『フランス10日間徒然日記』 2000年5月24日(水)記

  
第33号
 
5日目の6――貴婦人たちの館、シュノンソー城(2) の巻
  
2001.1.10 発行
  
 シュノンソー城(2)・1階残り

 今まで見てきたものの他に、シュノンソー城1階には「フランソワ1世の居室」「ルイ14世のサロン」なる部屋があった。まあ、どっちの部屋も家具があって絵画やタペストリが飾られていて、と似たようなもんかな?

 最初は、チェストにほどこされた海馬や両面のヤヌスの彫刻を見ては「ほほー」とか言っていたのだが、これもありとあらゆる部屋にあふれかえっていたので、だんだん飽きてしまった。
 いつも思うのだけど、たくさんあるって印象が薄れてよくない。

 それでも、「フランソワ1世の居室」の方にはディアーヌ・ド・ポワティエを狩りの女神にみたてた絵が飾られていたことはおぼえている。でもなぜかその額縁に、メディシス家の紋章である「6つ玉」が刻まれていた。
 何でだろ? 正妻と愛人だったんだから、仲悪かったんじゃないの、ディアーヌとカトリーヌって。

 隣の「ルイ14世のサロン」には、きんきらきんに輝くものすごくゴージャスな額縁の絵が飾られていた。
 うっひゃ〜、なんだこりゃ? またしても手を合わせて拝みたくなるようなド派手さだぞ(笑)。

 これはルイ14世の肖像画だったんだけど、ラッパを吹く天使とか鷲とかさまざまな草花とか縁取りのあるカーテンとかが刻まれた額縁の方があまりにも見事なので、絵がかすんでしまいそうだった。

ルイ14世の肖像画
どうみても絵より額縁のほうができがいいような。
本文にあるとおり、描かれているのはルイ14世です。

 

 シュノンソー城・厨房

 シュノンソー城は1階の他、地下と2、3階に見学できる部屋がある。
 一番面白かったのは地下の厨房。ここは、向かいから人が来ると、身体を横にしなければすれ違えないほどせまい階段を降りて行く。
 階段の途中、壁にスリットがあり、のぞいてみたら鉈のような大きさの包丁がずらりと並べられていてびっくり。あんな危険物置いといていいのか?

 この厨房は、カトリーヌ・ド・メディシスがシュノンソー城で盛大な宴会を開くために、だいぶ拡張したと聞く。部屋は下記のように6つに分かれている。

 ・食膳支度室
 ・城の使用人のための食堂
 ・肉処理室
 ・食料貯蔵室
 ・厨房への橋
 ・厨房

 まず階段を降りきると、真正面の真っ白な壁上部に、イノシシのトロフィー(首の剥製)が飾られている部屋に出た。ここが「食膳支度室」(もしくは厨房)になる。
 イノシシのトロフィーの下には、パンなどを焼いたらしい石焼き窯(かま)のようなオーヴンが半円形の口を開けている。オーヴンの横の壁には、舟のオールのようなものがかけられていた。
 ああ、これでパンやら肉やらを窯の奥に置いたんだな。

 この他、白い壁には大小さまざまな大きさの銅製鍋やフライパンが飾られたり、大きな食器棚が壁一面に設置されていたりした。

 「食膳支度室」の奥の部屋には、真ん中にテーブルが置かれた部屋があった。じゃあここが「城の使用人のための食堂」か。

 この部屋には金属製の蛇口がある水道らしきものがあった。蛇口? ということは、わりと最近までこの部屋は現役で使われていたのだろうか?

 また、この部屋の壁には一辺が20cmくらいある大きなワッフルの型がいくつも飾られていた。
 ワッフルかあ。この時代からあったんだなあ。

 「食膳支度室」に戻ると、反対側の奥にシェール川がよく見える小さな部屋があった。ここが「食料貯蔵室」だった。
 、壁際のバスケットなどにはドライフラワー製の麦などが置かれていたり、天井に渡された木の枝からは、レプリカのハーブやにんにく、たまねぎや何かの木の実などの香辛料が、糸でくくられて吊るされていたりする。

 その中には大きなとうがらしもあった。
 とうがらし? フランス人はとうがらしのような辛いものが苦手だって聞いたことがあるけど(激辛フランス料理ってあまり聞かない)、この時代には好んで食べられていたんだろうか?

 部屋の真ん中に置かれた木のテーブルの上には、スパイス類をすりつぶす白い石の器や、食べ物のレプリカが入ったバスケットなどがある。
 よく見たら白い石の器は完璧な作り物で、すりこぎが器に固定されていた。
 それでも銀に「中のものをすりつぶす真似をしろ」と指示し、写真を撮ったりしてみる。

 部屋のすみっこには、ローマ時代の遺跡から掘ってきました、みたいな素焼きの大きな壷型の土器が置かれていた。どうも中に水などをためておくのに使われたらしい。
 こんな壷、いつごろまで使われていたんだ? 不思議。

 天井の低い橋を渡って、向こう側の厨房に行く。この橋が「厨房への橋」で、窓からはシェール川に降りられる階段があった。

 銀が言ったのだったか、ディアーヌ・ド・ポワティエはアンリ2世よりも20歳近くも年上の愛人だったけど、毎日シェール川で水浴びしたりしてその若さと美貌を保ち、かなり年をとっても容色が衰えなかったそうな。ある意味妖怪に等しい。

 そのディアーヌが水浴びしたのが、この橋の外に見える基部にある桟橋らしい。「ディアーヌの水浴場」という名前がついていた。

 さて、橋を渡ったところの部屋は本当に「厨房」(もしくは食膳支度室)。白い壁には前の部屋と同じく銅製の鍋やフライパンがかかり、真ん中にどーんと小型の機関車くらいの大きさがある黒い鉄製のオーヴンがある。でかい。

 暖炉みたいなところには、大きな肉をぶっ刺しても全然OKそうな太い串が何本かかけられていた。そしてその串の片方には滑車のようなものがつけられ、それぞれに鎖がついている。どうもこの鎖を引っ張ると自動的に巨大な串が回転するようになっているらしい。ほほう、回転式ロースターか。よくできている。

 1階に戻ろうか、とひとつしかない階段に戻ると、階段の向こうに「肉処理室」があった。階段から見えた大きな包丁が壁にずらりと展示されていたが、全部ビスで壁にがっちり固定されていた。当然だわな。

 そしてさすが肉処理室。壁際の床には排水溝に続く溝が作られ、床が汚れたら水できれいに洗い流せるようになっていた。

 身近なものが多いせいか(時代が違うけど)、この厨房はなかなかおもしろかった。 

 

 シュノンソー城・2、3階

 1階に戻って今度は2階へ。部屋の方はさほど記憶にないのだけど、階段はけっこうよくおぼえている。

 というのも、古い時代のフランスの階段というのは螺旋階段が一般的だったんだけど、ここの階段はまっすぐな折り返し階段で、これはイタリアの影響を受けてフランスで初めて造られたものなのだそうな。
 へえ、階段の構造にも歴史ありなんだなあ。

 白いつるつるした石でできた階段で、まるで鍾乳洞みたいだった。

まっすぐな階段
螺旋ではない階段。
そういやサン・ガシアン聖堂で
見た階段は螺旋階段だった。

 2階の長い廊下には、壁にたくさんの古いタペストリが張りめぐらされている。廊下の城前庭側突き当りには、外に出られる小さなバルコニーがある。
 もちろん外に出てみるが、狭いので各国観光客による場所の奪い合いになっていた(笑)。

 2階にも5部屋ほどがあったんだけど、メモには何枚かのタペストリの内容しか残っていない。

 1枚は、「ヴァンドームのセザールの居室」という部屋にかかっていたタペストリで、「フルーツがすごい」という記述がある。
 どうもこれはギリシャ神話のデメテルとペルセフォネを題材にしたタペストリで、ペルセフォネがハデスと共に地獄にいる間、ペルセフォネの母親であるデメテルは旅をしながら人々に果物を与えている、という話を織り込んでいたらしい。なるほど。

 残りは「ガブリエル・デストレの居室」にかかっていた3枚1組のタペストリ。6月は羊の毛狩り、7月は鷹狩り、8月は収穫時の賃金の支払いの様子がそれぞれ描かれている。
 で、それぞれのタペストリの絵の周りには、月にちなんだ星座のマークが入っていたらしい。6月は蟹座、7月は獅子座、8月は乙女座らしいんだけど、あまりよく覚えてないなあ。
 どんな言葉かはわからないけど、一緒に文字も織り込まれていたようだ。

 3階には1室のみ。この部屋が暗くて黒い。
 ここは暗殺されたアンリ3世の王妃、「ルイーズ・ド・ロレーヌの居室」なんだけど、部屋全体を黒く塗り、そこへ銀色の涙や何やらの喪の印を天井や壁一面に描き込んであるのだ。

 うう、気分まで暗くなりそう。早々に退散(でもこの王妃様は人気があったみたいで、いつも白い喪服を着ているから白い貴婦人と呼ばれていたそうです)。

 これで館内の見学はほぼ終了。
 2階のバルコニーから顔を出している写真を地上から撮る、という地道な作業を交代でこなす。
 午後1時半近くになっていたので、いったん休憩することにした。

 

 シュノンソー城・喫茶室

 チケットを買う時にもらったチラシを見ると、シュノンソーには高いレストランとセルフ・サービスの喫茶室のふたつがあることになっている。
 もちろんわたしたちは喫茶室のほうへ。お城の外の前庭を眺める位置に喫茶室はあった。

 中は本当にセルフ・サービス。入り口で大きなお盆を自分でとって、棚に並べられているサラダや飲み物、チーズや果物を自分でとっていく方式。
 ただし、ステーキやロースト・チキンとかハンバーガーなどの調理が必要なものは、レジで注文するものを言って、食券のようなものをもらい、厨房の窓に差し出す手順を踏まなくてはならない。
 うーん、並んでいる商品やきれいさはともかく、学食を思い出す。

 何を食べようかな、とメニューを見ると、肉料理のある皿だと50F
(約785円)になっている。それに飲み物やら何やらをつけるとけっこうな値段になってしまうな。

 飲み物も、ネッスルのアイスティー350ml缶が16Fもしているし。
16Fってだいたい320円じゃん。高っ(←フランス滞在中は1F=20円として計算していた。実際には当時のレートで約251円)。
 ビールもバドワイザーの350ml缶が25F。500円じゃん。たまらんな(実際には約393円)。

 さすがシュノンソー、セルフ・サービスとはいえ高いぜ、と思いながら棚に並んだ飲み物をよく見直すと、ワインのハーフ・カラフェ(half carafe?)が15F(約236円)、ビールもクローネンバーグだと15F(同)になっている。
 なんだ? アイスティーよりもワインやビールの方が安いのか?

 ソフト・ドリンクとアルコール類が同値段なら、当然アルコールが入っている方を選ぶ。
 というわけで、わたしは白ワインのハーフ・カラフェをGet。
 このワインはシュノンソーで造っているワインとのこと。赤と白があって、たしかチケット売場でもボトルで売っていた。

 その他、わたしはライスサラダのようなもの16F(約251円)を棚からとり、メインディッシュにチーズ・バーガー30F(約471円)をレジで注文。しめて61F(約958円)。

 それにしても、ハンバーガー高いな。ビールもバドワイザーだとめちゃ高だし。やっぱりフランスはアメリカを憎んでいるのか?

 その他の値段は下記の通り。いま計算し直すと、ハンバーガー以外はけっこうお手頃価格。

・エスプレッソ     8F(約126円)
・紅茶        10F(約157円)
・ココア       15F(約236円)
・小さなフランスパン  3F(約 47円)
・クロワッサン    10F(約157円)
・デニッシュなど   12F(約188円)
・ハンバーガー    28F(約440円)
・野菜のハンバーガー 32F(約502円)
・サラダなど     15〜20F(約236〜314円)
・冷たい甘いもの   12F(約188円)
・ケーキ・タルト   15F(約236円)
・洋梨、オレンジ    7F(約110円)
・りんご       10F(約157円)
・さくらんぼ     20F(約314円)
・チーズ各種      9〜15F(約141〜236円
・チーズ2種盛り   16F(約251円)

 その他、個包装のバターやジャム、チョコレート・バーなどのお菓子、ウィスキーなどの小瓶も売っていた。

 銀は白ワインのフル・カラフェ(25F:約393円)とフライド・ポテト(値段不明)を頼んでいた。居酒屋か、ここは? と思わせるような組み合わせである。
 今日はもう何の心配もないせいか、このフル・カラフェで銀はめずらしく酔っぱらっていた。

 席は店内でもテラスでも値段は同じだったけど、この時は木をふんだんに使った内装の部屋の中で食事した。各テーブルには観葉植物の小さな鉢が置いてある。
 天井からつるされたロウソク型の照明や、壁に飾られた鹿のトロフィーが妙にディズニー・ランドっぽい。いや、あっちのほうがパクっているのか。
 

シュノンソー城のカフェ
シュノンソー城のカフェテリア。
これはチラシの写真から。
奥にガラス張りの厨房がある。
  お昼ご飯
これがわしらの昼食。
お城だからどう、ということはない、
スキー場でいうところのゲレ食は
酒も料理もうまい。

 ロワールに来てからあまり日本人を見なかったけど、この喫茶室にはちゃんと日本人がいた。なんとなく安心する。
 わたしたちのような若いモンふたり組というのはいなくて、やはりみんな50歳以上の夫婦ふたり連れが多かった。

 しかし、会社の同僚が言っていたが、なぜ日本の50歳以上の旅行者というのは、帽子&ポケットがたくさんついたベスト、ディパックにウェスト・ポーチ、そしてズボンにスニーカーという登山者を思わせるいでたちなのだろう? (自分の親もそういう格好なのだそうな。カナダに行ってもスペインに行ってもイタリアに行っても 笑)。
 あの年齢になると、そういう服装が一番動きやすいのかな? わたしもああなるんだろうか?

 喫茶室の中は、混雑する時は注文の列が外まではみ出し、座る席がないくらいなんだけど、ツアーの客がひくとがらーんと人がいなくなる。おかげで空いた店内で、1時間以上ものんびりした。いいな、たまにはこういう時間の過ごし方も。

 前述の通り、銀はめちゃくちゃワインで陽気。こんなにべらべらしゃべるこいつを見たのは久しぶりだ。

 2時40分頃まで休憩して、今度は庭園を見るために外へ出た。 

おわり

  
 ● 今回のおこづかい帳 
 
お昼:61F

小計:61F
合計:1,329.17F(約20,868円)+16,360円

(※レートは2000年5月当時、1F=15.7円で計算しています)

 

 ● 編集後記 
 
 はい、シュノンソー城・1階〜喫茶室までリポートでした。
 すみません、2話で終わらせる予定だったんですが、シュノンソー城は迷宮のようで、いくら書いても書いても出口にたどり着きません。あと1回おつきあい下さい。

 まあ、それくらいシュノンソーに長くいたんですよ。
 事情は次回ご説明します・・・

 それではまた次号でお会いしましょう。

 


5日目の1――バスに乗ってアンボワーズへGo! の巻
5日目の2――洞窟の家にびっくり/アンボワーズへの道 の巻
5日目の3――これがお城だっ! アンボワーズ城 の巻
5日目の4――あざみの花咲く山道を越えて/シュノンソーへ の巻
5日目の5――貴婦人たちの館、シュノンソー城(1) の巻
5日目の6――貴婦人たちの館、シュノンソー城(2) の巻
5日目の7――貴婦人たちの館、シュノンソー城(3) の巻
1日目 2日目 3日目 4日目 6日目 7日目 8日目 最終日 TOPへ

E-mail to : chihalu@geocities.co.jp
Copyright(C) 1999-2001 Office EST3