2006年 3月
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@ワールド タンク ミュージアム図鑑 (2005)
モリナガ・ヨウ大日本絵画戦車薀蓄
141頁2200円★★★★

 ずばり食玩「WTM(World Tank Museum)」に付録されていた説明漫画を集めて、一冊にした画集?である。前に「WTM」を3つ4つ師匠に貰った時から、その雰囲気には魅了されていたが、まんまと本になるとは…。

 表紙を見れば、その雰囲気はあらかた判るだろう。
 「宮崎駿の雑想ノート」の影響を受けているような気がするが、戦車戦のヒーロー性でもなく、反人道的な面でもなく、あたふたとしたバタ臭さと喜劇性に注視して(そこにある人命軽視の思想には多少気付く必要はあるが)いるのが魅力だ。
 わたしも老年になって絵手紙を書くようになったら、こういうタッチにトライしてみたいものだ。

 ところで、わたしの長年の疑問、ドイツ軍の特殊車両に付く型番“Sd.Kfz”をどー読むのかという疑問についに答えてくれたのが、最大の喜びだ。

「ゾンダークラフトフアールツオイグ」だそうな。わぁーい。


(2014/2/23改訂)
A荒鷲の要塞
 Where Eagles Dare (1967)
A・マクリーンハヤカワ文庫冒険
325頁640円★★★★

 連合軍の大反攻作戦の中枢を知る米軍の将軍が、空路で移動中ドイツ領内に不時着し囚われの身となった。是が非でも彼を救出せねばならない連合軍は、スミス少佐達7人にその任を与え、厳冬の雪山にパラシュート降下させた。将軍が虜になっているのは、南ドイツにおけるドイツ情報部とゲシュタポの司令部で、“シュロス・アドラー”と呼ばれる要塞化した山城。そこへはドイツ兵で充満した麓の村からケーブルカーで向かう道が一本だけしかない上に、将軍が口を割る前に助け出さねばならないタイム・リミットまである。さらに一行の中には、ドイツのスパイが混じっているらしい。この絶望的な状況で、スミス達は任務を全うできるのか。

 厳しい状況の中で奮闘する男たちということでは、「女王陛下のユリシーズ号」とも通じるが、あちらは船内という密閉空間の中で、絶望的な状況に翻弄される悲劇性が印象的なのに対して、本書は、絶望的な状況というのは共通ではあるものの、スミス少佐の大胆な行動力と口八丁の機転で、めまぐるしく転回している。メンバーに黙って女を同行させているのも驚きで、その腹には一癖も二癖も秘めている。あれだけ足枷がぶらさがっているというのに、かなりの超人ぶりだ。

 スミス少佐の凄さばかりが目立って、精鋭のドイツ軍とゲシュタポという割には敵の印象が薄かったり、訳本の宿命か、細かい描写が今ひとつ分かり難かったりするが、クライマックスのケーブルカーでの戦いは圧巻で、ワクワク、ドキドキさせてもらった。
 もはや古典だが、ぜひとも映画を見たくなった。←2014年現在、まだ未見だ…。

 依光隆の表紙が、昔読んだ光瀬竜眉村卓のSFを思い出させる。

(2014/2/24改訂)

B獣たちの夜 Blood The Last Vampire (2000)
押井守角川ホラー文庫冒険
308頁600円★★

 1969年、学生運動真っ盛りの時代。デモに参加していた高校生の零は、とある空き地で、血塗れの物体の傍らに日本刀を持って立つ少女を見た。その特異な眼に見られた瞬間、零は殺される恐怖を感じたが、近寄ってきた関係者と思しき外国人に昏倒させられてしまう。眼を覚ました零は、デモへの参加を理由に停学となり、その彼のもとへは後藤田と名乗る刑事が事件の捜査協力を求めてくる。数人の行方不明者を出しているというその事件は、彼が誰にも話せずにいるあの体験に関係があるらしい。小夜という少女が、行方不明者を出した学校に転校してきては、事件とともに学校を去るというのだが・・・。

 映画版もたしか、事件に巻き込まれた小太りの女教師からの目線で描かれていたが、本書はそれ以上に小夜の登場シーンは少ない。非日常の異空間を描くのに、日常の側から見るというのはよくある手だが、なにせ学生運動の時代の感覚がまるで掴めないので、異空間から別の異空間を見ているようで落ち着けない。
 あの時代の空気に共感できるなら興味深くもあろうが…。

 人類と同時発生・進化してきた少数の捕食生物というヴァンパイアの生態は面白いが、後半長々70頁ほども――しかもそう難しくもないことを小難しく――語られた日には、なんともこのつまらなさしか後に残らない。

 だからあとがきで、山田正紀が本書を褒め称えているのを読んで、本当にびっくりした。人それぞれである。

(2014/2/24改訂)

Cイスタンブール 世界の都市の物語 (1992)
陳舜臣文春文庫歴史薀蓄
305頁476円★★★

 東と西の文明の接点であるイスタンブールという街には以前から興味を持っていたが、本書を購入したのはシルクロード関連強化の一環としてだ。陳舜臣ももちろん東から西へと大移動したトルコ遊牧民への興味が高じて、本書を執筆したのだろう。
 ところで本書はトルコ史ではなくイスタンブール史なので、トルコ民族大移動の観点からのトピックはそう多くはない。しかし定点観測としてのイスタンブール(コンスタンティノープル)の過去・現在の話は十分に盛りだくさんで魅力的だ。
 特にオスマン・トルコの歴代スルタンにまつわる話は興味深いし、例えば“政治システムが中国のに似ている”云々とかの記述は、さすが著者にしか書けないところだ。

 これを最初に読んだ時点ではなにも決まってなかったのだが、その後イスタンブールに行く機会に恵まれた。
 本書にも詳しく記載された、トプカプ宮殿アヤ・ソフィアブルー・モスク(スルタン・アフメット・モスク)地下貯水池グランド・バザールエジプト・バザールカーリエ博物館(コーラ修道院)エィユップ・スルタン・モスクピエール・ロティの丘シルケジ駅リュステム・パシャ・モスク、←ここまで旧市街金角湾の南西側)。
 そして新市街金角湾の北東側)に移ると、ガラタ塔タクシム広場イスティクラル通りペラパラス・ホテル軍事博物館ルメリ・ヒサールetc.etc.。

 二日半の滞在の間にこれだけのものを見たので、駆け足のものもあるし、ドルマバフチェ宮殿コンスタンティノープルの城壁ヴァレンス水道橋なんかは車窓、船窓から見ただけ。アジア側にはまるで寄らずだったが、正直お腹いっぱいでふらふらになった。なんとか記憶が定かなうちに旅行記を書きたいものだ。←そんなものは書かないままに記憶は…。

 しかし悲しいのは、旅行に本書を持って行き忘れたことだ。
 旅行の後半は特に意識朦朧だったから、結局はガイドに連れ回されるだけになってしまったが、帰国してから本書を再読すれば、あれもこれもきちんと記載があった。あぁ乏しきかな、わたしの記憶力。

(2014/2/25改訂)

DGoldilocks and the three bears
 Penguin Young Readers (Level 1)
Penguin Longman英語
15頁1066円

EThe Three Billy Goats Gruff
 Penguin Young Readers (Level 1)
Penguin Longman英語
15頁936円

F見果てぬ時空 アシモフの科学エッセイ13
 Far as Human Eye Could See (1987)
I・アシモフハヤカワ文庫科学薀蓄
309頁560円★★★★

GThe Elves And The Shoemaker
 Penguin Young Readers (Level 1)
Penguin Longman英語
15頁686円

Hこの人と結婚していいの? (2000)
石井希尚新潮文庫
285頁★★★★

 これを読めと嫁に与えられた。当時は婚約者だが。

 端的に言って、男は理屈っぽく、女は感情に走るというのは、ある程度常識的な話なのだが、男女間の感性や能力の違いが、脳の構造とホルモンの違いに基づくものだと知ることは、特に男にとって、女性の不条理さを大らかに見つめる大きな助けとなるだろう。
 また頭で解ることは、現場!で瞬時に応用できることとは違うので、豊富な挿話でもって繰り返し説明されるのは、実践の助けになるような気がする。
 生理前後のPMSという用語は、始めて知った。(被害経験はすでにありだが・・・)

   著者は牧師なので、アガペー=神の愛だというところで少々身構えてしまったが、歌の歌詞にも“恋は奪うもの〜♪、愛は与えるもの〜♪(←適当)”などとよくあることだし、特に問題はなかった。
 宗教的な臭みはなく安心して読んでいいだろう。

 題名からして、購入者のほとんどは女性だと思うが、お互いを理解して赦すためのノウハウが書かれているので、これは夫婦で読むべきだ。効果倍増である。

 従って、わたしに本書を読めと命じた嫁の戦略は正しい。

(2014/2/25改訂)

I話を聞かない男、地図が読めない女 男脳・女脳が「謎」を解く (1999)
A・ビーズ/B・ビーズ主婦の友社脳機能薀蓄
343頁667円★★★

 上と同じ目的で書かれた本を、勢いでまた読んでしまった。
 とは言うもののアプローチは違っていて、理系的に書かれておるのが本書の特徴だ。
 胎児は、悠久の太古からの進化をなぞるように育ってくるが、いよいよ人間の形を作る際も、必ず含まれるX染色体を受けてか、まずは女性形状から作られるという。だからXY染色体で男の子だとしても、何らかの理由でテストステロン(男性ホルモン)が少なかった場合、身体形状(先に作られる)は男でも、脳(後で作られる)は女性のままになるらしい。レズよりもゲイが多いのは、この理由によるというのが面白い。

 空間構成力と直線方向の透視は♂脳が得意で、周辺視野が広く、その視野内の物体に対する注意力が優れているのが♀脳だというのは、近くにあるものをまるで探せないわたしには、なるほど大納得なのだが、一方で豊富に出てくる統計データについて、出所も明らかでないし、どれだけ信用できるものかという疑念はある。著者夫婦は学者ではないし、なんせ裏表紙でにこやかに笑ってるのが胡散臭い。
 実際本書を批判しているサイトも見かけたし、トンデモ本だと分類している本もあった。
 より専門知識を持っている人にとっては、わたしが上のように感じたことをさらに増幅して感じたのだと想像するが、それ以上に感覚的にはかなり的を射てるという気持ちが強い。夫婦生活を円滑にさせるノウハウ本という目的からすれば、学問的な正確さよりも感覚的なそうだよね感のほうが上位にきてもよいだろう。
 あらゆる物事に何が何でも男女同権というのはおかしな話で、男女それぞれの得手不得手があることは、正規分布として確実に存在するのだから、その違いを尊重しながら付き合っていくことが重要だという本書の大意には、まったく同感だ。

 なにより笑える構成になっているのが、読んでいて面白い。
 男が話を聞いているときに見せる“悲しみ”、“驚き”、“怒り”、“喜び”、“恐れ”、“発情”の表情画は大爆笑だ。

(2014/2/25改訂)

J女子大生会計士の事件簿 DX.1 ベンチャーの王子様 (2002)
山田真哉角川文庫
215頁476円

 なんと申せばよろしいか。
 ややこしくてよく解らん会計用語を、少しでも解りやすく紹介するために物語仕立てにして、会計業界の冊子に連載してみましたという、著者の目の付け所はさすがだ。金儲けには困らないタイプの頭の構造をしているのだろう。

 腹が立つのは、そういった、物語としてはとてもしょぼい小説に萌え系マンガ表紙を誂えて、商売を企む角川文庫と、これがまんまと当たってずんずんと巻を重ねている事実だ!!!

(2014/2/25改訂)

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