| ■ サン・ガシアン聖堂[Cathe´drale St-Gatien]・外
どうにかトゥール[Tours]の宿に落ち着いて、ふと気づけば外はまだ真昼の明るさ。
貧乏性ちはる、身体はけっこう疲れているはずなのに、むらむらと「トゥールを観光したいっ!」という欲が沸き上がってくる。
だいたい、わたしの予定では、もともとトゥールは半日使ってみっちり観光する予定だったんだ。わずかな時間でも行っておかなきゃ、絶対後悔するに決まっている。
というわけで、荷物を簡単に整理した後、銀をせかしてさっそくトゥール観光へGo!
まずは手持ちの小さなトゥール市街地図の中で、一番大きな文字で位置を示されているサン・ガシアン聖堂を目指すことにした。
サン・ガシアン聖堂は、トゥールの駅からロワール[Loire]川へ向かって歩いていく途中にある。
駅前のホテルにいたわたしたちは、ふたたびバス・ターミナルの脇を抜けてブールバール・ウールトゥルー[Bd.Heurteloup]を渡り、石造りの建物を囲む高い塀が両側に続くリュ・デュ・プティ・ロワ[Rue du Petit Roi](※ミシュランガイドだとリュ・サン・シモン[Rue St-Simon])という名の、細い通りを歩き始めた。
この道沿いには音楽学校があったのか、どこからか歌声が聞こえてきたような記憶がある。
そんなさほど人通りも車の通りもない道をしばらく歩くと、あれがサン・ガシアン聖堂でしょう、と思われる尖塔が右手上空に現れた。
おお、遠目に見ても、なかなかすごそうな建物らしい、ということがわかるぞ。
その建物にさらに近付いていくと、聖堂の手前に美術館のようなものがあった。後で知ったのだが、トゥールには合わせて7つの美術館と博物館があるそうで、トゥールだけでも1日じっくり観光ができるのだそうな。
入ってみたかったのだが、すでに時刻は5時近い。美術館よりはサン・ガシアン聖堂の方が見たかったので先に進む。すると、白い石が少し黒くすすけたようなサン・ガシアン聖堂の石造りの塔は、間近になればなるほど凄まじい迫力を増してくる。おおー、これが聖堂というものか。

真下から見上げたサン・ガシアン聖堂の塔。ド迫力である。 |
そして聖堂の正面に出ると、サン・ガシアン聖堂はバラ窓がある三角屋根の建物を中央にして、左右に壮麗なふたつの塔を従えた、堂々たるゴシック建造物だった。ふたつの微妙に装飾の違う塔は、(夕方5時だけど)青空を背景にその威容を誇るようにそびえたっている。
銀が正面の入り口の装飾はゴシックも後期のフランボワイヤン式だと教えてくれる。
何でも、入り口や窓の上部の透かし彫刻が、炎の形のように先端が尖っているのがフランボワイヤン(=炎の燃え上がるような)式なのだそうな。なるほど、わかりやすい。
左側の塔の左横にはフライング・バットレスが塔を支えるように造られている。
建物全体を写真に収めようとしたが、これがなかなか苦労した。なにしろファインダー内に全然入りきらないのだ――というくらいこの聖堂は大きかった。

いつもより大きなサイズで見ていただいております。
サン・ガシアン聖堂。 |
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ファサードのアップ。
フランボワイヤンって感じ? |
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建物を支えている斜めの梁が
フライング・バットレス。
より高い建物を作るために生まれた技術。 |
その他、サン・ガシアン聖堂前には、車を改造してつくられた白い機関車型の観光バスが止まっていた。うーん、さすが観光地、という感じ。

ディズニーランドというよりは花やしき。
ハウステンポスのアトラクション並みに失敗している
と思われるトゥールの白い機関車型観光バス。 |
聖堂を囲む鉄柵の向こうに観光客らしき姿が見える。じゃあ、わたしたちも中に入ろうかと思ったのだが、入り口のドア横に、なぜかずっと人が立っている。何だろう? 警備の人かな?
普通、有名なお寺や教会内部を見るにはお金を払わなくてはならない国、日本から来たわたしたちとしては、そんな人がいると何となくびびってしまう。
しかしよく観察していたら、その人を無視して欧米人観光客が出入りしていた。じゃ、わたしたちもOKでしょう、ということで中に入る。
そして後でパリに戻ってからわかったことだが、この教会や聖堂入り口脇に立っているのはたいてい物乞いだった。ドアを開けてあげて、それでチップ(?)をもらうらしい。
そういや中国でもお寺の入り口付近に物乞いがいたっけなー、と思い出す。昔は千葉の成田山入り口にもいたけど、そういや最近見ない。
なるほどな、とうなずいただけで中へ入った。
■ サン・ガシアン聖堂・有料部分
さて、サン・ガシアン聖堂内に入ると、お金を払う受付があった。料金はおひとり様15F。
なんだ、お金をとるのか、と思いながらもせっかくなのでお金を払ってでも見ることにする。
お金と引き換えに係りの人がピンク色の薄い紙に15と書かれた入場券をくれると、「ペラペラドゥ?」とわたしたちに質問してきた。
何を訊かれているのかさっぱりだったが、どうもサン・ガシアン聖堂のガイド資料があるので、「何語のがほしい?」と訊かれていたようだ。
残念ながら日本語版はなかったので、英語版を借り受ける。
そしてわたしは聖堂内部に移動したのだが、すぐに受付にいた観光客らしき男性が「違う、違う」というようなことをフランス語で言いながらわたしたちを引き止め、「見学はあっち」と指さしながら教えてくれた。
あ、なんだ。このお金を払った部分は特別見学のものなのか。
(※Attention! というわけで、聖堂の中だけなら見学は無料です)
あわわ、恥かいちゃったよ、と思いつつも、男性に礼を言って順路にしたがって歩き外に出た。
ああ、さっき聖堂の外、鉄柵越しに見た観光客はここから出てきたのか。
まず最初は柱の立ち並ぶ回廊を歩く。
ガイド資料を読むと、この回廊の壁や柱上部に施されている彫刻は、トゥールにある植物がモチーフになっているそうな。確かに、アイビーやぶどうの葉と実など、いろいろな植物が建物を飾っていた。
回廊をめぐると、聖堂の左側側面にもすんごいバラ窓があるのが見えてきた。
うおおー、でかい。あんな繊細な模様を石に刻んだってのがまたすごいよなあ。

外から見たバラ窓。左上にガーゴイル型雨樋が見える。 |
そんなふうに上を見上げると、1本1本の柱の上部壁から外に向かって、ガーゴイル(gargoyle)型の雨樋が突き出しているのが見えた。
おおー、これって中国だと龍の頭の形してるけど、ヨーロッパだとガーゴイルなのか。
形は違うけど発想が同じだな。
回廊は「コ」の字型をしていて、2番目のコーナーには真っ白な石造りの螺旋階段があった。
その中心には当然柱があるのだが、これがうねった巨木の幹のような形をしていて、まるでおとぎ話に出てきそうな感じ。いやー、ヨーロッパだわ。

ガーゴイル型雨樋 |
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美しい螺旋階段 |
この螺旋階段を上がると2階に行ける。一部は屋上のように壁も屋根もないテラスだったけど、建物の中に入れる部分もあるようだ。当然入る。
するとそこには古い聖書が譜面台のようなものに置かれて展示されていた。もちろん全然読めない(笑)。なので、眺めるだけ。
窓にはステンドグラスがはまっていたけど、こちらは絵柄から判断するに、どうもわりと新しいものらしい。妙に現代的な絵があったような記憶があるのだ(ロケットかなんかだったような気がする)。よく憶えてないけど。
部屋の突き当たりには暖炉があって、その上に彩色されたレリーフがある。けっこう古いものなのか、色がところどころはげている。
図柄は、右上部の青い空に大きな星(本当に★の形をしていた)がひとつ、金色の強い光を放って輝き、その下でたくさんの男女がレリーフの中央一点に視線を注いでいる、という構図だ。人間だけでなく、地にうずくまった牛と馬も同じところを見ている。
その肝心要の中央には、飼い葉をしきつめた桶がひとつあるだけ。
うーむ、人物そのものは描写されていないが、これはどうみてもキリスト生誕の場面だろう。
初期仏教美術もお釈迦様そのものを描かなかったけど、これもそれと同じなのか?
桶をのぞきこむ人物の中には、頭にぐるぐるターバンを巻いた人が少なからずいる。レリーフの遠景にはパーム・ツリーなども刻まれている。ふうん、キリストってこういう環境で生まれたのか。

これがそのレリーフ。ほんといろいろな人がいる。 |
ひと通り見て満足し、階下に降りる。
そして、回廊の第2コーナー上部にあるステンドグラスの写真を撮っている時に、尖頭アーチ(先のとがったアーチ)の装飾がある壁にうっすらと絵が残っているのに気づいた。
よく見ると、古代ローマというかギリシャのような、丈の長い水色の長衣を着た男性ふたりが、緑色の服を着た人物に追われて、後ろをふりかえりながら逃げている、という絵だった。
何だろう? キリスト教が迫害を受けた歴史とか、そういうものが描いてあったのかな。
他の壁もよく見れば、ところどころ色彩が残った部分があり、昔はこの回廊の壁全体に絵が描かれていたのかも、と推測したりした。

うっすら青い色で描かれた絵が見える |
■ サン・ガシアン聖堂・内部
ガーゴイルの写真などを撮りまくったあと、聖堂内へ戻る。
お金を払った受付にガイド資料を返し、いざ聖堂の奥へ。
午後6時近かったはずだが、まだぜんぜん日が高いので、聖堂の中はとっても明るい。
そして目を上に向けると・・・おお、先ほど外から見たバラ窓が輝いているではないか。
そうかー、いままでバラ窓って外からしか見たことなかったけど、当然こいつもステンドグラスになっているんだから、建物内部から光を受けた様子を見た方がきれいなのか。
いやー、すごい、すごい。バラ窓ってこういうものなのね。

建物内部から見たバラ窓 |
サン・ガシアン聖堂は、建物の正面と左右の側面の三方に、それぞれひとつずつバラ窓がある。
そのバラ窓のステンドグラスを通した柔らかい光にあふれた聖堂内は、とても静謐で穏やかな雰囲気。
うーん、これが「祈りの場」ってやつか。
その「祈りの場」を銀とふたり、俗な鄙人らしく精力的にがっしがっしと見て回る。

これは回廊にあった
ステンドグラスだったかな? |
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まあ、どこにあっても
きれいなのでよかろう |
聖堂内は奥に向かってU字型になっていたと思う。中央部分は祭壇や信者の人が座る椅子が並べられていたけど、壁面は壁で区切られた小さなスペースがずらーっと並んでいて、それぞれのスペース内に聖人像や祭壇が飾られていたり、あるいはお墓や墓碑が作られている。この小さなスペースを仏教風に言うと、仏龕とか窟って感じか?
あるスペースの前で、各国語版サン・ガシアン聖堂ガイドが売られているのを発見。A4サイズくらいの紙1枚っきりだったけど、他に詳しい資料を持っていないので買う。1枚2F(約31円)。日本語版の紙は水色。
フランス語版のガイドを、誰か日本人が好意で訳して作成したものなのだろうか、字は手書きだったけど、内容はけっこう濃い。
そのガイドによると、「サン・ガシアン」とはトゥールの初代司教さんの名前とのこと。かつてはジャンヌ・ダルクや歴代のフランス王も、どこぞに行く途中にこのサン・ガシアン聖堂に立ち寄ったそうな。ふうん、古くから有名な聖堂なんだ、ここって。

1枚2Fとお得。お布施がわりに買うもよし、お土産にするもよし。 |
椅子に座ってバラ窓を眺めたり、この像は誰だ、あの絵は何だ、とじっくり内部も堪能して午後6時、外に出る。
ここはたまたま来たところだったけど、サン・ガシアン聖堂は充分見応えのあるところだった。
おわり |