パソコン批評誌において、デジカメの検証を継続的に行ってきた。スキャナを必要とせずにカラー写真がパソコンに取り込めるだけ興奮していた時代から、画質を語る時代が来、高嶺の花と思っていたメガピクセル機までがパーソナル市場へと投入された。同時にデジカメを取り巻く環境も変わり、記録フォーマットのJPEGフォーマットへの収束、メモリカードの大容量化、プリンタの高画質化により、パソコンの周辺機器としてだけでない新しいタイプのカメラとしての用途も提案され始めた。
これまでは、その時々の市場を代表するような機種を選んで検証をしてきたが、機種固有の特徴や問題点を検証するに終始してしまい、「じゃあ、どうやって選んだらいいの?」という疑問に答えるまでに至らなかった。
そこで、本稿では、デジカメを選ぶ基準や仕様の読み方を考察してみたい。なお、検証時点において、デジカメはパソコン以上に過渡期の製品であり、ユーザーのみならずメーカー自身にも混乱が見られる状態である。このため、説明ついては極力普遍的な内容とする。逆に、テストには実機を使った計測値を用い、現状のデジカメの数値を明らかにしておきたい。なお、仕様等で取上げる数字は99年2月現在の数値であり、普遍的な基準ではないこと。個人ユーザーを念頭に置いていることを留意いただきたい。
■巨大な実験場
デジカメを選ぶのが難しいのは、過渡期の製品であり、様々な技術が投入され、機能による差別化や用途の提案が行われることにある。一見収束したファイルフォーマットやメモリカードも逆転がありうる(内蔵メモリ16MでUSB接続が可能になれば、カードの必要性は無くなるだろう)。
フイルムカメラなら、特に意識しなくても、「ズーム付一眼レフカメラが欲しい」とか「操作が簡単で小さいコンパクトカメラが欲しい」という具体的イメージを持って機種選びをするのが普通だ。デジカメのラインナップはそこまで行っていない。混乱する原因がここにある。
フイルムカメラの場合は、フイルムという共通項が有る。それに対して、デジカメの場合は、フイルムに相当するCCD自体が大きく変化している最中で、メーカーによっても異なる。
さらに、35万画素時代には、原色フィルター・正方・スチルカメラ専用・プログレッシブスキャンCCDこそが高画質の代名詞とされていた。しかし、35万画素機でそれを採用していたメーカーでも、メガピクセル機では採用しないケースが現れている。このように、指針としていた規格すらが絶対的なものでないというのが混乱に拍車をかけている。
■目的・用途を確認しよう
では、何を基準に選ばばいのか?絶対的な基準は何か?実は簡単。ユーザー自身にある。そう、デジカメを選ぶ際に最も重要なことは、パソコンにも共通することだが、使用目的をはっきりすることだ。使用目的が明確であれば、購入後埋もれさせることはないはずだ。購入時には、メーカー主導・横並びのハイスペックに目を奪われるようなことのないよう注意したい。
考え方はフイルムカメラを選ぶのと同じだ。子供の成長記録、趣味のコレクション、友達のスナップ、ホームページ、年賀状、なんでもいい。次に、自分がデジカメを使ってどういうシーンで使いたいのか考えてみよう。これまで、「撮りたい機会はあったけど写真は面倒で」という経験があるならば、活用の可能性は十分だ。
残したいシーンが一つでも思い浮かんだらそれを「とっかかり」にすればいい。そうやって使っていけば、デジカメの限界とともに、新たな可能性を見つけることができるはずだ。
しかし、この段階で、写真を撮ることをイメージできないようならデジカメを買うのは止めよう。写真に興味がない人がデジカメを買っても死蔵することは目に見えているからだ。
■評価基準
次に、デジカメ購入の際に考慮する性能とそれを構成する要素について簡単に説明しよう。
□画質
画質を仕様から判定することは非常に難しい。というより、不可能だ。ウェブサイトでのレビュー記事で、できるだけオリジナルに近いものをダウンロードして、表示(印刷)してみよう。これで納得がいけば、スペックなどは問題ではない。また、パソコンのモニタは環境差が激しいので、自分のモニタで見たものが絶対ではないことも知っておこう。
ここでは、メーカーが高画質の説明に使っている用語の意味を解説するにとどめよう。また、パソコン批評のホームページには下記項目について、比較できるような実データを掲載するので、参考にしていただきたい。
○画素数
デジカメの性格を知るために一番の目安にされるのがこれだ。画素数とは、光を受けて電気信号に変える受光素子の数だ。画素が多ければ、それだけ細かく描画する能力があると考えて良い。解像度イコールイメージサイズの大きさと思えばよい。モニタで表示するだけならメガピクセルが必要とは思えないが、モニタより解像度の高いプリンタではその差は歴然となることも事実だ。
プリンタできれいに印刷するには最低300ドット/インチの解像度が必要だ。とすると、 1028では約8.5cm、128でも10.6cm程度にしかならないと思っておこう。逆に、ホームページだけなら、35万画素でも十分だ。
しかし、画素の高密度化により弊害も生まれている。画素が小さくなるために、画素に受ける光が減少してしまった。フイルムカメラでも、プロの使うコダクロームはISO64だ。問題なのは、高画質故に取り扱いが難しくなることをユーザーに知らせずに、画質劣化をもたらすようなチューニングでごまかしていることだ。
○フィルタ
デジカメのCCDは色のデータを持たない。色情報を取得するためにCCDの前に色のついたフィルタを置いている。このフィルタに、原色系と補色系が有り、一般的に原色系の方がRGBデータに変換する精度が高いと言われる。
○レンズ
フイルムカメラで最も重視されるのがレンズだ。当然デジカメでも重要な要素だが、数値から性能を読みとることは不可能に近い。線数を強調することは無意味だ。
焦点距離は35ミリフイルムカメラ換算値が講評されているので難しくはない。議論が分かれるのはAF(オートフォーカス)か否かだが、ユーザーのカメラに対する習熟度によって判断すべきだ。AFの場合は、シャッターボタンを軽く押し込みフォーカスがロックしたことを確認した上で最後まで押し込む必要がある。タッチの悪いデジカメではこれが難しく、手ぶれやピンぼけになることがある。
○露出(絞り・シャッター)
パーソナル機はほとんどがプログラムAEでコントロールできない。被写界深度をコントロールして撮るようなレベルには無い。
○内蔵ソフトウェア(ファームウェア)
CCDから取り込んだモノクロ情報を、フィルタの情報を元にRGBデータに変換する操作だ。多くの機種ではこのときにJPEG等の圧縮を加える。カタログの仕様にリストされることはないが、画質を左右する大きな要因だ。
□ズーム
人物のスナップでアップを撮りたいときに便利だ。実際、35ミリフイルム換算で35ミリの固定焦点機で人物をアップで撮ることは難しいからだ。同時に、最も偉力を発揮するのは長焦点側でのマクロ撮影だ。単焦点機で接写したいときに、カメラや自分の影が入らないよう苦労することがあるからだ。
ここでいうズームは光学ズームのことだ。光学ズームはレンズの焦点距離を可変にしたものだ。デジタルズームは取り込んだ画像をグラフィックソフトで拡大するのと同じだ。画質は劣悪と考えて良い。
□フラッシュ
80万画素以上の機種には必須だが、「おいしい」距離をつかんでおくことが必要だろう。パーソナル機の内蔵フラッシュでは2メートル前後だろう。発行禁止モードが無いと、邪魔になる場合もある。
□ムービー・音声記録
人によって大きく評価が分かれる機能だ。しかし、工夫したからといって、他の方法でカバーすることはできない機能でもある。
■フォーマット
JPEGフォーマットが標準だ。Exifと書かれている場合もある。こちらは、JPEGに撮影時の絞りやシャッタースピードなどのコメントを埋め込んだもので、JPEGとして扱うことが可能だ。
なお、出力サイズを固定するタイプと、圧縮率を固定するタイプがあるが、圧縮率を固定する方が安定した画質を得ることができる。
■記憶メディア・連携
メモリーカードを使用する機種が主流だが、勝利者は決まっていない。しかし、メディア自体の優劣を論じるより、手持ちのパソコンとの互換性が重要だ。ノートパソコンが使えるなら、カードは何でも構わない。デスクトップ機しかない場合は、スマートメディア+フラッシュパスが最有力候補だ。
なお、80万画素以上の機種でシリアル接続は現実的でないと思っておいた方がよい。撮影後の転送に時間がかかると面倒になってしまうからだ。
見落としがちだが、ビデオ出力端子は必須だ。実は、パソコンのないところでも表示できるインパクトは大きい。筆者の場合、パソコンで見るよりテレビに写すことの方が多いほどだ。保存してあるデータをカードにコピーして、祖父母の家で写したりすることもある。デジカメの真骨頂発揮だ。
■電源(電池種類)
「電池はデジカメのフイルム」という言葉もあるくらいだ。カードが大容量化・低価格化されたために、最大撮影可能枚数は電池によって制約されるようになったからだ。筆者の経験からは、単三型ニッケル水素充電池を使うのが正解だと思う。別途購入が必要だが、継ぎ足し充電可能で、いざというときはアルカリ電池で代替できるからだ。他の用途にも流用できることもメリットだ。
■ボディ・デザイン
□重量・サイズ・形状
重量を比較するときは電池を入れた状態で比較する必要がある。単三電池一本で約15gあるので、仕様本数も勘案したい。300gを超えるようなものは、ポケットに入れて持ち運ぶことは難しい。
形状やサイズについて、比較することは無意味なので、手に取ってみるしかない。厚みのある機種は手ぶれを起こしにくいが、携帯性は劣ると思っておくと良い。
□デザイン
一番重要なのは、シャッターボタンだ。ホールドしたときに自然に人指し指がかかるような位置がベスト。
□液晶モニタ
横並びでポリシリコンTFTが採用されているので、機種選びの指針にはならない。反射液晶タイプもあらわれたが、色の確認が重要なカメラに採用するのには疑問が残る。
■操作性・機動性・快適性
仕様として数値化することは難しいが、ショップで手にとってみるだけでもかなりのことが判るので、購入前には絶対に実機を触って欲しい。確かめるべきは、起動・撮影・確認・(設定変更)・終了という一連の流れだ。
操作性は独立した機能では比べられない。単独の操作がシンプルで処理時間が短いければそれに越したこと事はないが、快適性を測るのはそれだけではない。機能の切り分けができているという事も重要だ。頻繁に呼び出すべき機能が通常触らないメニューと同列というのは困る。
また、快適性はレスポンスによって大きく左右される。同じ待時間でも、操作を受け付けたことが確認できれば安心だからだ。
筆者の経験からは、モードを切り換えるようなスイッチはスライドスイッチが便利だと感じた。スイッチ自体が情報を持っているからだろう。また、電源ON状態での可搬性も快適性につながる。
■トータルコスト
ここまでは、デジカメ側の評価について書いてきたが、トータルコストを計算する場合、手持ちの環境が大きく影響することを忘れてはいけない。メガピクセルの画像を正しく評価するためには最低でも1280X1024ドットフルカラーが表示できなければいけない。MOなどの媒体も欲しい。
■被写体別優先項目
次に、被写体別に優先すべき項目を整理してみよう。
□人物
フイルムカメラでは面倒だったようなちょっとした瞬間を写すことが活用のコツだ。カメラの設定を一々確認しなければならないようでは、気軽に撮ることはできないだろうし、写される側もリラックスできない。撮影されて初めて気付くような写し方が理想だ。
ただ、35ミリだと2メートル前後で撮る必要があり、表情が硬くなってしまう。この点で、ズームレンズ搭載機は有利だ。
□風景
写真行に行くような人はフイルムスキャナが正解。メガピクセルカメラが及びつかない画質のデータが取得できるしデジカメより安い。
そこまでのこだわりがないなら、CCDの表現力に定評のある35万画素機も面白い選択だ。高解像度=高画質ではないことを教えてくれる。
□マクロ撮影
マクロ撮影は、AF・光学ズーム機の圧勝といってもいい。マクロ撮影するときに離れた位置から撮影できるという事は、撮影者やカメラの影を気にしなくて良いということだ。これが意外に大きい。筆者のDC−2Eはピント範囲が「2センチから」となっているが、手暗がりになるのでそんな距離では使いものにならない。また、三脚穴の確認も怠ってはいけない。
□特定の被写体が想定できない人
これが一番多いかもしれない。このばあいは、これまで使ってきたフイルムカメラを顧みよう。これまで、特に写真にこだわりの無かった人が画素数にこだわるのは無意味だ。
■実機テスト
次に編集部にある機種を使って、現状のデジカメの標準的な値をテストしてみよう。内容は、一般的なユーザーが店頭で試せる範囲にとどめた。
■一部まとめ
さて、デジカメ選びのポイントはご理解頂けただろうか。無駄なスペックであっても足を引っ張ることのないパソコンより難しいと言える。ただ、現在のパソコン環境が条件を満たしていないからといって、デジカメ購入の足枷にする必要はない。オリジナルに手を加えずに保存しておけば、真価を発揮できる日が来るかも知れない。
また、画質にこだわるなら、JPEG圧縮による劣化した画像で判断してはいけない。購入したら各画質で撮影し、ファイルサイズと圧縮率を確認しておきたい。
撮るべきものがあるかどうか、使いこなせるかどうかはユーザー自身にかかっているといっても良い。楽しいデジカメライフ(?)を送るための参考になれば幸いだ。