| 2004年 7月 | |||
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| @ | 巷説百物語 | ![]() | |||
| 京極夏彦 | 角川文庫 | ― | |||
| 511頁 | 629円 | ★★★ | |||
| 京極堂シリーズが、偶然や犯人の意図によって認識を狂わされてしまった登場人物たちを、京極堂の巧みな話術によって解体、再構築させて立ち直らせる(=お祓い)という構成なのに対して、“犯人の意図”が主人公達の仕掛けとなるのが本シリーズだ。法で裁けない悪人たちをお金をもらって代理で懲らしめるという、まさに“必殺シリーズ”の展開。「小豆洗い」、「白蔵主」、「舞首」、「芝右衛門狸」、「塩の長司」、「柳女」、「帷子辻」の七つの中編からなっている。 あいかわらず達者なものだが、面白いというよりは巧いという印象だ。 時代劇ということで、“〜のモンだがね”、“てェなあ知らねえ”、“〜じゃァありやせんか”といった台詞回しは結構うざったらしいのだが、著者は講談か戯曲を意識してるらしいので仕方ないか。 | |||||
| B | 火星の土方歳三 | ![]() | |||
| 吉岡平 | ソノラマ文庫 | 異境冒険 | |||
| 335頁 | 552円 | ★★★★ | |||
| この本を本屋で見かけたとき、いくらNHK大河のネタが新選組だからといっても、こないなもんまで出さなくてもいいだろうと思ったのだが、何気に手にとって驚天動地! “五稜郭で倒れた土方歳三は、ふと気がつくと裸で立っており、足元には自分の体が。空には赤い惑星火星が浮かんでおり、そこに手をのばすと、すーっと土方の体は…” おいおい、これはまさかあの火星じゃないのか! と表紙をよく見てみると、右下にはなんと緑色人が描かれているではないか。まぎれもなくこの火星は、グローバル・サーベイヤーが周回を軌道して、スピリットやオポチューニティが地面を動き回っている殺風景な火星ではなく、カオールで挨拶するバルスームに紛れもなかった。 というわけで、いそいそと買い込み、(お得意の“怪獣もの”を買うより恥ずかったので、別に何冊かも加え)早速(実際のところあまり期待したわけでもなく)読んでみた次第。しかしこれが驚くべきことに、E・R・バローズの火星シリーズのオマージュとして十分な出来だった。蝦夷地で最後の抵抗を試みる土方歳三が、一本木関門で戦死を遂げるのは1869年5月のことなんじゃが、考えてみれば、元南軍大尉のジョン・カーターがアリゾナの洞窟から火星に渡るのは結構近い時期のことだ。もし同時代の日本人をバルスームに送るとしたら、土方歳三はこれ以上ないと言っていいベストの人選だ(あとは坂本竜馬か)。ジョン・カーターの火星での武勇の大本は地球と火星の重力の差に基いているのだから、剣の腕前から言えば土方のほうがはるかに上だ!!斬られちゃうよ、ジョン・カーター・・・。 バルスームで彼とジョン・カーターを出遭わすことをやめておいたのは賢い選択と言えるだろう。 後半、ヘリウムに腰を落ち着けた後は、火星シリーズのオマージュから新選組のパロディへシフトしてしまったのは非情に残念だが、本年最高の拾い物であるのは早間違いないところ。いや、天晴れ天晴れ。 | |||||
| C | 逆説の日本史1 古代黎明編 | ![]() | |||
| 井沢元彦 | 小学館文庫 | 歴史薀蓄 | |||
| 480頁 | 619円 | ★★★★ | |||
| この本を最初に読んだ時には、あの日本歴史学三大欠陥(史料になければ事実はない/学会内の上下関係のしがらみ/言霊や怨霊といった呪術的側面の軽視)を鼻息荒く糾弾しているのにびっくりしたものだが、一方で説得力のある歴史解釈は斬新で、目から鱗が落ちまくる陶酔感を味わったもの。 もちろん井沢説がどれだけ事実に近いかは判らないのだが、その論理的な解釈――推理の枠は出ないにせよ――は、上質なミステリーをも上回るくらいの読後感を味わえる。特に西沢保彦ファンは間違いなく読むべき。卑弥呼と天照大神の関係を、卑弥呼が死んだ西暦248年(魏志倭人伝の研究者が一致して認めているらしい)に起こった自然現象(これは天文科学で確認できる事実)と絡めて解き明かしているところなどは、もし初めて目にするならば感動ものだろう。 大国主命や神宮皇后、任那日本府(内宮家)に関する考察も非常に面白く、朝鮮(韓国)との関係についての意見もごもっともだ。21世紀を迎えて、日本が韓国や中国と仲良くやっていくべきなのは当然だが、教科書や靖国のことでごちゃごちゃ言われたときにきちんと理屈に則った反論をするがためにも、自分の国を歴史的、宗教的に認識することはとても大事なことだから、こういった主張ができる知識は持っておきたい。(もちろん相手の国の知識を持っておく必要もあるが・・・) (今も状況が変わっていないなら)陵墓参考地はぜひとも発掘の許可を! | |||||
| G | 緋色の研究 A Study in Scarlet | ![]() | |||
| C・ドイル | 創元推理文庫 | 探偵 | |||
| 178頁 | 240円 | ★★★ | |||
| アフガニスタンで負傷し、退役してロンドンに戻ってきたワトスンは、友人の紹介で、シャーロック・ホームズという男と同居することになった。解剖学や植物学など化学に深い学識を示し、古今東西の犯罪事件に通じながら、天文学や文学にはまるで無知だというこの男は、どうやら民間、ヤードを問わず、顧問探偵として糧を得ているらしい。折から、ヤードのグレグスン警部が持ち込んだ、ドレッパー殺人事件の調査に向かうホームズにワトソンも同行する・・・。 いわずと知れたホームズ譚の第一作。きちんとホームズとワトスンの出会いから始まるのだが、タリバン戦争で知名度の上がったカンダハルという土地の名が、一頁目に登場しているのが妙に新鮮だ。 ホームズは自分のことを顧問探偵(別の本では諮問探偵としていた訳本もあったような・・・)で、世界でおそらくただ一人だろうと述べている。私立探偵や興信所から回されて云々ともあるので、探偵の上位機関、まさにふつうの銀行に対する日本銀行みたいなものだと初っ端から宣言しているということか。こいつはすごい。 先人であるデュパンやルコックを貶している(文学知識0の筈なのにしっかり読んでるのか?)のも興味深いが、別のところでも書いたように、事件自体は短編の分量なのに、そこに至るメロドラマ調の物語を長々と挿入するという、フランス大衆小説のフィユトンによく見られるパターンは、初めて大人版を読んだ人間は、びっくりするとともに閉口するだろう。 古びたストーリーではあるが、探偵小説ファンを名乗るならば読んでおかねばいかん本である。 | |||||
| H | 月は幽咽のデバイス The Sound Walks When The Moon Talks | ![]() | |||
| 森博嗣 | 講談社文庫 | 推理 | |||
| 400頁 | 629円 | ★★★★ | |||
| 紅子と保呂草が招かれた篠塚家のパーティーの最中、客の一人が豪華なオーディオ・ルームの中で殺された。無残に衣服は切り裂かれ、真っ赤に染まった身体はもとより、部屋中が血塗れという惨状だが、隣の応接間には他の参加者がたむろしていたというのに、不審な気配はまったく感じられなかった。篠塚家の周囲には、オオカミ人間の噂が出回っていたが・・・。 三冊目にして漸くスマッシュ・ヒットだ。私が○カ○カ○なトリックが好きだというのもあるだろうが、どろどろネタもなしで気分良く読めた。特筆すべきは小鳥遊練無。篠塚家への侵入−訪問の場面は、スリリングな展開と合わせてとても格好のよいものだった。男らしいぞ。 ふと気づいたが、<ネタばれ反転>オスカーの動物種は最後まで明かされないままだよね。まぁいいのだけれど。 | |||||
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