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■ チェック・アウト
朝6時起床。
レースのカーテンを開けて外を見たら、雨が降っていた。雨が道路を静かにたたく音もする。
でも、駅前の道路はぬれているけれど歩道は乾いていた。よかった、雨は夜の内に降って今は止みけなんだな、と思っていたら、その直後にふたたび雨が強く降り始めた。
げげ、傘、パリに置いて来ちゃったよ。すぐに止むといいんだけど。
6時30分、階下に降りて食堂にて朝食。今日は飲み物にショコラ(ココア)を頼む。コーヒー同様、ショコラも大きな白い陶器のピッチャーにカップ3杯分くらい入ってやってきた。おいしくて満足。
今日は食堂に軍服を着た男性がふたりいた。休暇かなんかだろうか?
食事中におばあちゃんがわたしたちに何かを訊きに来た。フランス語だったので何がなんだかさっぱりだったけど、指で外をさしているので、どうも今日チェック・アウトするのかどうかを訊かれているらしい。
もちろん今日チェック・アウトするので、うんうんとうなずく。おばあちゃんもそれでわかってくれた。
7時、食事を終えて部屋に戻り簡単に身支度。
乗る電車は8時6分発だけど、チェック・アウトしたり切符を買ったりしなきゃいけないので、余裕をもって7時20分には部屋を出る。
食堂入り口にあるフロントで、おばあちゃんとその旦那さんとおぼしきおじいちゃん相手にチェック・アウト作業。会計伝票を見せてもらったのだが、しかし、一瞬どれが合計金額なのかわからない。

ちっさいけど、会計伝票 |
というのも、フランス人の書く数字って、クセが強くてぱっと見ただけじゃわかりにくいのだ。「1」なんて前フリが長いから「人」って漢字に読めそうだし。「4」は一筆書きするから「k」か「h」、「5」も一筆書きなので「S」に見える。

文字部分アップ。
上から、「640」、「136]、「776」、「320」、「456」と読む |
カリグラフィの影響なのかな? だとすると、ヨーロッパ全体でこうなんだろうか?
まあ、それでもなんとか順に見ていくと、予想通り料金は、
1泊 320F
+) 朝食 136F(=34F×2人×2回)
──────────
456F(約7,159円)
だった(1泊目の宿代は予約したツーリスト・インフォメーションで払った)。
出るおつりが少ないように、と気をつかったつもりで506F出したら、おばあちゃんとおじいちゃんがガタガタとフロントの引き出しを開けたりして何かを探し始めた。
どうしたんだろう? とちょっとぼんやり眺めてしまったが、すぐに「あ、おつりがなくて困ってるんだ」と気付く。
朝早いから、まだお釣りの小銭とかを用意してなかったんだろうか?
「待って、待って。あー、Please, just moment.」とか何とか言いながら、銀とふたり、財布の中の小銭をかき集める。すると、幸いなことに50F集まった。
こうして456Fちょっきりを払い、チェック・アウト無事終了。ふう。
ホントは、もっとトゥール[Tours]に滞在していろいろ見て回りたかったな。結局昨日は疲れてて、プリュムロー広場[Place Plumereau]にも行けなかったし。あの綺麗な広場は、ぜひもう一度見ておきたかった。
でも、旅行会社には今日パリに戻ると伝えてあるので仕方がない。
後ろ髪をひかれつつ、わたしたちはホテル・ヨーロッパを後にする。
外は、まだ雨が降り続いていた。
■ 切符購入
トゥール駅とも今日でお別れ。
苦労してたどり着いた駅だけに、今日でここを使うのが最後と思うと何となくさみしいものである。
とりあえずは切符を買わなくてはいけない。
今日の最初の目的地はオンザン[Onzain]にあるショーモン[Chaumont]城だが、切符は本日の中間目的地であるブロワ[Blois]まで買うことにする。
なぜなら、フランスの列車の乗り降りの方法から見て、途中下車はOKだろうと思ったからだ。
(*発音確認:「on」=オ〜ン、「ain」=ア〜ンと読むのでオ〜ンザ〜ン)
(*発音確認:「oi」=「オワ」)
ちなみにこの推測は、予約していない乗車券の場合は正解。
フランスでは予約していない乗車券の場合、わたしたちがパチコ機と呼んでいるコンポストゥール[composteur:刻印機]で刻印してから24時間が有効期間となり、その24時間以内は乗り降り自由なのだ。
わたしたちがいままで買った切符の中では、シュノンソー駅で買った切符がこれに該当する。
わたしたちがこれから買おうとしている乗車券は予約をともなう乗車券ではないので、この原則が適用されるはずである。
じゃあなぜパリまで買わなかったかというと、本日の宿がパリでとれているかどうか、この時点ではまだわからなかったからである。
もしかしてもしかすると、今日はブロワに泊まることになるかもしれない。
パリまで買ってしまうと、切符がムダになってしまう可能性があった。
一応切符の自動販売機前に行ってみるが、やはり自販機はコインかカードしか使えなかった。しかもコインは先ほどチェック・アウトで使い果たしてしまっている。
しかたないので窓口へ買いにGo。
さすがにフランス滞在も6日目になると、窓口で言葉の通じない人を相手に買い物するのにも慣れてくるので、「Blois, 2classe」とだけ書いたメモを見せて、「Deux, s'il vous plai^t.」[ドゥ、スィルヴプレ](2枚ください)と言ってみた。
すると、めずらしことにフランス語でペラペラ〜っと何か言い返された。
う、全然わからないぞ。
なので、「わからない」と日本語で言いながら首をふったら、窓口の若い女性に「困ったな」という顔をされたが、次の瞬間には「まあ、いっか」という様子でキーボードをたたき、わたしたちに切符をくれた。ひとり51F(約800円)。
窓口を離れてから切符をよく見たら、
―――――――――――――――――――――
Dep 25/05 a` 07H57 de TOURS
Arr a` 08H28 a` BROIS
TRAIN 98056
PLEIN TARIF
―――――――――――――――――――――
と印刷されていた。
(※実物はこちら!)
ああ、あの窓口の女性、「何時の電車に乗る?」って訊いてたんだ。
ふうん、フランスでは窓口で切符を買う時は、乗る列車の時刻(便)まで指定しなきゃいけないのか。日本と違うなあ。
まあ、1本くらい早い列車に乗ってもいいか、と思ったのだが、時刻表を確認すると、7時57分発の列車はオンザンに停まらないことがわかった。じゃあ、この切符に書いてある列車には乗れないじゃん。
どうしよう。この切符で8時6分発の列車に乗っていいのだろうか? でも普通、新幹線だって乗車券だけで(つまり指定なしで)乗ることができるし。
ま、たぶん大丈夫じゃないのー? と銀とふたりで結論付ける。
だが、結果としては上記の結論は不正解。
実は予約してある乗車券に関しては、その列車に限り有効なのだ(帰国後にトーマス・クックを読んで知った)。
そしてわたしたちが窓口で買った切符は時刻が書いてある。つまり予約してあるので、本当は7時57分発以外の列車に乗ってはいけなかったのである。
(※Attention! 自動予約券売機や窓口で、予約の内容を変更することができます)
しかも、予約してある乗車券はその列車に限り有効だから、途中駅での乗り降りは自由でない。1回途中下車したら、そこで終わりなのである。
がーんっ! 知らぬこととはいえ、また罪を重ねてしまった。
しかし、トゥール→オンザン→ブロワ移動中は、一度も車内で検札にあわなかったので、自分たちの間違いには気付かずじまいだった。
みなさまはどうぞお気をつけ下さいまし。
■ トゥールからオンザンへ
8時6分の電車がくるまで、駅の中をふらふら歩く。
鉄骨がむきだしの駅構内は、人間の出入りも自由だけど、鳩の出入りも自由である。よって、プラットホームは白い鳩のフンだらけ。
パリでの記憶がまだ新しいので、なんとなく上空に気をつけてしまう。
長いホームを端まで歩いてみたりもする。日本と違って低いホームが外国だなあ、と感じさせる。

トゥール駅、奥から |
駅構内の売店でプリュムロー広場が写っている絵葉書を発見。あの広場の写真は撮ってなかったので、わたしにしてはめずらしく絵葉書を買う。1枚2.5F(約39円)。2枚購入。
切符をパチコして待っていると、8時ちょっと前にC番線に8時6分発の列車が入線してきた。まわりの人と一緒になって、適当な車両に乗り込む。
乗り込んだ車内は、いかにもヨーロッパ的な4人×2列座席が対面式の8人掛けコンパートメント(個室)。銀を座らせ、記念撮影だけして先へ進む。
そしていかにも2等っぽい席が並ぶ車両内で座ったら、スーツを着た鉄道関係者らしい人に「ここはだめ。あっち行って」みたいなことを言われてしまった。
そういえばこの列車、入線してきた時やたらと長かった。一部車両を切り離すのかな?
追われるように車内を移動したのだけど、連結部のドアが固い。かなり力を入れないと開けられなかった。
ようやく座席に落ち着く。車内はかなり空いていたので、銀と前後にわかれて座る。
電車は8時6分を過ぎても動かなかった。一瞬、違う列車に乗ってしまったのでは? とあせる。が、まわりのみんなは誰もあせっていない。これがヨーロッパ時刻か?
8時8分。2分遅れで無事発車。列車はゆっくりとトゥールの駅舎を離れていく。
駅を出てすぐの街並みは、千葉の地元そっくりの街並み。一瞬ここがどこだかわからなくなる。
6分ほどで隣駅にあたる、因縁のサン・ピエレッコ[St-Pierre des Corps:サン・ピエール・デ・コール]駅に到着。接続駅のためか、けっこう人が乗ってくる。
列車内でトイレに行く。中に入ると、なぜかトイレの便座とふたが目にも鮮やかな蛍光グリーン、そしてトイレット・ペーパーとペーパー・タオルは真っピンクだった。どういう色彩感覚だ?
おまけに便器の中から風とごうごうという音が吹き込んでくる。まさか今時、下に垂れ流しってことはないよなあ。
さまざまなことを考えながら、蛍光グリーンのトイレと真っピンクのペーパーで用をたして外に出る。
席に戻ると、ちょうどアンボワーズ[Amboise]に列車が到着した。かなりたくさんの人が降りた。お城を見に行く観光客が多いのかな?
次の停車駅が、わたしたちの目的地であるオンザンである。アンボワーズからオンザンまでは約11分。乗り過ごさないだろうか、とドキドキする。
そろそろオンザン駅だな、と荷物をひざに抱えて待ち構えていると、ロワール川がある方向を見ながら銀が、「お城が見える」と言った。
わたしが振り返った時には、河畔にあるはずのショーモン城はもう家々の屋根にかくれて見えなかったが、この辺りから見えるとなると、やっぱショーモン城は駅から歩いて行ける距離にあるんだな。
そして8時35分頃、オンザン駅に列車が停まった。しかし、なぜかドアが開かない。
瞬間、パリの地下鉄が頭に思い浮かんだ。
もしかして、この在来線もドアの開閉は手動なのかっ!?
でも、ドアに取っ手がないよ? どーやって開けろってんだよっ!?
まさかこのまま降りられないんじゃ――と、不安にかられながらふと左側の壁を見たら、何か文字が書いてあるボタンがふたつあった。赤と緑。
赤はまずいだろ、ととっさに思って、緑のボタンをばんっ! と手のひらで押したらドアがガッと開いた。
やたっ! 降りられるっ!
ひー、一瞬あせった〜。かんべんしてくれよ。在来線までドアは手動なんて聞いてないよ。んもー。
それでもどうにかこうにか、オンザン駅で下車。
さあ、これから地図ひとつないこの初めて訪れる街を、自力で歩いてお城を探さなきゃ。
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