| ■ ギャルリー
ルーヴル美術館での見学を終えて、一服するために外へ。
その前にちはる、手持ちのフランが少なくなってきたので両替をする。
以前Aさんに教わったレートのよい両替屋は、ルーヴルからも余裕で歩いて行ける距離なので行ってみたが、今日は土曜日なのでやっていなかった。残念。
あきらめてルーヴル美術館の近くにある、青地に黄色い文字で「CHANGE」と書いてある看板を出したレートのむちゃくちゃ悪い両替屋に行く。
何度も言うが、しかたないんだけど、ここはレートが悪い。
Aさんに教えてもらった両替屋が1F=15円未満だったのに対して、ここは1F=21円ちょっとだった。
その差1Fあたり6円! 戻ってきた伝票を見てびっくりである。
同じ街角の両替屋なのに、どうしてこんなにレートが違うんだろう? 不思議。日本もそうなんだろうか?
でも、日本って街角にいきなり両替屋なんてないよねえ。
きっと日本では金融制度が違うからなんだろうけど、いつも外国に行くと不思議に思う。
さてこの時、両替屋に行く途中で、床が白と黒の大理石タイルで市松模様になったアーケードを見た。
このあたりはパリ滞在中何度も通っていたけど、まじまじと見るのは初めてである。いったいなんだろう?
とりあえずめずらしいので入ってみる。
アーケードと言っても何かの建物の1階が通り抜けになっているだけなのだが、天井の高い市松模様の廊下の両側には日本とは違う店構えの店舗が並んでいる。
それぞれの店は、日本のアーケードのように通路に面した店先が大きく開放されているタイプではなくて、たいてい各々壁面に大きなガラス窓やショーウィンドウがあり、商品を見たり買ったりしたい人はドアを開けて中に入る。
ドアやガラス窓は店舗によってデザインが違うけど、赤紫だか茶色だか、とにかく落ち着いた上品な色で統一されていてとてもきれい。雰囲気も石造りの街並みと同じく歴史を感じさせる。
うーん、さすがヨーロッパは屋内商店街の造りも違う。
御徒町の高架下にあるアメ横の商店街とは、機能が同じでも見た目が全然違うぜ。
後で調べたが、フランスではこういう屋内商店街(?)のことをパッサージュ[passage]とかギャルリー[Galerie]というそうな。
この時わたしたちが行ったのはギャルリー・ヴェロ・ドダ[GalerieVe´ro-Dodat]というところだった。
土曜日だったのでほとんどの店舗が閉まっていたが、アンティークショップやらカフェやらいろいろあった。
時間があればゆっくり見てまわるのもいいかもしれない。
■ サンドウィッチ屋で観光
あ、さて時刻は3時過ぎ。
両替が終わったので次は休憩。
わたしはお昼を食べたのであまりお腹は空いていないが、銀は食事はまだである。
なので、かる〜くサンドウィッチか何かが食べられる店はないかと探す。以前に来たポンパドゥールというカフェも近くにあったが、できれば違う店に行きたい。
そしてポンパドゥール・カフェのわりと近くで、お持ち帰りもできるらしいサンドウィッチ屋発見。
そろそろ疲れていたので迷わぬうちにさっさと中へ。
店に入ると、サンドウィッチやケーキを並べたショーケースの向こうに、エキゾチックな顔立ちの女性がふたりいた。
さすがにルーヴル美術館近くの店のせいか、言葉の通じない客相手のあしらいも慣れていて、こちらのカタコトの注文と身振りで示した「奥のテーブルで食べたい」という意思も通じた。
サンドウィッチは、長い(笑)。
バゲットを横からかっさばいて中に具をつめたサンドウィッチだが、いま写真を見ても余裕で30cmくらいの長さがある。
そのサンドウィッチがだいたい16F〜20F(約251円〜314円)。大きさから考えると、とってもお手ごろ。
日本でも見る三角形のサンドウィッチはアメリカン・サンドウィッチ、またはスウェンディッシュ・サンドウィッチとなっていて、こちらは20F〜24F(約314円〜377円)。
パニーニのサンドウィッチは16F〜24Fとなっていた。
ケーキも10F〜18F(約157円〜283円)の間でいろいろあった。
この時はお腹がそれほど空いていなかったので、なるべくシンプルなものを、と思って「フラン」というケーキを選んだ。直径30cmほどのまるいパイ皮の器にカスタードを流し込んで表面にうっすら焼き色をつけたお菓子だ。
このフランはあちらこちらで見かけたので、フランスでは一般的なお菓子なのだと思う。
もちろん扇型に切り分けられているんだけど、大きさが均等でなくピースによってかなり違うところが、日本のケーキ屋さんとは異なるところだろうか?
食い意地がはっているわたしにしてはめずらしく、あまりお腹空いてないから一番小さなピースがほしいんだけどなー、と思っていたのだが、そういう時に限って店員さんは一番大きなピースをとってくれるものなのだ。
そして皿の上に乗ったのは、手のひらの大きさほどもある迫力満点なフランだった。
まあ、結局全部食べたんだからよいのであろう。
飲み物は銀の紅茶が12F(約188円)、わたしのカフェが8F(約126円)。
物価が高いパリにしてはかなり安い。
テラス席のない店だったし、カフェというよりはサンドイッチ屋さんのイート・インみたいな感じだったのかもしれない。

手前のケーキがフラン。で、でかい。
サンドウィッチも長い。 |
クロスがかかったテーブルに着いて食事。
店内はあまり明るくなかったと思う。そもそも照明がついていなかったのかもしれない。
入り口から差し込んでくる自然光だけが光源のせいか、店内はどことなく鄙びた雰囲気。
いちおう飲食店っぽく内装をつくってあるけど、壁は漆喰ではなくむき出しの石壁だったし、地下に続くらしい階段のまわりには素朴な木製の囲があったり、なんだかフランスの時代劇のセットの中で食事をしているような気分になる。
その後、この感想は正しかったことが判明。
途中、銀がトイレに行った。お店の女性に教わって、地下にあるトイレへと銀は階段を降りていった。
そして地下から戻ってくると、銀は「ここのトイレは行っておいたほうがいい」と言うのだ。
どうやら面白いものがあったらしい。
物好きちはる、それではさっそく、と店の隅にある木枠の囲いをまわって地下への階段を降りていくと、すでにその時点で階段が今時のものとは全然違う。
何しろ、少し黄色がかった石でできた階段は、角が丸くすりへっているのだ。
石の角がこんなに丸くなってるなんてっ!
いったい何百年前からこの階段はあるんだ?

トイレに行こうと思うとこの階段がある。
(これはふりかえって撮影した)
これが20世紀のパリのど真ん中にある建物の地下である。 |
石だか土が堅くなっただけかよくわからん床の上を、大きな四角い石を組んだ壁伝いに先に進むと、ドアがあった。
ここがトイレか、と思って開けてみたが違った。しかし、そこが何なのかわからず、しばらく呆然と立ち尽くす。
今考えてみれば、人がはいれそうなほど巨大な白い冷蔵庫があるわ、ステンレス製の流しがあるわ、棚の上には各種缶詰が置かれているわで、そこが厨房とすぐわかるのだが、入った瞬間は全然わからなかった。
だってその部屋も、何百年も前からありそうなむきだしの大きな四角い石を組んで造られた部屋だったのだ。天井はロマネスクなアーチを描いているし。
ここは中世の地下牢です、と言われたら「ああ、なるほど」とうなずいてしまいそうな部屋がキッチンと言われても、目にうつる映像と概念がなかなか一致せず、わたしはしばらく夢の中を歩いているようにぼうっとしていた。
そしてようやく、あ、ここは厨房だ、ということに気づきあわてて引き返す。
何なんだ。何なんだ、この店は。

間違って入ってしまったカフェの地下にある厨房。
さまざまな薬草を使って怪しげな秘薬を
つくっていそうな雰囲気がある。 |
トイレは両側に石壁の続く細い通路のさらに奥にあった。
鍵のかからないドアを開けて中に入る。
太陽の光がまったく届かない地下のその部屋は、目を開けているのか閉じているのかすらわからなくなるほど真っ暗。
照明のスイッチがあったので付けたら、そこは洞窟だった。
いや、正確には洞窟ではないのだが、むき出しの石壁や低い天井の石組みアーチがわたしにそう感じさせた。
洞窟の壁には何本かの配管が取り付けられている。それをたどるように奥に進むと、洞窟の一番奥に唐突に白い便器があった。

配管を伝って奥へ行くと・・・
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トイレがある。
まるで白昼夢を見ているようだ。 |
洞窟に水洗トイレ。
シュールだ。
まるで何かの前衛芸術のようにシュールだ。
きっとエレベータと同じように、ここのトイレも古くからある建物にむりやり後づけしたんだろうなあ。
パリの大工さんや配管工さんって、すごい技術を持っていると思う。
洞窟トイレで用をすませ、テーブルに戻る。
「感動したろ?」という銀の言葉に、「うん、感動した」と答える。
このお店、後で写真に写っている店の看板で名前を確認したら、「CROQSANDOWISHST-HONORE」となっていたから、サン・トノレ街にあった(当時は気にしていなかった)。
サン・トノレ街は『三銃士』の時代からあるから、通り自体は17世紀には存在していたのだろうが、まさか建物も17世紀製?
日本で300年以上前から残っている建物なんていったら重要文化財になっているだろうから、いや、まさか、とは思うけど、ここは石の文化の国だし。
そういうことも「あり」かもしれん。
もっと古くからあるといわれても、素直になっとくしそうなほど歴史を感じさせる造りだった。
ちなみにこの店、さらに看板を見るとSANDOWISHの他にも、「CRE´PERI´E」だの「SALADES」だの「VIENNOISERIE」だの「PANINI」だの色々なことが書いてある。
フランスのカフェの中にはブラッセリーだのバーだのレストランだの色々書いてある店があるが、それと同じノリか?

サン・トノレ街にあるカフェの外観。
手前の道路は路駐の車でいっぱい。 |
実際、店の中でガレットを食べている人がいた。
あ、ガレット。フランスに来たら食べようと思っていた料理のひとつだったっけ。
お菓子屋さんに行けば、ガレットという名の分厚いクッキーのような食べ物もあるので、いろいろな「ガレット」があるのだと思うが、この場合わたしが言ってるガレットとは蕎麦粉で作ったクレープのことで、ブルターニュ地方の料理だそう。
(※Attention! その他、フランスには新年を祝って1月6日に食べるガ
レット・デ・ロワというパイ菓子もあるそうです)
アジア以外にも蕎麦(粉を使った料理)なんぞを食べる国があるとは知らなかったが、どうも蕎麦は小麦よりも厳しい環境でもよく育つので、昔は世界中でつくられていたらしい。イタリアには蕎麦粉のパスタ(ようするに蕎麦じゃん)もあるんだそうな。
その蕎麦粉がフランスに行くとクレープになってしまうからさらに驚きである。
クレープと言ってもガレットは甘くなく、主食のような役割をするそうな。
でも、結局今回の旅行中は食べる機会を逃してしまった。残念。
このお店のガレットは27〜35F(約424〜550円)だった。
この店では身体を休めるだけでなく、小さな観光もできて大満足(笑)。
40分ほどの滞在で、次の目的地に行くために店を出た。
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