2008年 8月
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@北朝鮮・中国はどれだけ恐いか (2007)
田岡俊次朝日新書軍事薀蓄
268頁740円★★★

 いまさら感想を書くのもどーかと言うほど遅くなってしまったが、本書の出版は2007年の3月。その前年10月に、北朝鮮が初めて核爆弾実験を行った事を受けての執筆ということになる。

 本書では、先制してミサイル基地を叩く事のほぼ不可能さをあげつらっている。
 それから10年経った今、移動式発射機から発射された弾道ミサイルは、まんまと秋田県沖のEEZ内に着弾し、事前通告がなければ、日本のミサイル防衛はなんにも対応できない事があらためて証明された。
 そして情けない事に、この10年政府はまったく対応しておらず、弾道ミサイル防衛に対する本書の提言は今も変わらず有効なのだ…。津波の際に避難マップが事前準備されるのと同様に、空爆に対しては、そう、地下空間を記した避難マップの作成が必須なのである。

 対地下基地用に貫通弾なんてものもあるが、通常のミサイルには地下室、地下階のある建物や地下鉄駅に避難する事は大いに有効。もちろん空中で起爆する核爆弾にも有効なのだ。なんでも、広島と長崎に原爆が落とされた時、飛んでくるB29が少なかったために避難警報は解除されてしまったらしいが、もし皆が防空壕に避難していたら、人的被害は1/4程度になったのではないかという試算もあるらしい。
 少なくとも、標的になりそうな都市部や自衛隊/在日米軍基地周辺では必須だろう。
 たった一発でも、今回のようにへなちょこ対応だというのに、もし北朝鮮のへんな髪型の小太りな男が錯乱して複数のミサイルを日本に目がけて発射してしまったら、それらをすべて撃墜できる訳がないのだから。

 このあたりの軍事技術分析や、リトル・ボーイファットマンに戻っての科学薀蓄は興味深い。
 ただし、本書の白眉は後ろ半分の対中国に関する章だ。

 なんと、一貫して中国脅威論を和らげ、最終的な結論は中国を敵に仕立てるなである。←いかにも日本に非があるかのような物言い。うー、さすがは朝日新書。
 しかも著者は元AERAの副編集長だったらしい。
 2008年の初読時はまだまだわたしも平和ボケだったが、もう騙されない。
 軍事の評論家として、保有兵器自体を分析すれば、中国の兵器や人民解放軍の練度が今一つなのは判るが、たとえ10年前の文章だとしても、中国が1989年の第二次天安門事件以降の愛国政策反日体制を推し進めた事や、止まる事を知らない傲慢な膨張政策にまるで触れず、逆に(軍事に関する知識不足があっても)北朝鮮や中国の脅威を唱える人たちをタカ派ならぬバカ派呼ばわりするのは、真に朝日らしい態度である。

 2016年の現状を見ても同じ事が言えるのかを一度本人に訊いてみたい気もするが、こんな人は如何様にでもレトリックを使って、中国と仲良くしようとか言うのだろーな。

(2016/8/19記)

A忍法新選組 (1965)
戸部新十郎光文社文庫時代
410頁667円★★

B思考の整理学 (1983)
外山滋比古ちくま文庫
215頁520円★★★

C薔薇の渇き
 The Hunger (1981)
W・ストリーバー新潮文庫ホラー
509頁781円★★★★

 定期的にパートナーを変えながら、二千年以上の時を生きてきたミリアム。今しも現在のパートナーであるジョンに老化の兆しが現れ始め、それはジョンを危険な存在へと変貌させる。彼への愛情と身の危険を感じながらも、老化防止の研究でその核心へと近づいた研究者サラの存在を知り、彼女に接触を図るが・・・。

 印象的な狼男ものだった「ウルフェン」の著者が、その次に発表していた吸血鬼もの。
 その解説を読み直してみると、たしかに本書に触れていた。前作と同じく、広く知られた通俗ルールは無視して、人間社会の中で現代まで生きてきた人類とは別種の生物として、ヴァンパイアを設定している。本文中に吸血鬼ヴァンパイアといった名称はまったく使われない。

 モダン・ホラーが大量に訳出されていた80年代後半(「ウルフェン」もその一冊)に、なぜ訳されなかったのかは解らないが、まるで先の読めない展開になかなか楽しめた。
 ミリアムとジョンというカップルに対して、サラとトムの人間カップルの心理にもかなりの頁が割かれているが、これはまんぐりシーンも含めてムダに多すぎるところが欠点か。

(2015/1/31改訂)

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