2005年 5月
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@逆説の日本史5 中世動乱編 源氏勝利の奇跡の謎
井沢元彦小学館文庫歴史薀蓄
382頁600★★★★

 再読。このサイトを始めて以来の、感想ダブリだ。
 ちょうど大河ドラマも演ってる――とんと見てないが――ことだし、つい再読してしまった。癖があるとは言え、やはり面白い。今でも大河ドラマ「義経」を見続けている奇特な人たちには、ぜひ本書でこの時代の状況を俯瞰的に見て、源平合戦から初代幕府政権へ繋がる流れを楽しんで欲しい。
 義経というとんでもない野郎が――本人の性格はわからないが――、いかに時代をかき回したかが解るだけでも面白いのではないだろうか。
 たしかに、あれよあれよの間に義経が平家を滅ぼさなかったら、東の源氏と西の平家という二極構造、いや、平家が潰れなければ奥州藤原氏の勢力もしっかり残っただろうから、ある程度の期間はまさに日本三国志時代が続いのではないだろうか。

 履歴をあらためて見てみれば、源頼朝という男が、いかに稀代の幸運児だったことも判って面白い【注1】が、後白河上皇がようやく退場して征夷大将軍となった頼朝も、いやにあっさりと(見方によれば怪しく)退場し、さらに頼家実朝と、輪をかけて怪しくこの世を去る。そういった臭みたっぷりの中、関東武士政権は執権北条氏を中心として、つつがなく継続するという、日本の歴史ならではの不可思議さがとても興味深い。

 おそらく本シリーズの魅力は、いかに日本の歴史が、そして日本人の感性が、世界の常識から見て不可思議かということに気付かせてくれることだろう。こういった面白さは、絶対に教科書では教えてくれない。

(2015/12/3改訂)

A逆説の日本史6 中世神風編 鎌倉仏教と元寇の謎
井沢元彦小学館文庫歴史薀蓄
504頁657円★★★★

 時代区分で言えば鎌倉時代の中期以降、つまり二度の元寇から御家人たちの不満、幕府弱体化から滅亡へという箇所を扱っている。
 これはこれですごく面白いのだが、本書のキモは、前半分230頁余りを使った、平安仏教から鎌倉仏教への変遷であろう。これが滅法解りやすいし詳しい。
 仏教界からみてどうなのかは知らないが、素人が一般教養として知るには十二分だ。

 「世界の[宗教と戦争]講座」の仏教パートより詳しいのではないかな。

(2015/12/3改訂)

Bロボット21世紀
瀬名秀明文春新書ロボット薀蓄
312頁860円★★★

 著者はいつの間にか科学解説家の道を歩みだしていた。“ロボット・テクノロジーの最前線”を紹介している(2000年現在)。
 もちろんP4ASIMOへの興味からの技術的な部分だけでなく、どのように産業(ビジネス)と結び付けていくのかについても、しっかり取材されている。ロボットがさらに日常生活に入ってくる可能性が、今後十分にあることを実感させてくれる。

 今の日本は韓国台湾中国といったアジア勢の猛追を受けていて、その中で製造業立国として生き残ろうという意識が大きく、そういった面からもロボット産業は21世紀の日本を支える重要な技術である。
 一方で日本はハードウェアの供給元として、ソフトウェアやシステムはアメリカインドという分業体制になってしまう可能性がある。これは利益率から言うととんでもなく損なトレードらしい。うーむ、パソコンのOSで誰が儲けているのかを考えると、危機感はたっぷりだ。

 ところで、ホンダのアシモは、間違いなくアイザック・アシモフからきてるのだと確信していたが、開発者自身によって完全に否定されている。
 似ているのは偶然で、ネーミング時の候補にも挙がっていなかったというが、いーやわたしは信じない。名前を決定するプロセスに関わる多くの社員の中には、ロボット製造に関わりながらアシモフの名前を知らないもの知らずもいただろうが、多くの社員は連想した筈だ。おそらく会社として、名前の使用権に関する手続きをしていないがための苦しい言い訳に違いない。

(2015/12/3改訂)

C激論 歴史の嘘と真実
井沢元彦・他祥伝社黄金文庫歴史対談
195頁505円★★★

 陵墓参考地足利義満ネタといった著者の得意分野を中心に、10人の識者(桂三枝は識者か?)と対談している。
 なかなか面白い内容ではあるが、いたって和やかな対談集で、著者の毒舌に慣れた読者なら当然期待する激論には程遠い。

 まあ井沢元彦の本として出版される訳だから、こんなものか。

(2015/12/3改訂)

D日本地図から歴史を読む方法2
武光誠KAWADE夢新書歴史薀蓄
208頁667円★★★

 図版はそれなりに多くて、そのことは評価ポイントだが、表紙に謳っているような“意外な日本史が見えてくる”というほどのことはない。

 伊能忠敬9回の測量ルートがすべて載っているのはすごい。

(2015/12/3改訂)

E涅槃の王1 幻獣変化
夢枕獏祥伝社文庫伝奇冒険
410頁667円★★★★

 異形のものが棲まうナ・オムの地にあるという巨大な雪冠樹。その巨木に生るという伝説の涅槃の果実を求めて、シッダールタはナ・オムの地へ向かう。彼と同行するのは、謎のバラモンや胡散臭げな商人を始め、いずれも一癖ありそうな面々。だが彼らが入り込んだナ・オムは、想像を絶する危険な地だった・・・。

 新書版はとっくの昔に手放したというのに、わざわざ文庫版を買って再読してしまった。
 当時、面白いとは思ったものの、E・R・バローズターザンペルシダーをスタンダードとしていたわたしは、同じ異郷冒険譚というカテゴリーながら、まるで趣の異なる本書のまるで爽快感のない黒々としたものに、少々辟易したものだ。

 ま、二十数年ぶりの再読でも基本的に感想は変わらないが、これが著者の長編デビュー作であることを考えると、ポテンシャルの高さに改めて驚かされる。

(2015/12/3改訂)

FR.P.G.
宮部みゆき集英社文庫刑事
294頁476円★★★

 書き下ろしらしいが、なんとも後味の悪い作品。
 著者の作品は多かれ少なかれ後味は悪い傾向があるが、本書は設定が小粒なだけに生々しいというか…。

 著者には、スティーブン・キング似のオマージュ作品をもっと書いてもらいたいものだ。
 それなら物悲しくても許すから。

(2015/12/3改訂)

G逆説の日本史7 中世王権編 太平記と南北朝の謎
井沢元彦小学館文庫歴史薀蓄
425頁600円★★★★

 軍事能力に長けた兄と政治力に長けた弟。
 足利尊氏足利直義はまさに車の両輪として、室町時代開始の礎を作ったが、後に確執を生じて悲劇的な結末へと向かった。
 最早目も当てられない南朝とのドロドロ。一度や二度読んだだけでは、その流れを掴むことすら難しい。

 戦国時代幕末と較べるともちろんだが、鎌倉時代と較べてもマイナーな印象のある室町時代
 物語になりにくい面があるのだろうが、その時代をこれだけ面白い読み物にしているのだから、いろいろと批判も多い著者だが、やはりさすがである。

 その後の三代足利義満と六代足利義教の時代も非常に面白いものだが、これはそれぞれ同じ著者の「天皇になりたかった将軍」明石散人「二人の天魔王「信長」の真実」でも詳しい。

 果たして一休宗純足利義満の血は本当に流れているのだろうか?

(2015/12/3改訂)

Hその日の吉良上野介
池宮彰一郎角川文庫時代
271頁514円★★★

(1)千里の馬
 赤穂藩士千馬三郎兵衛は主の浅野内匠頭となんとも反りが合わなかったが、ついに三月十五日をもって藩籍を抜けることとなった。しかしその次の日に早馬がもたらしたのは、十四日の刃傷事件。三郎兵衛は事件当時は未だ臣であったと登城し、“その日”に参加することになる・・・。

(2)剣士と槍仕
 堀部安兵衛の好意で藩籍を得た、槍の遣い手高田郡兵衛。二人は刀と槍の巧者として刎頚の友と言われたが、“その日”の直前、郡兵衛は密約を抜け・・・。

(3)その日の吉良上野介
 吉良上野介は何度考えても判らなかった。あの日浅野は「この間の遺恨、覚えたか」と切りかかってきた。遺恨とはなんなのか。自分に悪意は全くなかった。上野介は中小姓の弥七郎に当時を振り返って語るうちに、ふと思い当たることが・・・。

(4)十三日の大石内蔵助
 討ち入りの期日が迫り、盟約を結んだ同士の中からも逃げ出す者が何人も出てきた。討ち入り前日、内蔵助は懇意の者の好意で私娼宿に足を運び、俺は好色者よと自重しながら、この二年を振り返る。

(5)下郎奔る
 内蔵助の顔を見たことがあるという理由で、新兵衛は吉良家に仮に渡中間として身を置いた。そして討ち入り。新兵衛はこの危急を上杉家へ伝えるため走りに走るが・・・。

 赤穂浪士を題材とした短編集。なんとも味のある作品が揃っている。
 新選組モノもそうだが群像劇に適した素材なので、通史的な長編より秘話的な短編が面白い。

(2015/12/3改訂)

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