2014年 8月
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@異次元SF映画100 映画秘宝ex 映画の必修科目03 (2012)
洋泉社MOOK映画薀蓄
252頁1200円★★★★

記載)

A英傑の日本史 坂本龍馬編 (2010)
井沢元彦角川文庫歴史薀蓄
259頁640円★★★

 英傑の××シリーズは井沢版日本通史の中では列伝であるが、本書はその流れからは少し外れている。
 坂本龍馬が中心にいるのはもちろんだが、彼個人のエピソードでまとめているのではなく、彼を中心にしながらも幕末史として編集されているのだ。

 上杉越後死闘編上杉謙信の項が飛び抜けて頁数が多かったものの、他の武将たちと並べて列伝形式は守っていた。本書でもその形式を継承することもできたはずだが、あえて本書のようにしたのはやはりマーケティングを考えた結果だろう。300頁程度のの半分が坂本龍馬の項で、残りは他の人物が別項が立てられているよりも、一冊丸ごと龍馬で謳った方がより売れるという判断だ。
 個人的には列伝形式を継承してほしかった【注1】、幕末は尊王佐幕攘夷開国と、思想が入り乱れて(しかも時期によって変節もある)状況が複雑に進むので、坂本龍馬には興味があるが、この時期の歴史の推移はいまひとつ理解できてないという層には、本書の編集方式の方が解りやすいように思う。

【注1】例えば、福岡黒田藩(当時の藩主は黒田長溥)と月形洗蔵の行動などは、これまでほとんど知らなかっただけに、今後も読みかえしてみたくなると思うが、本書の編集だとその頁を探すのはホネだ。

(2015/1/28記)

B魔法の世界の三兄妹 ウィッチ・ワールド シリーズ3
 Three against the Witch World (1965)
A・ノートン創元推理文庫ファンタジー
295頁320円★★★

 サイモン・トリガースと魔女の活躍でコールダーは撃退されたが、北のアリズン、南のカーステンに挟まれたエストカープに平安は訪れない。サイモンは西の海に出たまま行方不明となり、魔女は彼を探すために旅立った。
 そのような境遇の中、二人の間に授けられた三つ子の長兄キランと次兄ケモクは辺境守備隊の戦士に成長し、末妹のキャステアは魔女の修行のために、連れていかれてしまう。キランとケモクは彼ら三人の間に存在するは交感能力で末妹の危機を感知して彼女を救出に向かい、魔女たちの警戒が弱まった隙をついて首尾よくキャステアを連れだすが、魔女たちの追撃は必至。彼らは残された賭けとして、未踏の東の地へと向かう…。

 巻頭にはシリーズ初巻から、アリズン、エストカープ、カーステンと南北に並んだ簡易地図がついているが、本書の冒険の中心となる東の土地エスコアは、まったく表示されていない。西の土地に住む人々には、東のことを思い浮かべることさえが禁忌となる魔法がかけられているという設定。どうやらその地では過去に魔法をめぐる大きな争いがあり、その結果東西で大きな断絶が設けられたらしい。その中で彼ら三兄妹は地球人とエストカープ人【注2】の混血ということで、その呪縛が弱くなっているというのがミソというわけだ。

 ちなみに米国作品でしかも三つ子だというのに、本書内では長兄と次兄、妹が明確な敬語で峻別されている。ケモクとキャステアはキランに対して敬語を使うのである。たしかにキランが大晦日の晩に産まれてから、一晩明けてケモクとキャステアが続けさまに産まれたという設定にはなっているのだが、そこは交感能力の強弱差として設定されている。原語でここまで明確に区別されていたのだろうか。気になる処だ。【注3】

 おそらくは今は荒廃していてエストカープ側からは隔離されているエスコアの地を人の手に取り戻す冒険が、四巻、五巻と継続されるのだろう。前巻までの主要キャラはほぼ名前だけの登場であり、世代の代わった第ニ部開始である。
 冒険小説とはいえ、血沸き胸躍るような活劇とは無縁なこのシリーズだが、ここに本書の冒頭で退場した彼らの両親がどういった関連をみせるのか/あるいは見せないのか、興味があるところだ。

【注2】エストカープが地球でないという言及はない。遥か遠未来の地球かもといった可能性が、示唆されていたようないなかったような…。

【注3】現在はそうではないらしいが、わたしが古いのか、双子の場合は後から生まれたほうが兄(姉)だと理解していたので、読んでいる間は余計に違和感が募った。

(2015/1/28記)

C逆説の日本史17 江戸成熟編
井沢元彦小学館文庫歴史薀蓄
★★★★

記載)

Dそうだったのか!現代史パート2 (20)
池上彰集英社文庫歴史薀蓄
★★★★

 そうだったのか!シリーズの第三弾。
 「日本」を間に挟んでの現代史パート2で、同シリーズの「アメリカ」「中国」よりも前に出版されている。
 原本が2003年で、文庫化された時に最新情報が追記されているとは言え、それでも2008年である。既にそこから6年が経過しているわけだが、それで本書の価値が下がっているかと言えば、いささかも減じていないのがさすが。
 もちろん本書に教えられるまでもなく、世界の現代史を十分知っているならその限りではないのだが、まぁそこまでの人はなかなかいないだろう。

 元より、北朝鮮の章に未だ金正恩が登場してこないだとか、今はチェチェンよりもグルジアの紛争のほうがヤバイとか、あるいは福島問題もない(チェルノブイリに一章を割いている)とか、並べればいろいろと出てくる。
 しかし、例えばインドパキスタンバングラデシュの歴史であったり、ミャンマーの軍事政権であったり、インドネシア東ティモールの歴史であったり、20世紀の話でも十分に新鮮だ。こちらが無知だからだが…。

 福島問題にしたところで、あれはあれで東電その他の杜撰な対応や政府の動きの悪さが大きな問題になっているが、チェルノブイリにおける旧ソ連の対応は、まったく比較にならない規模の杜撰な体質であったことが確認できた。
 もちろん日本は福島問題を真摯に考え、未来に繋げなければならないのだが、組織の体質ということで言えば、中国の原発が遅かれ早かれ起こすだろう原発事故のほうが心配だ。絶対に隠す筈だから、日本の放射能観測はそちらのほうにも大きなアンテナを向けておくべきだろう。(当然向けてるよね…)
 いずれにしても、国際関係のややこしい経緯を解りやすい言葉で教えてくれる。

 ややこしいといえば真っ先に思い浮かぶパレスチナ問題もそうだが、第二次世界大戦という大きな戦争が終われば、各地で新たな紛争が雨後のタケノコのように始まってしまう。冷戦終結後の各地の民族/宗教の紛争をみてもそうで、このあたり人間の本質はなにも変わらないというのが残念な処…。

 ちなみに読後間もない今なら、リトルボーイ(広島/ウラン型)ファットマン(長崎/プルトニウム型)の違いを説明できる!
 どうせ忘れてしまうので、記憶構築の一助として少し書いておくが、前者のほうが核分裂物質の濃縮には大掛かりな設備が必要で、その代わりに起爆システムは簡易に設計できる。後者はその反対で、核分裂物質は比較的簡便に調達できるが、起爆のコントロールは難しくなる。

 ちょっと疑問なのだが、大型の原爆や原爆を起爆装置として核融合反応を起こす水爆といった、世界を何度も破壊しつくせるような核爆弾を使用する最終戦争の可能性はやや遠のいたが、世界各地の紛争で限定的に使用できるような小型の原爆の需要が上がってきていると聞いたことがある。
 プルトニウム型の設計が難しいのは、ウラン235より臨界質量【注4】が小さなプルトニウム239を、勝手に分裂開始させないためにより小片に区分けし、それらを百万分の一秒レベルで同時に爆縮させる技術が難しいとの事。
 つまり限定用小型原爆はプルトニウム型なら製造も簡単にできてしまうような気がするのだが…。

 ついでに印象的な秘話もひとつ。
 マンハッタン計画当時、よく知られていたコンゴのウラン鉱山はドイツに逸早くおさえられていたため、アメリカではウランの入手に窮していた。ところがなんと、コンゴのウラン鉱山のベルギー人責任者が、ドイツに侵略される前に、彼の一存で1250トンものウラン鉱石をマンハッタン島近くまで運んでいたという!
 こんな要らん気転がなければ、あるいは広島/長崎の悲劇は起こらなかったかも…。

【注4】勝手に分裂反応が進んでしまう臨界の質量。覚えているうちに書いておくが、ウラン238の臨界質量は22Kg。記載)

E突撃!モンスター映画100 映画秘宝ex 映画の必修科目05 (2013)
洋泉社MOOK映画薀蓄
254頁1200円★★★★

記載)

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