2012年 7月
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@平家(三)(四)
池宮彰一郎角川文庫歴史
365頁/340頁629円/629円★★★

 前二冊があまり面白くなかったので、なかなか読む気に(買う気に)ならなかった残り二冊だったが、今年の大河ドラマ「平清盛」なので、このチャンスにとばかり購入しておいたものだ。

 ドラマでは先ごろ平滋子(=成海璃子)が死んだが、第三巻は丁度その後から始まる。いよいよ鹿ケ谷の陰謀から源平合戦へ進む流れなので、前二冊より読みやすく、意外にすらすら読了することができた。

 元々群像劇であって、平清盛が視点人物として中心に居座るほどでもなかったのが、清盛は三巻の中途で死去し、代わって第四巻の主人公となるのは、平家一門の誰かではなく、なんと後白河法皇であった。
 軍事面での主役はやはり源義経ということになるが、その義経は赤心に後白河を尊崇する人物として設定されており、なにより金売り吉次を通して藤原秀衡をも含めて、後白河の深謀遠慮のもとに動いているのである。
 これはなかなかの興味深い設定ではあるが、後白河が義経に語って聞かせる“民草に少しでもよき世を云々”とまでいくと、少々鼻白んでしまうところだ。

 前二巻よりは読み進めやすかったとはいえ、「遁げろ家康」「高杉晋作」で味わった面白さには、遠く及ばない。これが盗作疑惑から離れるために、ことさら司馬遼太郎風味を遠ざけた結果ならば、非常に寂しい。
 具体的なことは知らないのだが、文章や構成の雰囲気が似てるというだけならば、司馬遼太郎亡き跡を埋めることのできる逸材だったのだが・・・。
 その著者もすでに亡くなってしまった。

(2012/11/9記載)

Aおとり捜査官4 嗅覚
山田正紀朝日文庫推理
398頁860円★★★

 芝公園界隈で連続放火事件が発生。そのよう撃捜査(待ち伏せ)の人員として志穂と袴田も駆り出されていた。放火犯が獲物にかかるのをジリジリしてよう撃班が待つ中、公園を中心に周囲は突如停電し、それと同時に火の手があがる。混乱する現場の中心の芝公園では、さらに若い女の全裸死体が発見…。その死体は髪の毛以外は、念の入った脱毛処理を全身に施したうえに、たっぷりの日焼けオイルで、どこかプラスチック染みた印象を周りに与えるものだった。さらにその横には同様のポーズのユカちゃん人形が置かれていたが…。

 これがユカちゃん人形連続殺人事件の幕開けとなるが、今回の(も、か?)不可能現象は、犯人の計画的な作為といったものはなく、複数の事件の複数の犯人の思惑と偶然が重なった結果であった。モジュラー形式の捜査小説として、なかなかの佳作だと思うが、犯人と探偵の知力の一騎打ちを期待して読んでいる向きは、アレッと思ってしまうかもしれない。わたしだ。

 犯人との対決で思い出した。前巻がまさにそういった流れの傑作だったが、終段の北見志穂は走り過ぎていたキライがあった。彼女のキャラにそぐわない気がして、本作でそこに対しての何らかの説明があるものと思っていたのだが、一切そんなことはなかった…。アレッ?

(2014/3/28記載)

B週刊HMSヴィクトリーを作る2
DeAGOSTINI帆船薀蓄
1190円

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この号で作るのは、13番、14番フレームと錨。



ひとつのフレームは3つのパーツからなっていて、簡単に組みあがるのだが
これから当面は同じ作業を黙々と繰り返すことになる。


前号で組んだ船首に13番、14番フレームを接着した状態。 90度で固定するように気をつけるべし。

本号では、錨を組み立てるのがメインのワークだ。
ニ片の木製パーツを接着する前に、それぞれ中央部の2本の線(↑上の写真でみえる)
の間を1mm程度彫れという指示が…。

しかし意外に作業は簡単だった。
ここに錨本体の金属パーツを挟んで接着する。危うく向きを間違えるところだった。

二種類のロープを使用するが、巻き方、結び方も詳しく説明があって なかなか楽しい作業だ。あっという間に完成。



師匠が助手Yに贈ってくれた重戦闘Ver.ホイホイさんに 持ってもらいました。

ヴィクトリーの完成写真をみると、木の部分も黒く塗装されているようなんだけど
本号にその指示はなかったので、とりあえずパスしておく。
あとでまとめて塗るのかな。

ちなみに錨は4本だ…。


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(2012/9/3/記載)

Cラスト・ヴァンパイア
 The Last Vampire (2001)
H・ストリーバー新潮文庫ホラー/アクション
596頁895円★★★★

 ミリアムは百年に一度行われるコンクラーヴェに出席するために、タイの地を訪れた。ところがあろうことか、獲物たる人間によって聖なるコンクラーヴェは荒らされ、多くの同胞が殺されるという異常事態に遭遇する。動揺するミリアムは、つい獲物の死体を放置するという失策を犯してしまい、ヴァイパイアを狩る人間の組織に追われることになるが…。

 「薔薇の渇き」に続くなんと20年ぶりの続編。
 ヴァンパイアとヒトは別種の生物で、実はヴァンパイアが太古の昔から獲物であるヒトの進化を操作してきた。しかし産業革命以降の爆発的な科学技術の発展やヒトの人口増加にはついていけず、緩やかに滅びの道を歩んでいるという背景設定。
 わたしには執筆当時に立ち帰って評価できるような知見はないのだが、今となってはまぁ特に珍しい設定ではないだろう。
 ところが、本書の語り口というか立ち位置がなんとも面白いのである。

 本書では彼らの存在に気付いているポール(討伐部隊の隊長)からの視点描写もあるので、本作にはヴァンパイアという言葉もかなり用いられるが、ミリアムが同胞を呼ぶ呼称は前作から一貫してキーパー、たまにブリーダー!である。
 獲物たる人間の血をより美味にするために、キーパーが戦争や飢饉などを裏で操って、種族の移住といった大規模に計画的交配を行っていたわけだ。

 キーパーはそれを品質管理と呼ぶらしい。
 いやぁ著者も楽しんで書いていたに違いない。

 本シリーズでのキーパーは、生命力で大幅に人類を上回っているものの、人類が持てるようになった破壊力の大きな武器の前では不死身ではない。本作では、そう言った装備で武装した人間側の吸血鬼殲滅部隊が登場するので、てっきり「エイリアン」から「エイリアン2」のパターンの仕様変更かと思ったが、そうでもないのがなかなか一筋縄ではいかない処。

 中盤以降の展開には、おいおいおいを連発してしまったが、考えてみれば吸血鬼というモンスターの属性は、暴力と恐怖に加えて耽美、頽廃である。本書はそういった個々の属性を高いレベルでまとめあげた傑作と呼んでもいいだろう。

 最後の最後においおいおいとまたまたウッチャリを噛ましてくるので油断は禁物である。

 新潮さん、本書の売れ行きはひどく悪かったのでしょうか。
 本作の次の年に発表されている続編“Lilith's Dream”が未だに邦訳されないのはなぜ…?

(2015/1/30記)

D図説 妖怪画の系譜
兵庫県立歴史博物館
京都国際マンガミュージアム:編
河出書房ふくろうの本妖怪薀蓄
144頁1800円★★★★

 主に江戸時代から現代までの妖怪画の変遷を豊富な図版で紹介している。
 江戸時代というと、迷信に満ち満ちた時代だと思いがちだが、少なくとも都市部においては妖怪を笑い飛ばす土壌があったようだ。

 平安時代に百鬼夜行という現象というか、治安の悪さや社会の荒みを表す言葉があったが、「百鬼夜行絵巻」というと、室町時代以降、多くは江戸時代に描かれたものらしく、ユニークな付喪神や妖怪がにぎやかに踊り並んでいて、怖さなどは微塵もない。明らかに、古くは「鳥獣人物戯画」に至るマンガの源流である。

 他にもいろいろと興味深い絵巻その他が紹介されているが、例えば「神農絵巻」という絵巻物はギャグ漫画である。神農というのは中国の伝説的な帝王で、この神農が桃太郎よろしく鬼(妖怪)を倒す流れなのだが、この神農の武器というのが、なんと放屁なのだ。光線よろしく放射される屁が、色鮮やかに何場面も書かれていて爽快である。

 妖怪漫画というと、なにはさておき水木しげるの名が挙がる。
 彼の妖怪デザインは鳥山石燕を参考にしているものが多く、石燕流の言わば中興の祖といった感もあるが、最近のマンガでは、ユーモアを通り越してペット化のような多様化も見られ、こちらも興味深い。

(2012/11/2記載)

E森博嗣の道具箱
森博嗣中公文庫エッセイ
203頁952円★★★

 読み手の錯誤をコントロールする叙述トリックのいくつかにおいて、著者のミステリのデザイン力は大したものだが、真面目なトリック(というと語弊があるが)というか、終盤の謎解きにおいては、印象の薄い作品が多い。また時には、キャラ萌え小説としてのスパイスが鼻につきすぎることもある。
 であるのに、著者のミステリをなんだかんだで読んでしまうのは、よく“理系的”と評される目線と、それに沿った文章のキレである。なのでわたしには、本書のようなエッセイのほうが向いていると言えるだろう。

 何らかの目的を(効率良く、精度良く)達するための手段としての道具だが、良い道具は時に人の視点を高くするなんてところがいいですな。

(2012/10/8記載)

F週刊HMSヴィクトリーを作る3
DeAGOSTINI帆船薀蓄
1190円

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本号の作業は船首隔壁とキール、そして下左図でみえる小さい集合部品はカロネード砲
本号では途中までを作る。

ちなみに同図にみえるように、本号にはピンバイスが付属している。

  

本号の作業で、船を作っている感じがぐっと沸いてきた。
船首隔壁二枚とキールを接着する。
キールは補強板もついていて、写真のように紙を挟んで(跡が残らないように)
クリップ等で固定するように指示が。



さあ本号のメイン作業がこのカロネード砲だ。

前号でも書いたが、これが接着を間違った写真。

11か所も付属のピンバイスで穴を開けるのだが、早速0.7mmのドリルを折ってしまった。

写真では判らないが、11か所のうち両サイドに横から開けた穴長は3mm指定なので
ドリルの先端3mmから根元をマスキングテープで覆っている。
覆っていない真ん中のピンバイスは以前から所持していたもの。

砲台の接着間違いは修正したものの、穴だらけになってしまった…。


まあまあリカバリーできたということにしておこう。
砲軸の受けパーツは、折れ線の刻印された平板をコの字に折って、ラッカーの黒で塗装している。
カロネード砲の細々したパーツが他にも付属しているのだが
本号での作業はここまでだ。

ついでに、たしか届いたのが7月だったと思うのでここで紹介しておく。


全号予約の特典:クリップ付き拡大鏡




言うほど役に立たない感じだけど、それなりに嬉しい。



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(2012/9/18記載)

G鳳凰の黙示録
荒山徹集英社文庫時代伝奇
546頁933円★★★

 李氏朝鮮十五代国王光海君は、自身の政権安定の名目で、江華島に流刑させていた永昌大君の忙殺を命じた。しかし命ぜられた琴七剣を束ねる紅蓮は、わずか8歳の永昌大君を蒸し殺すという非道に追随できず、彼の命を救ってしまう。
 光海君とその寵臣李イチョムは、裏切った琴七剣ごと永昌大君を葬るよう今ひとつの組織魔別抄に命じ、ここに李氏朝鮮のふたつの裏組織の凄絶な闘いが始まる。そしてこの暗闘は朝鮮半島のみならず、日本、中国の歴史を揺るがす龍族と鳳凰族の争いへと繋がるものだった。
 時に1614年。海を渡った日本では大阪の陣が間近となっていたが・・・。

 ベースは山風忍法帖ばりの異能者チーム同士の暗闘という趣だが、「甲賀忍法帖」よりは「柳生忍法帖」に近い。琴七剣のメンバーが全員女だと設定も似ているが、それぞれが剣の達人とはいえ、魔別抄の能力と較べると著しいレベル差があるのだ。なにしろ魔別抄ときたら、特に前半の奴等は怪獣使いである。初戦を飾って琴七剣の4人を屠る権妃こそ、その能力は瞳術(これはこれで、「甲賀忍法帖」のもろパクリで問題あり・・・)だが、次に登場する火炎獣伯はなんとプルガサリを使役するのである!といっても大方の人にはなんのこっちゃ解らないだろうが、あの金正日がプロデュースした?という北朝鮮の怪獣映画として有名だ。プルガサリ自体は、昔から朝鮮に伝わる妖怪ではあるらしいが、著者のソースはきっと映画のほうだろう。

 続く虎貌卿ルベクという虎面の獣人が眼帯をしている!ことでも、著者のイメージソースが解ろうというものだ。もちろん<ネタばれ反転>タイガージョーのことを指している。
 よく考えると、怪獣使いという時点で、「仮面の忍者赤影」のオマージュになっているわけだ!
 この視点に今書きながら気づいたことは嬉しいが、読んでいる最中は、荒山先生の暴走度合いには少々モチベーションに水を注されてしまった。伝奇色豊かな歴史小説(あるいは歴史薀蓄たっぷりな伝奇小説)の分野で、山田風太郎隆慶一郎に比肩できるせっかくの才能なのだから、もう少しばかり自重して頂けないものだろうか。

 本書に関しては、いつもの暴走に加えて、実はもう一点不満がある。
 中盤以降物語の舞台は日本へと移るが、その早々に登場する真田十勇士の扱いである。
 なんとそうきたかぁ〜さすがは荒山先生!と膝を打っただけに、「魔風海峡」との整合は完全に度外視というのは、かなりの衝撃だった。

 ところで、大技揃いの魔別抄にあって、四天王寺成典のトンデモ技って結局のところなんだったっけ?
 このあたりのヌケヌケとした味も、山田風太郎味があってすばらしい。

(2012/10/8記載)

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