マックの魅力

パソコン批評のVol8に掲載されたレポートの提出原稿です。created2,Mar'97


マッキントッシュを使う魅力

マッキントッシュには他のメーカーのパソコンにはない独特の魅力がある。その理由を説明することは難しい。マックユーザーでも全員が全員同じ魅力を感じてることもないはずだ。ある人には最新のクリエーターツールであり、ある人には使いやすいGUIであり、またある人には函体のデザインや漠然とした雰囲気なのかもしれない。多くのユーザーにとって、これらの要素が混在した漠然としたものがマッキントッシュの魅力なのではないだろうか。

ここでは、汎用機のCOBOLプログラマーをしていた87年にマッキントッシュを知り、あこがれた末に多額の借金をしてSE/30を90年に購入。PC98がパソコンの代名詞と考えられているような職場にIIciを導入し四面楚歌の中でマッキントッシュが一般業務にも使えることを証明したという経歴を持つ筆者の個人的な思い入れを含めてマッキントッシュの魅力を考えたい。

まず、私がこれまでに感じてきたマッキントッシュの魅力を列記してみると、

といったところだろうか。

しかし、ここに列記したことの多くはwintelによって模倣されて、今や独壇場のものではない。特に、ウィンドウズが数の力でソフトウェア業界を牛耳り、マッキントッシュプラットフォームで生まれ・育ったソフトの移植が進むにつれ、マッキントッシュを使う魅力の多くが相対的に減じてしまったことは否定できない。また、同時に起こった、UNIXのオープンネットワークを基礎にしたインターネットブームでデータのOS依存性が減ったことも現時点ではマイナスに作用してしまった。

97年1月現在でマッキントッシュの持つ魅力は、アドバンテージを保っているユーザーインターフェースやデザイン、プロ向けのグラフィック・DTP環境くらいしか見いだせない。しかも、問題なのはこれらが過去の遺産でしかないという点だ。

昨年末、アップルの創設者ジョブスがNEXTと共にアップルに帰ることになった。その時のスピーチに示唆に富んだものがあるので、引用する。「この業界の大部分は,過去10年以上,Macintoshによって生きながらえてきた。Macの革新的なインタフェースをゆっくりと模倣することによってだ。(MacWeekOnlineNews)」というものだ。これが、マッキントッシュの過去の栄光と現状を端的に言い表している。

そして、ここにマッキントッシュを使い続ける理由と現在のマッキントッシュのみならずパソコンが内包した問題があるような気がする。それは、ビジョンの不在だ。最高の売上台数を更新しながら、急激に市場を拡大したパソコンだが、その土台となったコンセプトはマッキントッシュが10年以上も前に提示したもの。遡れば、アラン・ケイが30年以上も前に提示したコンセプトを実現化するステップでしか無かったと言えないだろうか?

少なくとも、ここ10年間はマッキントッシュが市場に送り出した用途をDOS、Windowsマシンが取り込み、マスマーケットへと普及していくという図式が有った。そして、そこにこそマッキントッシュを使う理由が有ったような気がする。

とはいうものの、ここ数年のアップルは語るに足るような革新的なビジョンを示すことは出来なかった。このことが現在のマッキントッシュがじり貧に陥っている最大の原因ではないだろうか?そして、このことはマッキントッシュの生み出した革新性を食いつぶしてしまったパソコン業界の近未来の姿を暗示しているかもしれない。

マッキントッシュのユーザーとして、企業のアップルに望むこと

新しいOSを一刻も早くリリースすること。競争力のあるノートパソコンを開発すること。互換機メーカーが魅力的な製品を作れるようなライセンスポリシー、等々挙げればきりがない。

しかし、先にも書いたように、マッキントッシュユーザーがアップルに望む最大のことは、将来に対する先進的かつ独創的なビジョンだ。ビジョンに惹かれてマッキントッシュを使っているユーザー達が今のマッキントッシュ市場をリードしてきたと思う。人柱のようにシステムエラーに立ち向かったエバンジェリストに訴求するには小手先のキャンペーンではだめだ。将来進むべき方向を明確にし、約束を守ること。これが出来なければ、能力のあるデベロッパーはMacOSから完全に手を引いてしまうだろう。

これから、パソコンは仕事の効率を追求するための道具から、コミュニケーションツールやクリエイティブツールとしての側面が強調されるようになるだろう。これは、マッキントッシュが提示したパソコンの有るべき姿だ。アップルはOSとハードとを同時にコントロールできる唯一の企業だ。そして、今、ネクストという将来を語るに足るOSを得た。あとは、将来の私たち全てに恩恵をもたらすようなビジョンを打ち立てること。そして、そこへ向かう第一歩となるべき”製品”を一刻も早く出すことだ。

topindex

written by Masazumi Kasahara(kasahara@.kh.rim.or.jp) GigaHit