FinePix700

提出原稿そのまま。マイクロデザインのホームページ



私は、9号でコダックのDC20を検証した。そのとき、このカメラは写真の楽しさを再認識させてくれるものだとレポートした。そして、記録や記念ではない写真の面白さ、ひいては表現手段の拡張をもたらしてくれる手段として、デジカメの用途を提案した。それ以降、次?と高画質を売り物にした高解像度モデルが発売され、98年3月現在、新機種の主戦場はメガピクセルへと移行してきた。その中で、早い時期からデジカメをリリースしてきたフジフィルムが出したのがFinePix700だ。DSシリーズに寄せられた要望を、プロ用デジカメで培った技術で実現させたものだといえる。

今回は、150万画素を持つFinePix700を通して、メガピクセルデジカメが謳い文句のように、ユーザーにとって有用な物なのか、あるいは周波数を大きくすることで何かをもたらすかのような幻想を振りまくパソコンと同じようなものなのか、確かめたい。

基本性能、機能、仕様

(別表参照、読み方については10号「パンフの達人」参照)

カタログスペックから、性能や機能については、これまでのパーソナルデジカメを圧倒していることは分かる。画質も機能もコンパクトフィルムカメラを凌いだといっても過言ではない。

1.画質

取り込んだ画像はモニタだけで鑑賞するには過剰品質なくらいだ。VGA(取得画像640X480ピクセル、以下VGA)モードで取得した画像も、これまでのVGA機を凌いでいることから、この機種の基本性能の高さを物語っている。画素数の大きさだけでなく、レンズやピントあわせといった、光学系の品質も高いのだろう。

光源(ホワイトバランス、以下光源)がデイライトに固定されている(マニュアルモードで設定可)ので、対象物の色によって予想外の色になってしまうことはほとんどない。反面、光源が異なると青っぽくなったり緑がかったりしてしまう。本機では、早い段階でフラッシュを使うようにセッティングすることで、失敗を防いでいるようだ。そのせいか、夕方や昼間の室内で、十分明るいと感じるようなときにもフラッシュが発光することがあった。F3.5・ISO100と暗そうだが、フラッシュを発光禁止にし光源設定することで、他のデジカメと同様に撮影は可能だし、その方が自然な画像を取得できる。

なお、1280X1024ピクセルはVGAの4倍以上のファイルサイズになる(別表参照)。モニタで表示することが前提であればNORMALで十分だろう。

レンズは35ミリフイルムカメラの35mm相当だが、同程度の焦点距離を持っているデジカメと比較して少し広角よりだ。1280X1024ピクセルは縦横比がVGAと違い、縦方向に多く写るので、余計にそう感じるのかもしれない。当然、人物を撮る場合はかなり近づいて撮った方がよい。5メートルくらい離れてもピントの甘い感じにはならないが、美味しいのは1.5mから3mだ。これは、広角レンズを使った撮影の基本という意味だ。

なお、実際の画像はこの記事の写真だけでは分からないので、パソコン批評のホームページに掲載するので、各自の環境でどのように表示されるか自身でご確認いただきたい。

2.機能(操作性)

高画質・高機能の本機ではあるが、操作について難しいことはない。これまでコンパクトカメラで人物スナップを中心に撮ってきたのであれば、オートで十分だ。

マニュアルモードでは高度な設定が可能で、基本機能を活かした撮影が可能だ。普段一眼レフを使いこなしているような人でも不足はしないだろう。しかも、マニュアルモードで撮影した場合は一度液晶モニタによって、プレビューした上で保存するかどうかを決めることができる。失敗だと思ったらキャンセルしすぐに次の設定・撮影に入ることができるのは便利だ。

カメラとしての設定(露出補正、ストロボ補正、光源設定、ストロボ発光モード)と同時に、撮影後にセピア色にしたり、人の肌の色合いだけを調整するというデジカメならではの機能も搭載されている。

意外と使えるのが、モノクロモードだ。「テキスト等の記録に」とあるが、モノクロ写真を撮るということによって、より活用できそうだ。データは256階調のグレースケールで記録される。カラー画像をレタッチソフトで変換することでモノクロにすることはできたが、撮影時点でモノクロ表示されているので便利だろう。ただし、モノクロモードで撮ってもファイルの大きさはカラーの場合と変わらない。

低温ポリシリコンTFT2インチ液晶モニタは解像度・発色ともに現在最高レベルといってよいだろう。日中の屋外での撮影にも十分対応できる。しかし、液晶モニタでの表示が美しいので、撮り直すことなく持ち帰った映像をテレビに映して、「これだったら、マニュアルで設定して撮り直したのに」とがっかりすることがあった。

ボタンやダイアルも使いやすい。特徴的なダイアル+十字キーも親指一本での操作が可能だ。何より、撮影モードによって使われる機能が整理されていので迷うことが少ない。どんなモードでも使用する可能性のあるマクロ切り換えとフラッシュ切り換えは上部の専用ボタンで行い、光源設定や露出補正はマニュアルモードの液晶表示を使って行う。基本的機能と高度な機能を上手に切り分けてある。

不満な点は起動の遅さ、撮影後の液晶表示時間の短さ、モード切り換えの遅さだ。この小さなボディを活かして気軽に撮り歩きたいと思っても、撮影可能までに10秒近くかかるのはかなり面倒だ。撮影後次の撮影が可能になるまでの時間は5秒程度、画像データの大きさ(1280X1024NOMALで350KB)を考えると非常に健闘していると思う。しかし、液晶モニタは一瞬表示された後、黒く消されてしまう。その間に撮影済みデータを表示していてくれると、モード切り換えをせずに確認できるだろう。なぜなら、モードを切り換えるときに10秒近くかかるので、今撮ったデータを確認すると次に撮るときに20秒近くかかってしまう。連続でシャッターチャンスがあるような場合(子供の入学式等)、マニュアルモードで撮影するほうが良い。というより、確認せずに撮り続けることが重要だ。

また、デザイン自体は好みが大きいので評価は控えるが、シャッターボタン位置は改良の余地があると感じた。縦長のボディの上部にあるので、光学ファインダーを使って顔をディに近づけているときはいいが、液晶モニタを使って少し顔から離して構えるような場合に人差し指を不自然に曲げる必要がある。これは、手ブレの原因となる。ボディの前面、グリップの上部付近にボタンがあったらいいと思う。

ちなみに、光学ファインダーは明るく見やすい。オートで撮影する場合は、これだけでも十分なくらいだ。ただ、80%表示とカタログに記載されているように、取得画像に比べて、一回り小さい範囲しか見えないのは惜しい。かなり寄ってクローズアップにしたバストショットのつもりなのに、後で確認すると周りの部分が多く不要なものが写り込んでいることがあった。

また、カメラ自体の機能とは別だが、レンズにカバーがついていないのはどうしてだろう。スイッチに連動するようなものでなくてもいい。普通のレンズキャップでいいから、付属してもらいたかった。これでは、気軽にポケットやバックに放り込んで持ち歩くというわけにはいかない。レンズはボディから奥まった位置にあるので、直接傷つくことは少なそうだが、埃がついたら掃うことは不可能に近い。移動時にはリコーDC2-Eに添付してきたソフトケースに入れて持ち運んだ。しかし、こうするとかさばるし取り出すのが面倒で、撮影機会を失う。レンズやボディを傷つけないために撮影機会が減ってしまうのでは本末転倒だ。200円程度のキャップ一つで解決できることなだけに惜しい気がする。

反面、液晶モニタは硬質なプラスチックかガラスでカバーされているので、よほど硬いものと一緒に入れない限り大丈夫そうだ。ボディの面より少し高いので、手の脂や埃がついてもきれいに拭い取ることができる。汚れないようにするのではなく、汚れてもいいようにするというアプローチは正解だ。これは、手にするようなデバイスの場合、必須の考え方だ。

その他にもさまざまな機能があるが、商品紹介が本稿の目的ではないので、詳細はカタログやホームページで確認いただきたい。

操作については、オートモードでは写真の知識の少ないユーザーでも失敗の無いようなセッティングになっていると感じる。光源設定を固定し、蛍光灯や白色灯下での撮影にはフラッシュを焚いてしまうというのもそのコンセプトから出た仕様だろう。

他にも、予想外に便利だと思ったのは操作音を設定できることだ。通常は各操作を音で確認できるほうが良いが、静かな場所で操作音がうるさく感じられるときに前もって消しておけるのは便利だ。本機は動作音が静かなので、周りに気を使うことなく撮影ができる。特に、小さな子供の写真をクローズアップで撮りたい場合などに、注意を引いてしまい自然な表情を撮ることができなくなることがあるからだ。

3.記憶メディア

本機は記憶メディアにスマートメディアの3.3vと5vを使用できる。フジフイルムの他機種との互換性から考えて妥当な選択だろう。98年3月時点ではスマートメディアの最大容量が8Mしかないのが多少気がかりではあるが、単価が安く物理的に小さいので複数枚持ち歩くことが負担にはならないだろう。

また、本機とは直接関係ないが、スマートメディアにはウィンドウズ95マシンの3.5インチFDDとして認識されるアダプター(FD-A1)が開発されたことは、スマートメディアを使ったデジカメのパソコンとの親和性を大きく上げるだろう。そして、パソコンがPCMCIAスロットを持たないデスクトップ機である場合にスマートメディアを使用したデジカメを選択する大きな理由となるだろう。

なお、本機には「お試し用」と銘打って、2Mのカードが添付している。はっきり言って、これでは使い物にならない。

4.電池

電池はリチウムイオン充電池を使用している。継ぎ足し充電が可能であり、出先での入手は困難なので、イベントの前夜にはACアダプターにつないでおくほうがよい。ニッケルカドミウム電池と違い、完全に放電させるとかえって悪影響を残すので、注意したい。充電は専用のACアダプターを本体につなぐことによって行える。ACアダプターまでが標準添付なのは嬉しい。

電池を1回充電すれば、80枚(液晶ON、ストロボ50%)の撮影が可能と取扱説明書にある。今回は2Mのカードしかない状態でのテストだったので、電池の残量を気にすることは全くなかった。2Mのカードは1280X1024NORMALを5枚保存できる。一回の充電で5回程度撮りきることができた(液晶ON、フラッシュなし)。これなら、8Mのカードでも余裕だろう。

5.価格

3月31日カメラショップで79,800円だった。ただし、接続キットは付属していないので、PCカードアダプター、フロッピーディスクアダプター、シリアル接続キットのいずれかが必要になる。このカメラだけでは2M分の画像を撮影しテレビで表示することしかできない。また、8Mのスマートメディアカードも必須だ。合計で約10万円だ。

アプリケーションは一切付属していないが、JPEGなのでWWWブラウザーでも表示できる。中途半端なバンドルソフトではこのデジカメのデータを活かしきることはできないので、無駄なものを入れなかったのは正解だと思う。

?メガピクセルの可能性

昨年のDC20のレポートでは、モニタで表示すること、フイルムカメラのサブとして使用し、データもレタッチ後圧縮保存することを前提とした。それは、97年3月時点ではパーソナルデジカメの印刷環境が充実していなかったからだ。その後、昇華型フォトプリンタや写真画質のインクジェットプリンタがパーソナル市場に発売され、デジカメデータの印刷に道を開いた。私は、13号でのデジタルプリンタの検証を通じて、デジカメ印刷の可能性を見た。しかも、個人での購入が可能な価格帯にも関わらず、VGAデジカメの解像度を越えており、メガピクセル機への期待を抱かせるものだった。

しかし、その高解像度故に要求されるパソコンの環境もかなりハイスペックだ。1280X1024ピクセル24ビットカラー表示できなければ宝の持ち腐れだろう。ファイル容量が大きいので、アルバム化して保存するにはMO等ビット単価の低い記憶装置が必要になる可能性も高い。

しかし、98年4月現在デジカメの購入を考えている方には、本機を勧める。15インチモニタしか持っていないユーザーであってもだ。なぜなら、このデジカメで撮ったデータは貴重なオリジナルデータとなり得るからだ。

なお、本機に限らず、デジカメのデータを保存する時はオリジナルの状態で保存したい。撮り直しができない記録性の高いデータ(子供の写真等)は特にそうしたい。レタッチ・圧縮は後からできるが、JPEG圧縮されたデータを元の品質に戻すことはできないからだ。プリインストールソフトを削除してでも、高画質で保存したい。

現状のパソコン環境が対応できていなくても、将来的に高品質データを活用できる可能性は十分にある。フルカラープリンタやデジタルデータ出力サービスなどは既に射程に入ってきている。そのような用途での利用をするときにも、本で撮っておけば後悔はしないはずだ。そのためにも、高品質で保存すべきだ。


仕様:
取得画像: 1280X1024ピクセル、640X480ピクセル
画素: 1/2インチ正方画素、画素数約150万(有効約131万)、原色フィルター
記録方式: JPEG(Exif ver2.0)、圧縮率(1/4、1/8、1/16)
記録媒体: スマートメディア(3.3v、5v)、2M5V1枚付属
内蔵メモリ: なし
感度: ISO100相当
レンズ: 35mm相当(F3.2、F8自動切り換え)
露出: プログラムAE(露出補正、フラッシュ補正可)
ホワイトバランス: 固定(マニュアル補正可能)
ピントあわせ: オート(マクロ、通常切り換え)
ストロボ オート、赤目軽減、強制発光、発光禁止
電源: リチウムイオン充電池使用(1本添付)、ACアダプターと本体で充電可能
重量: 約300g(撮影時重量)
サイズ(ミリ) 80X101X33
端子
VIDEO出力(専用ケーブル付属)
シリアル(別売キット必要、ウィンドウズ用・マック用)
DC入力(専用ACアダプター付属)
ファイルサイズ 1280X1024 640X480
FINE(1/4) 650KB 150KB
NOMAL(1/8) 325KB 75KB
BASIC(1/16) 160KB 38KB


Kasahara@kh.rim.or.jp

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