いまさら感想を書くのもどーかと言うほど遅くなってしまったが、本書の出版は2007年の3月。その前年10月に、北朝鮮が初めて核爆弾実験を行った事を受けての執筆ということになる。
本書では、先制してミサイル基地を叩く事のほぼ不可能さをあげつらっている。
それから10年経った今、移動式発射機から発射された弾道ミサイルは、まんまと秋田県沖のEEZ内に着弾し、事前通告がなければ、日本のミサイル防衛はなんにも対応できない事があらためて証明された。
そして情けない事に、この10年政府はまったく対応しておらず、弾道ミサイル防衛に対する本書の提言は今も変わらず有効なのだ…。津波の際に避難マップが事前準備されるのと同様に、空爆に対しては、そう、地下空間を記した避難マップの作成が必須なのである。
対地下基地用に貫通弾なんてものもあるが、通常のミサイルには地下室、地下階のある建物や地下鉄駅に避難する事は大いに有効。もちろん空中で起爆する核爆弾にも有効なのだ。なんでも、広島と長崎に原爆が落とされた時、飛んでくるB29が少なかったために避難警報は解除されてしまったらしいが、もし皆が防空壕に避難していたら、人的被害は1/4程度になったのではないかという試算もあるらしい。
少なくとも、標的になりそうな都市部や自衛隊/在日米軍基地周辺では必須だろう。
たった一発でも、今回のようにへなちょこ対応だというのに、もし北朝鮮のへんな髪型の小太りな男が錯乱して複数のミサイルを日本に目がけて発射してしまったら、それらをすべて撃墜できる訳がないのだから。
このあたりの軍事技術分析や、リトル・ボーイとファットマンに戻っての科学薀蓄は興味深い。
ただし、本書の白眉は後ろ半分の対中国に関する章だ。
なんと、一貫して中国脅威論を和らげ、最終的な結論は中国を敵に仕立てるなである。←いかにも日本に非があるかのような物言い。うー、さすがは朝日新書。
しかも著者は元AERAの副編集長だったらしい。
2008年の初読時はまだまだわたしも平和ボケだったが、もう騙されない。
軍事の評論家として、保有兵器自体を分析すれば、中国の兵器や人民解放軍の練度が今一つなのは判るが、たとえ10年前の文章だとしても、中国が1989年の第二次天安門事件以降の愛国政策で反日体制を推し進めた事や、止まる事を知らない傲慢な膨張政策にまるで触れず、逆に(軍事に関する知識不足があっても)北朝鮮や中国の脅威を唱える人たちをタカ派ならぬバカ派呼ばわりするのは、真に朝日らしい態度である。
2016年の現状を見ても同じ事が言えるのかを一度本人に訊いてみたい気もするが、こんな人は如何様にでもレトリックを使って、中国と仲良くしようとか言うのだろーな。
(2016/8/19記) |