| 2011年 8月 | |||
| トップ頁に戻る | “本”の目次に戻る | 2011年 7月に戻る | 2011年 9月に進む |
| @ | シャドウ・パペッツ Shadow Puppets | ![]() | |||
| O・S・カード | ハヤカワ文庫 | ― | |||
| 536頁 | 1000円 | ★★★ | |||
| その権限はバガー戦役時とは程遠いものの、エンダーの兄ピーターはヘゲモンの地位に就任した。中国政府がアシルを見限り、彼を処刑するという情報を得たピーターは、アシルの奪還作戦を指示する。アシルをも使いこなせると踏んだピーターに対して、身の危険を感じたビーンはペトラとともに身を隠すが・・・。 ビーン(豆)とあだ名されるほど小柄だった彼は、巨人症のごとく成長し続けている。 ペトラとの関係は今や友情を超えるものだったが、自分の将来を見越したビーンは二の足を踏んでいる。本書はアシルVSピーター、アシルVSビーンの結末に加えて、ビーンとペトラの関係もファンにとっては読み処だろう。よもやビーンが、“○○”なんて楽しい発言をするとは・・・。 とはいえ、結果的に自分たちの<ネタばれ反転>受精卵をなにがなんでも取り戻すと決意するビーンの背後に、著者の思想があからさまに見えるようで、少々後ずさりしてしまった。 | |||||
| B | ゴーレムの檻 三月宇佐見のお茶の会 | ![]() | |||
| 柄刀一 | 光文社文庫 | 推理 | |||
| 424頁 | 705円 | ★★★ | |||
| D | 広重殺人事件 | ![]() | |||
| 高橋克彦 | 講談社文庫 | 推理 | |||
| 351頁 | 540円 | ★★★★ | |||
| 津田が安藤広重に関する新たな論文を発表した。天童広重と呼ばれる一連の肉筆作品に関するものだ。しかし一般的には、天童広重という実存作品もありながら、広重が実際に天童へ行ったことがあるのかは、史実上疑問視されてきた。それを証明する絵日記が発見されたのだ。さらには広重作の豪華な朱富士三幅が発見され大きな話題となるが・・・。 今回のネタは、いち早く<ネタばれ反転>勤皇活動に励んでいた安藤広重が、安政の大獄の始まりにタイミングを合わせて<ネタばれ反転>幕府に暗殺されていた!というこれまた驚愕な内容。 ここだけを見ると、かなり突拍子もない説のようだが、本書を読んでいくと――この説を補強する“史実”のどこまでが、小説として著者が付け足したものかが定かでなくなってしまうのだが――納得できてしまうところが恐ろしい。 まぁこの説自体が間違いだとしても、安藤広重は定火消同心(常識とまではいかないが、一般的に知られていること)だから、町火消とは違って<ネタばれ反転>江戸城の防衛が本職で、かつ銃の扱いのプロであった!などと読むだけでも興奮だ。 この大ネタも非常に魅力的なのだが、それでも本書を読み終わって数年経った時点(書き忘れたが、本書も再読である)で印象に残っていたのは大きな悲劇のほうで、肝心の広重ネタのディテールは完全に忘却していた。 「写楽殺人事件」の初登場時は普通に活発な印象の冴子が、えらくあっさりと<ネタばれ反転>自殺してしまうことや、浮世絵以外のことはモジモジくんの津田が、<ネタばれ反転>遺書でさえオレ表記であることに違和感を覚えるものの、この悲劇は事件のトリガーでもあるし、作品としての完成度を上げているようには思う。他にも歴史薀蓄だけでなく、浮世絵研究の現状や美術雑誌と美術商の癒着等の問題点を塔馬の口を借りて問題提起したりと、なかなか読み応えのある傑作だ。 しかしそれでも――能天気に小説を楽しみたい私としては――こんな悲しい顛末を用意しなくても、“広重殺人事件”は構成できたんじゃないかと感じてしまう。 | |||||
| F | オホーツク街道 街道をゆく38 | ![]() | |||
| 司馬遼太郎 | 朝日文庫 | 紀行/歴史薀蓄 | |||
| 402頁 | 600円 | ★★★ | |||
| 昨今は沖縄出身の芸能人が急増していることもあってか、沖縄方言を目に、耳にすることが多い。それに較べて、北方のアイヌに関する情報はほとんど聞かないというのは寂しい状況ですな。 ところで南の琉球人と聞くと、北はアイヌ人と比較連想してしまうのが、意外にアイヌの文化が成立するのは、鎌倉時代のあたりらしい。 東北地方と違って、津軽海峡で隔てられた北海道には米の文化が入ってくるのが遅く、すなわち弥生文化による“汚染”が長らく起こらなかった。そのために縄文時代が長く続いたのだが、北海道考古学の用語を使うと、縄文文化→続縄文文化→擦紋文化→アイヌ文化と繋がるらしい。つまり擦紋文化というのがアイヌ文化の直系の先祖らしいが、この同時代には、別系統(イヌイットに近い?)の漁労メインなオホーツク文化というのも北海道東北部沿岸に広く分布していて、こちらの文化の流入もあったようだ。 他巻に較べて、メジャーな歴史に関するトピックが極端に少ない(なにせネタ元のほとんどが考古学だから)ので、とっつきにくい感もあるが、知名度はともかく、アイヌその他の研究もおろそかにされていないようで嬉しい。(もっとも本書には90年代初期までの情報しかないが・・・) | |||||
| トップ頁に戻る | “本”の目次に戻る | 2011年 7月に戻る | 2011年 9月に進む |