2005年12月
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@六人の超音波科学者 (2001)
森博嗣講談社文庫推理
406頁648円★★★

 愛知県の山中にある土井超音波研究所。そこで開かれるパーティーに瀬在丸紅子と小鳥遊練無が招待された。一方、愛知県警にはその研究所に至る唯一の橋の爆破予告が入っていたため、祖父江七夏たち県警の刑事たちがかけつけていたが、いたずらと考えていた彼女たちの前で実際に橋は崩れ落ち、土井超音波研究所は陸の孤島と化した。そして研究所では、6人の博士のうちの1人が自分の研究室内で死体で発見され、さらに首と手を切断された死体が・・・。

 とりあえずは陸の孤島パターン(その中には刑事が入っているが)での連続殺人。事件の真相も合理的で上手くできてると思うのだが、どうにもつまらんのはなんでだろ。というか、それはつまりいつにも増して、紅子と七夏のどろどろの鞘当てが多いからなのだが・・・。

 ちょっと質問ですが、森ファンはこういうのがお好きなんですか?
あーそーですか。

   鬱陶しいのぉー。
 練無絡みで、本編に関係のないエピソードの断片(そもそも場違いな彼が、研究所に招待された理由が含まれいるらしい)が示されるが、これはわたしの読んでいない(とりあえず読む気のない)短編集に何らかのものがあるのだろう。

(2014/5/29改訂)

A忍法創世記 (1969〜1970)
山田風太郎小学館文庫時代伝奇
523頁695円★★★

 朝廷が南北朝に未だ分かれていた足利義満の時代、奈良は月ヶ瀬の地で奇妙な勝負が始まった。長年続いた大和柳生伊賀服部が和平する手段として、柳生家は適齢期の男三人を、服部家は女三人を出し、1対1の交合勝負で買った側へ婿/嫁入りするというものだ。それぞれの勝負がつき、柳生に二組、服部に一組の夫婦が誕生したが、南北朝の争いに柳生、伊賀を取り込もうと企む輩が現れ、また柳生には中条兵庫頭が剣術を、服部には世阿弥が連れてきた修験者たちが忍術を教え・・・。

 初っ端からまぐわい合戦だ。さすが風太郎。
 しかしその勝負などはまさしくプロローグにすぎない訳で、その後は三種の神器を巡って敵味方入り乱れた争奪戦である。山田風太郎にしか出せない、血なまぐさい筈なのに妙にのどかな味とシチュエーションの妙、そして寂寥感を楽しむべし。

 三種の神器についての中条兵庫頭と柳生又十郎の会話などは絶品だ。

(2014/5/29改訂)

Bシルクロード 砂漠を越えた冒険者たち
 Marco Polo et la Route de la Soie
J−P・ドレージュ創元社歴史薀蓄
195頁1400円★★★★

 原題にマルコ・ポーロの名がが挙がっているように、彼の足跡に関する記述が多いのが特徴だが、マルコ・ポーロ以外の西洋の旅行者も数人紹介されるのが新鮮だ。

 20世紀初頭、多くの西洋人+大谷探検隊新疆から遺物を持ち帰った。中国人はスタインヘディンを始めとする彼らを泥棒と言って憚らないが、本書の中で紹介されるアメリカ人探検家、ラングドン・ウォーナーが書いているように、当時の無教養な現地人から貴重な人類の遺物を守るという意味合いがあったこともまた確かだ。
 一方で、ルコックが持ち帰った壁画は、西洋人同士の戦争の中、ベルリン空襲で亡失してしまう。永遠に取り返しのつかないことになってしまった訳だ。

 大谷探検隊が持ち帰った貴重な文化財も散逸してしまっていることを考えると、なかなか是非の判断は難しいが、持ち帰らなかったほうが失った量は少なかったかもしれない。

(2014/5/29改訂)

C地底世界のターザン  地底世界シリーズ<4>
ターザンの世界ペルシダー  地底世界シリーズC
 Tarzan at The Earth's Core (1929〜1930)
E・R・バローズハヤカワ文庫
創元推理文庫
異境冒険
331頁/335頁340円/400円

 サリを遠く離れたコルサールの地下牢で、デヴィッド・イネスは蠢く爬虫類にまみれて囚われのままである。地上でペリーからのこの知らせを聞いたジェイスン・グリドリーは、資金を投入して飛行船を建造、探検隊を組織して、北極の大開口部からデヴィッドを救出するという一大作戦を勇躍実行させた。そしてその探検隊のリーダーとしてジェイスンがスカウトしたのは、あのジャングルの王者ターザンだった!

 現代兵器(第一次世界大戦当時)で武装した救出隊は、予定通りに着いたペルシダーの地でアクシデントに見舞われ、地上に降りたメンバーはちりぢりになる。その中でジェイスンとターザンの冒険が交互に描かれる構成だ。
 それぞれ活躍が半分になるのに加えて、ラブコメ担当はジェイスンと<ゾラムの赤い花>ジャナなので、せっかく登場のターザンの影が薄いのが残念。慌てることなく、淡々と生き残るための冒険をこなすターザンだが、多少はジェーンのことを考えたりしてほしかった。まるで言及がないというのは、ちょっとなんだ。
 ま、そもそもターザンシリーズにおいても、初期の作品を除いて、ジェーンはばったりと姿を消してしまうのだが・・・。

 本作にも、前作のもぐら人間コリピーズ同様、ホリブ族という残忍な爬虫人間種族が登場するが(読み直すまで忘れてた)、なんといっても印象的(これは覚えていた)なのはステゴサウルス。なにせ彼の最大の特徴である、背中に交互2列に並んだ骨板を広げて、巨体を滑空させるという大技炸裂である!

(2014/5/29改訂)

D平家(一)(二) (2003)
池宮彰一郎角川文庫歴史
357頁/356頁629円/629円★★

 全四巻中の前二冊。
 池宮作品は赤穂浪士物を始めとして、「高杉晋作」などには司馬遼太郎に迫る面白さを感じたのだが、なぜだか本書には面白さを感じることができなかった。司馬作品特有の俯瞰的な目線と一瞬本人を取材したのかと思わせるかのような人物評価(造形)を、「高杉晋作」には感じることができたのだが、残念ながら本書には普通の時代劇を見ているような感じしか受けなかった。【注1】

 この二冊では、後白河院の后である平磁子の死で平家の前途に影が射すところで終わっているが、後ろ二冊ではいよいよ木曽義仲、そして源頼朝/義経といった源氏との対決、そして平清盛の死が描かれているはずだから、多少面白くなることを期待したい。

 個人的には、本書で清盛の台詞として少し触れられるだけの彼の祖父平正盛、父平忠盛による、平家勃興時の対瀬戸内海海賊について興味惹かれるが・・・。

【注1】ここにはややこしい話があるようだが、ここでは触れない。
(2014/5/29改訂)

E三国志 曹操伝 (2005)
別冊宝島編集部 編宝島社文庫歴史薀蓄
191頁581円★★★

 いかにもKOEIのゲームっぽい表紙だが、それらゲームやあるいは「蒼天航路」等の劇画なんかで三国志を知った向きへの本だろう。
 しかし図表も多く、なかなかに曹操三国志の時代が解りやすく紹介されている。結構お勧めだ。

(2014/5/29改訂)

F妖怪と怨霊の日本史 (2002)
田中聡集英社新書歴史薀蓄
249頁700円★★★

 怨霊といえばどうしても井沢元彦の説を思い出してしまうが、こういった本が最近結構目につくのは、やはり彼や京極夏彦なんかの宣伝によるところも大きいのだろう。
 本書は彼らの本ほどにインパクトがあるわけではないが、古代から鎌倉時代あたりまでの(著者もあとがきで書いているように、“日本史”と謳うには不十分じゃが)神話、怨霊ネタが豊富に紹介されていて、まぁまぁ面白い。

(2014/5/29改訂)

G鉄鼠の檻 (1996)
京極夏彦講談社文庫推理
1341頁1295円★★★★

 山中で発見された蔵に眠っている古書を鑑定するために、妻と関口夫妻を連れて京極堂は箱根へやってきた。一方京極堂の妹中善寺敦子と鳥口等は、巨刹明慧寺を取材するために同じ箱根にやってきたが、泊まった宿で中庭に忽然と僧侶の死体が現れるという事件に遭遇する。だがこの事件は、明慧寺の僧と商談のために来ていた古物商の今川や、あの雑司ヶ谷の事件の久遠寺老人も巻き込んだ、“箱根山連続僧侶殺人事件”の幕開けに過ぎなかった・・・。

 文庫版での再読。
 当初より脳と認識の問題を全面に押し出してきたこのシリーズ。予てより宗教にも大いに関心を寄せていたが、前作真言立川流を経て、いよいよ禅宗がっぷり取り組んだ。それにしてもこのシリーズ、再読でかすかに犯人を覚えていても、何等問題なく楽しめてしまうのがすごい。
 わたしなんか、釈迦達磨に続く禅の流派の広がりと、日本への伝播についての薀蓄部分を、エクセルで系図にまとめてしまった。

 ストーリーにはなんの関係もないが、初読時にはすっかり流していた、隠元豆の隠元隆g日本黄檗宗について。
 せっかくその本山萬福寺のごく近くを毎週のように通過しているのだから、ぜひとも近く行ってみなければなるまい・・・。


行きました…。
禅宗の一派だが、日本に渡来したのが遅かった(江戸時代)分
建物その他、中国風の趣が強いのが特色だ。(2006/3/5撮影)


これは「かいぱん」。 木魚の原型と言われている。

漢字では開?。

あ、やっぱダメか…。木偏に邦で「ぱん」らしいですが。



(2014/5/29改訂)

H神と野獣の都
 La Ciudad de las Bestias (2005)
I・アジェンデ扶桑社ミステリー冒険
419頁933円★★★

 母親が病で入院し、15歳の少年アレックスは祖母と生活することになった。ところが破天荒な祖母は“ナショナル・ジオグラフィック”主催のアマゾン探検へ参加が決まっており、なんとアレックスも同行する羽目に。ごく普通の少年はアマゾンの密林になじめず四苦八苦するが、現地で育った少女ナディアと知り合い、謎の部族と行動をともにしてたくましく育っていく。母親の病を治すために試練を乗り越え、アレックスは命の水を手に入れることができるか。

 読み手のワクワクする秘境冒険成長小説かと思って読むとえらい目に遭うので注意。
 まぁ冒険小説には違いないが、痛快さはまるでないし、超自然的な現象がごく自然に肯定されているというのも、やや腰の据わりを悪く感じる素である。
 つまらんと斬って捨てるのはもったいないようにも思うが、少なくともわたしの嗜好にはまったく合わなかった。

(2014/5/29改訂)

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