2014年 1月
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@江戸忍法帖 (1959)
山田風太郎角川文庫時代伝奇
353頁★★★★

A奇想天外SF兵器 (1999)
渓由葵夫新紀元社アニメ他薀蓄
223頁★★

 子供の頃、SF超兵器番付を考えたことがあった。
 詳細は覚えていないが、一位と二位だけは覚えている。

1位、ディスラプター…from「天界の王」/E・ハミルトン
2位、ネガスフィア…from「グレー・レンズマン」/E・E・スミス

 加藤直之の表紙、しかも表紙の絵は「バーサーカー/赤方偏移の仮面」を彷彿とさせる。同じかどうかは定かじゃないが。これはわたしの嗜好にマッチした、古今のSF小説に登場した兵器が紹介、解説されていると思うだろう?
 まんまとやられた。

 第一の問題は、本書がSFファン向けではないということだ。
 ではどの層向けかというと、アニメファン、SF映画ファン向けである。しかもSF映画と言っても、カバー範囲は精々「スターウォーズ」と「スタートレック」どまりだし、もっと言うと、ガンダムファン向けの本だ。

 最初からそう思って読むなら、それなりの満足が得られるかもしれないが、中身を見ずにポチらなあかんネット本屋の怖いところだ。発行部数の少ない本でも容易に手に入れることができるのは、大きなアドバンテージなのだが…。

 ところで表紙同様、挿絵も加藤直之が担当している。この人選は、ガンダム→パワード・スーツ→加藤直之の流れで決まったのだと思うが、彼自信はロボット・アニメにほぼ興味がないらしい。なにやら力を抜いたテキトーな挿絵とコメントには、かなりイラついた。やはり挿絵を描くのは、対象に愛を持った人でないとダメだ。

(2014/2/21記載)

Bティーターン
 Titan (1979)
J・ヴァーリィ創元SF文庫SF
486頁820円★★★

 土星とその衛星探査のために送り出された宇宙船リングマスターは、新衛星を発見しテミスと名付けるが、土星に接近するにつれ、テミスが小さな衛星などではなく、6本のスポークを持った直径1300Km、外周4000Kmの巨大な車輪状人工構造物であることを突きとめる。しかしその軌道に接近したリングマスターは、突然その人工構造体からの謎の触手で破壊されてしまい、乗組員たちは死に直面する。艦長シロッコ・ジョーンズは、やがて見知らぬ世界の土の中から蘇生し、テミス内部と思われるその世界を彷徨いながら次第に乗員たちとも再会を果たすが、知っている筈のない知識を持っていたり、なにがしか以前の自分たちと微妙に異なることに違和感を覚える。やがて彼女は自分たちをこんな目に遭わせた何者かと対面する一縷の望みのもと、スポークを登ってハブ(中心軸)を目指すことを決意する…。

 なぜか挿絵に満ちている一冊。緻密な画だが、日本人受けはしないだろう。昔読んだ同文庫の「パッチワーク・ガール」がこんな感じだった。おそらく同時代の訳出なのかな。

 まずは口絵部分のガイア(テミスあらため)の図面三点に興味を惹かれる。
 ガイアの形態は、規模は違うが、いわゆるトーラス型(ドーナツ型)スペース・コロニーである。(あるいは縮小版リングワールドか)
 ガイア世界は6本のスポークの直下にあたる夜の世界と、それに挟まれた昼の世界に12分割されている。この世界<ネタばれ反転>自体が巨大な有機的人工生命体であることが、本書の面白味のポイントということになるが、これが開示されるのは残り百頁を切った二十三章以降。正直に言うと、そこに至るまでがリーダビリティ不足で、なかなか読み進められなかった。

 後述するように、好みに合わなかった理由は他にもあるが、一番大きな理由は性の扱い方だ。
 リングマスターのチームは男女混交だが、性的関係においてかなりフリーな状況である。シロッコは全男性乗員(三名)と関係を持った(本書中には女性とも…)ことが語られている。
 ハインラインの世界観とやや共通しているが、はっきり言ってわたしの嫌いな設定である。

 好き嫌いはさておき、このような重大なミッション(と莫大な費用)を担っている筈の木星探査チームにおいては、当然ながら、事前に閉鎖空間内での長期の共同生活における人間関係のリスクについて、研究・対策(予防/防衛)が施されている筈。その形跡がないのが疑問だ。人間関係(特に男女関係)に関する悩みめいた述懐が多すぎるのが、最大の難点である。
 この問題は現場任せではなく、チーム編成、教育プログラムから化学的処理も含めて、プロジェクトで事前に考慮されるべき問題だろう。社会的背景(禁欲または開放系)あるいは情緒的訓練(禁欲あるいは開放系)を描いたうえで、ストーリーとしては、そのあたりドライに進めてもらいたかった。(本書がジメついてるわけではないのだが…)

   現実のISSではこの辺り、どう管理しているのかな?

 ついでながら、本書の題名も不思議だ。
 もちろんギリシャ神話ティターン神族に因んでいることは判るが、なんといっても、土星にはタイタンという立派な衛星が周回している。(日本でのカタカナ表記は別になっているが、アルファベットでは同じTITAN)
 太陽系全体でも木星のガニメデに次ぐ二番目の大きさの衛星で、地球の月や水星よりも大きいこの衛星タイタンに、本書がなんの関係もないことが判ったときには、膝がカクッてなった…。
 穏当に題名をつけるなら「ガイア」でいいが、なぜにゆえにこの題名?
 本書に登場するケンタウロスに似た生命体はティターニス(ティターンの女性名詞)だし…。
 誤認を狙ってわざと名付けたとしか思えないが、意図が解らないですな。

 発表年代から言って、ソ連が登場しているのはいたしかたないところだが、執筆された当時と比較して、現代の天文学の観測技術は格段に進歩している。本作で発見済みとされた土星の衛星12個に対して、Wikipediaによれば2009年現代の土星の衛星は、未確定のものを含めて63個らしい。環の一部でなく一個の衛星だと判別する基準は知らないが…。

(2014/2/21記載)

C遺臣伝 (1960)
子母澤寛中公文庫時代/歴史
355頁895円★★★

 “最後の剣客”と呼ばれた榊原健吉を主役に据えた小説。
 戸部新十郎をはじめ、剣豪小説あるいは列伝に登場する榊原健吉は、明治期の撃剣興行天覧での兜割りに焦点があたっているが、本書ではそれらのエピソードは終盤、エピローグに近い扱いであった。
 榊原健吉を扱った長編小説は本書が唯一らしい。もとより著者の創作エピソードと、史実としてのネタ元ありエピソードの区別はつかないのだが、それらエピソードの取捨選択の基準もわからない。
 幕末の三舟の一人である槍の高橋泥舟(残り二人は、勝海舟山岡鉄舟)と試合をして勝ったというエピソードや、十四代将軍徳川家茂に剣の手ほどきをしたエピソードは、ネタの比較的少ない人物の長編小説化にあたっては、より膨らませて採用するのが普通だと思うが、なぜかまったく触れられていない。(特に後者は、題名が「遺臣伝」である以上、外せないエピソードだと思うのだが…)

 また“榊原”健吉である以上、創生期の徳川四天王である榊原康政と何らかの繋がりがあるように思うが、(関係ないならないで)一切触れられていないのは残念だった。

 とはいえ本書が面白くないかと言えばそうでもなく、健吉の半生を淡々と追った暮らしぶりの描写が興味深い。
 岡本綺堂半七捕物帳が、謎解きよりも生活描写が面白いように、本書も剣豪小説としてより市井モノとして味わうべき一冊だ。

(2014/2/21記載)

D「科学の謎」未解決ファイル (2008)
日本博学倶楽部PHP文庫科学薀蓄
229頁514円★★★

 NHKの「サイエンスゼロ」のネタになりそうな項目が、「地球」、「人体」、「動植物」、「宇宙」、「古代文明」の五章に分かれて並んでいる。現代科学の最前線をトピックとして簡単に紹介した本だ。

 これまで何度もあったと言われる氷河期サイクルについて、海底を数千年かけて地球を一巡する深層流が関係しているらしい等なかなか興味深い。
 しかし当然ながら内容はあっさりしたものだ。
 何人で文章を書いているのか判らないが、中にはアタマの悪い文章もあった。
 カクッてなったのは、性転換する魚のメカニズム研究に関するコレだ。↓

「研究によってわかったのは、魚の性転換のけん引役となっているのは、
どうやら性ホルモンらしいのだ」


 …そらそうでしょうよ。
 ホルモンが全然関係してないのならそれこそ不思議だが。

(2014/3/14記載)

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