2006年 4月
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@怪しいお仕事!
北尾トロ新潮文庫社会薀蓄
283頁476円★★★
 世の中には、法のすれすれの部分で上手く利益を得ている輩が確かにおるもんじゃ。悪徳興信所、競馬の予想会社に予想屋、野球賭博師にポーカー賭博屋。あるいはカギ師やネット商売(本書では元ネタが若干古く、パソコン通信)等々。  いかがわしい商売は数あれど、結局は男女関係か賭博絡みだというところに、人間の情けなさが如実に出てしまうもんじゃのぉ。

 中には少ない元手と(比較的)少ないリスクで、ボロいリターンというウハウハに思えるものもあるが、著者があとがきで書いているように、実際にその稼業に手を染めるのは、いろんな意味で敷居が高いじゃろうな。
 個人的には、賭博を身を持ち崩す輩は自業自得なのでどないになろうと知ったことじゃあないが、その中には自暴自棄になって犯罪に走ってしまう輩も間違いなくおるわけで、結局は他人の痛みを想像できない欠陥人間だけがやれる商売じゃろぉ。

 そのほかにも、住職の斡旋など、商売としての坊さん業についての取材は興味深いぞ。
 間違っても戒名などに高い金を払うもんじゃあないわい。
A朽ちる散る落ちる
 Rot Off And Drop Away
森博嗣講談社文庫推理
472頁714円★★★
 土井超音波研究所の事件から二週間、土井博士の研究室からのみアクセスできる地下室内の閉ざされた扉がついに破れ、その中の部屋からさらに下った小部屋の中で、死亡時が数ヶ月前と見られる新たな死体が発見された。その部屋は二重三重に密室状態だったが、死体には自殺とは思えない暴力の後が・・・。一方、瀬在丸紅子は知人で土井研とも繋がりのある小田原博士から、大気圏外から帰還したシャトルに乗っていた宇宙飛行士が、全員死体で発見されたという数年前の話を聞いていた。この突拍子もない話も、土井研の事件と何らかの関係があるらしいのだが・・・。

 「六人の超音波科学者」の直接的な続編。ということはつまり、例のどろどろもあいかわらずじゃが、覚悟してよんでいるので、まぁなんとか。
 ちょっと巨大に無理のある話で、面白さはほどほどってとこなんじゃけど、一日二日で読み終えさせる筆力はさすが。
B逆説の日本史8 中世混沌編
井沢元彦小学館文庫歴史薀蓄
489頁657円★★★
 六代将軍足利義教の暗殺以降から、つまりいよいよ応仁の乱がメインとなる巻じゃ。
 八代足利義政と御台所日野富子のバカっぷりに端を発する応仁の乱の複雑さも面白いが、応仁の乱後、室町幕府がどんどん斜陽となる中での九代足利義尚、十代足利義植等の時代がまためっぽう面白いわい。(京都西陣の名のもとになった山名宗全の本陣にもなり、京都で最古の寺関係の建造物となってしまったという大報恩寺(千本釈迦堂)には行ってきたぞ。当時の槍傷が残る柱の画像がこれじゃ!)

 この前半部分だけでも、敵味方が入り乱れて腹一杯になってしまうので、後半の室町文化や国人一揆一向一揆はまた今度読み直さないと、ほとんど記憶できんかったような…。
C信長殺すべし 異説本能寺
岩崎正吾小学館文庫歴史推理
406頁757円★★★
 信長を演じる予定だった俳優の多岐一太郎は、現場の事故で残念ながら配役を降りて入院治療することになってしまった。暇を持て余す入院生活で、一太郎は本能寺の変の黒幕について検討を始めるが、彼の病室はいずれも信長に興味を持った友人との討論の場に・・・。

 まさしくJ・テイ「時の娘」木彬光「成吉思汗の謎」タイプのベッド・ディテクティブ歴史ミステリじゃ。
 本能寺の変における明智光秀の黒幕が誰かということは、これまでも散々考えられてきたことじゃから、比較的新鮮味は感じずに読み進めていったのじゃが、最終的な結論(もちろん実際に何が証明された訳ではないが)には派手さはないものの、もしかしたらそんなこともあったかも・・・と思わせるものじゃ。もっとも、現代パートと交互に挿入される時代劇パートで強力に誘導しているのは反則かもしれん。

 しかしわしが気に入ったのは、その時代劇パート。各武将の心情描写などかなり達者なもので、ぜひとも普通に歴史小説を書いてほしいぞ。
Dゾンガーと竜の都 レムリアン・サーガ2
 Thongor And The Dragon City
L・カーターハヤカワ文庫異世界冒険
265頁360円★★★
 パタンガを牛耳る黄色いドルイド僧団の手から、生贄にささげられる直前のスミア王女を救出したゾンガーは、ツァルゴルを追われた公子カルム・カルヴスと三人、飛行艇で嵐のレムリア大陸を彷徨うが、ついに大海へと不時着してしまった。どうにか海竜の襲撃をかわして陸地へ上陸した一行だが、彼等の前には、肉食植物や獣人が待ち受けるジャングルが広がる・・・。

 まわりまわってトゥルディスに捕まった一行は、ゾンガーと前巻冒頭で彼を助けた傭兵仲間のアルド・トゥルミスのコンビ、カルム・カルヴスとスミアのコンビに分かれて、ゾンガーたちは太古の都オンムへ、スミアたちはトゥルディスとパタンガの戦乱に巻き込まれることになる。
 ハワードよりはバローズよりの展開を見せるオンムはかなり痛いが、前巻でほとんど人形A、人形Bだったスミアとカルヴスが活躍するパタンガ包囲戦はなかなかいい感じじゃ。

 もっともにんまりできたのは、エピローグで、いつの間にやらお友達になったトゥルミスとカルヴス(似たような固有名詞が多いのはなんとかならんかな・・・)が、愚痴っとるとこじゃろうか。

 しかしこんな適当な宣言で三国の王になるゾンガーの治世は決して長くないじゃろぉ。
EスーパーモデリングマニュアルA【上級編】
 MAX渡辺のプラモ大好き!
ホビージャパン編集部・編ホビージャパン模型薀蓄
159頁2000円
 「パーフェクト・モデリング・マニュアル@【初級編】」の続編。これも再読。
 型取りバキューム・フォームなんぞは、日曜モデラーのわしには、はっきり言って縁のないテクニックじゃが、まぁお勉強にはなるのぉ。せめてヒートプレスくらいは、一度は挑戦してみてもええかも。
Fトンデモ超常現象99の真相
と学会・編洋泉社超常現象薀蓄
456頁714円★★★
 巷に溢れるトンデモ本を笑い飛ばしてやろうというのがこのシリーズのそもそもの目的だったと思うが、99の項目に分けた編集と、またその話題ごとに参照した文献を挙げるという本書のスタイルは、笑い飛ばすというよりも一般読書の啓蒙が主目的になったようじゃ。おそらくはトンデモな輩に逆攻撃され続けるのに疲れたか、辛抱たまらなくなったんじゃろう。その分ちょっと笑いが少なめで残念。
 子供の頃には、学研の「世界の謎、世界の不思議」(うろ覚え)を興味を持って読みふけったもんじゃが、世にも不思議なのはそういった超常現象ではなく、人の心理といったとこじゃな。

 昔からなじんできた不思議現象のかなりが解説されてとっても興味深く、バミューダ・トライアングルの有名な消失事件の経緯や福来博士の超能力関連の経緯などを読めたのは嬉しいところ。
 マリー・セレステ号の謎についての解説がなかったのが残念じゃのぉ。
G新シルクロードの旅 1.楼蘭・トルファンと河西回廊
NHK取材班・監修講談社歴史薀蓄
159頁2000円★★★
 大きくて豊富なカラー写真。これだけで本書の存在意義は十分じゃ。文章はあっさりしてるので、司馬遼太郎や陳舜臣の本を読むときに、適時本書を開いて、写真を眺めるのがいいじゃろお。
H占星師アフサンの遠見鏡
 Far-seer
R・J・ソウヤーハヤカワ文庫SF
386頁720円★★★★
 “大地”は巨大な川の上に浮かんでいた。遥かな上流には巨大な“神の顔”が浮かび、狩りの儀式を済ませて一人前になったものは、船に乗って巡礼に向かう。神聖な帝都で占星師見習いとして働くアフサンも巡礼を認められ、キーニア船長のダシェター号に乗り込んでいざ巡礼へ。だがアフサンが船上で借りた遠見鏡を星々や“神の顔”に向けたとき、彼がこれまで教えられてきたものとはまるで異なる世界が広がり、“大地”のひとびとの運命は大きく動き始める・・・。

 ジュブナイル成長冒険天文学入門といったとこか。
 展開が速すぎるのがやや難じゃが、いや滅法面白い。ソウヤーの作品は、まだまだ代表作を残しておるが、少なくとも「さよならダイノサウルス」「フレームシフト」「イリーガル・エイリアン」の中ではベスト。(「ゴールデン・フリース」が今のところ一番かのぉ。)
 アフサンの住む“大地”と“神の顔”の関係、そしてさらにそこから、彼らの大変な未来に気付いていく流れも面白いんじゃが、彼らキンタグリオ族が恐竜であるがゆえの細かな描写が楽しいのぉ。

 表紙もマンガすぎないぎりぎりのところで魅力的じゃし、続巻の邦訳が待たれるところじゃが、ハヤカワにその気はあるのか?
Iグール 上下
 Ghoul
M・スレイド創元推理文庫サスペンス
339頁/322頁550円/550円★★★★
 手口や声明から<吸血殺人鬼>、<爆殺魔ジャック>、<下水道殺人鬼>と名付けられた犯人達による無差別殺戮事件で、ロンドンは恐慌に陥っていた。ヒラリー・ランド警視正がこれらの捜査の陣頭指揮を執るが、ヤード初の女性警視正ということで風当たりが強く、犯人を一人も挙げられない責任を今にも取らされそうな状況にある。一方カナダ連邦騎馬警察スペシャルX所属のジンク・チャンドラーは、麻薬事件を追ううちにラブクラフトの故郷プロヴィデンスの地で育ったハイド姉弟につきあたる・・・。

 忘れた頃に文春文庫から立て続けにシリーズが発行されたので、とりあえず「髑髏島の惨劇」「暗黒大陸の悪霊」は購入したのじゃが、前に創元から出された三冊はほとんど忘却の彼方。どれか一冊なりと再読をと考えて手に取ったのが本書じゃ。スペシャルXのシリーズとしては、「ヘッドハンター」「カットスロート」を読み直すほうがいいのじゃろうが、外伝的な本書(半分がヤード側)が一番印象深かったので、本書にした訳じゃ。なにせ初読時は“異常な犯人を追う捜査サスペンスもの”として初めてだったこともあって、強烈な印象を受けたからのぉ。あれ以来、同ジャンルの映画や本を観読してきたが、派手さエグさで本書を超えるものはなかったように思うぞ。

 再読してもクライマックスの“グール”の棲家のグロテスクさは昔のまんまじゃったが、わしの閉所恐怖症が進行しているので、冒頭の“グール”入会の儀式シーンが一番怖くなっていたのは悲しい。
 しかしもっとも情けないのは、ラストの大オチを間違って憶えていたことかもしれんのぉ。おかげで初読と同じように驚いてしまったわい。とにかく残酷描写に耐性があればお薦めの一冊じゃ。
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