| 2010年 2月 | |||
| トップ頁に戻る | “本”の目次に戻る | 2010年 1月に戻る | 2010年 3月に進む |
| @ | 戦国自衛隊1549 | ![]() | |||
| 福井晴敏 | 角川文庫 | 冒険/伝奇/SF | |||
| 304頁 | 552円 | ★★★ | |||
| 元自衛官の鹿島のもとを、神崎怜という科学者と不思議な雰囲気を醸す男が訪れた。彼女は、6年前に消えた実験部隊の救出計画に鹿島の力が必要だと言う。救出先はなんと16世紀半ばの戦国時代。すでに過去改変の影響が現代にも出始め、各地にホールと呼ばれる虚数空間が出現しているという。一笑に付す鹿島だが、再度鹿島を訪れた不思議な雰囲気の男は、自分は入れ替わりに過去から来た男だと名乗る・・・。 半村良の「戦国自衛隊」の続編として企画された、映画主導のシナリオの小説版じゃ。 「亡国のイージス」、「ローレライ」、そして本作と、この時期の福井晴敏の躍進ぶりは強烈じゃったが、公開当時本書は妙な装丁の本しか出ておらずに見送っていた。今回文庫版が出たので機械的に購入してしまったぞ。 「戦国自衛隊」といえば半村良じゃが、本作もそもそもはその続編狙いだったらしい。なんだかんだで直接の続編とすることはできなかったようじゃが、タイムスリップに関する基本ルールは概ね半村版を踏襲しておる。歴史には自己復元能力が備わっていて、個々人レベルの運命はともかく、大筋は大きく変らないようになっているというやつじゃな。本書ではそれに加えて、現代と過去のゆり戻し現象や時間制限、自己復元能力を超えるような大規模な“改変”が起こった場合、現代が“ホール”に侵蝕されて消滅してしまうという拡張ルールが設定されておる。 このあたりはSF的に納得しやすいものとはいえないが、物語展開上のルールとしてまぁOKじゃろぉ。一方で歴史活劇としての側面からすると、織田、斎藤、今川といった大名や公家との関係性といった戦国時代の基本的な枠組みは出てくるものの、それぞれの御家事情(中心となる織田や斎藤はどちらも親族間のごたつきはかなりのものじゃ)などはばっさり割愛されていて、満足のいくレベルではないのが残念じゃ。 というわけで、残念ながら架空戦記ものと割り切って他の福井作品よりも箍を外した、派手な戦闘描写を楽しむのがよかろう。天母城での戦闘はかなりの迫力なので、「プライベート・ライアン」レベルの絵作りがもし日本の映画制作でできるとすれば、凄い見せ場になるところじゃな。 戦闘描写とは別に福井作品の常として、この国の在り方を根っこにしての登場人物たちの生き方のぶつかり合いが描かれるが、正直今回はやや不快感を覚えてしまったわい。なんでじゃろなとつらつら考えてみるに、的場を理解するための肉付けがもっと必要だということに加え、敵味方の思想と情動がごちゃ混ぜになった口喧嘩の帰趨が、歴史(人類の未来)に大きな影響を与えるという構図が、まるで「Z」以降のガンダムのようなんじゃよな。これは気持ち悪いわい。 著者には、ええ加減富野由悠季とは距離をおいたほうがいいぞと忠告しておこう。 著者が冒頭で、本書は通常の小説ではないと断っているように、ある程度やっつけ仕事(としてはかなりハイレベルの内容じゃが)だからじゃろうか、過去誰一人クリアできなかった図上演習を唯一クリアしたという、鹿島の戦術立案能力が高いことを示すエピソードが、まるっきり「スタートレック」でのカークのエピソードをパクッておるぞ。これはいただけないのぉ。 | |||||
| A | サム・ホーソーンの事件簿W | ![]() | |||
| E・D・ホック | 創元推理文庫 | 推理 | |||
| 444頁 | 940円 | ★★★ | |||
| 世界一の頻度で不可能事件に遭遇するとんでもなく暇な診療医、サム・ホーソーンの事件ファイル第四弾。 ――1935年―― (37)春には、銀行強盗の逃走犯の目撃者として、エイプリルに代わりサムの診療所の看護婦となるメリーと出会い、 ・・・「黒いロードスターの謎(The Problem of The Black Roadster)」 (38)五月には、サムの診療所が入った≪ピルグリム記念病院≫で殺人事件が発生し、 ・・・「二つの母斑の謎(The Problem of The Two Birthmarks)」 (39)夏には往診先で誤診による死亡事故の疑いをかけられ、 ・・・「重態患者の謎(The Problem of The Dying Patient)」 (40)夏の終わりに、厳重に守られた家屋内での密室殺人に遭遇し、 ・・・「要塞と化した農家の謎(The Problem of The Protected Farmhouse)」 (41)9月には、ベン・スノウから持ち込まれた昔話の謎を解いた。 ・・・「呪われたティピーの謎(The Problem of The Haunted Tepee)」 ――1936年―― (42)晩夏には、サムの家の向かいに住む少女の不思議な消失が、思わぬ殺人事件に発展し、 ・・・「青い自転車の謎(The Problem of The Blue Bicycle)」 (43)11月にエイプリルの子供の洗礼立会のために訪れたメイン州のホテルで、誘拐事件に巻き込まれた。 ・・・「田舎教会の謎(The Problem of The Country Church )」 ――1937年―― (44)3月、≪ピルグリム記念病院≫が開いたパーティーで、呼ばれていたバンドメンバーが殺され、 ・・・「グレンジ・ホ−ルの謎(The Problem of The Grange Hall)」 (45)5月、巡回セールスマンがサムの眼前で二度にわたって消失し、 ・・・「消えたセールスマンの謎(The Problem of The Vanishing Salesman)」 (46)夏、不審な自動車事故の鍵を握る革服の男の跡を追い、 ・・・「革服の男の謎(The Problem of The Leather Man)」 (47)夏の終わりには、少女が気味悪いと訴えていた屋敷で殺人が起こり、 ・・・「幻の談話室の謎(The Problem of The Phantom Parlor)」 (48)9月には貝焼きパーティーで、ホストの弟がプールで死んだ事件に立ち会った。 ・・・「毒入りプールの謎(The Problem of The Poisoned Pool)」 シリーズ外の一遍は、「呪われたティピーの謎」に登場したベン・スノウが若い頃遭遇した事件を納めておる。 ・・・「フロンティア・ストリート(Frontier Street)」 | |||||
| B | 赤い数珠 Le Chapelet Rouge | ![]() | |||
| M・ルブラン | 創元推理文庫 | 推理 | |||
| 256頁 | 500円 | ★★★ | |||
| C | サム・ホーソーンの事件簿X | ![]() | |||
| E・D・ホック | 創元推理文庫 | 推理 | |||
| 442頁 | 1060円 | ★★★ | |||
| 世界一不可能事件が発生するノースモントの医者、サム・ホーソーンの事件ファイル第五弾。 ――1938年―― (49)トーバー夫妻が語る、建物ごと消えたロードハウスの謎を解き、 ・・・「消えたロードハウスの謎(The Problem of The Missing Roadhouse)」 (50)9月には、本屋の主人から頼まれて、郵便ポストを見張るサムの眼前で思わぬ悲劇が起こり、 ・・・「田舎道に立つ郵便受けの謎(The Problem of The Country Mailbox)」 ――1939年―― (51)春、二十年前に埋葬された棺から真新しい死体が発見された現場に立会い、 ・・・「混み合った墓地の謎(The Problem of The Crowded Cemetery)」 (52)夏、農場で変死した男の妻に呼ばれ、 ・・・「巨大ミミズクの謎(The Problem of The Enormous Owl)」 (53)11月には、足跡のない雪に囲まれたうえ施錠された家の中で、水が毒入りワインに変化した、 ・・・「奇跡を起こす水瓶の謎(The Problem of The Miraculous Jar)」 (54)秋、メリーと出かけた旅行先では不思議な人間消失に遭遇した。 ・・・「幽霊が出るテラスの謎(The Problem of The Enchanted Terrace)」 ――1940年―― (55)夏、≪聖ジョージ女子修道院≫でストークス町長が消え、 ・・・「知られざる扉の謎(The Problem of The Unfound Door)」 (56)1月、ノースモント百年際の衆人環視の中でサマーセット町長が撃たれ、 ・・・「有蓋橋の第二の謎(The Second Problem of The Covered Bridge)」 (57)7月下旬には、カトラー町長が企画したコンテストの案山子中から死体が現れ、 ・・・「案山子会議の謎(The Problem of The Scarecrow Congress)」 (58)9月初旬、開業したばかりの動物病院でシャム猫が殺された事件を解決、 ・・・「動物病院の謎(The Problem of The Annabel's Ark)」 (59)10月、農家の小屋で密室殺人が発生し、 ・・・「園芸道具置場の謎(The Problem of The Potting Shed)」 (60)11月、頭がおかしくなり閉じ込められていた部屋から、女が忽然と消えた。 ・・・「黄色い壁紙の謎(The Problem of The Yellow WallPaper)」 シリーズ外の一遍は、これもシリーズもののようじゃが、主人公の重い私生活が印象的な「レオポルド警部の密室(The Leopold Locked Room)」。 1940年の町長早代わりが明らかに矛盾しておるが、これはサム老人の記憶違いだと好意的に解釈すべきじゃろぉ。 | |||||
| トップ頁に戻る | “本”の目次に戻る | 2010年 1月に戻る | 2010年 3月に進む |