2003.09.19up  Vol.5  ”マイ・レストランと、とんちゃん”

文 *たかこ*
写真*ゆうこ*

5話目になると、そろそろ読者の皆様方も、私や姉の性格や傾向がわかってきている頃かと思うのですが、私達は”おもしろそう”と思う事には後先考えず飛びついてしまう割には、怠け者心からかちょっと気に入ったモノがあると、すぐに探求心を捨てて現状に甘んじるという特徴があります。まぁこの辺で手を打っとけ!みたいな・・・
逆にそれが幸いしてか、1週間程の短い滞在にもかかわらず、馴染みの店なるものができてしまったり、いつもホテルの周辺ばかりをウロウロしているせいで、近所の人に挨拶されたりするようになってしまいました。
duduのロコさんには”猫なみの行動範囲ね〜”と私達の観光客らしからぬ狭い活動範囲を笑われていました。

そんな私達が毎晩のように食事に行っていたお店があります。
それもヴェトナムでの初めての夕食に、たまたま入った1件目のお店にもかかわらず、何となく気に入って通うようになってしまいました。
そう!!”何となく”なんです。特別、猛烈に気に入った訳でもなかったのに・・・
人によってはせっかくきたのだから、色々違ったお店に行きたいとか、本に載っていたあのお店に行ってみようとかあるでしょう。
私達も飛行機の中では行ってみたいね〜なんて言っていた洒落たお店があったはずなのに・・・でも結局私達っていつもそうなんです。

そのお店はホテルから歩いて3分程のレタントンの通りからほんの少しはずれた、はっきり言ってしまえば、まったくさえないレストラン?です。(何故か店員さん達は”わさび”と平仮名で縦書きされたプリントのお揃いのポロシャツを着ていた!)
当然、ガイドブックや雑誌に紹介されるはずもなく、そこで日本人をはじめとして、観光客と思われる人に会う事は一度もありませんでした。多分、ほとんどのお客が近所に住んでいるか、近所で働いているヴェトナムの人達だったのだと思います。
そんな訳でメニューも当然のようにヴェトナム語と中国語(たぶん)。
英語の説明なんてついていませんし、店員さん達にも英語が通じず、と言っても私達もたいして英語が話せる訳でもないのですが・・・”こりゃ、勘で頼むしかないね。”と姉と顔を見合わせ苦笑。
でも私同様、姉もこんな状況が”結構面白い”と思っていたに違いありません!

それにしても漢字って便利です。なんとなく意味がわかってしまいます。
例えば”0鍋”とか”OO飯”とか・・・でも大雑把すぎて結局わからないものがほとんどで、トホホという感じでしたが。
しかしそこで諦めてはいけません。
秘密兵器と言う程の物ではありませが、私の持っていたガイドブックにはカラー写真付きのヴェトナム料理図鑑のようなモノが付いていた事を思い出し、それをオーダーをとりにきたお店の人に見せながら写真を指して、料理をオーダーしてみました。
まぁ、観光客相手のお店じゃないのでガイドブックに必ず載ってる、例えば生春巻の様な代表的なお料理も無かったりするのですが、この方法で揚げ春巻、蓮の茎サラダ、空茎菜炒めはオーダーする事ができました!
私達が気に入って、毎回オーダーしていたのは(何と発音するのかわからないのですが)”火鍋”とメニューに書かれていた物です。
スープのはられたお鍋とともに、大量の菜葉類(色々なハーブも)や、エビ、イカ、白身魚等の魚介類。豚肉。中華麺。がそりゃもう二人では食べきれない程ドッサリと運ばれてきます。とてもお値打ち(45000vd 約¥360)な逸品なのです。
このお鍋は字からの想像で、辛いお鍋なんだと思ったのですが、実際は辛みはほとんど無く、スープは良くダシの効いた塩味で、得体のしれない臓物類の切れ端が鍋の下に沈んでいました。この切れ端がスープの味の決め手だったようです。
最近知ったのですが、やはり火鍋というと中国では四川風の唐辛子で真っ赤な辛いお鍋の事をいうようです。ですからこれはヴェトナム風という事になるのでしょうか・・・

このお店は、何を頼んでもおいしくて、安くて、過剰なサービスもなく安心して食事を楽しめるお店で、それに加えてお店の人達の商売気のなさそうな、ちょっといい加減な感じも私達は気に入っていました。
中でも、慣れない私達を肝っ玉母さん風に何かとお世話してくれて、とても頼りになる女の子がいました。
彼女はヴェトナムの若い女の子には珍しく、小柄だけどガッチリしていて、化粧気もなくショートカットでバレー部のマネージャーという雰囲気。
仕事も手際良くサクサクこなしていました。
彼女とは対称的に実はその店には、とても可愛くて、スタイルのいい、いかにも男性うけしそうな女の子もいました。
時々、バドガールみたいな格好をさせられ、笑顔で氷なんか配ってる”看板娘”みたいな子です。でも、どう見ても仕事ができるようには見えません。
私も姉も断然、バレー部マネージャー派で、愛着の意を込め二人の間で彼女の事を”とんちゃん”と勝手に呼んでいました。
何故とんちゃん?と言われると非常に困るのですが、とんちゃん以外の何物でもないという感じなんですよ(今では、彼女にヴェトナムの名前がある事の方が違和感を感じてしまう程)。
そして、タイミングをみはからっては、わざわざ彼女にオーダーしたりお願い事したりしていました。
ちなみに”ひろゆき”と勝手に呼んでいた男性店員もいます。
それは単純に私の友達の浩之くんに似ていたからですが・・・
とんちゃんは無駄に笑顔を振りまく訳でもなく、ちょっと無愛想な位の態度が潔くて好感がもて本当にいい味出しているのです。

最後の日、とんちゃんに写真を撮らせてほしいとお願いしたのですが、恥ずかしがって、絶対に撮らせてくれませんでした。
残念でしたがそこがまた、とんちゃんらしくていいとこなんです。
こうして私達は、このさえない、決してガイドブックにのることはないお店をマイ・レストランと呼び、普段着のヴェトナム料理を夜な夜な楽しんでいたのでした。
それはちょっと住んでる様な感覚です。そうゆう旅が私も姉も好きみたいです。



(つづく)

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