2004年 1月
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@人形はなぜ殺される
高木彬光ハルキ文庫推理
372頁840円★★★

 ギロチンで首を斬られた女の死体が発見された。しかしギロチンの下に転がっていたのは、数日前に素人奇術ショーの場から盗まれた人形の首。神津恭介と友人の松下はこの奇怪な事件に関わることになるが、この事件でさえ、名探偵神津恭介を翻弄することになる、一連の凶悪な殺人劇の第一幕に過ぎなかった・・・。

 金田一耕助ものは、めぼしいものはほぼ読んでしまったので、たまに未読のものを読んでも、最早トリックやシチュエーションで萌えることはないのだが、神津恭介ものにはまだお宝が眠っていた。確かに事件のプロローグとなった、素人奇術ショーでの消えたすげ替え首のトリックには腰がへなへな――だから★×3つ――になってしまったが、それを除けば一級品だと思う。殺人事件のトリックとしては、久しぶりに堪能させてもらった。解説に島田荘司「夜は千の鈴を鳴らす」との類似性が一時話題になったとあるが、なにもピンとこなかったが…。

 おそらく評価が高いものから再刊になっていくのだろうから、神津ものも残りを読む機会が生まれるかは判らないし、第一面白いものが残っているかどうかもさだかではないのだが、とりあえず歴史ミステリ?の「邪馬台国の秘密」「古代天皇の秘密」「七福神殺人事件」は読んでみたいものだ。

(2012/11/7改訂)

A自動車社会学のすすめ
島田荘司講談社文庫
301頁505円★★★

 なんでも昔「カー&ドライバー」誌に連載を持っていたことがあるらしく、そのエッセイをまとめたのが本書ということだ。
 連載されていた時期はおそらく80年代後半だから、当然ながら文中に出てくる車も社会情勢もその当時までの内容だ。こと動きの激しい自動車社会を取り上げたエッセイを、古典のミステリを見つけたように無造作に買ってしまったわたしはまったくの阿呆だ。
 アール・デコが暴力的に溢れてきた挙句、車のデザインも軒並み直線状になってしまって云々とあっても、今となっては一昔も二昔も前の話である。わたしが免許を取った時代だよ…。

 しかし、車雑誌の凡百のライターがベンツのキャラクターを語っても、ワーグナーや狂王ルートヴィヒ2世はなかなか出てこないだろうな。

 当然ながら、著者得意の都市工学絡みの文句あり。

(2012/11/7改訂)

B人工進化の秘密!  キャプテン・フューチャー15
 The Star of Dread (1943)
E・ハミルトンハヤカワ文庫SF
260頁320円

 キャプテン・フューチャーたちは天王星の衛星チタニアで、他の科学者チームと共同で、太陽系人の共通の祖先であるデネブ人の残した遺跡を調査していた。迷信深い原住民が周囲で騒然とする中、彼らが見つけた石板には生命種を人工的に進化させるテクノロジーの存在と、その技術が残された場所が記されていた。その場所、デネブ星系にある惑星<アアル>の<生命の洞>へ行くことが可能なのは、太陽系中でフューチャーメンのコメット一隻のみ。だが、生命を人工的に進化させることに反対するキャプテン・フューチャーは、デネブに向かうことを拒否する。これに怒った物理学者のノートンと生物学者のウィンタースは、石板の碑文内容を覚えているジョオンを拉致し、コメットを奪取してデネブへと向かう。足を奪われたキャプテン・フューチャーたちに、ジョオンを救う手はあるのか・・・。

 わたしが昔このシリーズを読んでいたときには、本書が最も新しい邦訳作品だった。ほぼ同時期に放映されていたNHK版のアニメでも、たしか本編が最後だったと思う。どういう基準で訳出の順番を決めていたのかは知らないが、時系列では随分これより前に位置する「月世界の無法者」で殺害された、太陽系政府主席ジェームス・カシューが登場人物欄に残っているのがご愛嬌だ。

 すでにGM(=遺伝子組換)食品などが日常生活に入ってきているわたしたちの感覚からすると、光速を超える移動手段を手に入れ、物質生成の秘密を手に入れた彼らが次に挑む科学の神秘が、超高度文明を誇ったデネブ人の残した人工進化だというのは少々弱い気がするが、まあ微妙なホルモン・バランスの制御も含めて、思い通りに生体を変化させるというのはすごい技術ではあるか。もちろん本書の人工進化は特殊な放射線を浴びせるだけでOKだ。

 デネブ人で思い出したが、超高度文明を誇った彼らが、碑文とは言え、なぜに石板に象形文字で記録を残したのかもよく解らないが、彼らの遺品のゴムのような弾性を持った金属のヘルメットを調べていた<生きている脳>サイモンに対して、キャプテン・フューチャーが放った一言、「おそらく隕石の衝突に備えて、そのヘルメットを被っていたんだろう」にはぶっ飛んだ。

 愛をもってキャプテン・フューチャーを馬鹿にしているわたしだが、冒頭のチタニアのシーンの彼の行動には、さすがに頭がくらくらしてしまった。彼の基本的な思想は理解できるものの、迷信深い原住民が騒いでいるにもかかわらず、内容は記憶したからいいとばかりに独断と恐るべき傲慢でもって、貴重な太古の遺跡出土品を破壊してしまうのだ。
 古い時代の作品だからとやかく言っても仕方ないのだが、少なからず現在のアメリカに通じるものもあって、大人気なく腹をたててしまった。

(2012/11/7改訂)

C悪魔の百唇譜
横溝正史角川文庫探偵
250頁476円★★

 よれよれ帽子にはかま姿というのが、金田一耕助のトレードマークだが、本書で一人暮らしの彼がばたばたと朝食をかきこむシーンでは、なんとトーストにゆで卵、アスパラガスの缶詰に牛乳だ。こいつはびっくり。

 ストーリーのほうは、いかにもな題名に反して、意外に大勢の刑事があれやこれやと動いて警察小説みたいだ。これにもびっくり。
 金田一耕助ものとしては異色作ではなかろうか。

(2012/11/7改訂)

D早わかり[三国志]の常識100
松本一男日文新書歴史薀蓄
222頁686円★★★

 「「三国志」の迷宮 儒教への反抗 有徳の仮面」に比べると、より入門編といった内容だ。
 誰ぞの「三国志演義」や、あるいは「蒼天航路」を読んで興味を持った人が、初めて読むのにちょうどいいだろう。
 入門編としては「図解雑学 三国志」のほうが目に付きやすいし、トピックを時代毎に並べずに、魏、呉、蜀で章を分けて書いているのも共通だが、あちらでクローズ・アップされていた“君主VS名士”という括りがない本書のほうが、導入としてはいいかもしれない。

(2012/11/7改訂)

Eガンダムと第二次世界大戦
 〜かくしてジオン軍、ドイツ軍は戦い、敗れた〜
鈴木ドイツ廣済堂歴史薀蓄
226頁1200円★★★★

 ジオン軍の制服を一目見ればドイツ軍との類似性は瞭然だが、これだけ真面目に比較した本を作るというのは、それはそれで大変なものだろう。鈴木ドイツなんてふざけた筆名だが、どうしてどうして、生半可な思いではこれは書けません。

 前半部のモビル・スーツとドイツ戦車の比較はまあさて置き、後半の一年戦争第二次世界大戦(西部/東部戦線)の戦史としての比較は読み応えあり。お薦めだ。
 しかしヨーロッパ戦史とガンダムのどちらにも興味がないと、この本を買う気にはならないだろう。売れたのかな。

(2012/11/7改訂)

Fアルバイト探偵
大沢在昌講談社文庫探偵
274頁533円★★★

 父親の探偵事務所でアルバイトの探偵活動する高校生の息子が一人称で語る「アルバイト・アイは高くつく」「相続税は命で払え」「海から来た行商人」「セーラー服と設計図」の4編からなる連作短編集。

 適度な不良と自称する“僕”は、一応普通の高校生だと印象づけながらも、行動力・決断力も十分で、暴力の場も辞さないすでにイッパシの探偵だ。おまけに調子のよく年上女をナンパしてGETできるなんて、もうスーパー高校生だよ。そしてその親父と言えば、女や麻雀に明け暮れる社会不適格者だと息子からはレッテルを貼られならがも、どうやら昔は内調にいたらしく、時に凄みを見せる男だ。
 まあこの設定からも判るように、リアルさを求めたハードボイルドではなく、著者がちょいと息を抜いて書いたような感じ。

 これはすでに誰かが言っているとは思うのだが、この主人公たちの性格設定を読むと、“シティーハンター”冴羽りょう(漢字出ない)を意識しとるとしか思えない。
 なんてったって、親父が冴木亮介でその息子が隆(もちろん"たかし"とは読まない)じゃからのお。偶然にしてはできすぎだろう。
 冴羽りょうの未来が冴木亮介か過去が冴木隆か、どちらでも好みのほうを。――って感じか。

(2015/11/8改訂)

G機神兵団DEF
山田正紀ハルキ文庫伝奇活劇
223頁/218頁/208頁660円/660円/660円★★★

 パイロットのいない機神兵団の面々は、関東軍ハルピンで軟禁状態にされていた。機神の三人のパイロットたちは皆独立した任務の中でそれぞれ危地に在ったが、榊大作、白蘭花はなんとか脱出に成功、やはり軟禁状態から脱出した機神兵団と合流、ドイツの公彦からの依頼を受け、満ソ国境のボグラニーチナヤ、さらには一路欧州へとユーラシア大陸を西走する。そしてついに、東欧ルッチェランドで三人は久方ぶりに会するのだった。・・・5巻

 あろうことか、エイリアンとの同盟を持ったナチス・ドイツは、フリュム、ミッドナイト、フェンリルの三体の装甲騎士=パンツァーカバリエを完成させ、いよいよヨーロッパ全土への電撃作戦を開始しようとしていた。そしてその緒戦となるのは、東欧の小国ルッチェランド。それぞれ異性人のテクノロジーを基幹とした機神とパンツァーカバリエが、日本から遠く離れた東欧の小国で激しく対峙する。・・・6巻

 ルッチェランドでの機神VS装甲騎士を中心とした戦闘は熾烈を極める。エイリアンと同盟を結んだドイツのパンツァーカバリエに対して、機神の旗色は悪い。大作、公彦、白蘭花は、すべてを賭けて装甲騎士に挑むが、一人また一人と犠牲になっていくのだった。・・・7巻

 4冊を読んだ時点で残り6冊だったから、3冊ずつで括ろうと思って7巻まで読んだ。これが結果的にいい感じで、ちょうど話の切れ目にもなっていた。敵役との決着はつくし、主役たちは生死不明。そしてエイリアン云々の謎は残っておるにせよ、プロローグとエピローグに思わせぶりに登場するようになった大作の姉貴が、未だに話の根幹に関わってこないということさえなければ、ああもう完結かと納得してしまうくらいだ。話にオチはつくのだろうか。

 「崑崙遊撃隊」のことがあるから、あんまり期待しないほうがいいかも・・・。

 それにしても6巻の表紙はあんまりだ。ウルトラマンじゃないんだから。

(2015/11/8改訂)

HQED 六歌仙の暗号
高田崇史講談社文庫推理
577頁819円★★★★

 名邦大薬学部の教授と助手があいついで殺された。教授の殺人は密室でのもの、助手の殺人では犯行後の逃走ルートに不審な点があり、捜査は思うように捗らない。マスコミからは殺された二人に関連させて“七福神の呪い”だという報道が流れ、名邦大学では七福神に関連する研究テーマを禁止する措置がなされた。そんな中、同大文学部四年の貴子はあえて論文のテーマに七福神を選び、奈々にタタルの協力を仰げないか頼ってきた。貴子の兄は三年前に同じテーマを選びながら、京都での研究旅行中に事故死しており、そもそもそれが今回の“七福神の呪い”の発端でもあるという因縁がある。貴子、奈々、タタルの三人もまた、京都で七福神にまつわる寺社を回るが…。

 「QED 百人一首の呪」が労作であることは買うが、読み物としては今ひとつだった。
 しかし二作目の本作はとても楽しく読めた。後半、七福神と六歌仙の結びつかせるくだりは、それを説明するための物語設定などもあって、ちょっと無理があるように思うが、その分木村のばあさんがいい感じを出している現実事件の謎説きもなかなかのもの。なんといっても前半の七福神ネタが良かった。
 これは別にネタばれにはならないと思うが、著者も井沢元彦同様の怨霊史観なので非常に解りやすい。やめずにシリーズを読んでよかった。

 実は御大井沢元彦にも、「六歌仙暗殺考」という著作があるが、本作で重要な位置にある喜撰法師の唯一の歌“わが庵は〜”に触れながらもあっさり流している。
 題名の割に六歌仙に重みは置かれておらず物足りなかったので。

(2015/11/8改訂)

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