| ■ ルーヴル美術館・外
カフェを出た後、だらだらと歩きながらルーヴルへ戻る。
ふたたびリュ・ド・リヴォリ[Rue de Rivoli]に出ると、ルーヴル宮殿をなす数百メートルは続く建物の一角に、行きには通らなかったルーヴルの中庭が見える門があった。
せっかくだから行きとは違う道を通ろっか、ということでそちらへ。
この門の名前はポルト・マレンゴ[Porte Marengo]で、クール・カレ[Cour Carre´]という四方を建物に囲まれた四角い中庭に続いている。
(*Porte=門、Cour=中庭、Carre´=正方形の、四角い)
ルーヴルって中だけでなく、外にもけっこう見所があるんだ。
何がなにをあらわすのかちゃんとわかるならじっくり見たいけど、それはカフェでの休憩前に買ったガイドブックにも載っていないので、残念だけどあきらめて先へ進む。
さて、石の造形はみごとだけど緑はひとつもない中庭をぬけ、右手にある門へ向かう。すると、目の前にガラスのピラミッドが現れた。
ほっほー、ガラスのピラミッドってここにあるんだ。なんかまだわたし、ルーヴルの方向感覚がつかめてないな。

これが正しいガラスのピラミッド |
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ガラスのピラミッドからのぞむ
シュリー翼 |
当然ピラミッド前で記念撮影。
ピラミッドがすごく大きいので、銀とふたりでお互いかなりの距離を移動しながら写真を取り合うこととなった。
ついでなのでピラミッドの周囲を回ってみると、わたしたちが最初に見たピラミッドのちょうど裏側にあたる部分が美術館の入り口になっていた。
そうか、そういやルーヴル美術館の入り口なんだっけ、このピラミッドって。話には聞いていたけれど、最初に地下から入って来ちゃったんですっかり忘れてた。
しかしこのピラミッドの入り口、めちゃめちゃ混んでいた。何しろ、入り口から180度、左から右へ首をめぐらしても、列の終わりが見えないほど入場待ちの人々が列をつくっているのである。気の短い人ばかりがならんでいたら、いつ暴動が起きてもおかしくない状態である。
ちなみにこの時の時刻は2時25分。
ひー、いつこの人たちは美術館内に入れるんだろう? ――などとつい他人事のように考えてしまったが、わたしたちだってもう一度ルーヴルの中に入るんだって。まさかこの列に並ばなきゃならんのか?
入り口付近はすごく混雑していて、入場券を持っている人と持っていない人で並ぶ列が違うのかどうかよくわからなかった。なので、てっとりばやく地下の入り口に向かう。
さきほどカフェに向かう時に使った地上出口から地下に降りると、地下の手荷物検査はそれほど混んではいなかったが、やはりチケット売り場はものすごい行列になっていた。
こりゃ、ルーヴルに来る時は朝早く来るかチケットの前売りを買っておかないと時間のムダになるな。
フランス滞在中、ルーヴルにはあともう1回は来るつもりだから気をつけないと。
■ ニケ
午後のルーヴル見学第2弾の最初は、銀の希望により「サモトラケのニケ」[Victoire de Sanothrace]から。
ニケはドゥノン[Denon]翼にあるというので、午前中に見たギリシャ美術の展示室を通って行く。
どこをどう歩いたのかはよく覚えていないのだけど、ふと大階段の上を見上げたら、そこにあっさりニケがいた。
おおー、すごいすごい、ニケだ。
大階段の一番上で、白いニケは何かを待ちかまえるように翼を広げ、他を圧する迫力でそびえ立っている。
へー、写真で何度も見たことがあるのに、実際に自分の目で見るとまた違う
もんだなあ。

これがニケ(Nike)。
スポーツメーカー「ナイキ」の語源
ポーズがややタイタニック。わかる? |
このニケはやはり大人気。階段下から見上げていたら、ニケと同じポーズをして写真にうつろうとしている人などがいて笑。バカに国籍はない。
わたしたちもせっかくだからポーズとるか? という話もしたが、さすがにこの人だかりの中でアホなことをする勇気はなかった。
ところでニケ。本や写真で見た時は、ニケしか写っていなかったので気づかなかったが、実物のニケは彫刻でできた船の舳先に立って、その両翼を広げているのだった。
その姿はまるで波を蹴立てて疾走する船の上で風を受けているみたいだ。
でも、この船の部分は後世の作で、ニケはもともと海に突き出た岩の上に置かれていたそう。
うん、まあどっちにしろ、海風が似合う像である。
――なーんて実物を見た時はその堂々たる風格に感動していたけれど、ニケに向かって左斜め前から撮った写真をいま見ると、このニケ、ヘタすればひとりタイタニック状態である(映画で有名なあのシーンね)。
ニケを写す時は、角度を厳選したほうがいいかもしれない。
■ グランド・ギャラリー/イタリア絵画
ニケの前で思う存分記念撮影を行った後、その右手にある展示室へ移動する。
ボッティチェリ[Sandro Botticelli]の宗教画がある通路だか展示室だかよくわからない部屋を抜けると、そこは宗教画がばかりが集められた部屋だった。教会の祭壇を美々しく飾るための絵が多いので、金がふんだんに使われた作品が多いからけっこう華やか。
そんな絵が、天井画高い部屋の壁に多きものは1つ、小さいものは上下2段になって大量に展示されている。
カフェに休憩に行く前に買ったガイドブックが今回はあるので、本に載っている作品をチェックしながら歩く。
色々な絵があったけど、この部屋で覚えているのはひざまずいた男性の絵。男性の斜め上空には、鳥の着ぐるみを着たような人、あるいは人間凧(忍者がやる凧にはりついたまま空中に浮くやつ)のようなものが浮かんでいて、人間凧から男性に向かって何とかビームみたいなものが発射されている。
何じゃこりゃ? と思っていたら、これは「聖痕を受けるアッシジの聖フランチェスコ」という絵で、フランチェスコに向かって、上空に浮かぶ6つの翼を持つキリストが、自らが磔刑になった時に受けた傷の部分を聖フランチェスコの身体の上に光で指し示しているという絵なのだそうな。
おお、あの人間凧はキリストで、あのビームにはそういう意味があるのか。なるほど。
しかし、意味がわからんと偉大な絵も単なるギャグになってしまうぞ。
その他、十大弟子が仏陀を取り囲むように、聖人たちが聖母子を囲んでいる絵とか、キリストの磔刑の絵とかを見たあと次の部屋に移る。
するとそこは、長さが100メートル以上はありそうな床がどわーっとはるか彼方まで、それこそ遠近法の消失点が見えそうなほどひたすら一直線に続く部屋だった。
うおお、すごい。ローマ美術の部屋とはまた違う意味でこの部屋のスケールはすごいっ!
後で気づいたが、この部屋が世に名高いグランド・ギャラリーだったのであった。
とにかく、わたしは飾られている絵よりもまず部屋の規模にびっくりしてしまった。こんなでっかい広間の左右の壁に絵がえんえんと飾られているなんて〜。

えんえんと絵が続くグランドギャラリー |
ちなみにこの部屋、10メートルほど上空のかまぼこ形の天井には明かり取りの大きな窓がしつらえてあり、室内にはさんさんと日光があふれかえっていた。天井だけでなく、壁にしつらえられた床まである大きな窓からも自然光入りまくりである。
むう、日本の美術館なんて、展示室に日光が入るところなんてほとんどないぞ。いったい何なんだ、この差は?
とりあえず絵を端から見ていく。
このグランド・ギャラリーはイタリア絵画を展示している。幅10メートルくらいある巨大なギャラリーの両端をジグザグ移動しながら見ていったのだけど、絵は非常にキリスト教関係のものが多い。
日本で曼荼羅を見る機会は多いが、こういった教会に飾られている(いた)絵を見ることはあまりないので、「これは旧約聖書のあの場面だ」とか「これは聖人の何とかだ」と最初は絵解きをするのが面白かったのだけど、はっきり言って途中で飽きた。
なにしろ、聖母子図、磔刑図、聖人図、聖母子図、磔刑図、聖人図、とキリスト教関連の絵がくり返しくり返し、わたしたちに波状攻撃をしかけてきているような状態だったのだ。
というわけで、だいたいの絵はさーっと見て、ガイドブックと自分の気に入った絵の前でだけ足を止めることにした。
その中でもどうやらわたしに衝撃を与えたのが、頭に鉈(なた)だか斧だかがぶっ刺さったまま平然としている人の絵。んじゃ、こりゃあっ!?
見た瞬間にあまりにも驚いたのだろう。メモには頭に鉈が刺さった人物のスケッチまで残っている。
何なんだろうね、この人、頭かち割られて立ってるよ、なーんて話を銀としたが、どうもこの人はサン・ドニ[Saint Denis]という有名な聖人らしい。
273年にモンマルトルで殉死したそうなのだけど、その際切り落とされた自分の首を抱えて10kmほど歩いたのだそうな。ホンマかいな?
しかし、パリ市内にはサン・ドニ修道院というのがあるのだけど、この修道院はそのサン・ドニが10km歩いて倒れたところに造られた、ということになっているとのこと。うーむ。
ちなみにこのサン・ドニ、フランス国内ではあちこちで見た。何しろ、切り落とされた自分の首をバゲットよろしく小脇に抱えて持っているのだからわかりやすい。フランスでは重要な聖人なのかもしれない。
その他気に入った絵は、花で人物の横顔を描いている絵。
遠くからだと、一見ふつうの人物像なのだが、近くでよく見たら白やピンクの小さな花の絵をたくさん組み合わせて人の顔を描いているのだ。おー、よくできてる。
隣には鼻はズッキーニ、ほほはたまねぎ、あごはにんじん、というように野菜で横顔を描いたものや、枯れ葉や枯れ枝を組み合わせて描いているものもある。だまし絵みたいなもんか?

花を組み合わせて描かれた人物像 |
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こちらは野菜編 |
聖書を題材にした絵が多い中で、これはかなり変わった絵だったので面白かった。
だらだらグランド・ギャラリーを歩いて次に目が止まったのは、少年が片手に石投げ、もう一方の片手にでっかい男の生首をぶら下げた絵。う、血生臭っ。
銀が「これ、ダヴィデがゴリアテを倒した絵だよ」という。
ああ、ゴリアテ。だからあの生首あんなにでっかいのか。
この絵のタイトルは「David vainqueur de Goliath」。意味は「巨人(ゴリアテ)に打ち勝ったダヴィデ」。またそのまんまじゃん。つまらん。
この絵を見たあたりでグランドギャラリーをちょうど半分くらい歩いた。
しかし、またしてもわたしたちの体力の限界が近づいていたのだった。
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