2014年 6月
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@ルールを変える思考法 (2013)
川上量生角川EPUB選書社会薀蓄
236頁1400円★★★

 この題名から連想するのは、オリンピックのある競技で日本が躍進を遂げると、次の大会ではルールが変更になってしまうことが往々にあるということだ。
 どうも日本人は狭い範囲の中での最適化を図ることに長けていて、場合によっては様式美なんてものに昇華させたりしてしまうくらいだが、ことビジネスで強いのは、――いやどんなものでも長期の勝負事において強いのは――ルールを変える権限を持っている者だ。

 本書は店頭で題名だけ見て衝動買いしたので、著者のことは全然知らなかったが、ニコニコ動画着メロビジネスを立ち上げた人らしい。
 前半はなかなか興味深い内容だった。

 例えば、人間が進化の過程で生存率を高めていくに中って、あそこで草むらが揺れているけど何だろう?このキノコはいつも食べているのと色が少し違うけどなんでだろう?といった風に好奇心を持てるかどうかが重要だったはずだ。といったところから、人が興味を持つのは、

「なにか新しいパターンのようだけど、確信が持てない

時ではないかと仮定している。
 ここから発展して、ビジネスでヒットを飛ばせるのは、「説明はうまくつけられないけど、楽しそう」なモノ/コトということになる。そしてそこを求めるために、ギリギリアウトを狙えと部下に指示しているという。もちろんそれは非常に難しいことなので、世間に溢れているのは、「説明はつけられるけど、非常に難しい」モノ/コトになってしまうのだそうだ。
 また著者はレッド・オーシャンで戦いたくない【注1】ので、ビジネスSTARTからの時間−エネルギー遷移図を使って、安定ビジネスに至るまでに大きなエネルギー投入が必要となる山を示し、あえてその山が高い分野を探すのだという。もちろん自社の手持ちのコマで、その山を下げる触媒を見つけられると見込んでの話だが、そこがゲーマーあがりの経営者のカンと経験というものなのだろう。

 後半はネットの盛り上がりをあえて現実社会での祭りとして催した、ニコニコ超会議なるイベントについての話になり、悲しいかなこちとらまるで興味がないので、今一つその意義についても雰囲気についても理解しきれなかった【注2】のが残念だ。

【注1】わたしの会社のボスは、先日の14年上期の訓示で、レッド・オーシャンを怖れずにいこう!と述べてた。ウヒーッ!
【注2】その後たまたまこちらで、その一旦を垣間見ることができた。

(2014/6/18記)

A黎明に叛くもの (2003)
宇月原晴明中公文庫歴史伝奇
646頁952円★★★★★

 異国の法を継承する山から下りた二人の稚児。美濃へ向かった兄は、長じて斎藤道三を名乗り、弟は三好長慶に従って松永久秀となった。自らの力(光)を頼んで成り上がっていく久秀に対し、道三はやがて自分の光を圧倒する太陽を、隣国の織田信長に見出す。しかし久秀は道三亡き後も、自分が太陽の周りの星に過ぎないとは認めず、暗躍を重ねるが…。

 イスラム教イスマイル派山の老人に関する伝説は、麻薬のハシッシと暗殺という単語(アサシン)の繋がりも相まって有名な蘊蓄だが、それを日本にもってきた【注3】ばかりか、斉藤道三と松永久秀の二人をその伝承者に仕立て上げた【注4】この奇想には頭が下がる。
弱点は松永久秀のインパクトが強すぎて、彼の一族(弟の長頼や息子の久通等)がついてこれてないところだろうか。【注5】
 しかし果心居士と久秀の関係性や、平蜘蛛の扱い等も新鮮で見事というしかない。

 同じく松永久秀のインパクトの所為で、あとがきを読むまで気付かなかったが、道三を軸にして信長、明智光秀という二人の後継者を語る構造は、司馬遼太郎「国盗り物語」オマージュと見ることも可能で、そういった面でも面白かった。

 この時代、舞台を使いながら、羽柴秀吉をフル無視するといった濃淡も本書の特徴か。
 ただ平蜘蛛の織る夢や回想シーンが入り乱れるので、その構成に馴染むまでの冒頭部が若干読みづらかったのは僅かなキズだろうか。無理やり難癖をつけているキライがあるが。
 濃姫(帰蝶)が信長の下を離れた経緯はもう少し書き込んでもらいたかった気もする。いや、やっぱり言わず(書かず)が華かなぁ…。

【注3】山の老人を現代に登場させて暴れさせるといえば、西村寿行「花に三春の約あり」「妖しの花乱れにぞ」を思い出す。そう言えば、最近は西村作品を本屋で見かける事がめっきりなくなりましたなぁ。
【注4】Wikipediaで松永弾正をみてみたら、真偽はともかく、驚いたことに道三と久秀が同郷という説はあるらしい。
【注5】「信長の天下所司代」によれば、久秀が最後に裏切った際、京で人質となっていた二人の幼い息子が処刑されたらしい。

(2014/7/15記)

B日本異譚太平記 (1993〜1995)
戸部新十郎徳間文庫歴史薀蓄
325頁571円★★★

 剣豪や忍者に関する蘊蓄に関して、第一人者は著者だとわたしは思っている。
 そちらへの興味、調査が拡大して、今回太平記の時代に特化した歴史エッセイ集が出来上がったのかと思っていたが、著者の世代は皇国史観に則って太平記への関心が大きかった世代で、著者も子供の頃から太平記に慣れ親しんだという。こちらへの興味が先で、それが剣豪や忍者への興味に繋がったようだ。

 本書はJR新幹線の車内誌に、二年に渡って連載された歴史エッセイ集とのこと。著者が太平記とその時代に関するあれこれを、各章十頁強で自由に語っている。太平記の時代に興味を持つには十分な面白さだが、なにせこの時代の南朝北朝、幕府とその内部勢力の光背常ならなさは特筆すべきもので、全体の流れはつかみにくい。
 歴史書として本書を分類すると紀伝体ということになるだろうが、列伝形式で整理したほうが、より解りやすかったような気がする。

 横軸に年月、縦行を人物で区切って、事歴を記述した表を作ってみたい。
 それぞれの人物が、南朝北朝のいずれに属した時期かを色分けで明示して、ついでに神器の動きも上書きして…。いや、作らないけど。

(2014/7/10記)

C坂の上の雲(五)(六) (1971)
司馬遼太郎文春文庫歴史
414頁/375頁590円/638円★★★★

 前巻から旅順要塞戦が続いていてダウンな感じだが、開巻早々に全満州軍の総参謀長児玉源太郎が、旅順の第三軍の下に出張して指導するという極めてイレギュラーな対応が描かれ、漸く光明が見出せる。
 彼が二十八サンチ砲の移設を命令した際に、現場の技術将校たちは口を揃えてそれは不可だのなんだの、イチイチ理由を上げて反論したらしいが、児玉が一喝して無理やりやらせると、意外に早く移設完了したという。サラリーマン・エンジニアの一人としては、耳に痛いところだ。
 ちなみに、この時の児玉の一喝は、「今は戦争なんだ。そういった言い訳は戦争が終わってからにしろ!」であった。K・メア「決断できない日本」でも、東日本大震災の際の対応の遅れをレポートした中で紹介されている。

 二百三高地の確保後は、旅順港に隠れたロシア艦隊の殲滅に予想通り成功し、東郷艦隊は補給と修理の為に一旦日本の母港へ帰ることができたが、旅順要塞の降伏には尚日にちを要した。実際にはステッセルの先走りがあって結果的に旅順は落ちたが、旅順の司令官たちの中でも足並みがそろっていなかったようで興味深い。【注6】

 実は司令部の中で足並みが揃わないというのは旅順に限らず、またロシアだけの問題ともいえず、沙河会戦以後の酷寒の中にらみ合っていた日露両軍ともに問題があったようだ。
 騎兵旅団ながら左翼に薄く防衛展開させられていた秋山支隊は、逸早く露軍の大々的な事前行動をつかんでいたが、秋山好古の報告は実際の侵攻が始まるまで(黒溝台会戦)中央に黙殺されていたし【注7】、露軍は露軍で、もう少し侵攻を継続させていれば、特に左翼に援護を出して薄くなっていた中央にクロパトキンが本隊を進撃させていれば、日本軍の崩壊は確実であったところ、逆に軍を引いてしまったとか…。【注8】

 日露戦争がはじまってからは、基本的に陸軍の動きと海軍の動きが交互に語られるが、六巻の「大諜報」という章では、後方撹乱で大きな成果を上げた明石元次郎の事跡が大々的にピックアップされている。
 彼のキャラクターはなかなか特異で、また露内外の反勢力との渡りをつけるスピードは、そのキャラクターによるものであったろうが、彼自身に諜報をコントロールする能力はそうなく、運動費を賄えるパトロンさえ現れれば、自然に転がり巨大化していく状況ができあがっていたのだろうと分析している。

 そしてバルチック艦隊は漸くマダガスカル島を離れ、満州では日本軍乾坤一擲最後の大勝負である奉天の会戦がいよいよ始まろうというところで後巻に続く。

【注6】旅順艦隊を殲滅した時点で、とっとと乃木第三軍を転進させる考えはなかったのだろうか?
【注7】マイナス30℃40℃の気温下で、露軍の攻撃などありえないと、満州軍司令部は(児玉源太郎も含めて)完全にタカを括っていた。
【注8】日露戦争は、戦争に飛行機が使われない最後の大戦争だったように思うが、前方横一線に広がった敵軍の厚みを見極めるのは、とても難しかっただろうなと想像する。

(2014/7/7記)

D東西ミステリーベスト100 (2012)
文藝春秋編文春文庫歴史
475頁660円★★★★

 文藝春秋が2012年に国内外ミステリーのベストを調査するアンケートを取った、その結果を文庫化したものだ。この企画は1985年に続く二回目のもので、前回との差をみるのも大きな興味となっている。【注9】
 因みに2012年版の集計に参加したのは、一部の素人(大学のミステリ研究会等)を含むが、推理作家協会員等プロを中心とした387人とのこと。【注10】

 なんでも前回の1985年当時は、冒険小説のブームの直後らしく、ランクの中に冒険小説やスパイ小説がやたらに入っていて驚いた。後の1998年の江戸川乱歩賞「トゥエルブY.O.」が受賞していたことを知って、なんでやねんと思ったことがあるが、この結果を知っていればさもありなんだったろう。わたしが数えた処、1985年版の海外作品では、なんと二割がそっち系だった。
 本作には、ランク作品の紹介のほかに、ミステリー界【注11】の識者?たち四人による今回のランクを踏まえての対談が収められていて、まず俎上に出されるのがこの話題だが、これは妥当な矯正だろう。

 ミステリー界は、昔島田荘司が危惧していたような失速どころか、爆発的に裾野が広がった感があるが、いくら小説として面白いとはいえ、ミステリーベストの5位や6位に「鷲は舞い降りた」「深夜プラス1」が入ってるのは、やはり違和感がある。それらは今回軒並み順位を落とすか圏外になっている。【注12】
 当時ミステリーの裾野を広げる為に意図的に操作した面もあったのかもしれないが、ある情報をある時点まで読者に伏せておくようなことは、どんなエンターテインメント小説でも行う基本的なテクニックだ。こういった処までミステリーとして捉えるのならば、たしかにミステリーの裾野は無限に広がるだろう。

【注9】週刊文春では毎年末にその年のベスト10は調査していて、2001年に20世紀傑作ミステリーベスト10を選んだことがある。
【注10】795人にアンケートを出した回答が387人ということ。意外に少ない…。
【注11】本格、変格とか言い出すとややこしいので、一般的に推理/探偵/警察/犯罪小説と銘打たれて謎解きの要素がそれなりにある小説が、ミステリーの範疇かなと…。
【注12】それでも今回「鷲が舞い降りた」は19位に残っている。


<国内編><海外編>
1〜10位…
11〜20位…
21〜30位…
31〜40位…
41〜50位…

51〜60位…
61〜70位…
71〜80位…
81〜90位…
91〜100位…
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(2014/7/7記)

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