2014年 7月
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@ウルトラ THE BACK ――ウルトラマンの背中―― (2013)
河崎実秋田書店特撮薀蓄
187頁2000円★★★★

 「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の怪獣、星人たちの背面写真をメインとした思い切った企画の写真&コメント集。

 全怪獣、星人が網羅されていないのは残念だが、撮影所内あるいは近所の塀や畑をバックに撮られた正背のカラー写真は文句なしに貴重なもの。本編撮影【注1】の前後によって、破損してたりするのがたまらない。
 こういった本でのコメントは、少なくとも自分以上のマニア目線からのものがなければ楽しくないのだが、その点も本書は十分。模型雑誌の記事等で、ぬいぐるみの使いまわしの知識もある程度持っていたが、そこら辺りも一段上の情報が書かれていた。

 著者は、「地球防衛少女イコちゃん」「いかレスラー」「ギララの逆襲/洞爺湖サミット危機一発」等の監督として有名らしい。これらのコンテンツは題名は聞いたことがあるが、残念ながらこれまで観たものはひとつもない。レンタルで観ることが叶わないか、一度探してみよう。

 途中に何人かのマンガ家たちによるウルトラ画が紹介されているが、中でも目立つのが藤原カムイによるドドンゴ狩野派の屏風画?といったタッチで描かれている。揮ごうもあって、本書の著者のコメントでは怒音護と書かれているのだが、画をみると、怒首護としか読めない。察するに、首領のことをドンと呼んだりするので、そこからの当て字だと思うが如何に。

(2014/10/23記)

A点と線 (1957〜1958)
松本清張新潮文庫推理
253頁490円★★★★

 博多の海岸で一組の男女の死体が発見された。状況から心中死と判断されるが、古参の鳥飼刑事は一抹の疑念を抱く。男は死体発見の数日前から市内の宿に一人で泊って、誰かからの連絡を待っていたらしく、また東京からの道中の社内でも、一人で取ったらしい食事のレシートが発見されていたのだ。死んだ男女は、東京発あさかぜに並んで乗り込むところを第三者に目撃されていたのだが…。

 往来繁忙な東京駅において、15/16番線ホームから13番線のあさかぜを見渡すことのできた(13番、14番線に車両は停まっていなかった)タイミングは、わずか4分間だったという点に作為を感じた警視庁の三原警部補が、その疑念をもとに安田という機械工具商のアリバイを調査していく展開になる。
 「黒いトランク」を読んだときに、途中で探偵役が交代するのが珍しいと思ったものだが、日本におけるアリバイものの嚆矢である本書で、早そのスタイルが取られていたとは興味深い。

 言わずと知れた著者の代表作で、日本の戦後ミステリー界が“社会派”一辺倒に大きく舵を切ることになった、そのキー作品である。文藝春秋の2012年調べでも堂々6位として生き残っている作品だ。【注1】
 わたしが社会派ミステリーのイメージとして聞くところでは、「動機に社会性がある」、「天才肌の探偵が出てこない」、「人間が書けている」、「謎解きの意外性としては物足りない」といったところで、特に四番目のイメージから積極的に読むことの少ないテリトリーだ。
 だが、後の松本作品は知らないが、本作はそんな印象に沿う事なく、謎解きを楽しむ推理小説として十分に面白かった。
 前二つの理由はともかく【注2】特に人間を書いているわけでもないし(文量も削ぎ落された締まった展開なので、そんなものに費やす頁数もない…)、なにせトリックも面白い。
 犯罪現場とアリバイ地点が博多と札幌で離れすぎている点で、トリックの方向性は見えやすいのだが、フーダニットの興味が早い時点で消えてしまうというアリバイものの弱点が、<ネタばれ反転>共犯の浮上という形でカバーされている事や、それにも増して、上記4分間の目撃条件に加えて、殺害現場付近での二つの目撃証言に適合する真相が、犯人の周到な計画性の高さをさらに印象づけている。

 アリバイものの弱点と言えば、時刻表なんて読めねえよなんて声もよく聞く(わたしもだ)が、時刻表を“読む”楽しさが登場人物のエッセイとして紹介されていて、なるほど感心した。

 ちなみに、解説子が本書の謎解きの弱点として挙げている事は、わたしも読後一番、アレッて思った処だが、思いっきりネタばれをかましているので、先に解説を読む癖のある向きは注意が必要だ。危ない危ない…。

【注1】同社の1985年の前回調べでは、なんと3位だった。
【注2】“社会性”の部分は、今では特にインパクトが高いとも思えないが、GHQが去って5年、復興も加速中の昭和32年にあって、中央官僚の汚職とその解決方法に注意が集まったのか…な。

(2014/7/25記)

Bつぶやきのクリーム
森博嗣講談社文庫エッセイ
★★★



(記)

C織田信長軍団100人の武将 (1990/2009)
谷口克広・岡田正人
監修
新人物文庫歴史薀蓄
255頁667円★★★

 この時代の織田軍団を扱った歴史/時代小説は山とあるが、それらの話に出てくる家臣団の面々はわりかし決まっている。TVドラマならばなおさらだ。それらに登場する事の少ない端々の家臣までスポットを当てて、紹介したのが本書である。しかし個人的には、悲しい事に読む順番を間違えた。

 本書でその幾人かに興味を持ったなら、その彼らをより深く知るために、編者の「信長と消えた家臣たち」「信長軍の司令官」等に進むというのが正しい道筋だろう。ところがわたしの場合は逆になってしまったので、本書には少々物足りななさを感じてしまった。
 何度も書いていることだが、ネット本屋での盲目買いではこういったミスを犯しがちだ。

 とはいえ、信長の周りに初期に置かれた赤母呂衆黒母呂衆のメンバーが明記されていたり、これまでごっちゃになっていた人物をあらためて区別できたこともあって嬉しい。
 例えば、黒母呂衆だった川尻秀隆と赤母呂衆だった金森長近である。
 カ◎○リ○○○カで音の響きが似てるんだよん。(◎は母音も同じ)

 ついでに言うと、ヒデタカと被ってしまうからか、私の場合、仙石秀久までがごっちゃになってしまうことも…。

(2015/1/31記)

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