2009年 5月
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@三惑星連合 レンズマン・シリーズ6
 Triplanetary
E・E・スミス創元SF文庫SF
416頁920円★★★

A利腕
 Whip Hand
D・フランシスハヤカワ文庫冒険
401頁720円★★★

B新選組風雲録 落日篇/戊辰篇
広瀬仁紀文春文庫歴史/時代
330頁/291頁590円/590円★★★

 三巻目は伊藤甲子太郎一派との確執が表面化するあたりから始まる。まさに題名に相応しい落日の時期へと突入だ。

 元々本書は、盗人稼業で江戸を追われて京に流れてきた忠助の目線から、土方歳三を中心に新選組を描き、また同じく霞小僧ことお多加を薩長方近くに配置して狂言回しとする意向だったはず。しかし後半になると、彼らの扱いは随分と小さくなる。定かな記憶とは言えないが、お多加は激闘編の終盤の活躍を最後に、本書からはすっかり姿を消す始末。忠助のほうもたまに思い出したように登場するものの、ストーリーに関与するレベルではない。
 鳥羽伏見の戦い以後は公式な戦争となっていくので、忠助はともかく、お多加をかけあわせるのは困難かもしれないが、それでもバランスの悪さは気になるところだ。

 バランスが悪いといえば、結末の据わりの悪さも格別だ。
 会津がほぼ落ちて斎藤一とも別れ、土方歳三は榎本艦隊と合流しようというところで、余韻もなにもなくばっさりと終わってしまう。
 新聞連載が打ち切られたといったところだろうか。期待していた本だけに、なんともがっかりだ。

(2014/3/14改訂)

C間違いの悲劇
 The Tragedy of Errors And Other Stories
E・クイーン創元推理文庫推理
233頁640円★★★

D明治百景 100年前の三重県
三重県生活部文化課歴史写真集
233頁640円★★★

 二十世紀の終わりを迎えるにあたって、三重県が編纂した写真集。
 ベースになっているのが明治四十年発行の「三重県案内」と明治四十三年発行の「三重県写真帖」いうことで、その時代に撮られた写真のようだ。

 百年前の写真と現在の同じ場所を比較できれば、何がしかの感傷を持つことができるだろう。

(2014/3/14改訂)

Eひとびとの跫音 上下
司馬遼太郎中公文庫
282頁/273頁552円/552円★★★

 元々司馬遼太郎の本は、小説に区分されるものでも、いわゆる司馬史観となるエッセイが多量に含まれる。
 本書もざっくりいえば、正岡子規の縁戚者について、その後の消息を追った物語とはいえるのだが、「坂の上の雲」の外伝のつもりで手を出すと、かなりの違和感を覚えるだろう。←わたしのことだが…。

 本書の主要人物二人のうち、正岡忠三郎は子規の養子(厳密には子規の妹の養子)だが、もう一人の西沢隆二は、正岡忠三郎の友人であることと、子規の文章を愛したという他に大した繋がりはない。
 しかも、二人とも日本史に何らかの足跡を残したとは言いがたく、特に正岡忠三郎は、中原中也といった数人の文人たちと親交があったことが、書簡で判るだけの市井の人だったし、西沢隆二は、一時期日本共産党の幹部だったということで、共産党史を追えば名前は挙がるのだろうが、一般的な知名度があるとは言えない。

 本書がさらに異色になっている点は、上記二人やその細君といった登場人物の多くが、司馬遼太郎の友人/知人であることだ。そういった登場人物たちは、“タカジ”を除けば、最後まで“さん”付で書かれている。
 著者が彼らと知り合ったのは、やはり「坂の上の雲」を執筆するための調査がきっかけなのだと思うが、あちらこちちと話題が変わる「街道をゆく」とは異なり、上下巻550頁でメイン二人、周辺まで加えても7、8人のみの人生の断面を語っていくのだから、濃厚であり異色だ。

 たしか本書でも語っていたが、忠三郎さんとタカジが他界したのは、著者の父親が亡くなったのと相前後ということで、自分の父親を語ることが面映かったのだろうか、彼ら二人について語ることで、なんらかの踏ん切りをつけたかったという側面があるのではないだろうか。
 そういう意味で、本書は著者自身のための書き物ということが言える。少なくとも司馬遼太郎初心者が手に取ることは避けるべきだ。

(2014/3/14改訂)

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