中学2年の3月。受験を1年後にひかえたあなたは、いよいよ本格的な塾へ通うことに
なります。有名なX学園です。以前から通っていた子供達を押しのけて、あなたはすんな
りと上級コースに入りました。
中1時代の情熱が、またあなたに返ってきました。X学園にはあなたの求めていたもの
がありました。熱気。すさまじいまでの熱気。
ちょうどその頃でしょうか。X学園でF君と親しくなったのは。
F君は勉強がよくできました。たセ、あなたの話を聞くと・・・・家庭内暴力児の傾向があ
ったようです。親の作ったお弁当のおかずが少いと文句をいい、多いと文句をいい、あげ
くのはてに放り出してみせる。そんな彼の話をするあなたは実に羨ましそうでした。
「ボクがそんなことしたら、ママ、どうすると思う? ボク殺されちゃうよ」
あなたは、おばあちゃまにそういったそうです。事実、もしそんなことがあったら、マ
マは殺さないまでも、頬っぺたの一つや二つ、必ず張りとばしたことでしょう。自分にで
きないことを易々とやってのけるF君を、あなたは尊敬に近い気持で眺めていたようです。
筒井康隆よりも、F君の影響の方が大きかったという証言(E君)もあるくらいなのです。
「F君だけが俺の気持をわかってくれる。考え方が同じなんだ」
と、あなたはいっていたとか。
F君とあなたは、考え方が似ているばかりでなく、顔つきまで似ていたと聞いています。
でも似ていないところが一つ。あなたほすぐ人の感化を受け、自分を失くしてしまうけれ
ど、F君は自分というものをどこかで一本しっかりつかまえていたということ。そのため、
一見八方破れに見えても、板元からひっくり返ってしまうことは決してありませんでした。
S中学のO君とて同じことです。一学期悪名を轟かせていた彼は、夏休み前の個人面談
で先生にヤキを入れられると、二学期にはもう立ち直っていました。都立の一流枚に入っ
ている事実を見れば明らかです。先生が何だ、親が何だとツッパッて、結局自分がソソを
する、そんなバカなことはしないのです。同じようにくずれても、彼らは、しかるべき時
にはちゃんと立ち直ってみせる要領のよさがあったのです。
F君もO君も、やがては常識的な社会人になっていくことでしょう。それなのに、あな
たは死んでしまった。彼らより、あなたの方がずっと純粋だったのだと思います。でも、
純粋なものは死なねばならぬなどとは、あまりに悲しい考え方ではありませんか。やはり
あなたはバカだったのだ。ママは無理にでもそう考えたいのです。
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