2005年 7月
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@ジェラルドのゲーム
 Gerald's Game
S・キング文春文庫
507頁7050円★★

 倦怠期を迎えた夫婦ジェシーとジェラルドは、ここ最近は拘束プレイのセックスで多少の刺激を得ていた。ところが別荘でのそのプレイの最中、事に及ぶ前に夫のジェラルドがポックリと死んでしまう。人里はなれて孤立した別荘の寝室に両手を手錠で万歳のまま固定され、素っ裸でベッドに横たわるジェシーは、この極限状態から逃れることができるか・・・。

 「ミザリー」のパワーアップ版といった設定。しかし、さすがにここまで身動きがとれないと、描写はジェシーの内面に向かわざるをえないようだ。彼女の少女時代のトラウマに基づく記憶の封印が徐々に剥がれていくが、意外性はないし、はっきり言ってかなり読むのに苦労した。

 奇怪なジューバートのネタに絞って、三分の一くらいの分量の中篇にすれば、そこそこ面白かったと思うが、これではとても「ドロレス・クレイボーン」を買う気にはならない。

(2016/6/7改訂)

Aアカシック ファイル 日本の「謎」を解く!
明石散人講談社文庫雑学薀蓄
330頁619円★★★

 歴史雑学かと思ったら、現代時事問題まであっちこっちにやたらと博識にネタを集めた文句集?
 これだけ文句を言えたら楽しいだろう。

 だが秀吉の遺言状を利家が書いたというのは、同じ理由で秀吉自身が書いたとしても何等問題ないし、これだけ自信満々に、ブッシュの息子が大統領になることなどない!と言っておったりもするから、内容には然程信頼性があるとはいえない。  ただし表面に出てきた報道のウラを考えてみるというのは、非常に重要なことだ。
 と、あっさり書いていたが、如何に日本のマスコミ報道が偏向に満ちたものであるのかを知った今では、重要度が高いどころか必須の作業である。

(2016/6/7改訂)

Bビゴーが見た日本人 風刺画に描かれた明治
清水勲講談社学術文庫歴史薀蓄
241頁900円★★★

 恐るべき勢いで西洋化への道を邁進し、東洋の一小国の名を世界に知らしめる一方で、西洋諸国から猿真似を馬鹿にされていた明治日本。
 良くも悪くも目的意識を持ったそのエネルギーはすごかったその時代に、17年も日本に滞在し、日本人の風刺画を書き続けたフランス人ビゴー。その風刺画百点を紹介した本だ。

 外国人の目線で見た日本というのは、いつの時代でも興味深い。
 たしかに教科書で見た画もあるような・・・。

(2016/6/7改訂)

C日本の神々と仏 信仰の起源と系譜をたどる宗教民俗学
岩井宏實プレイブックス インテリジェンス シリーズ宗教/民俗薀蓄
187頁667円★★★

 このシリーズは、「シルクロード 歴史地図の歩き方」もそうだったが、なにかに興味を持った初心者が、そのテーマの中で初めて手に取るのにちょうどいい内容だと思う。
 というわけで本書も、神道や仏教について、井沢元彦その他からディープな情報を取り込んでいると、かなり物足りなく感じるだろう。

 と言いながら、なにやかやで学ぶべきところはたくさんあるというものだ。
 おー、焼香で線香を三本立てるのは日蓮宗なのか!

(2016/6/7改訂)

Dサム・ホーソーンの事件簿V
 Diagnosis:Impossible 3
 Further Problems of Dr.Sam Hawthorne
E・D・ホック創元推理文庫推理
396頁860円★★★

 世界一不可能殺人事件が発生する田舎町ノースモントで、それを解決するサム・ホーソーン医師の第三事件簿。

「ハンティング・ロッジの謎」…1930年秋、サムはノースモントに彼を訪れた両親とともに、鹿狩り小屋でホストの殴殺事件に遭遇し、

「干し草に埋もれた死体の謎」…1931年7月、家畜を狙う熊を見張っていたレンズ保安官の注視の前で、忽然と刺殺体が現れた事件に呼び出され、

「サンタの燈台の謎」…同じ年の12月、休暇をとって東海岸を沿って旅していた時に、途中の燈台で刺殺事件に遭遇し、

「墓地のピクニックの謎」…1932年春、ピルグリム記念病院内に診療所を移した彼は、隣接する墓地公園で若妻の不思議な行動と事故死に遭い、

「防音を施した親子室の謎」…その暫く後の6月末、ノースモントに初めてできたトーキー映画館の柿落としでは、彼の隣席の町長が狙撃され、

「危険な爆竹の謎」…さらにその直後の独立記念日、彼の眼前で自動車修理工場の兄弟の一人が爆死し、

「描きかけの水彩画の謎」…その年の初秋に起こった絞殺事件では、自らの立場に疑問を抱き、

「密封された酒びんの謎」…1年経った1933年の12月、禁酒法が撤廃された日にノースモント町長が毒殺され、

「消えた空中ブランコ乗り」…その数ヶ月前の夏、ノースモントにやってきたサーカスの上演中に、5人の空中ブランコ乗りの1人が忽然と消えた事件では、その後ピエロの格好の刺殺体として発見し、

「真っ暗になった通気熟成所の謎」…1934年の9月、煙草会社の停電中の熟成所の中では、彼のすぐ前では主人がのどを掻っ切られ、

「雪に閉ざされた山小屋の謎」…彼がメルセデスの500Kスペシャル・ロードスターを手に入れた1935年1月、看護婦のエイプリルを乗せて向かったメイン州の雪の山小屋でも刺殺体を発見し、

「窓のない避雷室の謎」…その年の4月には、長年彼の下で看護婦だったエイプリルの結婚のため、新しい看護婦として雇ったメイは殴殺事件の容疑者となった。

 あいかわらずすごいぞ、サム。
 このサム・ホーソーンもの12編と、奇妙な動機が面白い8頁のミニ短編「ナイルの猫」を収めている。

(2016/6/7改訂)

E狂骨の夢
京極夏彦講談社文庫推理
969頁933円★★★★

 作家の関口は同業の宇多川から、彼の妻朱美についての奇妙な体験について相談を受けた。一方その朱美は、牧師の白岡と元精神科医の降旗に、生首を持つ血塗れの神主や、何度殺しても甦ってその都度首を斬り直す自分といった、驚くべき“記憶”を語って聞かせていた。よもや現実の出来事とは思われなかったが、やがて宇多川が殺され、朱美が夫殺しの犯人として捕まってしまう。
 謎の集団自殺、あるいは波間を漂う黄金の髑髏、そしてその髑髏は日が経つに連れ、徐々に肉がついてくる…。
 これ等近辺で発生している奇妙な事件は、朱美の幻想と関係があるのか。彼女の幻想の正体は・・・。

 これも新書版からの再読。なんでも精神分析関連の内容が改訂されているらしいが、特に比較はしてないので判らない。あいかわらず、SFで言うところのワイドスクリーン・バロックである。豊富なネタ、薀蓄に驚くばかりだ。

 かなりマンガチックなキャラ立てやトンデモなネタ作りから、初読時にはやや引いた位置から読んでいたのが、本書からのめり込んだと思う。シリーズの中ではさほど話題にならない作品だが、個人的にはシリーズ中上位にくる作品だ。京極堂の神のごとき分析力による断定(ご都合主義ともいう)に対する慣れもあるのだろうが、キーになるトリックがアルセーヌ・ルパンのある長編を思い出させることや、若い頃、夢枕獏の「魔獣狩」で読んで懐かしい真言立川流が出てきたこともあるかもしれない。

 真言立川流は邪教のセックス宗教というイメージが強いが、同じパートナーと来る日も来る日もまぐわってというのは、まさに修行かもしれない。

 あまりにもめくるめく感に惑わされて気にならないが、考えてみると、えらくやるせない事件である。まぁこのシリーズは全部そうか。

(2016/6/7改訂)

F餓狼伝]/]T/]U
夢枕獏双葉文庫格闘
376頁/342頁/360頁648円/600円/648円★★★★

 ついに梶原を倒した丹波文七は、控え室で静かに姫川勉との闘いの時を待っていた。だがそこにぞろりと入ってきた男は、後ろ手にドアの施錠ボタンを押した・・・。(第10巻)

 松尾象山、グレート巽、そして姫川勉は、デンバーで開催される世界NHBトーナメントに招待客として参加した。ブラジリアン柔術のホセ・ラモス・ガルシーアのアメリカメジャー・デビューの時だ。また主催者のカスティリオーネは、どうやら前夜祭で日本からの客に何かを仕掛けてくるらしい。一方表舞台から姿を消した丹波は、仕込み杖の土方と再会していた・・・。(第11巻)

 日本の古武道関係者に“スクネ流”について尋ねてまわっていたブラジル人は、ルタ・リブレの使い手だった。わざと流した情報に乗って姿を現したその男、マカコを松尾象山と姫川勉が追い詰める。一方、丹波はあの土方を苦もなくひねった飲み屋の親父が、姫川勉の関係者であるらしいことをつかむ。さらに回想で、若き巽真がブラジルで力王山に出会い、さらには松雄象山とのストリート・ファイトをアシストしたという衝撃の過去が・・・。(第12巻)

 久しぶりに読むと、やっぱり熱い。しかも3冊読むのに1日かからんときたもんだ。  本書はまぁ勢いにまかせて一気に読むのが一番だろう。  いつの日か完結した後で本書に出逢って、本シリーズを最初から最後まで一気に読める人は幸せだろう。
 惜しむらくは、ブラジリアン柔術やヴァーリ・トゥードのスタイルが最早めずらしくなくなっているので、ホセ・ラモスの華々しさも少々引き算されてしまうことか。

 典型的な夢枕キャラの装いながらやや影の薄かった姫川勉も、これから渦中の人になっていくようで楽しみだが、一方で“巻物争奪戦”の様相を呈してきたのは心配だ。物語りを面白くするには定番の構成だが、キマイラ&闇狩師シリーズから怪しげなものを除いたのがこのシリーズだからなぁ。
 “秘伝”に如何なる凄まじい内容が書かれていようと、人体の生理、構造を超えるものではないのだから・・・。

(2016/6/7改訂)

Gとむらい機関車
大阪圭吉創元推理文庫推理
329頁660円★★★★

 「デパートの絞殺吏」「カンカン虫殺人事件」「白鮫号の殺人事件」「気狂い機関車」「石塀幽霊」「あやつり裁判」の6編には、シリーズ探偵青山喬介が登場。それらに加えて、ノンシリーズの「とむらい機関車」「雪解」「坑鬼」、さらに著者のエッセイ10編を収めた短編集。

 事件の舞台設定や単語の旧さが相まって、レトロ感溢れた雰囲気を醸し出している。一方で犯行の手段や動機は、まるで時代を感じさせない。
 ここが大阪圭吉のすごいところだ。
 犯行の実現性ということでは無理々々すぎるが、なんにせよ魅力的な作品が多い。

 著者が徴兵されて戦死してしまったのが大変悔やまれる。

 彼が復員できて、戦後横溝正史高木彬光等と並んで作品を書くことができていれば、一体どれほどの名作を生み出せたことだろうか。

(2016/6/8改訂)

H司馬遼太郎全講演[2] 1975−1984
司馬遼太郎朝日文庫講演
392頁660円★★★

 今日の日本を形作ってきた、様々なものについての零れ話が楽しい講演集。全講演と銘打っているから、9年間で18回の講演を行ったのかな?

 日本の仏教についてや現代日本文の成り立ちも面白いし、ロシア史の概略や日本の医学史についての話も興味深い。
 もちろんそれらのネタは「空界の風景」「坂の上の雲」「菜の花の沖」「胡蝶の夢」などの作品を書くにあたって調べたことだから、それらの著作や「街道をゆく」のシリーズで語られる話と重複する内容も多いが、それでも読んでおく価値あり。

 ただし当時は気がつかなかったが、今考えると見事なくらい支那、朝鮮に対するコメントが欠落している。たまに触れる時は、途轍もなく気を使った物言いが目立つ。
 北京で(第二次)天安門事件が起こったのが1989年。
 韓国が国家破綻危機でIMFの管理を受けたのが1997年。
 どちらも国の運営が杜撰だった自業自得な問題で、普通に考えれば、民衆の反動が始まって政変が起こるのではないかと思いない?
 ところがどちらの国も反日教育を進める事で、まんまと国民の怒りの矛先を変えたのである。

 この反日教育の効果が顕著に現れ出したのは21世紀に入ってからだと思うが、著者が亡くなったのは1996年。
 彼が21世紀まで生きていたら、何を言ってくれたか(あるいは言わなかったか)興味がある。

(2016/6/9改訂)

I武道の科学 時代を超えた「強さ」の秘密
高橋華王講談社BLUE BACKS武道薀蓄
197頁820円★★★

 ではないが、“一日殺し”や“三年殺し”などといった、「おまえはもう死んでいる!」技がマンガや時代小説などではちょくちょく登場する。まぁ馬鹿らしいネタだが、唾液腺や肝臓のような内分泌を司る部位にうまいタイミングで衝撃を与えてその機能を不全にすれば、あり得る技ではあるという。
 もちろん、動く標的に狙った効果を与えるような当て身は途轍もなく難しいから、実際にそのような効果を狙う場合には、薬物を使うことになる。

 他にも殺法の紹介で、眼窩に指を突っ込んでネジって頭蓋骨の前頭部を破壊するだのといった、めちゃめちゃ恐ろしい技がたんたんと紹介されているのがすごい。

 このあたりの面白いところは後半に集まっているが、前半は理論武装というところか、昔懐かしい力学の式を使った説明が長い。内容はそう難しくはないけれど結構疲れた。
 くずしの基本は、両足で作った地面との設置面の外側に重心をどうやって移動させるか。
 打撃技は直線系より回転系のほうが威力をつけやすい。

 なかなか一読の価値あり。

(2016/6/9改訂)

J偽史冒険世界
長山靖生ちくま文庫歴史薀蓄
280頁700円★★★

 義経=ジンギスカン説日本ユダヤ同祖説シオンの議定書神代文字竹内文書etc.etc.
 怪しげで愉快なネタについての背景が満載の本。

 「トンデモ本の世界」のように笑わせる方向で書かれた本ではないから、多少読み辛かったりもするが、偽書にも歴史ありというのが面白い。
 偽書が書かれるための歴史的背景もあれば、場合によっては、偽書が表の歴史に影響を与えてしまう一面もあるというのが、面白いだけでなく怖くもある。

 これもまた、間違いなく日本史の一面である。  登場するキーパーソンもお初の名前がほとんどなので、なかなか頭に定着させることができないが、頭の片隅に置いておきたい。

(2016/6/9改訂)

Kゴブリン娘と魔法の杖  魔法の国ザンス]X
 The Color of Her Panties
P・アンソニイハヤカワ文庫ファンタジー
573頁940円★★★

 父親が他界し、女性初の首長となるためにハンフリーの城へ向かうゴブリン族のグウェニィ。彼女に同行するのは、ザンスの歴史を変えると予言されたセントールのチェと、<二つの月の世界>からザンスに紛れ込んだエルフのジェニーと彼女の相棒猫のサミー。
 一方人魚のメラ、人喰い女鬼のオクラ、そして彼女たちに助けられたアイダの三人もまた、それぞれの希望に対する助言を求めて、ハンフリーの城を目指す。果たしてグウェンドリンやメラたち一行の運命は…。

 ほとんど何も言うことはない。
 解説で谷山浩子が書いているように、初期の頃と最近の第3世代の物語では、趣がまるで違うので注意が必要だ。“幾多の障害”もぶっちゃけて言えば箱庭世界の出来レースな訳で、久しぶりに読むといつも最初はつらい。
 しかし読了するころにはそれなりに面白く感じてしまうのが不思議。

 ところで、原題がひどい。
 「彼女のパンティーの色」って…。

 「ゴブリン娘と魔法の杖」というのもなんともしょぼいが、少なくともゴブリンの首長争いがメインではある。

(2016/6/9改訂)

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