機能だ。機能の豊富さでは今回テストした 中では一番だ。このソフトのインストール時にはAUTOEXEC.BAT、WIN.IN、SYSTEM.INI のファイルが書き換えられる。外す場合にはコントロール用のソフトを削除するだけ でなく、これらソフトの書き戻しが必要になる。なお、ソフトはインストールしなく ても通常のマウスの替わりには使用できる(中ボタンは反応しなくなる)。
2時間も使えば違和感はなくなる。ノートに標準で付いている小さなボールのトラッ クボールより遥かに操作しやすい。大きなボールの慣性を利用して遠くへ一気に飛ば すこともできる。本体のベース部分が大きくパームレストの性格も持っているので操 作時の腕の疲れは少ない。
しかし、ドラッグによって曲線を描くのは難しいので、ビットマップグラフィックに は使えない。また、キーボードを多用するソフトの場合は、キーボードからトラック ボールに手を置き換えるときに位置が限定されるので、素早く置き換えられない。 使用用途はかなり限定されるものの今回テストした中では、一番快適で楽しいデバイ スであったことを付け加えておく。また、子供はすぐになじんで使いこなしてしまっ た。子供はテントウムシと名付けた。ポイント&クリックだけをするには良いのかも しれない。
IBMのノートパソコンについているスティックタイプのポインティングデバイスを独 立させたような考え方のデバイスだ。手のひらにすっぽりと納まるエンドウ豆のよう なボディの平面上に分厚めのボタンがついている。このボタンを親指で動かしたい方 向に押し込むことで操作する。ボタンはその操作ボタンの左下の小さなものと、右上 方の側面に横長のものが付いている。右上のボタンはゲーム機のコントローラにある 、人指し指で操作するボタンに近い形状だ。右上のボタンが通常のマウスの左ボタン に相当する。
小さくて手になじむ形状をしている。右上のボタンも押しやすい。「場所をとらない かわいいポインタ」とううたい文句には嘘はない。しかし、肝心のポインタ操作は難 しい。ポインタのスピードはボタンを押し込む量に正比例する。しかし、ストローク が少ないので、スピードの調整が難しく、すぐにフルスピードになってしまう。パッ ケージにも説明はないのでスピードの調整はできないのかと思っていた。ある程度押 し込んだ位置で加速する方がいいだろう。さらに、ちょんちょんとボタンを押したと きに少しだけ一定量移動するようにしたらどうだろうか。
予想通りグラフィック系のソフトには一切向かない。キーボードをメインにした操作 にもなじまない。テキストの文字列セレクトはShiftキー+矢印キーのほうがはるか に速い。
とにかく、いちいち持ち上げなければならないのは致命的だ。この方法のポインタで あっても、キーボード周辺に置いて使えるようになっていれば、もう少しましになる だろう。残念ながら、ちびマメは手に持った状態を前提にデザインされている。机に 置いても安定が悪いし、ボタン操作はできない。さらに、ケーブルが手前に付いてい るので邪魔になる。もう少し大きめの平面に密着するボディにし、ポインタを人差し 指で操作しやすい位置にして、左ボタンを親指位置、右ボタンを中指位置にすれば、 かなり使えるものになりそうだ。
子供に使わせてみようとしたが、全然だめだった。思っているところへポインタを止 めることができなかった。
その名の通り、ペンのような形をしている。棒状のホールド部の先端が大きくなって いて小さなボールが付いている。持ち方はペンといっしょだ。人差し指が当たる位置 に縦にボタンが2つ並んでいる。下側の大きめのボタンを左ボタンとして使用する。 ケーブルはボールの反対に付いている。
ペンという形状自体は持ちやすいし、操作も直感的といえる。慣れるのに時間はかか らなかった。しかし、便利かというと、そうは感じなかった。今回テストした他のデ バイスもそうだが、キーボードと併用する場合に持ち替える手間がバカにならない。 ペンマウスの場合それが一番大きい。ポインタを操作した後そのまま置いてしまうと 、次に手にするときにケーブルを避けるように持たなければならない。慣れれば克服 できる問題かもしれないが、マウスのように意識することなく持ち替えることは難し いだろう
形状から、ビットマップ系グラフィックソフトに向いているかと思っていたが、そう でもなかった。今回試した中では、一番ドラッグがしやすかったが、イメージ通りの 曲線を描くのはやっぱり難しい。ボールの遊びがあり、芯のゆるんだボールペンを使 っているような感じだ。意外に使いやすかったのが、表計算だった。連続してデータ を入力するような局面ではなく、入力済のデータを使って集計や分析、グラフ化を行 うような局面では十分に使える。なにより、多少の数字入力程度なら持ったままキー 操作できるのは他のデバイスには無いメリットだ。
下の子供は使えなかった。上の子は使うことはできたが、通常の鉛筆と比べた場合、 角度に対する許容範囲が狭く空回りが多く不便そうだった。
明らかに問題と思われる点が一つ。パッケージには逆向きに持ってボールを親指で操 作している写真があるが、やり方がわからない。そのまま持ち替えると、上下が逆に なってしまう。セッティングするためのドライバソフトも付いていない。
全ての用途に最適なデバイスは現時点では考えられないだろう。使用するアプリケー ションにより、ポインティングデバイスを使用する度合いは違ってくるので、求めら れる機能も違ってくるはずだ。DOSアプリケーションアプリを使う分にはポインティ ングデバイスなど必要がないのだから。そこで、使用方法別に最適なデバイスについ て考えていこう。
この用途では、ポインタ操作、テンキー入力、リターンキーでほとんどが終わってし まう。マウスでも問題はないが長時間の使用の場合は、トラックボールもよさそうだ 。キーボードのすぐ横に置いて手の移動量を少なくすることができる。また、資料や 入力原票をキーボードの周りに散らかしても邪魔になりにくいメリットがある。また 、使用方法が合っていればペンマウスも有効だろう。マウス操作になれていない人が 少し使う分には一番なじみやすいデバイスだ。
ホームポジションから手を離す必要のないポインティングデバイスがベストと思われ るが、年賀状やA4一枚程度のテキスト入力しかしないのであれば、まして、タッチタ イピングができないようなユーザーの場合はマウスを替える必要はないだろう。大量 にテキストを入力する場合には、キーボードから持ち替えるときのコスト(時間、腕 の疲労、思考の中断)が重要だろう。そうなると、トラックパッドかパームレスト組 込型のトラックボールしか選択肢はないだろう。
ポインティングデバイス中心の操作になるので一番シビアに効いてくるはずだ。この 場合は何より、画面上のポインタとデバイスの親和性というのか、統一感が大切だ。 また、長時間デバイスを保持したままの作業になるので、軽さやホールド性、ボタン の押しやすさなども大きく作業性に影響してくる。ケーブルを邪魔に感じることが多 いのでコードレスタイプも面白そうだ。
このなかでも、メインに使用するソフトによって適したデバイスは変わってくるはず だ。ドラッグした軌跡をデータとするビットマップグラフィックの場合はタブレット がベストだろう。何より、ペンやブラシと同じ感覚で使えるので、マウスでは難しい 曲線のドラッグも簡単だ。
それに対して、ドロー系のソフトならマウスがベストだろう。筆者はCADソフトを長 時間操作しているが、他のタイプのデバイスに変える必要性は感じない。しかし、エ ルゴノミックデザインのマウスには興味を持った。マイクロソフトマウスは私には大 きすぎるので使おうとは思わないが、CADマシンにエルゴノミックデザインのマウス を探す気になった。
それ自体がどんなにエルゴノミックデザインの完成度が高くても、キーボードやソフ トとの連携無くしては総合的に使いやすくはならないだろう。逆に、用途に合えばマ ウスを凌ぐ可能性も持っていることも確認できた。しかし、ポインティングデバイス を並列的に使用することはできウィンドウズマシンの場合、メインとなる使用方法に あったものを選択する必要がある。パソコンそのものにも言えるが、使用目的を十分 に把握して選択すれば、メーカー標準のものより快適な環境にすることは可能だ。 なお、エルゴノミックデザインの落とし穴も忘れてはならない、今回使用したデバイ スで左手でも同じように使えるのはペンマウスだけだった。右手用にデザインされた デバイスは左手で使用することは不可能に近い。左利きユーザーのために左右反転し たバージョンを用意できるといいのだが....
将来的に、インターネットやネットワークコンピュータが家庭内に入ってくる時代に なるとリモコンタイプのトラックボール+テンキーパッドのようなものが主流になる かもしれない。
最後に、手が不自由なユーザーにとっては、大きな可能性を与えてくれるものだと思 う。障害の程度や症状によって、使えるデバイスの選択枝が増えることは可能性の拡 大につながることだと思う。そういった意味では、ちびマメにも可能性を感じた。各 パーツの形状配置とドライバソフトの工夫で、指先しか動かないユーザーへの可能性 を開くことが出来るのではないだろうか。今、足や口で棒を使ってキーボードを叩い ているユーザーにプレゼントするものが出来れば素晴らしいだろう。