Report of Elgomouse

これは、パソコン批評のVol7に掲載された投稿の提出原稿です。 created 14,Jan,9


前号でポインティングデバイスの比較検討を行った際に、マイクロソフトマウスをテストし、ドローグラフィックソフト中心の使用方法ではエルゴノミックデザインのマウスがベストではないかと感じた。しかし、マイクロソフトマウス自体は私には大きすぎて使いにくいと感じた。一方で、エルゴノミックデザインに対する大きな可能性を感じた。そして、CADマシン(Windows3.1搭載のPC98)のマウスをエルゴノミクスデザインのものに交換することにした。
かなり理想に近く、満足している。以下にその理由と理想的なマウスについて考えたい。

レポート対象:サンワサプライ・エルゴマウス・PROMA-98購入価格:3600円(希望標準小売価格:4500円)
※DOS/V用、Macintosh用がそれぞれ希望標準小売価格:4900円で用意されている。

使用環境: ハード:NECPC9821Xa7/C4(メモリ増設+32MB)、Windows3.1、Windows95
ソフト:AutoDeskAutoCADLT/win

特記:このマシンは、CADを実行するためだけに購入したもので、CADソフト以外ではデータ送受信用のパソコン通信ソフト以外には実行しない。このマシンの電源を投入している時間の99%はCADソフトを使用している。いわば、単機能専用機のような使い方であることを頭に入れておいていただきたい。また、ソフト使用中は右手はマウス左手はキーボードに固定して、右手はポインタ、左手はキーボードコマンド投入に分業化している。また、右手をキーボードに動かす必要が無いように、コマンドショートカットをチューニングしている。

このマウスに替える気になったのは、以前からNECのマウスに不満を持っていたからである。そして、その不満点についてエルゴノミックデザインが応えてくれそうだという感触をマイクロソフトマウスから得たのが直接のきっかけとなった。まず、どのような不満があったか列記する。

  1. 左右のマウスボタンを多用するソフトなので、長時間操作すると指の筋の部分が痛くなってくること。
  2. ツーボタンマウスで、ボタンが前方に中心線から左右対称に設置されていることで、ホールドする手の姿勢が固定され腕が疲れる。
  3. ボタンの取りつけ位置がボディの中心付近なので、ポインタを微妙に左右に振りたいときにマウス全体を動かさなければならないこと。

以上の点は、全てマックのADBIIでは解決済みの問題である。1と2については、ワンボタンマウスという設計自体のために、問題が存在しないという面がある。ワンボタンであるゆえに、ホールドする手の方向を固定する必要がない。そのため、あのような大きなボタンを採用することが出来た。形状についても、ホールドする手の角度を出来る限り強制しない丸っぽい形状をしている。私は、そのマウスを左に傾けてつかみ、大きく湾曲したボタンの右上の面を握るように指を使ってボタンを操作している。ワンボタンに最適化されたOS・アプリケーションとの相性もよく非常に楽に使える。また、子供が3才のころ旧タイプのAppleADBmouseではドラッグが出来なかったが、ADBIIになった途端、ドラッグを使いこなせるようになった。左手でボタンを操作するのであった。

しかし、これはMacOSに負うところが大きい。マルチボタンマウスの場合はこのようなルーズにつかむ形状は採用できないだろう。また、WindowsはMacOSの後追いをしながら、過去のソフトをねじ曲げるようにして、マウス対応にした経緯がある。そのため、OSレベルでマウスに対する操作の一貫性がない。

それでは、Windowsのツーボタンオペレーションになじみの良いマウスとはどのようなものか?その回答がマイクロソフトマウスなのだろう。右利きのユーザーに最適化しツーボタンゆえの負担を軽減しようという試みは方向性として間違っていない。残念ながら、日本市場への対応がおざなりなために、大きすぎて使いにくかった。

今回購入したエルゴマウスは、エルゴノミックデザインを徹底して、AppleのADBIIの対極のタイトホールドタイプのデバイスを提案した。この試み自体はルイジ・コラーニが以前に世に問うたことがあった。MS-DOSの時代だったので、経済的成功には至らず消えてしまった。サンワサプライからこのようなマウスが発売されるようになったことは、マウスオペレーションが一般化しメーカーもそのデザインの重要性に気づいたということかもしれない。

基本的コンセプトは、先にも書いたようにタイトホールドだ。それは、マウスを持つ手を人間工学に基づいて限定してしまうことで、フィット感を高める方法と考えていいだろう。手の角度にピッタリ合うようになっている。自動車のバケットシートの考え方に近い。ルーズに持つことを拒むので、左手で持ったりパソコンに正対しない位置で操作することはしにくいが、モニタに正対して長時間ポイント&クリックを繰り返すのにはよい。

ボタンが立った状態でついているのも素晴らしい。押すというのでなく、握るようにしてボタンを操作できるのでCADなどポイント&クリックを繰り返す場合には疲れにくい。実際、NECのPC9821標準のマウスで右ボタンと左ボタンで別の機能が割り振って有るCADソフトを長時間使っていると手の甲のあたりの指の筋に疲れがたまるが、エルゴマウスでは、そのようなことはない。一度、人差し指と中指を交互に百回くらいボタンを押してもらいたい。それに対して、両方を握るようにしてみるとよくわかる。同じ動作でも、一本の指だけを動かすほうが指に対する負担が大きい。しかも、指は伸ばした状態より少し曲げた状態で握るようにするほうが楽なはずだ。エルゴマウスはこの動きにかなり近い状態でのボタン操作が可能になっている。

しかし、不満な点がある。一つは形状、一つは解像度の問題だ。形状については、エルゴノミックデザインのコンセプトの問題から発生している。つまり、マウスの持ち方、操作についての考察が足りないのではないだろうか?何度も言うが、マウスはそれだけで完結したものではない。レーシングマシンのオーダーメイド・バケットシートとは違うのだ。マウスを操作する手は、キーボード、マウス、資料を移動するのだ。そんな中で、軽くマウスをホールドしてほんの少しポインタを動かすことも多い。そんなときに一々深くマウスをホールドしたくはないはずだ。また、かなり連続的にマウスを操作する場合でも、手のひらがマウスのボディに密着することは少ないはずだ。その点からいうと、このエルゴマウスもボディが大きすぎる。ボタンが遠すぎる。その形状に合わせて握るとピタッと納まるが、持ち替えの手間が大変だ。もう少し手前の手のひらが当たる部分を低く、左ボタンを右ボタンの位置にし、右ボタンをボディの右に縦に取り付けたら最高のマウスになると、私は確信する。

結論:

グラフィック系ソフトを中心に使用するユーザーには、買い換える意味のあるデバイスだと思う。ただ、人体工学が最大公約数に最適化してあるということは、それに沿わないユーザーにとっては、逆に使い難いという性格を持つ。左手で操作したい人、手や指に障害のある人、両手でマウスを操作する幼児等には、ルーズホールドがいいような気がする。ただし、ツーボタンの必要なOSで、どのような形状にすればルーズホールドが実現できるのか、出来ないのか、必要がないのかは結論がでていない。世のインダストリアルデザイナー(自らもマウスのヘビーユーザーに違いない)の皆さん、ルーズフィットタイプのマルチボタンマウスにチャレンジしてください。

追記:


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