算数ゲーム

これは、パソコン批評のVol8に掲載された、レポートの提出原稿です。
created 2,Mar'97


アメリカの老舗Broderbund社が開発したものを日本語化したもので、以前はマスワー クショップという名前で販売されていた。箱に記載された対象年齢は、アトラクショ ンにより、3〜10才、5〜10才、6〜10才となっている。マック版とWin版は 別パッケージ。

テスト環境

Performa588を使用しマック版を検証した。評価は子供(1子:9才、2子:5才) の反応に基づいている。テスト期間:96/12/29〜97/1/12。

インストール・基本操作

マック版はHDへのインストールの必要はなく、AtEaseでの使用も問題ない。 インターフェースはわかりやすく、2子でも直感的に操作をマスターした。画面は、 アメリカ風が子供を惹きつける魅力十分だ。

概要

アトラクションは7つ。四則演算や分数を学ぶ「さんすうボウリング」「リズムショ ップ」、ゲーム理論に触れる「ロケット」、図形・パターン認識の「ステッカーパズ ル」「絵のパズル」「テレビのパズル」、図形認識と創造力養成の「ステンドグラス 」の4つに分けられる。

紙の算数ドリルに近いアトラクションが「さんすうボウリング」「リズムショップ」 だ。問題が出され答えを4つの選択枝から選んでクリックする。

「さんすうボウリング」はメインのアトラクションと言ってもいい。単調な計算練習 を退屈させないための工夫がある。数式を使っていいるので、数式の勉強をしていな い子供には無理だ。

「リズムショップ」は分数の概念を獲得するためのアトラクションだ。音楽の持って いる数学的性質や数字の持つ音楽性を体感的に会得することも狙っている。分数をあ る程度習った子供に分数の持つ意味を再確認させる時に有効ではないだろうか。

計算の勉強に留まらず論理的思考能力を伸ばそうとする考え方を表しているのが「ロ ケット」だ。マッチ棒を何本か置き、交互に何本か取り最後にとったほうが勝つ、と いうゲームと同様のルールのゲームだ。

対戦成績によってレベルが調節されるものの高学年でなければ楽しむところまでは難 しいだろう。

図形認識を中心としたのが「ステッカーパズル」「絵のパズル」「テレビのパズル」 だ。線描図形認識の「ステッカーパズル」、パターン認識の「絵のパズル」、図形認 識の「テレビのパズル」、というように製作者の意図が上手に盛り込まれている。

特殊なお絵描ソフトのようなのが「ステンドグラス」だ。正解や完成というものは無い。 幾何学模様の性質や美しさを体感するためのアトラクションがあることに、このソフ トの深さを感じる。

まとめ このソフトを使うと、教育に携わっている人間が企画から参加したことがわかる。最 大40名のプレイヤーが登録でき、解いた問題の難易度や進捗が記録され、自動的に レベルの設定も行われる。誤答した場合に何問か後に同じ問題が再度現れたり、子供 の力に合わせて制限時間の設定も出来る。きめ細かく学習の進捗を把握しようとする 教育者の視点が窺われる。

マニュアルには親が読むためのページもあり、ヒントや目的、理解を助けるための指 導の要領までが記載されている。記録ファイルのセーブについて説明していることも 素晴らしい。

個人別の進捗が記録されることは、子供にとって、自分のペースにあった計算問題の 練習が出来ることを意味する。教室や集団のプレッシャーの中で自分を表現できにく い子供にとって、このような方法による学習は非常に有効だろう。

動的なレベル設定だけでなく、問題の見せ方といった点でもパソコンの特徴を活かし ている。

上の教育的配慮以上に感銘を受けたのは数学的な力を計算力として捉えていないとこ ろだ。

特に面白いのは「さんすうボウリング」の「およその数」だ。およその大きさや時間 を直感的に捉える練習だ。「およその感覚を養う」というコンセプトは新鮮だ。

これが今の教育にかけていると思う。計算の正確さや速さのみに気を使っているから 、出てきた答えを疑う習慣が身につかないようだ。答えを間違えた場合、学校では、 バツをつけておしまいだ。問題なのは、計算の練習が足りないといったことではなく 、数学的感性が不足しているということ、そしてそれを伸ばす教育をしていないとい うことだ。

拡大して考えると、一見正しそうな計算であっても出てくる答えが違っていれば「お かしい」と疑う力を養うことを現在の教育が失っていると言える。先生のだす答えを 鵜呑みにする子供を「よい子」とする教育が現在の教育を悪くしている元凶と思って いる。

唯一不満なのは価格だ。パソコンでの教育を普及させる可能性を持っているだけに価 格が悔やまれる。パソコン本体へバンドルすべき素晴らしいソフトだ。

このソフトは教育ソフトだ。親や先生も十分に理解して子供に与える必要がある。適 当な「導き」を行うことで、最高の効果が得られる。もちろん、これまでの学習と置 き変わるのではなく補完するものと考えるべきだろう。


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