2005年 1月
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@念力密室! 神麻嗣子の超能力事件簿
西澤保彦講談社文庫推理
401頁667円★★★

 「念力密室!」「死体はベランダに遭難する」「鍵の抜ける道」「乳児の告発」「鍵の戻る道」「念力密室F」の6編。というか、5編+番外編というところか。
 このシリーズの設定は短編向きかなと思っていたので、満を持してというか、頼むから今度こそ楽しませてくれと、正月酔ってへばった頭で選んだ。
 おかげで読了から二ヶ月、ほぼなんにも覚えていない…。

 しかし番外編の「念力密室F」については、どーでもいい話だが、なにか思わせぶった気持ち悪いオトシかただった。  萌え系ファン同士で、あーだこーだ話してもらえればいいと思うが。

(2015/4/19改訂)

A小惑星要塞を粉砕せよ! キャプテン・フューチャー19
 The Solar Invasion
E・ハミルトンハヤカワ文庫SF
229頁280円

 太陽系功労賞授賞式を逃げ出して、小惑星697へとやってきたフューチャーメンに、驚くべき知らせが舞い込んだ。なんと彼らのホームがある月が、留守番のグラッグともども消え失せてしまったというのだ。なんらかの事情で別の次元へ落ち込んだに違いないと考えたキャプテン・フューチャーは、透明惑星事件で得た技術をもとに、“生きている脳”サイモンと二人、月とグラッグを探すために別次元へ乗り込むが・・・。

 基本的に本国での出版順は物語の時系列になっているので、わたしは「人工進化の秘密!」の巻末に記された作品順で再読してきたのだが、19巻にあたる本書は、「透明惑星危機一髪」よりは後だが、カシュー主席が生きており、「輝く星々のかなたへ!」「月世界の無法者」よりは前ということになる。
 ところが「輝く星々のかなたへ!」で初めて太陽系を飛び出すために使用した超光速航法を使用しており、どうにも辻褄が…。本書の超光速航法は空間歪曲装置で、振動ドライブとは別原理のようではあるが、でたらめだなぁ。  本書はハミルトン本人ではなく、ウェルマンなる作家が書いたのだという。  それならば、整合性には殊の外気を使ってほしいところで、正式にシリーズの中に組み入れるのにはどうにも抵抗がある。
 しかもこのシリーズにはめずらしく、あとがきがついていない。

 「スターウォーズW」のデススター戦ばりの要塞戦があったり、ジョオンやオットーの過激トークは面白いのだが、果たして精力的に合本出版が進んどる創元版で、このあたりをどう解説してくれるのか、期待している。

――創元版を買うかどうか、すんごい迷っとったりして・・・
↑買いました。↑


(2015/10/5改訂)

Bメルカトルと美袋のための殺人
麻耶雄嵩講談社文庫推理
388頁619円★★★

(1)遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる
 友人の招待で信州の別荘を訪れた美袋は、そこで会った佑美子に突然心を奪われてしまう。何か悩みを抱えた佑美子と美袋は一晩の関係を持ったが、次の日彼女は別荘の持ち主と二人、死体で発見される・・・。

(2)化粧した男の冒険
 美袋とメルカトルが滞在していた友人のペンションで、滞在客の一人が顔に化粧をした奇妙な形で刺殺体として発見された。予定通り大阪に帰りたいメルカトルは、警察が来るまでに事件を解決してみせると豪語し・・・。

(3)小人闍処ラ不善」
 暇つぶしと称して、メルは市内から選んだ該当者50人に、“身辺に危険、不安を感じている方、相談、調査承ります”というダイレクト・メールを送ったらしい。果たして彼の事務所に、身の危険を感じているという老人が現れたが・・・。

(4)水難
 短編を書きあげるために旅館へ逃げ出してきた美袋と、くっついてきたメルカトル。その旅館では、十年前修学旅行に来た女子中生たちが土砂崩れに巻き込まれて、かなりの犠牲者が出たという。そしてその事故で行方不明となった一人の幽霊が出るというが、犠牲者の供養に来たという5人の女性の2人が死体で発見され・・・。

(5)ノスタルジア
 正月早々、美袋はメルカトルが暇つぶしに書いたという推理小説の犯人当てをすることに。美袋が犯人を当てれば、アイバンクの角膜を順番待ちしている、美袋の親戚のためにメルカトルが便宜を図る。当てられなければ、美袋は彼の名義でその小説を発表しなければならない。果たして結末は・・・。

(6)彷徨える美袋
 山小屋で目を覚ました美袋。どうやら誘拐されたらしい。周りには誰も居らず、なんなく小屋を脱出した美袋は、途中行き倒れる寸前に民家を見つけて倒れこんだ。そこは偶然にも学生時代の友人大黒の家で、その数日前すでに交友関係の途切れていた彼から美袋へ、突然シガレットケースが送られていたのだが、この謎の誘拐の裏には何が・・・。

(7)シベリア急行西へ
 ウラジオストクからモスクワへと、シベリア急行で雪雪雪、樹林樹林樹林のツンドラを西へ向かうメルカトルと美袋。その列車の緊急停車中、車内のコンパートメントで作家が殺され・・・。

 「翼ある闇」以来、久しぶりの麻耶作品。
 あの本では、急に登場、急に退場で奇天烈な服装しか印象に残らなかったメルカトルだが、本書ではその悪魔性がよく解ってなかなかに楽しかった。

 実はそんなことよりも、「水難」に登場する行方不明の中学生の名前。
 闘うトレンディ・ドラマ「鳥人戦隊ジェットマン」のホワイトスワンこと鹿鳴館香織からとったのだろうか。気になる。

 ↑Wikipediaを読むと、これは確信犯ですな。
 さすが後輩。一度一緒に酒を飲んでみたい。

(2015/10/5改訂)

C「やり直し英語」基礎講座
守誠講談社文庫語学薀蓄
230頁466円★★★

 その必要性と苦手意識から、ぽろぽろと英語関連本を買ってしまうのだが、こうやって読了できるものは、やはり勉強本というよりはエッセイだ。
 なので本書を読んでTOEICに臨んでも、何等得点アップには結びつかないだろう。
 しかし薀蓄本を読む感覚で、たまにこういった本を読むのも面白い。

 一番長い単語として紹介されている肺塵症。英語のつづりは

pneumonoultramicroscopicsilicovolcanoconiosis


 あれっ、妙に見覚えがあると思ったら、昔この著者の別の本を読んでいたことが判った…。

(2015/10/5改訂)

D慟哭
貫井徳郎創元推理文庫警察/犯罪
411頁720円★★★

 警視庁捜査一課に課長として赴任してきた佐伯は、連続幼女誘拐殺人事件の陣頭指揮をとるが、捜査本部内には若いキャリア組のエリートである彼に対する不満がくすぶっており、捜査は難航する。一方娘を殺された松本は、虚無感を埋めるために新興宗教に救いを求めるが、徐々に黒魔術の深みに嵌って行く。二人が交錯するのは何時か。そして幼女誘拐殺害事件の解決は・・・。

 “書き振りは≪練達≫、読み終えてみれば≪仰天≫”という売り言葉に従って、買うには買ったものの、いかにも暗そうな題名に幼女殺害とくれば、どうにも読みだす気力がおきずに長らく放置してあった。  今回漸く読んでみたが、たしかに≪練達≫で≪仰天≫した。しっかりしてやられてしまった。主に佐伯と松本の視点の切り替えで話は進んでいき、どうオチをつけるのかなと思っていたが、そうきましたか。ミスリードも巧い。

 これがデビュー作だとは信じられないが、たしか海千山千の前線の部下を使いこなさないといけない警視庁捜査一課の課長ポストには、警視庁の管理職ではめずらしく、たたき上げの人物が配置されると聞いたことがある。

(2015/10/5改訂)

E南伊予・西土佐の道 街道をゆく14
司馬遼太郎朝日文庫歴史/紀行
192頁420円★★★

 「古事記」で四国に充てられた人名から、伊予の地には愛媛県の名が与えられたが、世界中を見渡しても、行政区の名称が“いい女”なんて地は他にないだろう、と語る著者の感性はさすが。そんなこと、考えたこともなかった。

 てっきり秋山兄弟正岡子規の話が多いのだろうと思っていたが、松山市は早々に離れて、大洲、卯之町、宇和島のほうへ南下していく。その辺りの地は、江戸期小さな藩で殿様がころころ変わったことにまつわって、いわゆる歴史のこぼれ話が何点か紹介される。印象に残ったのは「花神」より、シーボルトの娘イネの話と、余談として出てくるモンゴルのグフホトという言葉。意味は青い旗だという。
 まさか、ラルさんの愛機として有名なあのMSは、モンゴル語から名付けられた??

 この地でも土地開発の流れが沸いていて、市と開発反対の有志の間でなんやかやという話が出てくる。著者はえらく遠まわしに味気ない開発には賛成できないことを表明しているが、この旅自体、すでに25年以上前のこと。今ではどうなっていることやら・・・。

(2015/10/5改訂)

F新選組全史 幕末・京都編/戊辰・箱館編
中村彰彦角川文庫歴史薀蓄
346頁/322頁590円/571円★★★★★

 新選組関係のこぼれ話を集めた本としては、子母沢寛の三部作が有名で、小説や脚本を書くソースとして必須である。同書は著者がその当時生き残っていた関係者に聞いて回ったという体裁をとっているけれど、どうやらかなりの部分が子母沢寛の創作らしい。
 新選組三部作がとても魅力的なのは論を待たないが、新選組研究の上ではトラップとなっているらしい。例えば、西本願寺屯所以降の新選組を記録した、西村兼文の同時代資料「新組始末記」の書名を気に入った子母沢が、彼の三部作の一冊に「撰」を「選」に変えただけで、「新組始末記」と名づけたのはよいとしても、同書で先行資料として「新撰組始末記」の名を挙げるべきところを、勝手に別の名前にしてしまったことがあるらしい。
 ところが、子母沢の「新選組始末記」が有名になりすぎてしまったために、西村兼文の一級資料のほうが別名で呼ばれてしまったり、出展がどちらなのか訳わからなくなったりしているとのこと。

 とかなんとか、そんなことまで考察しながら、微に入り細を穿った新選組解説本の決定版だ。
 あえて文句をつけるならば、何がどこに載っていたのかをあとから探し難いことと、図版や地図がまるでないことか。

(2015/10/5改訂)

G十一番目の志士 上下
司馬遼太郎文春文庫時代
382頁/353頁543円/514円★★★

 長州鋳銭司村の天堂晋助は、に行く途中に高杉晋作と出会い、彼の強烈な個性に心を惹かれる。宮本武蔵、伊織以降綿々と伝えられてきたニ天一流の達人である晋助は、剣の腕を買われて、風雲急を告げる幕末の裏舞台で人を斬り続けることになるが・・・。

 主人公が創作の人物。
 そう、「妖怪」「風の武士」などと同じく、一見エンターテインメント活劇のようでありながら、主人公は時代の状況に流されて右往左往するだけで爽快感などまるでなく、重要な脇役が出てきたかと思っても平気でフェードアウト。また、物語の起承転結などは、時代のうねりの中では二の次、三の次だ。
 非常に腰の据わりが悪くてとっても気持ちが悪い。

 それでも実在人物の造詣は魅力的で、高杉以外にも土方歳三をはじめ、奇兵隊総督だというのに意外と知名度の低い赤根武人などがいい感じ。

(2015/10/5改訂)

H津山三十人殺し 日本犯罪史上空前の惨劇
筑波昭新潮OH!文庫歴史/犯罪薀蓄
348頁733円★★★

 映画「八つ墓村」のショッキングな導入部は有名だが、そのモデルとなった実際の事件、昭和十三年五月に岡山県の僻村で起きた都井睦雄事件、もしくは津山事件と呼ばれる前代未聞の大量殺人を取材した本。松本清張「闇に駆ける猟銃」という題名で、その事件を取材した本を書いているらしい。
 わたしが都井睦雄の名を初めて知ったのは、島田荘司「龍臥亭事件」であった。あれは現実の都井睦男事件を物語上の殺人事件と絡ませるという大胆な作品で、確か100頁ほども都井睦男の生い立ちと事件の経過に割いていたが、本書では350頁に渡って考察されているということだ。
 まだほとんどが藁葺きだった事件当時の村の全景や、都井家の写真。そして何軒もの被害者宅の間取りと被害者の倒れた位置までが載っている。

 前半が事件調書をもとに、周囲の関係者の証言などから構成され、後半は都井睦男の生い立ちが、年齢に準じて章割りされている。
 特に睦雄の姉や、彼の性癖に大きな影響を与えた内山などが、かなり突っ込まれて事情聴取されていことが伺える。

 過度な愛情での囲い込みは、時に他者の痛みを想像することのできない、とんでもない自意識肥大のモンスターを生み出すことがあるのだな。

(2015/10/5改訂)

I日本語文法の謎を解く 「ある」日本語と「する」英語
金谷武洋ちくま新書語学薀蓄
187頁680円★★★★★

 カナダの大学で日本語を教えている著者が書いた比較言語論。
 内容をざっくりと言えば、日本語は自然/場所が主体で、それゆえに話者が前にでてこず主語が不要な「存在文」が主となり、英語は行為者が主体となるために主語が必須、「行為文」が主となる。
 新幹線の窓からの風景を指して、富士山が見えるのが日本語で、I see Mt.Fuji.が英語の表現となるわけだ。
 これは簡単な例だが、他にも細かく文法を解析しながらの例証がてんこ盛りで、少なくともわたしのような素人からは、比較文法の決定版に思える。
 目から鱗が落ちまくりのエキサイティングな本だ。

 英語能力が求められる昨今だが、敵だけでなく、己を知らなければ百戦危ういのだから、日本語の構造、そしてそれを使うことによって培われてきた日本人の感性を理解することは、国際人となるためには重要である。

(2015/10/5改訂)

J覆面の佳人 ―或いは「女妖」― (1929)
江戸川乱歩/横溝正史春陽文庫犯罪浪漫
509頁714円★★

 パリの貧民窟で女が殺された。鬼検事の蛭田は現場から姿を消した成瀬子爵を執拗に追いかけ、またオペラ座の名女優綾小路浪子もこの事件を追う。登場人物が入り乱れる中、犠牲者の数は次々に増えていくが、一体犯人の目的は・・・。

 乱歩と正史の幻の合作というのが本書の最大の売りだが、そのつまらなさは特筆に価する驚きと言える。
 舞台がフランスなのになぜか登場人物がすべて日本人というのは少々座りが悪いが、時代が時代だけに、大東亜共栄圏どころか、石原莞爾が唱えるところの世界最終戦で日本が勝利して、全世界が日本のものになったという裏設定だったりして・・・。
 と、自分でおかしなことを書いてしまった。
 昭和4年ならまだ軍部の圧力は然程なかったと思うのだが、次の年には濱口雄幸銃撃事件もあった訳で、一般的な空気として、西洋列強に対して亜細亜が力をつけなければいけない、日本はそのリーダーたるべしという気分が民間でもあったという理解が正解に近いかな。【注1】

   “幻の発掘”というだけあって、当時の執筆経緯や風景にも解説頁が割かれている。
 合作とは言いながら、実際のところは乱歩のネーム・バリューを借りただけで、すべてが横溝正史の作らしい。
 彼が何度か乱歩の代筆をしたのは有名な話で、TVでも紹介された「あ・てる・ている・ふぃるむ」はこの前年の作品らしい。ちなみにこの時系列部分の確認は、ネット検索でこちらのブログでさせて頂いた。あきらかに地元のご近所さんだ…。

 本書も一応海外作品の翻案らしいが、そう言えば横溝正史が「吸血鬼ドラキュラ」から翻案した「髑髏検校」もかなりつまらなかったことを思い出した。
 とりあえず、本書は“読んだ”という事実に意義ありだ。
 上記の「あ・てる・ている・ふぃるむ」は未読で興味はあるのだが、戦前の作品で面白いものはあるのかな? 「真珠郎」も個人的にはアウトだったが。

【注1】この気分からの日本の行動というのは、特亜反日日本人が言う処のアジア植民地化とは大きく違うのだが、ちょっと調べれば判ることなので、自分で勉強してください。
(2015/10/5改訂)

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