| 2008年 5月 | |||
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| @ | 父の威厳 数学者の意地 | ![]() | |||
| 藤原正彦 | 新潮文庫 | エッセイ | |||
| 307頁 | 514円 | ★★★★ | |||
| 敬愛する著者のエッセイ集。
彼のアメリカやイギリスでの生活は、それぞれ「若き数学者のアメリカ」と「遥かなるケンブリッジ」に詳しいが、一概に英米というものの、また知のエリートである数学者という括りがあってさえ、両国で大きな違いがあって面白いもんじゃのぉ。 本書には長短いろんな長さのエッセイが含まれとるが、短いもののほうがキレはいいようじゃ。 わが心の師匠である著者の主張はわしの思うところにびんびんくるのじゃが、36頁を占める本書の最も長い「苦い勝利」は正直つらい。師匠の主張も解らんではないが、学校側としても一々保護者の意見に振り回されたくないところ。日本的なフレキシビリティーの有効性は師匠も認識している筈なんじゃが、今回の事例で言えば、長男の修学旅行への参加のために、一旦学校側の指示を呑んでおいてから都教育庁への働きかけをしたほうが良かったじゃろうな。それで十分に目的は達成できたと思うが・・・。(普通の親ではまずお上への苦情申し立ての方法が解らんじゃろうし、十分に顔が利かないじゃろうな) これに関しては、やや必要以上に自己犠牲に酔っているようで共感は持てないのぉ。 | |||||
| A | QED 鬼の城伝説 | ![]() | |||
| 高田崇史 | 講談社文庫 | 推理 | |||
| 448頁 | 733円 | ★★★ | |||
| 岡山の旧家鬼野辺家に伝わる釜は、吉備津神社のものと同様、時に鳴ることがあるという。しかもそれは凶事を予告するというのだが、はたして釜が鳴り、庭の土蔵の中で長男が首切り死体で発見された。しかも土蔵の扉には内と外から二重の鍵が。奈々、沙織、小松崎、そして桑原崇の四人はこの事件に関係することになるが・・・。 今回のお題は桃太郎伝説ということで、鬼ノ城、温羅、吉備津彦などをガジェットとして、大和朝廷と地方豪族の争いという観点から伝説を見直す趣向じゃ。これ自体はあまり衝撃的でもない内容じゃし、DNAに刻み込まれる記憶などという戯言を滔々と語るくらいなら、もう少し他の地域に残る桃太郎伝説伝播についての言及とかも欲しかったのぉ。そちらの方向では香川の伝説に少し触れるだけで、和歌山やたしか東北のほうにも伝わるものについてはまったく触れず仕舞いじゃ。 あるいは鬼の伝説にリンクさせる現代の事件にもっと力を入れてくれればいいのじゃが、せっかく横溝正史ばりのキャラ配置をしているというのに、雰囲気を十分作ることなく駆け足の解決になってしまっとる。一冊の本として448頁はいいところじゃと思うが、基本的なアイディアは悪くないと思えるだけに、書き込みがまったく足りず非常にうすっぺらな印象じゃ。 個人的には次の次の次の次に控えとる河童伝説に期待をかけとるのじゃが、そちらの薀蓄には期待したいのぉ。 | |||||
| C | 四季 春 Green Spring 四季 夏 Red Summer | ![]() ![]() | |||
| 森博嗣 | 講談社文庫 | ― | |||
| 286頁/282頁 | 590円/590円 | ★★★ | |||
| しかしそれで読むつもりのなかった本書を買ってしまったのじゃから、あのネタばれは成功なのか・・・。 これまでは、かなり頭の良い人たち(犀川先生とか)が、あの人は天才だと評価することで、なんかわからんけどすごいという印象だった真賀田四季じゃが、今回は四季の視点からの描写がメインじゃ。“天才”の感覚については、結局コンピュータになぞらえた説明(動作クロックが速くて並列処理も行う)になってしまってるが、まぁ仕方ないところか。 「すべてがFになる」がインパクト強い本であることは確かじゃが、わしの肌にはあわん一冊じゃ。天才の感性は常人の基準では量られないからしゃぁないなあという一言で、(読者も含めて)誰も彼女を糾弾しないというのが気持ち悪い。天才だかなんだか知らんが、他人の痛みを推し量ることのできない人間は、この社会から速やかに退場させるべきじゃ。 本書のあとがきに寄せられた一般読者からの一言感想でも、好意的な感想ばかりで――出版社の恣意的な選択なのじゃから当然かもしれんが――気持ち悪いのぉ。もちろん虚構の物語にどーのこーの小うるさい小言をかます必要はないのじゃが、10代20代の若輩くんたちが本書などを絶賛しているのをみると、大丈夫かいなと心配になってしまう今日この頃じゃ。 | |||||
| E | 魔岩伝説 | ![]() | |||
| 荒山徹 | 祥伝社文庫 | 歴史伝奇 | |||
| 488頁 | 743円 | ★★★ | |||
| 1811年、久方ぶりの朝鮮通信使の来日を前に、前回の来日の折に唐人殺し事件を起こし、捕縛・処刑された鈴木伝蔵の亡霊が江戸対馬藩邸に現れ、騒ぎを起こしていた。柳生主膳正は息子の卍兵衛を“亡霊”狩りに派遣するが、独自にこの騒動を探っていた遠山景元が介入し、かろうじて“亡霊”を確保する。そして朝鮮通信使との儀は対馬で無事執り行われるが、その裏では徳川氏と李氏朝鮮の存亡に関わる恐るべき秘事を巡り、遠山景元、柳生卍兵衛、そして朝鮮の恐るべき術者たちの暗闘が日朝の両地に渡って開始されるのであった・・・。 傑作「十兵衛両断」に先立つ、著者の第3長編じゃ。 19世紀の話なので柳生一族は出ないのかと思いきや、柳生卍兵衛である。恐ろしや荒山徹。 この卍兵衛と父の柳生主膳正の設定は、ぶっちゃけると柳生十兵衛と但馬守宗矩の親子を19世紀に登場させるためのものではあるが、勘定奉行を務めた柳生主膳正久通という人物は実在じゃ。これに限らず、遠山の金さんこと景元に、父親の遠山景晋、あるいは徳川幕府の儒教をリードしていた林一族の面々など、実在の人物の配置の妙がすばらしいわい。それどころか、遠山景元といえばセットで出てきてもよいあの人物にエピローグまで気付かず、まんまとしてやられてしまったわい。 | |||||
| F | オタク学入門 | ![]() | |||
| 岡田斗司夫 | 新潮文庫 | オタク薀蓄 | |||
| 415頁 | 629円 | ★★★★ | |||
| オタクのものの見方を、日本古来からの文化の鑑賞法でもって説明しておることにビックリじゃ。世界と趣向、それに見立てというキーワードを使って、粋、巧、通というカテゴリーで説明しておるのじゃが、なにに驚いたのかというと、わしもスーパー戦隊シリーズの面白さを周りに説明するという空しい作業をした時には、俳句や歌舞伎になぞらえて、日本文化の心が解るならば戦隊ものも理解できる云々と唱えておったからじゃ。 周りに同好の士がおらんというのはつらいことじゃ。 ところで、本書ではオタクとマニアの違いを他ジャンルへの広がりとする文脈であったと思うが、これには納得しづらい。それは単にオタクの中心ジャンルであるアニメが、マンガやゲーム、模型などとの親和性がやたらに高いというだけじゃと思うぞ。どんなジャンルであっても、それを突き進んでいけば必ず他のジャンルの知識や技術が必要になるじゃろ? わしが思うには、従来サブカルチャー、またはお子様向けという蔑みの対象であったジャンルから、しばしば社会現象になってしまうようなブームが起こることに対する怖れ、これらがマニアでイメージされるニッチなものと別の用語を必要とさせたというのが、オタクという言葉の始まりじゃなかろうか。そして、オタクという言葉が完全に用語として定着してしまった昨今では、以前はマニアとして括られているような分野にまで、逆流として使用されるようになっとるんじゃなかろうか。例えば鉄道マニア⇒鉄道オタクなんかじゃな。 サブカルチャーという用語がでてきたが、このアメリカ発の用語が、日本という大人と子供の境界線がはっきりしないような国にはそぐわないという見解も面白い。「車内で平然と化粧する脳」での日本人脳の話と符合するわい。 なんやごちゃごちゃと語ってしまったが、「2001年宇宙の旅」や「ブレードランナー」の撮影テクニック(まさにオタクネタ)や、週刊少年マンガ誌の発展史など、なかなか楽しませてもらったわい。 しかし、いかんせん情報が古すぎるぞ。スターウォーズは旧三部作までじゃし、スーパー戦隊の例として登場するのはなんとダイレンジャーじゃよ。いや、あれは最終話を除いて傑作じゃが・・・。 この文庫化にあたって、コメントが多少書かれておったが、富野由悠季との対談なんぞを追加するならば、しっかり増補改訂するべきじゃのぉ。サボったらいかんわな。 | |||||
| G | 藤沢周平のツボ 至福の読書案内 | ![]() | ||||
| 朝日新聞週刊百科編集部編 | 朝日文庫 | 小説薀蓄 | ||||
| 207頁 | 500円 | ★★★ | ||||
| どこの誰が書いていたのか、日本人の成年男性はたしなみとして“一平二太郎”を抑えておかねばならんという文章を読んだことがある。しかしながら司馬遼太郎はまぁかなり読んでおるものの、池波正太郎はせいぜい五、六冊。“一平”こと藤沢周平に至っては、「決闘の辻」の一冊きりじゃ。 わしの読書の目的は、一に逃避、二に薀蓄欲なので、胸のすく活劇か史実に絡んだストーリーがなと、わしの購買スイッチは刺激されん。“剣豪もの”という刺激で読んだ「決闘の辻」も、他で読んだことのない切り口で大層面白く読んだとはいえ、宮本武蔵や伊東一刀斎などの大物でさえも、老いに怯え若さに嫉妬するという心の闇が描かれておる。活劇というには程遠かったからのぉ。 しかし他にもわしの読むべき本が眠っているはず。 ということで、本書を読んだ。わしスイッチが入ったのは、関が原前後の上杉主従を描いた「密謀」、新井白石が主役の「市塵」、小林一茶のずばり「一茶」、清河八郎の「回転の門」といったところか。 それはそれとして、「たそがれ清兵衛」を紹介する立松和平の言には衝撃を受けたわい。 役所勤め時代を述べた中で、定時の前から帰宅モードへと入るというのもけしからんが、気楽な公務員ならさもありなんとあきらめもつく。 しかしこいつは・・・。 なめとんのか、公務員は。税金返せ。 まさか今の御時勢でこんなたわけたシステムは残っとらんじゃろな。そう思いたい・・・。 | ||||||
| H | 朝日新聞の正義 | ![]() | |||
| 井沢元彦/小林よしのり 対談 | 小学館文庫 | 歴史薀蓄 | |||
| 285頁 | 495円 | ★★★★ | |||
| これまでも主に井沢元彦の著作から、朝日新聞の体質はかなりおかしいということは判っておったが、本書の対談を読むと、もはや日本の政治軍事の暴走を引き止めるためのブレーキとしての有効性は限りなく薄れ、害悪のみが目立つ“反日日本人”の巣窟のように感じるのぉ。 本書に丸々感化されるのは少々危険かとも思うが、少なくとも中国、朝鮮から流された情報を無批判、裏付け調査なしで紙面に載せ続ける体質は、ウィキペディアなどで他紙と比較してみても間違いはなさそうで、最早害悪と断言しても良いじゃろぉ。 赤旗や聖教新聞ならともかくも、巨大な発行部数の全国紙が、自社の思想を掲げることなく発行し続けるのはまずいのぉ。もし自分の家の購読誌が朝日新聞のみだというならば、かなり危険じゃぞ。 | |||||
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