2012年9月
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@ビジュアル版逆説の日本史1 古代編上
井沢元彦歴史薀蓄
79頁1300円★★★

A週刊HMSヴィクトリーを作る6
DeAGOSTINI帆船薀蓄
1190円


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今号の作業は、18番、19番フレームと12ポンド砲(2台目)。
1台目と違って、コストダウンでトレイはなし。袋入りで供給される。

 

よく考えたら、こんな砲を104台以上作らなあかんことにあらためて気づいた。
ちょっと遠い目をしてしまう…。

これはちまちま毎回作ってられないので、12ポンド砲は今回はパス。
5台ほどの単位でまとめて作ることにする。

実は今号の作業のメインは帆船本体ではなく、やすりを貼る補助具であった!

 

長方形の板3枚をずらしながら木工ボンドで接着。
加圧してガッチリ固めてから、階段状になった短辺側を斜めに削って…



100番の紙やすりを貼りつける。
作例では横面も貼っているのだが、要らん気がしたのでパス。


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(2012/10/27記載)

B週刊HMSヴィクトリーを作る7
DeAGOSTINI帆船薀蓄
1190円


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今号の作業は、20番、21番フレーム。



前半分のフレームはこれで終了だ。




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(2012/10/27記載)

C蒼獣鬼 闇狩師
夢枕獏徳間文庫伝奇アクション
637頁733円★★★★

(1)妄霊篇
 雲斎が台湾に渡った次の年の六月、九十九乱蔵はまたもや円空山に呼ばれた。相変わらず三蔵の友人の件がまだ片付かない雲斎に変わって、鳴神真人という少年の憑物を探って落としてほしいという案件だ。乱蔵は早速真人に会って話を聞くが、彼の気に食わないことをしたものには災いが降りかかるという。この裏には真人の父であり、いざなみ流、いざなぎ流陰陽師の中で随一の使い手であった鳴神素十が絡んでいるという 。一方伝説の霊能力者戸田幽岳に呼ばれた玄角と加座間典善は、禍々しい瘴気に取り巻かれた凄惨な状況の中、幽岳に仕掛けられた呪詛から彼を守る仕事を請け負うことになるが…。

(2)異神篇
 餓虫、蟇子等に拉致された真人と小百合を追って、乱蔵と鳴神素十は高野の鬼門にあたる霊応山餓哭庵へと向かう。そこには素十の策略で有住ら五門会も引き寄せられていた。瘴気漂う餓哭庵で待ち受ける羅門。真霊王国復活のために戸田幽岳が真人を使って企む変性女子とは…。

 短編であれば、「蛞蠡虫」と名付けられたであろうが、闇狩り師シリーズ初の長編ということで、著者の力も相当に入っている。大本出口王仁三郎からフィーチャーされたと思しき戸田幽岳と、鳴神素十の神霊界の巨人二人が構想し、因を撒いたストーリーはかなり複雑で、ちょっと整理しないと、誰がなにを企んで話がどう進展したのか、途中でわからなくなってしまうくらいだ。わたしも再読を始めた時点では、怒涛の暴虐さをみせる羅門となんとも胸糞の悪い幽岳の四天降魔法しか記憶に残っていなかった。
 いや、羅門の禍々しい凶暴さをたっぷりと見せつけたあとのVS九十九乱蔵のシーンは最高の演出だし、短編では力を出し切れていない印象の乱蔵が、本気度120%で挑む大作ではあるが、わたしの好みからすれば少々血腥すぎるところが残念。

(2013/5/1記載)

D闇狩師1
夢枕獏徳間文庫伝奇アクション
395頁648円★★★★

(1)怪士の鬼
 依頼主の別荘へランクルを走らせていた九十九乱蔵の前に、数人の男たちに追われる女が現れた。乱蔵は女を助けるが、逆にランクルを奪われてしまう。どうやら乱蔵の雇い主が絡んでいるらしい。その丹波善之助と娘は、強烈な生霊に呪われているようだが…。

 記念すべき第一作だというのに、なぜか記憶に残っていなかった。九十九乱蔵の巨体に力と技を印象付ける導入部に加え、ランクルの見せ場もあり、早くも玄角まで登場していた。憑物のレベルも凶暴だというのに印象が薄かったのはなぜだろう。
 乱蔵が台湾で仙道修行していたというのは、たしかキマイラシリーズでも猩猩の台詞で言及されていたが、女で失敗して祟られ屋になったとは…。もしかしてそのあたりが「闇狩り師 キマイラ天龍変」ですか?
 乱蔵の超人っぷりが少々アレだ。
 <ネタバレ反転>神経ガスでの襲撃に10分ほども息を止めるのは、仙道っぽい気もするので百歩譲る(糜爛性ガスでなければ、息を止めてやり過ごせるのかな?)にしても、 身長2m、145Kgの体で助走もなしに男三人の頭上を跳び越えてはいけません。

(2)蛟
 渋谷で血の臭いを嗅いだ乱蔵は、ビルの隙間の路地で、強烈な妖気を放つ黒い影とに邂逅した。男を喰らっていたその影はビルの上へと消えたが、その後半月ほどの間に三人が犠牲になる。そして乱蔵には、“みずち”というのを知っていますかと問う女の電話が…。

 こちらはよく覚えていた。
 冒頭の満の登場シーンのインパクト、蛟法の気持ち悪さ、そして乱蔵のランクルを使ったトンデモパフォーマンスが強烈だ。

(3)くだぎつね
 知人志村が、尸解仙のようなものになってしまったという。娘からの依頼で安曇ガ原へ向かった乱蔵は、“苦蛇”だという診立てのもと、それを落とすことに成功するが、そこにくだ使いの男が現れる…。

 「蒼獣記」でも登場する加座間典膳登場。
 “苦蛇”を落とすために使う犬を手にかける乱蔵の優しさが印象的だ。
 いや、やはりブルーバードを横転させるトンデモパワーがさらに衝撃的か。
 本編と「蛟」はともに依頼主が女だが、開口一番、美人だなとぬけぬけと言っております。

(4)蘭陵王
 アベックやガードマンを襲って重傷を負わせる少年たちの事件が起こっていた。そのリーダーと思われる少年は、奇怪な面を被っていたというのだが…。

 筋立ては完全に忘れていたが、ただただカワサキ400を人間ごとスープレックスにかけるシーンだけは、これははっきり覚えていた。
 今回乱蔵は、蘭陵王の面や装備を密輸した人物に依頼された筈だが、いいのかな、<ネタバレ反転>衣装をもやし面を破壊してしまったが…。

(5)白猿伝
 登山中の女子大生二人組の一人が消え、一人は発見された。しかし様子はおかしく、なにかに憑かれたのではないかと乱蔵に話が回ってきた。乱蔵は遭難現場へと向かうが、途中で茫洋とした不思議な青年に出遭う…。

 特殊な段取りを踏まねば子孫を残せない?猿(かくえん)にも悲哀を感じるが、周りはさらに哀しい。短編なので、投げ出された感じで終わっているが、おそらくは孕まされたであろう雪江や、(気づいていないが)<ネタバレ反転>目の前で父親を殺された田沼楊二は、その後まっとうに暮らしていけるのかな。

(6)?士(ひょうし)
 乱蔵が知り合った高野丈二というムエタイ使いの男は、精悍さと明るさと強烈な自信に満ちていた。その数日後、荒らされた乱蔵の部屋には高野からの置手紙が残されていた。指定の場所に向かう乱蔵は、恐るべき拳法の使い手斎文樵にまみえる。

 なんといっても、高野と斎という二人の強力な憲法の使い手のコントラストが魅力的だ。
 この話には、いわゆる魑魅魍魎の類が出てこない。
 台湾から来た刺客斎文樵の双勁はフィクションだと思うが、それぞれの強さを秘めた三人の戦いが、後の「獅子の門」「餓狼伝」につながっていったのだろう。
 川原正敏「修羅の門」――この題名や主人公の名前からして、夢枕獏を意識しているはずだが――の第一部で、片山が使う菩薩掌をみたときには、なんやこれ、闇狩り師のパクリやんけと思った。ところが陸奥九十九の技の受け方が九十九乱蔵とは真逆で、そーきたかと当時声をあげた記憶がある。
 さらに余談だが、随分と時を経た今年、「修羅の門、第二門」に蘭陵王までが登場した。
 おそらくはリスペクトしてのオマージュなんだろうが、あの漫画では、徹底して発勁をまやかしだと割り切っているところが興味深い。

(2012/10/29記載)

E週刊HMSヴィクトリーを作る8
DeAGOSTINI帆船薀蓄
1190円


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今号の作業は、目先を変えて、完成品を飾る「船台」と
おなじみ「12ポンド砲(その3)」←パス。



鉛筆で引いた基準線は、内側に補強板を貼りつけるため。





↑こんな感じでとっとと組んでしまう。↓



さて、久しぶりの塗装だ。
デアゴの指示では、和信ペイント水性オイルステイン
リキテックスグロスバーニッシュとなっている。

ニスならなんでもいっしょやろ?とばかりに
ホームセンターに適当なものを探しに行ったが
オイルステインの名称を見かけたので購入した。
水性を買ったつもりが油性だった。

ところで、“水性”の“オイル”ステインって妙でないかい?

ちなみに、現在これを書きながらニスとオイルステインの違いを調べてみたら
これがまるで別物だった。(お、おそい…)
ニスは表面にいわゆる塗膜を作るのだが、オイルステインは木材に浸透する。
染物のイメージか。
だから表面の保護にはならない。
その目的のために、さらにグロスバーニッシュを塗るように指示がある訳だ。



グロスバーニッシュは、そのままのものを買おうと近所の画材屋に行ったのだが、
置いてなかったので、リキテックスのグロスポリマーメディウムというのを買った。
同じメーカーなのに違う名称なのがやや気になるのだが、それぞれ製品名の下に

グロスバーニッシュ…つや出し仕上げ用保護ニス
グロスポリマーメディウム…つや出しメディウム/保護ニス

と書いてあるので、まあ似たようなものだろう。



まずオイルステイン(マホガニー)を塗って



乾いてからグロスポリマーメディウムを塗る。
きれいにつや出しするためには、もう何度かグロスポリマーメディウムを塗り重ねて
軽くペーパーがけするほうがよいと思うが
とりあえずはまぁ、こんなところでいいだろう。

気が向いたら、そのうち追加作業しよう。


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(2012/12/11記載)

F司馬遼太郎の戦国T 信長と秀吉、三成
週刊朝日編集部朝日文庫歴史薀蓄
285頁660円★★★

 司馬遼太郎の4作品、「国盗り物語」「新史太閤記」「播磨灘物語」「関ヶ原」に則って章割りされているが、元々朝日文庫街道をゆくシリーズという財産を持っている。そのシリーズ全43巻は、日本中を廻りながら(かなりの外国も含むが)著者が自作品に、日本史に、日本人に思いを馳せるというスタンスだった。
 本書は2000年代になってのその更新版というスタイルである。
 もちろん司馬遼太郎は1996年に亡くなっているので、本書は週刊朝日の編集部の独自対応だ。

 悪く言えば、まだ司馬遼太郎の名前で商売しているのかという言い方もできるが、「街道をゆく」も特に初期の巻からはすでに30年ほどが経過しているので、前回の“街道”からは土地もヒトも大きな更新があったり(なかったり)して、なかなか興味深く読んだ。
 関連する十数点の風景が口絵としてカラーで収められているのも魅力だ。

 第三章の主題となっている「播磨灘物語」の主役といえば黒田官兵衛孝高。いよいよ2014年の大河ドラマが始まった。
 まだまだ楽しみではあるが、第一話はかなり硬かったようだ。この先うまく進行するか心配である。
 あまり官兵衛を反戦国的な善人に設定し過ぎてしまうと、晩年に中津でやった宇都宮家の謀殺を描きにくいと思うが。(もしくは宇都宮家を極悪に描くとか。まさか省きはせんよな…。)

(2014/1/9記載)

G忍びの国
和田竜新潮文庫時代
361頁552円★★★

 天正四年十一月。前当主北畠具教の忙殺により伊勢の地は名実ともに織田家のものとなった。信長は伊賀への出兵に慎重だったが、伊賀十二家評定衆の一人平山甲斐の息子平兵衛が伊勢へ走って伊賀の根絶やしを訴えるにつけ、北畠信雄は伊賀侵攻を決意する。一方平山平兵衛逐電のきっかけを作ることになった伊賀忍びの無門は、類稀な腕を持ちながらも他国から奪ってきた嫁の尻に敷かれ、それでものほほんとした日々を暮らしていたが…。

 伊勢方による丸山城築城に端を発する第一次天正伊賀の乱を背景に、殺伐とした忍びの世界を活写している。殺伐としすぎていて――本書中何度も伊賀は人でなしの国だと言われる――地元の一員としては少々ナンだが、前評判どおりなかなか勢いのある時代小説であった。一応無門が主役ではあろうが、他の伊賀忍や伊勢方の日置大膳、柘植三郎左衛門のキャラも立っていて、群像劇と言ってもよいかもしれない。織田信雄でさえ、ただの馬鹿殿ではないところがよい。

 通常天正伊賀の乱といえば、伊賀の一方的な悲劇として語られることが多いが、伊賀を人でなしの国として設定したところが面白い。しかしこの戦争の根を百地、平山の陰謀とするのはさすがに難しい気がする。忍びの奥義としての遠謀を誇るのならば、その次(第二次天正伊賀の乱)にも思考をめぐらせなければならない。本書では(信長が伊賀殲滅を思い立ったのは)無門の操作ということになっているが…。

   無門が超人すぎる分、物語構成がややご都合主義になっている(信雄や大膳を余裕で殺れるというのに、最後の瞬間に邪魔が入ったり、やる気がなくなったり)ところや、台詞口調に気にくわないところがあるが、著者の他の本も読みたいと思わせる一冊だった。

(2013/4/30記載)

H戦国「常識・非常識」大論争! 旧説・奇説を信じる方々への最後通牒
鈴木眞哉洋泉社歴史新書歴史薀蓄
237頁860円★★★

 なかなかの戦闘的な題名だ。この題名に惹かれて手に取ったのに間違いないが、一方で井沢元彦のように毎度々々歴史学者は**だと息巻かれると少々鼻白んでしまうのが微妙なところ。著者は井沢元彦のように不特定多数に罵詈(とまではいかないか)雑言を放つのではなく、馬鹿丁寧な言葉づかいながら実名を挙げて論駁している。

 覚えている範囲では、藤田達夫小和田哲男立花京子秋山駿などが批判の対象に挙がっている。司馬遼太郎もやり玉に挙がっているが、彼は作家だから…。ただし世間には司馬遼太郎の書いたことはすべて史実だと勘違いしている人は多数いそうなので、そこに対する牽制としてはよいだろう。
 中身についてどうこう言える知識を持っていないのでコメントできないが、素人の勝手な意見では、大統領選の公開ディベートのように、討論会をしてほしいところだ。飯のタネがかかってくるので、なかなか難しいだろうが…。

 偽書の内訳として、作成権限のない者が他人の名前を騙って作った文書を偽造文書、作成権限のある者がでたらめな中身で作った文書を虚偽文書というらしい。

(2012/10/21記載)

Iかげろう忍法帖 忍法帖短編全集T
山田風太郎ちくま文庫時代伝奇
340頁★★★★

(1)忍者明智十兵衛(1962年6月初出)★★★★★
 主筋の娘紗羅とともに朝倉家家老のもとに厄介になっている土岐弥平次は、軍学には少々の自信を持っていたが、出世の糸口を見いだせずにいた。そんな折忍法と土岐家の系図をもって、五百貫で新たに家中に召し抱えられた明智十兵衛なる者が、朝倉義景の前で忍法を披露することになった。首尾よく忍法人蟹を成功させた十兵衛は、その場に居合わせた紗羅に恋焦がれるようになり、やがて土岐弥平次に驚くべき提案を持ちかけるが…。

 明智光秀が忍者? という興味からまずは入ることになるが、非情、ユーモア、オチ、すべて揃ったトリッキィな構成が文句なく素晴らしい一編。
 忍法帖の短編を初めて読んだが、このキレ味は尋常ではない。傑作。

明智十兵衛忍法人蟹体のどこを切断されてもひと月で再生させる。

(2)忍者石川五右衛門(1961年3月初出)★★★
 淀城で催された念仏踊りの最中、一座に紛れ込んでいた信貴城之介は、淀君から楊貴妃の鈴を奪うことに成功する。一座の笛吹きという隠れ蓑を着たまま逃げる城之介に淀城からの追手がかかり、大阪からは迎えの衆が。間に挟まれた形の一座は、口封じに皆殺しにされようとするが…。

 悲劇を作りたいのはわかるが、五右衛門の朴念仁ぶりがあまりにも…。
 ここまで部下の心が読めない人間は、人の上には立てません。

甲賀衆忍法浮寝鳥浮かべた蓮の葉を飛び渡りながら水の上を移動する。
甲賀丹波忍法天華往生顔に貼りつけた蓮の葉が灼熱と化す。
甲賀織部忍法自縛心自らの意思で自分の心臓を停めて命を絶つ。

(3)忍者向坂甚内(1962年12月初出)★★★★
 服部半蔵は、昨今江戸を荒らし回る盗賊の探索を家康自身から命じられる。被害を受けた大名や町人の間を丹念に調べ歩いた半蔵は、苦心の末古着売りと傾城屋を表の顔とした盗賊団を捕まえるが…。

 いわゆる江戸初期の三甚内(鳶沢甚内庄司甚内向坂甚内)を扱っている。
 彼らが北条の風摩出身だという設定は、ほかの本で読んだ気がするが、あるいはこちらがオリジナルだろうか?
 もしくは講談に履歴があるのかな。
 本書に関係はないが、隆慶一郎「吉原御免状」では、庄司甚内が<ネタバレ反転>柳生十兵衛を斬るのである…。

向坂甚内忍法紅蜘蛛縫い眼窩に飼う紅蜘蛛の糸で相手の目や口を縫い合わせ盲唖とする。

(4)忍者撫子甚五郎(1963年10月初出)★★★
 関ヶ原開戦の直前、小早川秀秋の向背に懸念を持った徳川家康は、服部半蔵にその心の裡を探るように命じる。時間的猶予がない上に重要極まりない任務に窮した半蔵に、ふと名案が浮かぶ。小早川の動向が気に懸るのは、西軍も同様ではないか。半蔵は石田方の忍びで旧知の波ノ平法眼に連絡を取り、ここに奇妙な共同の物見が始まる…。

 敵味方の忍者が共同で任務をこなすことに加え、それぞれの報告が信用に足るや否やを論理的にルール化するトリッキーな一編。さすがは元推理作家である。
 一方で、波ノ平党の二人の忍者の名を無造作に組み合わせた題名とするとは、なんて自由人。
 なぜ波ノ平党の忍者だけ?と思ったが、下表のとおり服部方の二人の忍者(浮船と小笹)は、忍法を使っていないのである。

浮船伴作あぶら虫眼八町先の針が見えるようになる目薬。
小笹特になし 
弥勒甚五郎忍法交合転生人工呼吸と死姦を同時に行うことで、死者に転生する。男→女
撫子忍法鷹の爪自ら断った指を手裏剣のごとく投げ、毒の爪で倒す。(投げたのは弥勒甚五郎)
忍法交合転生人工呼吸と死姦を同時に行うことで、死者に転生する。女→男

(5)忍者本多佐渡守(初出不明)★★★★
 本多佐渡守正信の屋敷に呼ばれた土井大炊頭利勝は、正信からわしのすべてを相伝しようと伝えられた。今や徳川家に害をなすと見受けられる大久保相模守忠隣を排除する。ひいてはわしら親子のやりようをよくみておくようにというのである。正信とその息子上野介正純は、幼少の頃より飼い従えた根来忍びの姉弟を使い、見事大久保忠隣を失脚させるが…。

 ほかの山風作品でもよく顔をみかける本多佐渡は、本書では美女の唾液を飲む妖人として描かれるが忍法を使うわけではなく、また彼の使う根来忍びの四人も“忍法何某”といった見得は切らずに裏に回っている。忍法帖というよりは歴史異聞といった趣が強い作品で、岡本大八事件大久保長安、それに連座して大久保忠隣の失脚、宇都宮釣天井事件の裏が描かれる。

お万特になし 
お蓮特になし 
お才特になし 
根来波太郎特になし 


(6)忍者服部半蔵(1964年6月初出)★★★★★
 家康に仕えた服部家の三代目半蔵正重は、配下の忍びを鉄の規律で束ねていたが、不肖の弟京八郎には困っていた。京八郎は忍びの在り方自体を批判して忍術修行を怠り、好き勝手に生きていたが、ついに兄半蔵の逆鱗に触れて…。

 非常な服部一族の掟の披露に始まる本編は、服部京八郎の登場でユーモラスな色合いを帯びる。忍び修行に対する著者の自分ツッコミといえる、京八郎の批判には抱腹ものだ。
 とはいえここで終われば★3つである。「忍者本多佐渡守」の姉妹編としても繋がる構成が見事。
 最後の京八郎正行の台詞が寒々とした衝撃を与える。

服部半蔵忍法墨検断口でいくら嘘を吐こうと、事実を書かせる。
忍法網代木相手の刀を誘い込み二本の指の間に捕える。

(7)「今昔物語集」の忍者(1964年2月初出)★★★
 「今昔物語集」に載っている外道なるものを紹介したエッセイだが、そこに至る枕が興味深い。著者が忍法帖を書き始めたきっかけが述べられているのである。合理と非合理の違いはあれど、推理小説のトリックと忍法のネタを考えることは存外似ているというのが面白い。
 考案した百数十の忍法の中には後で読み返すとふき出すものもあって、金縛りにあった忍者が自分の下顎を投げつけて噛みつくというのがあるが、下顎だけで一体どう噛みつくんだと思ったという記述がある。
 明らかについ先日読んだ「外法忍法帖」の伊賀忍者那智孫九郎の技ではないか。
 驚いてみ直したが、むしりとった顔の下半分、上顎と下顎で噛み殺すと書いてあった。該書は1985年の角川文庫版を底本としているので、気になって書き直したものとみえる。まぁ上顎までどうやってむしり取るんだよという別のツッコミも生じるが…。

(8)忍者帷子乙五郎(1961年9月初出)★★★★
 伊賀者の帷子乙五郎は太平の世の朋輩連中に飽き足らず、故郷の伊賀で修行していたが、父親の死で江戸に戻り、江戸城大奥御広敷の役目についた。ところがその彼には、なまぬるく、留め事だらけの御役目が肌に合わない。その彼が、大奥に努める下女のひとりに恋をしたが…。

 冒頭のフレーズ、“〜帷子乙五郎は、へんな奴であった。”を読んでアレッと思った。
 続けてその先を読んでもアレアレアレである。そう、本短編はその後「忍法忠臣蔵」の出だしに組み込まれているのだ。「忍法忠臣蔵」では生け作り試合の背景に浅野、吉良を持ってきたり、終段につながるヒロインの言動は真逆に変更されているが、全体的な流れはそのまんまである。
 オチはやはり本作のほうがキレイではある。

帷子乙五郎忍法???切り刻んだ相手がそのことに気づかず暫くの間生きて動き回る。


(2012/10/14記載)

J管見妄語 大いなる暗愚
藤原正彦新潮文庫エッセイ
191頁430円★★★★

 著者のエッセイが大好きであるが、何冊も読んでるとまぁ似たようなネタは多い。そういった意味では、毎度新しい本を買うまでもなく、例えば「祖国とは国語」「この国のけじめ」などを何度も味読すればよいのだが、本屋でふと見かけてついつい買ってしまった。
 とはいえ、週刊新潮に2009年から2010年にかけて掲載されたコラムを集めた本書は、比較的新しい時事に対するコメントが並んでいるので嬉しい。以前から著者の考え方にはほぼ同意で敬意を持っているのだが、ワイドショーで伝えられる画面からは、なかなか著者と同じようなコメントを発想できないので、あらためて感心することしきりだ。

“国民の目線とは国民の平均値ということだ。平均値で国を経営するのは余りにも危うい。”

“どこもかしこも国民の目線に立つ政治家ばかり、というのは国民の一大不幸と言ってよい。”

 些細なことと巨大なバラマキしかしない民主党にはホトホト愛想をつかせているようだ。
 いやホント、未来の日本が品格ある国民に近づくためには、20年、50年のスパンで教育、科学技術の振興を考えなければならない。

 あと、ここまでは著者も書いていないが、巨額のODMを受けながら感謝もせずに半日教育を続けるあの国に対抗するために、国家的な情報機関を設けて、新疆チベット等々に働きかけをしてもらいたいものだ。第二の明石元二郎が求められる。

(2012/10/14記載)

K中国皇帝伝
小前亮講談社文庫エッセイ
234頁524円★★★★

 歴代の中国王朝の皇帝(一部は準皇帝)から28人をピックアップして紹介した人物列伝。
 一人あたり9頁程度の紹介だが、副題に“光と影”とあるように、名君にも影があり、暗君にも光があるといったスタンスでエピソードが紹介されており、とても新鮮で面白い。(中には陳舜臣のエッセイやなんかで読んだような内容もあるのだろうが、悲しいかな覚えていないので…)

 よほど中国史に通じている人でなければ、必要十分の人物がピックアップされていると思うが、前書きで書かれているように、王朝以前には触れられていないので、春秋戦国以前の夫差勾践臥薪嘗胆の故事で有名)、文王殷(商)紂王はいない。

 あ、書いていて気付いたが、秦より前はこりゃ皇帝じゃなかった!

(2014/2/13記載)

L闇狩師2
夢枕獏徳間文庫伝奇アクション
404頁657円★★★★

(7)馬王精
 歌手の岡江麻希の体に異変が起こっている。玄角に呼ばれた乱蔵が見た麻季の身体は、すでに四肢が獣毛に覆われ、ゴムのように変形するようになっていた。しかし彼女を診た乱蔵に、呪われているような瘴気はまったく感じられなかった。乱蔵と玄角は麻季に執心していた笹本という男の存在を知り、その生家へと向かうが…。

 玄角だけでなく真壁雲斎まで登場することもあって、闇狩師シリーズの中でも屈指の名編だ。来留間慎一が描いた漫画も、かなり忠実な再現度で出来がよかった。ちなみに九十九乱蔵のデザインも本書の表紙よりも遥かによい。(本書の表紙はあまりにひどい。これじゃあ硬派なザキヤマだよ…。)

 ところで、笹本の実家が神奈川県の寄(丹沢山系にある村)と聞いた乱蔵の「なに!?」という過敏な反応の理由が解らない。冒頭、酒匂川の下流でシラスウナギを密漁していた男が馬王精に襲われたという話を聞いていたのならば、その反応も理解できるが、雲斎との会話ではそうでもなさそうだし…。

 二十年前に比べてシラスウナギの取れ高が十分の一以下だという記述があった。
 本書では河の汚染が原因だとあったが、今ではさらに激減しているはずだ。これは環境破壊ではなく、どうやらエルニーニョ現象等の原因で海流の位置が数百Kmずれた結果、泳力が脆弱なシラスウナギは日本まで上ってこれなくなったかららしい。(←「サイエンスゼロ」からの情報)

(8)ほどろ
 中学教師の九島は、自然薯を掘っているときに玄室らしき空間に落ち込んでしまう。そこには歯型のついた人間の骨一式ともう一体のミイラ化した死体があった。数日後、公園で寝ていた彼は、浮浪者狩りの少年たちに蹴り起こされるが…。

 “斑”をほどろと読ませている。血を吸うと全身に斑模様が浮かび上がる鬼の話だが、前回読んだとき(わぁもう30年近くも前だ)から印象に残っているのは、自然薯ってそんなにも美味いのか!(このとき自然薯という言葉を知った)ということと、乱蔵が蛟の眷属だろうと語った斑の鬼の「うろつき童子」系な本体形状だ。
 しかし読み直してみると、異形の側の一人称形式であることが興味深い。初期作品の「どむ伝」「魔性」にも見られる著者得意のフォーマットであった。

(9)かるかや
 両親をみて、所詮男と女の仲などそんなものかと醒めた感性を持って育った篠塚も、今では気鋭の弁護士となり、妻も娶った。その妻が三夜に渡って、カミソリ刃や木綿糸に襲われるという怪異に遭ってしまう。相談を受けた乱蔵は、篠塚の家に泊まって様子をみるが…。

 エンディングが解決になっていないことが特徴だろうか。どうやら<ネタバレ反転>深層心理から無自覚に発する念力が原因のようだと判ったものの、その後どうオチをつけたのかが全くわからない。乱蔵は指摘するのみで、何ら篠塚を助けていないし、篠塚家に明るい兆しは見えないが…。
 念力と生体エネルギー(気)を区別して解説しているところが興味深い。

(10)殯
 甲斐の泥舟が生前一度だけ、御魂呼ばりの法を俗人に売ったという。どうやらその外法が使われたらしい。泥舟の臨終の間際にそのことを託されていた雲斎は、乱蔵にその後始末を委託する…。

 男女の愛憎がなんとももの悲しい一編。
 キマイラシリーズでおなじみの円空山に乱蔵が座っているのが、ファンには嬉しい。雲斎が自分で御魂呼ばりの法を処理できなかった背景は、なんと弟三蔵の友人の件で台湾に行かねばならないからである。つまり「キマイラ餓狼変」の前という時期設定になる。
 こうまでキマイラシリーズとのリンクを貼られると、30年も未解決のキマイラ騒動に(いや、物語中の時間経過は半年ほどだが…)なぜ乱蔵が絡まないのかということが疑問になる。そもそも乱蔵は、猩猩の下にいた頃に巫炎を見ている筈だから、キマイラについての知識も持っているのである。
 いつの日か訪れてほしいキマイラシリーズのクライマックスに、乱蔵を登場させるという大技を使うのかどうか。
 絡むとして、もっと早く絡まなかった理由をうまく説明できるのかな…。

(11)陰陽師
 三島にあるモーテル『北条』に武者姿の小人の幽霊が出るとの噂が立った。拝み屋が雇われたが、返り討ちにあったという。噂を聞きつけた乱蔵が名乗りをあげ、そのモーテルに泊まることにするが…。

 「キマイラ菩薩編」で大鳳吼と絡む埴輪道灌の登場編。
 ストーリーの構成は「怪士の鬼」に近いものだが、こちらはなんともユーモラスで、楽しく読める。
 陰陽師シリーズと言えば、後に夢枕獏の知名度を大いに上げたが、わたしが陰陽師という言葉を知ったのはこちらだ。本作のように、大時代的な設定をうまく現代で動かすのが闇狩師シリーズの魅力だと思う。こちらのほうが面白いと思うがなぁ。(陰陽師シリーズは、最初の一冊しか読んでいない…)

(12)餓鬼魂
   登山から帰ってから夫の様子がおかしい。食事の量が極端に増え、大量の汗をかきながら寒い寒いと言う。そしてそのことを指摘する気味の悪い電話がかかってくる。夜中に冷蔵庫に頭を突っ込んでいる夫を見るにつけ、三沢安江はついに乱蔵に依頼するが…。

 夫の奇行に不気味な電話。ホラーよりはサスペンス色の強い一編。しかしそのオチには驚くだろう。イメージでもなんでもなく、「地獄草紙」<ネタバレ反転>そのままの餓鬼が、口の中から這い出るわ、そいつを捕えて喰うなどと、あまりの唯物論的な展開にびびってしまった。

(2012/11/23記載)

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