2012年10月
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@始末屋ジャック 凶悪の交錯 上下
 Crisscross (2004)
F・P・ウィルスン扶桑社ミステリー文庫伝奇冒険
439頁/424頁914円/914円★★★★

 ジャックに依頼された二件の“始末”。それはカルト宗教に入信して連絡が取れなくなった息子を見つけ、母親に連絡させる件と、何者かに強請られているシスターを自由にすること。巧みな戦術に幸運も重なり、どちらもテンポ良く処理できるかに思われたが、関係者の不注意により事態は困窮する。怒りに満ちたジャックの作戦は・・・。

 毎回Aの事件、Bの事件、そしてCの行動(ジーアやヴィッキーとの日常生活)の中で見事に皿を回しながら立ち回るジャックが、本シリーズの最大の魅力だと思う。久しぶりに読んだこともあるかもしれないが、本書での皿回しは実に見事だった。<ネタばれ反転>(Aの事件、Bの事件でそれぞれ助けられず死なせてしまった人間はいるのだが…)

 ぶっちゃけて言うと、本シリーズがアドヴァーサリ・サイクルの一環でなかったら★×5つだ。
 どうもアチラネタはあまり好きではないのよね。

(2012/11/2記載)

A始末屋ジャック 地獄のプレゼント 上下
 Infernal (2005)
F・P・ウィルスン扶桑社ミステリー文庫伝奇冒険
364頁/358頁838円/838円★★★

 ラガーディア空港に父親を迎えに行ったジャックは、テロ襲撃に巻き込まれてしまう。悲惨なダメージを負いながらもその場を逃れたジャックは、後日音信のほとんどなかった兄のトムに会うことになる。トムはフィラデルフィアで判事をしていたが、トラブルを起こし身を隠したがっていた。ジャックが文字通りの修理屋ではないことを漏れ聞いたトムは、ジャックにバミューダの隠し金の回収に同行することを頼んできた。しぶしぶ承諾したジャックだが、銀行で金をおろすだけであったクルーズは、バミューダの海底に数百年間沈んでいるという秘宝探しへと発展する。そして手に入れたゲフレダのリリタングは、ヴィッキーとジーアに恐るべき事態を引き起こすのだった・・・。

 前作の感想で、A、B、Cの行動の中を自在に行き来するジャックが、このシリーズの魅力だといったことを書いたが、それを本書で当てはめると、A(=テロリストへの復讐)、B(=リリタングの処理)、C(=日常生活)となる。
 しかし本書に前作と同様の魅力があるかというと・・・。

 まず兄のトムを介して、BとCが渾然となってしまっていることに加えて、最大の違和感は、AとBの“始末”にジャックの計画性が発揮されず、受身に回っていることだ。また構成の比重もB、Cのほうに、つまりは異世界モノに偏っている。リリタングをカリブ海に沈めるという過去の挿話はそれなりに興味深いが、わたしにとっては歓迎できない方向だ。

 また異世界現象にしたところで、本書のエピソードが必須のものとは思えない。
 来る新作「ナイト・ワールド」に向けて、<ネタばれ反転>ジャックの家族を一掃するための追加作品といったところである。

(2012/11/2記載)

Bチックタック 上下
 Ticktock (1996)
D・クーンツ扶桑社ミステリー文庫ホラー活劇
248頁/299頁686円/705円★★

 ベトナム系アメリカ人トニー・ツォンは、8歳の時に家族ともどもアメリカに亡命して以来、“アメリカ人”になるために努力してきた。新聞記者の傍ら執筆した小説も軌道に乗り、いよいよ出版社を辞して長年の夢であった新車のコルベットを購入、専業作家への道を歩み出した。だがまさにその日、自宅前に置かれていた人形に命を狙われる羽目に。そしてパソコンには“デッドラインは夜明け”の文字が。一体誰が、なんの理由で・・・。
 映画のグレムリンのような小型の化け物から命からがら逃げ出したトニーは、朝を迎えるまで逃げ切ることができるのか。

 冒頭に華々しく登場するシボレー・コルベットは、本文中の記述から、残念ながらC5ではなくC4と推測できる。C4はフロント・ヘビーの直線番長のイメージがあって、今ひとつ名車だとは思えない。因みに97年に登場して2004年まで生産されたC5は、トランクアクスル構造で前後の重量比が50:50に近くなったことに加えて、世界最後のリトラクタブル・ライト採用車だ。

 始末屋ジャックを二冊続けて読んだ勢いで、扶桑社ミステリーの在庫を一掃してやろうと手に取った。本書は96年発表だが、あとがきで80年代の「戦慄のシャドウ・ファイア」を思わせるといった記載があったので、期待と不安で在庫にしていたものだ。

 脅威に立ち向かう男女と犬一匹。
 この能や狂言もびっくりの黄金様式があいもかわらず踏襲されているが、メイン・キャラの男女の役割分担は随分と異なっている。
 まずはトニーがベトナム系というだけで驚きだが、これまでの主人公に較べて文句も多く、好感度がやや低い。
 だがさらに異なるのは、女性主役(多少のネタばれになるので、あえて名前は出さない)の役どころである。妙にブットンデいて、謎めいていて、巻き込まれヒロインの割には、行動力に満ち溢れている。彼女とのコントラストをつけるためにトニーの性格が設定されているわけだ。

 著者曰く(解説参照)、「心の昏き川」「生存者」といったやや重い話の執筆後で、心の平行度を取るために、コメディ・タッチの作品でバランスを取る必要があったとのこと。なんでも、ヒロインの性格や背景の設定は、スクリューボール・コメディのフォーマットに則っているらしい。
 という著者の事情はともかく、わたし自身は興に乗れなかった。なんだこれって感じで、後半はかなりの流し読みになってしまった。(スピード感溢れるクーンツの持ち味は健在である)

 どういったオチのつけ方をするのかなという興味は残っていたのだが、これもちょっとツライ。方向は察しがつくもので、面白みもあるのだが、見えている犠牲者が3名、トニーたちの知らないところでもっと犠牲者が増えている可能性もあるというのに、この結末は軽すぎだろう。

(2012/11/2記載)

C妖説太閤記 上下
山田風太郎角川文庫歴史
467頁/445頁743円/743円★★★★

 山田風太郎の太閤記、それが妖説とくれば、一体どんな胡乱な忍法が飛び交うトンデモ太閤記かと期待したが、これが驚いたことに非常に真っ当な太閤記だった。

 忍法帖の延長で読むと、人によっては拍子抜けとなるかもしれないが、いつもの伝奇・時代小説ではなく、歴史小説としてとても魅力的な作品に仕上がっている。
 無論秀吉の女に対する執着はさすがにディフォルメされているように思うし、初期の軍師竹中半兵衛に指南された、「共食いをさせろ。敵には敵を作れ」を拡大再生産させる権謀術策をそのまま史実と考えるのには無理があるが、この秀吉像がまったくの歪曲されたものであるとは思えない節もある。

 司馬遼太郎「新史太閤記」も好漢秀吉を小説として読むにおいて傑作だが、徳川家康との講和で筆をおいており、人間一代記を丸ごと描くという意味では片手落ちであった。

 天下統一後、急激に老耄化した(ようにみえる)秀吉の暗黒面を捉え、朝鮮攻め時の怨嗟の声を拾うのは、さすがは戦中派の著者である。

 最終頁の家康の想念も感慨深い。

(2012/11/2記載)

D水木しげる記念館公式ガイドブック
水木しげる記念館ガイドブック
95頁たしか1000円

 9月15日に境港市にある水木しげる記念館に行ってきた。そこで売っていたガイドブックだ。
 狙ったわけではないのだが、今春ちょうどリニューアルオープンしたばかりというナイスなタイミングだった。
 館内の展示にはなかなか力が入っていて、写真を撮れないのが残念だったが、まったく問題がない。
 なぜなら入館料より高いこのガイドブックを買えば、館内展示のすべてが詳しい説明と写真付きで楽しめるからだ。


「水木しげる記念館」/\700 (鳥取県境港市)

 それにしても境港市は町興しのすばらしい金脈を見つけて、うまく運営しているものだ。
 この前々日に訪れた山田風太郎記念館も立派な建物なのだが、見せ方の力の入れ具合に残念ながら雲泥の差があった。わたしからすれば妖怪以上に魅力のある風太郎作品とその登場人物も、一般的な知名度と集客力では大きな差があるのだろうが、もう少し展示のしかた――というよりもそもそも何を見せるか――に改善の余地が大いにある。
 あんな駄作の映画パンフレットを何枚も貼るよりも、風太郎作品の幅の広さと懐の深さをみせる工夫をしてほしい。


「山田風太郎記念館」/\200 (兵庫県養父市)

 ついでに山田風太郎記念館からほんの20分ほどの近くに、植村直己冒険館があったので寄ってみた。
 なかなか見処があって面白かったのでお薦めだ。近くに行くことがあれば、ぜひ山田風太郎記念館ともども立ち寄ってほしい。クレパスを模したという入口も斬新な建物だ。


「植村直己冒険館」/\500 (兵庫県豊岡市)

(2012/10/20記載)

E週刊HMSヴィクトリーを作る9
DeAGOSTINI帆船薀蓄
1190円


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今号の作業は、「船尾部のキール」と「6番フレーム」。
後ろ半分のキールを接続することで全体の大きさがうっすらと見えてきた。





うわー、おっかねぇー。



造船所のサイズが不十分やなぁ…。
先行きが心配だ。


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(2012/12/11記載)

F兵器・武器 信じられない衝撃な話
博学こだわり倶楽部編KAWADE夢文庫兵器薀蓄
221頁543円★★★

 第二弾、なのかどうかは知らないが、以前読んだこちらがなかなか面白かったので、店頭で見かけた同シリーズをつい購入してしまった。

 軍用機が自分を追尾してくるミサイルから身を守るために空中に撒くチャフフレア。違いは分かりますか。
 そういったミニ知識をたくさん仕入れられる。

 戦車を破壊するために生まれた地雷。
 金属探知機のような探知手段が開発されると、強化プラスチックで覆って非磁性体となり、
 踏みつぶして破壊する地雷処理車が開発されると、数回の圧力が加わって初めて爆発するものがスタンダードとなる…。

 悲しいシーソーゲームですなぁ。

(2012/10/24記載)

G週刊HMSヴィクトリーを作る10
DeAGOSTINI帆船薀蓄
1190円

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今号の作業は、「22、23番フレーム」。





このフレームから一段高くなっているのが判る。


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(2012/12/11記載)

H週刊HMSヴィクトリーを作る11
DeAGOSTINI帆船薀蓄
1190円

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今号の作業は、「24、25番フレーム」。



フレームは随分と完了がみえてきた。

前にも書いたが、作業順番は前後しているので
この時点では、船台にはまだ塗装していなかったことが判る。


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(2012/12/11記載)

I週刊HMSヴィクトリーを作る12
DeAGOSTINI帆船薀蓄
1190円

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今号の作業は、「26、27番フレーム」。

今号のフレームから、また一段高くなっている。

なんと撮り忘れたので画像はなしだ…。


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(2012/12/13記載)

Jトワイライト・アイズ 上下
 Twilight Eyes (1985/1987)
D・クーンツ角川ホラー文庫ホラー活劇
408頁/380頁738円/738円★★★

 下巻末の瀬名秀明の解説に詳しいが、この一部/二部は、発表された年も二年異なる(連作ではあるが)という別の作品なので、下のように分けてみた。上巻下巻で二部に分かれているのではなく、下巻の62頁までが第一部というイレギュラーな構成だ。

(1)第一部
 カーニバル(移動遊園地)にもぐり込んで職を得ることに成功した17歳の青年スリムは、親戚を殺害した罪で警察に追われていた。特殊能力を持つ彼は、人間に変装したゴブリンを見分けることができるが、彼の一家の周りで次々と起こった悲劇は、すべてゴブリンであったその親戚が裏で画策した結果だった。しかしカーニバル内でも、人間に偽装したゴブリンたちが大きな惨劇を準備していることをスリムは予知し・・・。

 まずスリムの一人称スタイルというだけでも、クーンツ作品としては新鮮だ。(他にもあったかもしれないが忘れた・・・)
 ライアの造詣や米国の移動遊園地の雰囲気も新鮮で、なによりクーンツ作品としては、かなりホラー度合いが高い異色作のように感じる。

(2)第二部
 カーニバルの惨劇を未然に防いだスリムは、ゴブリンたちへの反撃を計画する。今は無二のパートナーとなったライアと二人、武装を整えてカーニバルを離れ、ゴブリンたちの本拠地ヨンツダウンへ潜入するが・・・。

 第一部では敵の呼称をゴブリンと統一していたのに対して、第二部では、鬼だの魔族だのと表現が分散(後半はまたゴブリン表記に戻る)している。またもちろん活動舞台がカーニバルからヨンツダウンへと変わることもあって、雰囲気はかなり違ったものとなっている。上にも書いたように、第一部はかなりホラー度が高いのだが、第二部は完全に冒険もののテイストだ。

 第二部が面白くないわけではないのだが、ご都合主義的な運にもかなり恵まれて、敵の秘密基地をひとつ壊滅させることに成功するとはいえ、対ゴブリン戦はまだまだ終了していない。それはともかく、第一部ではかなり個性的だったライアやジョエルが、第二部では目立っていないというのはマイナスポイントだ。
 カーニバルの全員が対ゴブリン組織になっているかのような、タイミングばっちりな後方支援も??である。

 広大なアメリカでは、移動遊園地というのは現代でも健在なのだろうか。60年代を時代設定としている理由は、あるいはその為なのかもしれないが、もう少し深読みすると、今回のスリムたちの活躍で大幅に遅延しただろうゴブリンたちの計画が再構築されて実現されるのが、今は過ぎ去りしノストラダムスでおなじみの世紀末だと匂わせていたのかもしれない。クーンツがそこまで考えていたのかどうかは興味のあるところだ。

(2012/11/22記載)

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