2013年 3月
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@回収 史上最強のオタク座談会2 (2000)
岡田斗司夫/田中公平/
山本弘 対談
音楽専科社アニメ・特撮薀蓄
285頁★★★

Aイソップを知っていますか (2010)
阿刀田高新潮文庫寓話薀蓄
323頁520円★★★

 子供の時分には、グリムアンデルセンペローの童話などに誰でも親しんできた筈。それらと並び有名な物語集にイソップがあるが、その成立地域や時代は前の三者とまったく異なっている。
 それらのことには、不明なことに本書を読むまでなんにも知らなかった。

 前三者の童話集は17〜19世紀の欧州で成立したが、イソップ物語の成立はそれらより遥かに昔、紀元前のギリシャ(文明圏、今のトルコの地域)だ。  イスラム世界から「千夜一夜物語」を引っ張ってきても、イソップからは1000年以上も後代である。

 また、迂闊であったが、これら著者(編集者)による作品は、ざっくり子供向けの物語、童話として一緒くたに認知していたが、イソップ物語/童話のみはイソップ寓話という言い方もされる。
 寓話とは、動物や無生物を擬人化したキャラクターを使って、なにがしかの道徳的な教えを盛り込んだ話を言うが、たしかに「アリとキリギリス」「北風と太陽」等を思い返すと他の童話とは違っている気がする。

 日本にイソップの物語が入ってきたのは、戦国末期の宣教師経由であるらしく、16世紀後半から17世紀前半にかけて、「伊曾保物語」「イソポのハブラス」という二系列の翻訳本が存在している。
 本書ではこの二作を元にして有名どころの作品を紹介しているが、やはり成立の背景やイソップ自身の蘊蓄が一番面白かった。トルコ西部にアイセポス川というのがあるらしいが、昔は出身地で名前を呼ばれることが多かったので、その辺りの出身ではないかとか…。

 ところで、寓話であるので、それぞれの話には道徳的な寓意があるわけだが、著者はそれを下心と呼んでいる。
 真意という意味もあるようなので間違いではないが、悪いイメージに引っ張られてしまいますな。

(2014/4/10記)

B最後の一球 (2006)
島田荘司文春文庫探偵
283頁552円★★★

 1993年10月、御手洗と石岡のもとを訪れた青年の頼みで、山梨へ向かった。御手洗は常に似ず腰が重かったが…。

 御手洗曰く、「どんな優秀なシェフを連れてこようと、すでに料理が席に並んだあとではどうしようもない」手遅れの事件であったが、彼の思惑を遥かに超えて、あっという間にスピード解決してしまう。
 ここまで70数頁。後は少年時代から野球に半生をつぎこんだ男のモノローグが最終頁まで続く。シャーロック・ホームズの長編などで使われるパターンだが、ここまで御手洗が働かない話もめずらしい。(どんな捜査をしたのか、モノローグの人物のもとへ辿りついたらしいが…)

 もはや推理小説ではないが、スポーツのプロ選手の目線で語られる半生はなかなか興味深い。きらびやかな超一流のごく一部のスター選手の陰で、プロとして生き残れるどうかというボーダーにいる選手の思いにじんわりくる。

 御手洗/石岡の活躍する世界なので、プロ球団の名称は架空のものだが、建前では事件の関係者に迷惑がかからないように、ほとぼりが冷めてから石岡が文章化して出版というスタンスだったはず。彼らの世界で本書を出版すれば、関係者の実名は絶対にばれるのでは…。

(2013/5/6記載)

C魔法の世界エストカープ ウィッチ・ワールドシリーズ1
 Witch World (1963)
A・ノートン創元推理文庫ファンタジー
352頁400円★★★

 ある組織に追われて明日の命をも知れぬ身のサイモン・トリガースは、ヨルゲ・ペトロニウス博士と名乗る男から奇妙な申し出を受けた。値は張るが、決して組織が彼を見つけられない場所へ逃がしてやると言うのだ。半信半疑で博士の言に乗ったサイモンは、シージュ・ペリラスの不思議な力で中世的な異世界へと移行した。その世界で早々に女性を助けることになったサイモンは、彼女の国エストカープと深く関わることに。古い歴史を持つエストカープは、彼が助けた女性もその一員である魔女が統べる国だったが、北はアリズン、南はカーステンとの国境問題を抱えており、さらに西の海からはコールダーという不気味な勢力が侵攻してきていた。エストカープの一員となったサイモンは、海への突端にある砦サルカーキープを救援するためにエストカープ軍の一員として出兵するが…。

 本書もまた、武部本一郎の表紙/挿絵ということで全5冊をキープしていたが、この30年というもの読み忘れたままに本棚に並べていたものだ。

   この手の異世界ファンタジーは、その世界の地図がつくのがお約束だが、四部構成の本書一冊で、概ね地図に描かれた世界をひと回りしている。
 上にとっかかりの部分を記した第一部はともかく、第ニ部ではまるまるサイモンが登場しない等、挿絵の画風に引っ張られてバローズ作品を想定しながら読むと、意表をつかれて興味深い。

 魔法を使えるのは女だけというエストカープにおいて、サイモンは魔法を扱う素養があるように描かれ、なおかつ現代地球人(第二次大戦を経験)ということで、部下を指揮する能力と、コールダーという別構造の魔法(科学力)を扱う軍団への反応において、他のエストカープ人にアドバンテージを持っているのだが、ヒーロー性においてはかなり控えめだ。
 著者はアメリカ人だが、冒頭のこちら側の世界はイギリスだ。多少英国的な感じと言ってもいいかな?

(2013/5/6記載)

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