| ■ トゥール[Tours]からアンボワーズ[Amboise]へ
アンボワーズへ向かうバスは、トゥール駅前を出発すると、駅を背にして右折し、ブールバール・ウールトゥルーへと進んでいった。行く手に太陽が見えたのでコンパスで方角を確認すると、太陽はだいぶ北寄りから上がっていた。
どうりで夜が遅いわけだよ。
(※Attention! ちはるは迷子時用に、旅行には必ずコンパスを持って行くのです。いつかこれが携帯GPSになる日が・・・)
バスはやがて左折し、高速の入り口のような、大きくぐるりと円を描く道に入った。
この時、道路脇の案内板に「Amboise」と出ていた。ん、よし、あってる。
しばらくして普通の道に戻ると、バスの左手にロワール川が見えるようになった。
なんだ〜、だったら左の席に座ってりゃよかった、と後悔する。
道は渋滞とはまったく無縁な空き具合。
それにしてもよく揺れるバスだな。道は舗装路なのに。
道路の両側には住宅街と野原がひろがっている。
どの家も傾斜のきつい屋根に煙突。煙突の先には小さな雪よけの屋根がついている。このあたりは冬になると雪がよく降るのだろうか?
道端には昨日列車の中からも見えた赤い花や黄色い花が咲いている。
ふっと視線を遠くに向けたら列車が走っていた。ああ、あんなところに線路があるんだ。
この時時刻は8時10分。後で確認したが、この時見たのはトゥール→サン・ピエレッコ→ブロワ→オルレアンを走る在来線の電車だった。
ロワール川は途中で見えなくなってしまった。つまらん。
とくにすることがなくてヒマ。のーんびりと特に何があるというわけではない静かな車窓の風景を眺めていたのだが、8時25分頃、ふっと不安になる。
そういや、いままで何人かの乗客が乗り降りしたけど、全然アナウンスも流れなければ、停まりますっていうブザー音もしなかったぞ。
さっと車内を見回したが、降車を告げる押しボタンもない。「次のバス停で停車します」っていうお知らせの電光掲示板もない。
どーやってみんな乗り降りしているんだ?
あ、そっか。みんな地元客だから、自分の降りるポイントはつかんでいるんだ。
この時わたしたちはバスの後ろの方に座っていたのだが、このままじゃまずそうである。いざとなったら「降ろしてーっ!」と叫べるように、運転手のすぐ近くにいなくちゃ。
銀にいまの情況を説明して、「前の座席に移動しよう」と言ったのだが、「大丈夫だよ」と返されてしまった。
お前なあ、昨日それでダメだっただろ?
ここで銀の意見を素直に聞いては昨日の二の舞なので、ひとりでさっさと運転席のすぐ後ろの座席に移動する。
銀はちょっとためらっていたようだったが、まもなくわたしの後を追ってやってきた。ふたりで運転手さんの真後ろに陣取り、アンボワーズ下車に向けて身構える。
(※Attention! 次号で詳述しますが、アンボワーズには「アンボワーズの何々バス停」というように、複数のバス停があります。「アンボワーズ」という名前のバス停はないのでご注意)
8時30分、道がT字路に行き当たる。正面に「Amboise 13」と書かれた看板が立っている。
このT字路でバスが右折すると、左手にふたたびロワール川が姿を現わした。確かアンボワーズ城はロワール川のほとりに建っているはず。時刻(アンボワーズ到着は8時46分の予定)から言っても、目的地はそろそろ近い。
川の反対側になる道の右側は崖になっている。その崖を何気なく見ていたら、崖の側面岩盤をアーチ状にくりぬいて住宅や店舗がつくられていた。
ええっ、うっそ。穴式住居じゃんこれ。
えーっ! フランスにも現役の穴式住居があるの?
以前、中国で見たことがあるけど、まさかヨーロッパにもあるなんて。
中国の穴式住居は入り口を五色のビニールシートで覆っただけのシンプルなものから、立派なドアのはまったものまでいろいろあったが、こちらの穴式住居はどれもフランスっぽく赤い花の植えられたプランターが飾られた可愛らしい窓やドアでつくられていた。
中には、おしゃれなワインレストランになっている店もある。その名も「RESTAURANT LA CAVE」。そのまんまじゃん。
日本に帰ってから知ったが、この穴式住居スタイルのホテルまであるそうな。
うーん、ちょっと面白そう。
ふうん、ポワティエでも思ったけど、フランスってかなり硬い岩盤でできている土地なのかなあ。上にみっちり住宅街を建てたり、横穴を掘って家にしたり。
日本はなー、地震があるからなあ。へたすりゃ生き埋めになって死んじゃうもんねえ。
地質が変われば住宅事情も変わるのう、とロワール川沿いを走るバスの中で考える。
そろそろ城が近いはずなので、「アンボワーズまだかな?」などと銀とこそこそ話をしていたせいだろうか、バスが停まったかと思うと、運転手さんが振り返ってわたしたちを見、「ここから城は真っすぐだよ、降りな」というようなことを身ぶりを交えながら言った。
ラッキー。やっぱりこの席に座って正解だった。運転手さんには大感謝である。
「Merci」と礼を言ってバスを降りると、確かに前方に城壁らしきものがちらっと見えた、と思う。
まあ、何にせよ目的地が見えているので迷うはずはない。安心である。
帰りもこのあたりからバスに乗るんだな、と通り沿いの周囲をチェック。
銀が通りの角を見て「郵便局がある」と言う。すると、わたしたちが乗ってきたバスが、その郵便局があるT字路を右折して去っていった。
あのバスはこの後、シュノンソー方面に行くはず。じゃあ、後でシュノンソーに行くために乗るバスも、この角を曲がって行くんだな。
よしよし、次にバスに乗る時は、この郵便局を目印に戻って来よう。
(※Attention! これは大きな間違いでした。理由は次々号に乗せます。8時のバスに乗った人は、郵便局に戻って来ないでください)
そしてわたしたちはぶらぶらと、アンボワーズ城へと足を向けた。
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