| ■ オルセー美術館[Muse´e d'Orsay]・1階
売店で買った『オルセー美術館 ポケットガイド』を手に、いざ見学へ。
いちおう『ポケットガイド』に載っている順に作品を見ていったのだけど、まず最初にわたしのメモに出てくるのは、有名なミレー(ジャン=フランソワ・ミレー)の「落ち穂拾い」。
同じミレーの作品でも、『ポケットガイド』に解説が載っているのは「晩鐘」(農夫と農婦が夕暮れの畑で祈りを捧げている絵)なので全然違う。まあ、いっか。
確かこのあたりはミレーの絵がたくさん集まっていたはず。
「落ち穂拾い」は、確かに見たけど絵の感想はメモに残っていない。「フラッシュをたいて写真を撮る日本人がたかっている」とだけ書いてある。
わたしの記憶とメモに残っているミレーの絵は「Le Printemps」[ル・プランタン:春]という風景画。
(*「in」「em」=鼻母音で「ア〜ン」)
絵は、森へと続く野原のようなところに、画面手前から奥へと道が一本のび、道の左右にはりんごのような白い花をつけた木が何本か立っている。
空は強烈な雨を降らせそうな黒い雲に覆われているけど、右側の雲間には青空がのぞき、左側の空には虹が輝いている。
道の一番向こうには、よーく見ると人影がある。
ふうん。ミレーって、わたしが今まで本などで見てきた絵では、どれもちょっと暗くてさみしいイメージがあるんだけど、この「Le Printemps」は暗い色調の中にもすごく光、というか明るさを感じさせるなあ。
後で調べたが、ミレーはルソー(テオドール・ルソー)と仲がよかったそうなのだけど、この「Le Printemps」はルソーが亡くなった翌年、ミレーがルソーへの追悼の思いを込めて描いたのだそうな。
追悼にこんな素晴らしい絵を友人に描いてもらえるなんて、ルソーは幸せ者だったんだな。
(※Attention! 絵の発注者は別にいるそうです)

思わず目がいってしまうほど、光の表現が美しい、
ミレーの「Le Printemps」 |
その他、メモに出てくるのは下記のような絵。
●トマ・クチュールの「退廃期のローマ人」
→お芝居で群像劇を演じているみたい
●ギュスターヴ・モローの「オルフェウス」と「ガラテア」
モローの絵はどちらもよかった。
やっぱり、神話を題材にとっている絵にわたしはよわい。
絵画に混ざって彫刻や工芸品も展示されている。
残念ながらあまり覚えていないんだけど、1階の一番奥にはパリ・オペラ座の模型があった。
模型といっても全体像ではなく、縦にすぱっと切った断面が見える模型。なかなかおもしろい。
この模型がある前の床には、パリの街の模型がガラス張りの床の下に広がっている。
だからみんな下を向き、自分が歩いたことのある通りを一生懸命探していた。
■ オルセー美術館・3階
1階はほぼまんべんなくこなす。
しかし、この時点ですでに時刻は11時10分。もう1時間半近く見てまわっている。
これがまだ旅行のはじめなら楽勝なのだが、何しろ今日は最終日。体力は限界に近づいている。
よって、3階は『ポケットガイド』に載っている絵だけをさら〜っと流そうということになる。
そして美術館の一番奥にある3階への階段をのぼったのだが、これがまたすごく長い。一番上に着いた時には足ががくがくになっている。
ひー、頼むからエレベータをつけてくれ。
(※Attention! すぐ近くにエレベータとエスカレータがありました(笑)。気づかなかっただけです)
一番上までのぼると、そこはオルセー美術館内をすべて見渡すことができる展望台のようなところだった。
おお、正面に見えるコッテコテに装飾された時計が超ゴージャス!
もちろん、まわりの人と一緒になって展望台からの眺めを写真におさめた。

展望台から撮影。うーん、美術館そのものもひとつの芸術品。 |
さて、3階の各展示室をまわる。
しかし、オルセーの3階はとっても混雑している。
これでもかーっ! というくらい世界的な名画がぎっちりつめこまれているから仕方ないのかもしれないけど、ルーヴルではモナ・リザの前でしか見られなかったような絵の前の人だかりがあちらこちらにできているのだ。
なのでちょっと疲れたな。
そんな人込みをかきわけながら見た絵の中で、一番最初にわたしのメモの中に出てくるのはクロード・モネの作品。
有名な「日傘の女」も見たが、それよりもわたし目を奪ったのは「アルジャントゥイユのひなげし」[Le Coquelicots a Argenteuil]。
これは、白い雲が浮かぶ青い空の下、遠く向こうに木立と赤い屋根の家が見える野原の中を、日傘を持った女性とその子供とおぼしき男の子がゆっくりとこちらに向かって歩いてくる絵なのだが、その女性と男の子が歩いている緩やかにうねった野原の左側斜面に赤い花が咲き乱れているのだ。
あっ! これ、ロワールでさんざっぱら見た、緑の草原に咲いていたのと同じ赤い花じゃんっ!?
がーんっ!
『三銃士』下宿めぐりをして、ああ、本当にパリって古い街並みが残ってるなあと感心したが、田舎もそうなのか。昔と変わらぬ風景を今も見ることができるんだ。
よくわからないけど、何となくショック。
というわけで、あのロワールで見た赤い花は「ひなげし」らしい。
ちなみに、アルジャントゥイユはパリ近郊のセーヌ川沿いの街とのこと。モネだけでなく、他にもたくさんの画家が居を構えていた。
わたしたちが見学の参考にした『ポケットガイド』は83作品しか載っていないのに、その中にモネは5作品も載っていて最多だった(次点は4作品のドガとロダン)。
次にメモに出てくる作品は、ギュスターヴ・カイユボットの「床に鉋をかける人々」。
その名のとおり、窓から光の射しこむ部屋の中で、上半身裸の男性3人が床にひざまずいて鉋(かんな)をかけている姿を描いているんだけど、この絵を最初見た時、わたしは「これは写真か?」と思った。んもー、それくらい窓から入ってくる光の描写がリアルだったのだ。
なんや、あまりのすごさにわたしはその絵の前でしばらく立ち止まってしまった。
次はまたしてもモネ。作品の名は「アルジャントゥイユのヨットレース」。
明るい色彩や水面に映ったヨットの姿がとってもいい感じ。
解説によると、この絵は他の絵と違って絵の具を混色せず、チューブから出したままの状態で彩色しているので、こんなにも明るく光に満ちあふれたような画面になっているのだそうな。
なるほどー。小学校くらいって図画(図工?)の時間に絵を描く時は、絵の具をそのままの色で塗ると怒られて、とにかく色を混ぜろっ! と先生に言われたような気がするが、そんなの必ずしも必要ではないのだな。
先に進むと、さりげなく周囲がルノワールだらけ、という部屋に出る。有名な「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏場、モンマルトル」も「ピアノを弾く娘たち」も見た。きれいな絵だねえ、とひたすら感心する。
ロートレックの絵も何点か見たけど、変わり種はどこかの芝居小屋だか何かにかけられていたという、ホントーに単なる板んぱに描いた広告の絵。よくまあこんなの、残っていたもんだ。へたすりゃ芝居小屋の興行が終わったら焚き付けに使われていそうなほど、粗末な板に描かれていた。
ルソーの「ヘビ使いの女」も見る。
この絵も大人気。せまい展示室の中に何点かルソーの絵が飾られていたのだけど、記念写真を撮る各国の人々が列をなしているような状態。
この絵は銀が楽しみにしていたようなので撮ってやったが、順番待ちをしている人々の視線にわたしもあせったのか、出来上がった写真はちょっとぶれていた。残念。
このあたりで時刻は12時20分。
もーだめだ。疲れた。これ以上『ポケットガイド』に沿って作品を見て歩くことなんてできん。
というわけで、この後は見てない展示室をとりあえず心残りのないようぶらぶらと歩くことにした。
椅子や箪笥や居間そのものというように室内装飾を集めた部屋はおもしろかった。
工芸品の部屋にはラリックのガラス作品もあった。これもよかった。
ルーヴルにも突然絢爛豪華な部屋があらわれたが、オルセーにもあった。
シャンデリアがきれいだった。
そしてどういうわけか1点だけクリムトの絵があった。
もっとあればいいのにー。
力尽きたの何だのと言いながらも、結局午後1時までオルセー内を見て回った。飛行機の時間を考えれば(現地時間19時発)まだまだオルセーにいられるのだけど、体力は枯渇、脳みそはパンク状態だ。
胸をはって「自分は貧乏性」と言いきれるわたしたちでも、さすがに今回はあきらめた。
こうしてわたしたちはおよそ3時間半ほどオルセー美術館を見学して外へ出た。
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