2010年10月
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@図解 科学捜査マニュアル
事件・犯罪研究会編同文新書捜査薀蓄
220頁800円★★★

 推理小説を楽しむ一環として、こういったことも知っておくべきだろうと読んでみた。
 被害者が誰なのか/何時・何処で・何で殺されたのか/目や口といった各パーツから解ること/犯人特定のための方法、の四章立てで編集されている。
 題名に“図解”とあって、図版も豊富に添付されているが、いかんせん白黒で、小さくかつ粗いものが多く、今一つ判りづらいのが残念。

 科学捜査にまつわるエピソードは、いくらでも面白いネタが転がっていそうだが、そっちの方向にはいかない。きわめてまじめな薀蓄紹介本だ。

A知らないではすまない中国の大問題
サーチナ総合研究所アスキー新書政治経済薀蓄
191頁743円★★★

 ついつい手にとってしまう中国ウォッチ本だが、私にしては珍しく、最新の状況(今年)に鑑みた内容である。

 主に経済面から中国(=共産党)の考え方を解説している。想定読者層は中国展開に悩む経営者、または担当部門におる人向けのようだ。
 内容的にはたしかに中立の立場からと書かれているし、もちろん反日の内容ではないのだが、全体的には、理不尽で不可解にみえる中国の対応にも、共産党の立場からはこれこれの理由があるので、いちいち目くじら立てずに対中国戦略を考えようといった立ち位置で書かれている。
 目先の企業経営としてはやむをえない処もあるが、そもそも阿呆な経済至上主義に腹の立つ私にとっては、少々イライラする内容だ。

 企業はともかく政府の方は、――本書の内容を理解することは重要だが――目先の経済に目がくらんだ経済諮問会議だかなんだかのアホウな提言に左右されず、毅然とした外交をしてもらいたいものだ。

 結局のところ政府がしっかり考えないといけないのは、初期のR&Dから採算を取るまでの巨大な谷を渡りやすくするために、インフラ整備や規制緩和に尽力すること、そして今後も最新技術でリードしていくための教育だ。
 そして教育は、基礎教育をしっかりすることはもちろん、自国を誇りに思えるための教育をする(=頭脳流出を抑制するために)ことだと思う。

B信長と消えた家臣たち
谷口克広中公新書歴史薀蓄
259頁800円★★★★

 信長関連の本の中ではかなりエキサイティングな薀蓄本なのだが、内容紹介としては、先に読んだ「信長軍の司令官」と同じになってしまう。まぁそれだけ“消えた司令官”が多いということでもあるが・・・。

 広義での家臣といってよいのか、岡崎信康(もちろん徳川家康の嫡男のことだ)の退場についても頁が割かれているのが印象的だった。
 本書では、通説では酒井忠次が信長に対して“告げ口”したことになっているが、彼は後年に至るまで何等咎めを受けていないし、そもそも家康を美化しがちな徳川創業期の史料はあてにならないとの見解だ。ではどうだったのかといえば、「当代記」(←どんな史料なのかはわからない)ではまず家康と信康の仲が悪くなり、家康の方から信康の義父でもある信長に相談をもちかけ、是非に及ばずと言ったらしい。なるほどそっちが自然な気もする。

Cチャーリー・チャンの活躍
 Charlie Chan Carries on
E・D・ビガーズ創元推理文庫推理
389頁860円★★★

 米国発の世界周遊中のツアー客が、ロンドン滞在中のホテルで絞殺された。スコットランド・ヤードのダフ上席警部が捜査を開始するが捜査は難航、ツアー客たちは世界周遊を続けることになるが、はたして一人、二人とさらなる殺人が・・・。そしてハワイの地でダフ警部が襲撃を受けて負傷、彼が執念を燃やした犯人逮捕は、ハワイ警察のチャン警部が引き継ぐことになる・・・。

 本書が発表された1930年当時は、それまで英国が中心だった推理小説に、ヴァン・ダインエラリー・クイーンたち米国勢が大きく名乗りを挙げた時期だが、本書もその流れの中に位置づけられる。とはいっても、フーダニットで興味は引っ張られるものの魅力的なトリックがあるわけではなく、物語の進展とともに被害者と見えざる犯人の過去の関係が顕わになっていくという展開。どちらかというと、超人性は低いもののキャラで引っ張るシャーロック・ホームズものに近い感じだ。

 舞台背景は執筆時の1930年前後で、この世界恐慌の中で世界周遊に出かける奴等に驚かされるが、アメリカ人作家の書いた推理小説で、中国人探偵の主人公、日本人の助手という取り合わせが面白い。このカシマ(原文ではカシモらしい)は、いかにも召使いっぽい一途さをみせて少々ナンだが、チャーリー・チャンともども愛すべきキャラクターといっていいだろう。
 古き良き時代の推理小説として、読んで損はない一冊だ。

Dローマ帽子の謎
 The Roman Hat Mystery
E・クイーン創元推理文庫推理
432頁700円★★★

 悪徳弁護士がローマ劇場での観劇中に殺された。観客の中には動機を持つ者も見つかるが、決め手とはならない。捜査の陣頭指揮をとるリチャード・クイーン警視とともに、現場にかけつけたエラリーは、正装している被害者が当然身につけているべき帽子が現場にないことに気付き、論理を進めていく・・・。

 このあたりの古典は、昔図書館で読んだものが多いので、あらためてコレクションに加えながら再読していこうと思っている。しかし見事に内容を忘れておるのがなんとも悲しい。

 大御所エラリー・クイーンの処女作にして、いわゆる「“国名+物品”の謎」で名付けられた国名シリーズ。“国名”のほうはほとんどストーリーに関係ないのがご愛嬌だ。
 という訳で、本作の謎の中心は帽子。ホームズの時代から30年以上経っているこの時代でも、どうやら正装には帽子が必要で、正装した被害者の周りにあるべき帽子が見つからないという一点から推論を進めて、犯人へとたどりついてしまうのが見事。
 しかし<ネタばれ反転>バリーは劇場の備品の帽子を私物化していたということか、今ひとつ腑に落ちない。

 世界大恐慌の年である1929年、まだまだ人種差別がごく自然で常態なようで、クイーン警視のコメントには、犯人の動機に絡むこの差別を肯定する(正確に言うとまるで問題視していない)ようなのが興味深い。

E記憶と情動の脳科学
 Memory And Emotion
J・L・マッガウ講談社BLUE BACKS生物薀蓄
281頁980円★★★

 久しぶりに読んだ脳科学もの。
 脳科学の研究史の趣が強くて、当時の実験内容の説明にもかなりの筆が割かれている。丁寧でやわらかな記述で、なんとなく著者の誠実な人柄がうかがわれる。アテにはならないが・・・。

   海馬LTPにも触れられるが、副題に情動とあるように、強い感情と記憶の増大についての話がメインであり、海馬よりも扁桃体に焦点があたっている。

Fキリスト教は邪教です! 現代語訳「アンチクリスト」
 Der Antichrit. Versuch einer Kritik des Chiristentums
F・W・ニーチェ講談社+α文庫宗教薀蓄
176頁800円★★★

 インパクトのある題名に惹かれて購入したのだが、著者のF.W.ニーチェとは哲学者のあのニーチェだったとは驚きだ。
 “神は死んだ”の文句くらいは知っていたが、それにしても、本書のキリスト教批判はおそろしい。キリスト教徒でない私にとっては、ぶっちゃけて言ってしまうとそのとおりかな、と思えるところも多いのだが、それにしてもキリスト教徒、特に僧侶階級に対してはクソミソ扱い、罵詈雑言を浴びせかけている。

 えらくくだけた口語的な翻訳ながら、内容的には基本的に原文に忠実だというのは訳者の弁だが、これって超訳なんだよね。

GNOMOKEN 野本憲一モデリング研究所
野本憲一HOBBY JAPAN模型薀蓄
161頁1905円★★★★

 買うだけ買って読んでいない模型のHow to本がえらく増えてきた。もちろんHow to本なんてものは、読むだけ読んでも実践しなければなんにもならないのだが、読まないことには始まらないのも事実、この手の在庫を一通り読んでいこうとする次第。

 本書はホビージャパン誌に同タイトルで連載されたシリーズをまとめたもので、90年代に同じ形式を踏んで出版されたMAX渡辺「パーフェクトモデリングマニュアル」の、00年代を迎えて更新された、正当な後継本といったところだ。

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