第5章 ついに、ようやく、とうとう…


こうして再び家探しをしなくてはならなくなった私ですが、今度は少しばかりラッキーなことがありました。「家探しの同士」を見つけることができたのです。総勢4人。4人で4ベッドルームの家を借りれば、結果一人あたりの負担額は少なくなると言う寸法です。この手のやり方は日本ではなじみの薄いことだとは思いますが、こちらではきわめて当然のことです。
(後日談:この「同士」の中のひとりのハンガリー人、おいらは大嫌いになっておいらから「ズリコビッチ」というニックネームを頂くに至る)


今度は前回の失敗を生かしまともな不動産屋とめぐり合うことができました。ここのシステムは、物件リストを見るのは無料。もし、大家にアポを取りたいなら5ポンド。それ以外の経費はすべて大家が払うと言うすばらしさ。ここで紹介されたのは、Drumcondraという地区の駅に程近い家。駅に近いからといってそれはまったくメリットになりません。この駅、一日に10本の列車もとまらないんじゃあないだろうか?ダブリンの交通システムはまるで冗談です。


この家、最近改装されたばかりのようで美しく、一部屋あたりの間取りも広々しており、各部屋にクロゼットなども完備されています。というわけで、ひとつ大きな問題がありました。家賃が高いんです!月1100ポンドはあんまりだろう。ということで一人が「家賃安くなる?」と聞いたのです。結果化け物を見るような目で見られました。ボツ。


次に見つけたのは、例の夕刊紙、Evening Heraldに載ってた、同じエリアで、同じ4ベッドルームで、家賃は月800ポンド。これは格安です。指定された時間は7時30分。行きました。


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そう、30人以上の人が行列しているのです。「お前らいいかげんにしろ!ここは観光地じゃないんだぞ!」と自分の立場をすっかり忘れて一人で怒りますが、状況は変わるはずもなく。家自体、ダブリンにしては珍しく板張りで、各部屋もそんなに悪くありません。こりゃ激戦になるぞというわけで、私たちは作戦を立てました。


大家に会うためにみんなが行列しています。大家は1階のリビングルームに居るらしく、その部屋で一組づつ面談をしているようです。企業の採用試験じゃあるまいし…。待つこと20分、私たちの番がきました。私の一言は反則技です。よい子は真似しちゃいけません。


私:「いい家やー。よっしゃー。50ポンドよけいにだすでー!」(なぜ関西弁なのかは突っ込まないように)


大家と思われるおばさんの目が眼鏡の奥で輝きました。私は見逃しませんでした。「この金に汚いアイルランド人め!」と腹の中で思いますが、接客業の経験で得たニセスマイルで交渉を続けます。


それでも。この部屋は取れませんでした。誰か900ポンド出したんだろうか?知るすべもないことですが…。


そしてくだんの良心的不動産屋に泣きつきます。すると、その家からさらに北(つまり街と反対の方向)に行ったところに、月890ポンドで、大き目の3ベッドルームの家があるということ。4人で3ベッドルームは問題ですが、行ってみました。


ここ、確かに3ベッドルームでした、それを除けば、家具はそろっていますし、トイレとバスは別。キッチンもきれいです。また、こちらで「レセプションルーム」と呼ばれる予備室まであります。つまり、そこをベッドルームに変えてしまえば、4ベッドルームの家になるという寸法。結論から言うとここに決めました。


その後ですが、この不動産屋は本当に良心的で、ガス、電気等の手配はもとより、大家との交渉など一手にやってくれました。私の部屋もまあ広く、結果、現在もさしたる問題なく暮らしています。よかった。この物語がハッピーエンドで…。


番外編 アイルランドで部屋を借りるには…


さてさて。その後のこの家での話ですが、ここに住んではや1年半、当然のように若干の住人の入れ替わりがありました。基本的に口コミ優先だったのですが、一度だけ、ウェブ上に広告を出し人を募ったことがあります。すごかったです。電話が本当に鳴り止まない、という状態になりました。しまいにゃ頭にきて電話線をプラグから抜いたほどです。そこで今度は「人を選ぶ側」になって家探しの実情を見ることができました。その点から、どういうふうにすれば家が借りやすいか、というアドバイスです。私感がかなり入っていますので、あくまで参考程度にとどめておいてくださいね。なお、ここでは、シェア、つまり一部屋のみの募集を念頭に考えています。


まず、職業。これが学生だと、実は致命的にマイナスポイントなのです。理由は、まず、定収入がないということ。そして、うるさそうだと思われること。家の同居人は静かなら静かなほどよいのです。さらに、いつ出て行くかわからないという点。学生は勤め人に比べ家を借りる回数が多いのです。貸す(選ぶ)側からすればそのたびいちいち人を選びなおすのは面倒です。また、職業も、やはり会社づとめなどのほうが信用度が高いです。いつでもやめられるような仕事をしていると、やはり信用度は下がると思います。


次、いつ入居できるか、またどのくらい住むつもりか。即入居、そして長く居るほうが有利です。当然ですね。


タバコは吸うか。ここでも嫌煙権爆発です。自分はタバコを吸っても人は吸わないほうがいい、そういうわがまま君も多いです。ちなみにうちは、ホタルのみ許可です。タバコを吸う人は、「ソーシャルスモーカー(飲み会とかのときのみタバコをすう人)」とでもウソをつきましょう。


週末に何をするか。これ、要するに、週末家に居るかどうかを知りたいのです。理想的な同居人は留守な方がいいです。(留守ならうるさくしようがないもんね)「旅行がすき」とでも答えましょう。留守がいいからといって、夜中の3時まで飲んでてしこたま酔って帰ってくるやつというのも考え物です。そういう意味では、酒も「あまりやらない」というのがいい答えのような気がします。


上に矛盾するようですが、あまり生真面目すぎる印象を持たれるのも考え物です。リビングルームでいっしょにテレビを見るようなとき、あまりに重い雰囲気がとそれはそれでいやなものですよね。何事もほどほどがよろしいようです。


掃除。やはり、台所やシャワーなどの共同スペースを汚く使うやつは嫌われます。かといって、病的にきれい好きなやつも一緒に暮らすと疲れそうです。そこそこのきれい好きとアピールするのがいいでしょう。


さらに、家探しのポイントです。


場所を考えましょう。私の場合、たとえ駅やバス停から遠くても安全なエリアをお勧めします。安全なエリアかどうかは昼間判断するのは難しいですが、夜、くそガキがうろうろしていて、しかも、タチが悪そうなやつだったりしたら最悪です。昼間、どうしても判断しなければいけない場合は、各家の大きさを見てみましょう。短純な図式ですが、小さい家=低所得=教育があまり行き届いていない=ガキが夜うろつく、というのは(少なくともダブリンでは)正なりです。そして小さい家ということは、そこに住む子供の年齢も低いということが言えそうです。また、バス停を見てみましょう。ひどい落書きがあったり、破壊されている場合は、夜、何が起こっているか推して知るべしです。また、ダブリンでは、公営団地付近の治安はつとに悪いようです。


次に、その家の住人の構成を見ましょう。先ほどのちょうど逆の話です。共同スペースが人が見に来るのに汚かったりしたら最悪です。トイレもいいポイントになるのではないかと。


さらには、部屋を見るときに暖かいかどうかはポイントになります。アイルランドの家、意外と隙間風が多かったりします。冬に凍えないようにしたいですね。


デポジット(敷金)および、公共料金。あとでもめないようにはっきりさせておきたいです。これを聞いてこない人は、貸す側もあなたに借りる気がないと判断すると思います。一般論として、デポジットは退去時返ってきます。


これくらいかな。とりあえず、ダブリンで家を探すのは本当に難しいです。