サイモン・トリガースと魔女の活躍でコールダーは撃退されたが、北のアリズン、南のカーステンに挟まれたエストカープに平安は訪れない。サイモンは西の海に出たまま行方不明となり、魔女は彼を探すために旅立った。
そのような境遇の中、二人の間に授けられた三つ子の長兄キランと次兄ケモクは辺境守備隊の戦士に成長し、末妹のキャステアは魔女の修行のために、連れていかれてしまう。キランとケモクは彼ら三人の間に存在するは交感能力で末妹の危機を感知して彼女を救出に向かい、魔女たちの警戒が弱まった隙をついて首尾よくキャステアを連れだすが、魔女たちの追撃は必至。彼らは残された賭けとして、未踏の東の地へと向かう…。
巻頭にはシリーズ初巻から、アリズン、エストカープ、カーステンと南北に並んだ簡易地図がついているが、本書の冒険の中心となる東の土地エスコアは、まったく表示されていない。西の土地に住む人々には、東のことを思い浮かべることさえが禁忌となる魔法がかけられているという設定。どうやらその地では過去に魔法をめぐる大きな争いがあり、その結果東西で大きな断絶が設けられたらしい。その中で彼ら三兄妹は地球人とエストカープ人【注2】の混血ということで、その呪縛が弱くなっているというのがミソというわけだ。
ちなみに米国作品でしかも三つ子だというのに、本書内では長兄と次兄、妹が明確な敬語で峻別されている。ケモクとキャステアはキランに対して敬語を使うのである。たしかにキランが大晦日の晩に産まれてから、一晩明けてケモクとキャステアが続けさまに産まれたという設定にはなっているのだが、そこは交感能力の強弱差として設定されている。原語でここまで明確に区別されていたのだろうか。気になる処だ。【注3】
おそらくは今は荒廃していてエストカープ側からは隔離されているエスコアの地を人の手に取り戻す冒険が、四巻、五巻と継続されるのだろう。前巻までの主要キャラはほぼ名前だけの登場であり、世代の代わった第ニ部開始である。
冒険小説とはいえ、血沸き胸躍るような活劇とは無縁なこのシリーズだが、ここに本書の冒頭で退場した彼らの両親がどういった関連をみせるのか/あるいは見せないのか、興味があるところだ。
【注2】エストカープが地球でないという言及はない。遥か遠未来の地球かもといった可能性が、示唆されていたようないなかったような…。
【注3】現在はそうではないらしいが、わたしが古いのか、双子の場合は後から生まれたほうが兄(姉)だと理解していたので、読んでいる間は余計に違和感が募った。
(2015/1/28記) |