人と魔王
訳:佐藤伸幸
1. むかしむかし、黄河の岸辺に代々三つの家族が住んでいました。彼らは互いに助け合い、その勤勉な生活ぶりから、彼らを馬鹿にする人はだれもいませんでした。
2. 3つの家族のお父さんは、それぞれ大変珍しい能力を持っていました。東の家の長男は、『何でも聞こえる耳』を持っていて、一度順風を聞くだけで、遠くの音を何でも聞くことが出来ました。西の家の次男は、『何でも見える目』を持っていて、たくさんの山並みを隔てた遠い場所でも、はっきりと見ることが出来ました。北の家の三男は『何でも作れる手』を持っていました。頭が賢く手先が器用なので、何でも作る事ができました。
3. 南の山には魔王が住んでいました。魔王はこの三家族の生活ぶりを見て、彼らを大変ねたみました。魔王は自分の力を尽くして彼らを困らせてやろうと思いました。ある日魔王は、黄河の神に三日間洪水を起こすよう命じました。魔王は彼らを溺れ死にさせようとしたのです。
4. 魔王の話がまだ話し終わらないうちに、長男の『何でも聞こえる耳』によってすぐに聞かれてしまいました。三男は『何でも作れる手』で牛の皮でいかだをつくる方法を考えつきました。次男は『何でも見える目』で辺りを見渡し、雪山の後ろにある、古い寺院の蔵に牛の皮が二枚あるのを見つけました。
5. 洪水が起こりました。三人の家族は牛の皮のいかだに乗って、この災難を免れることができました。
6. ある年の夏、魔王は疫病神にひょうたんの蓋を開けさせ、あの三家族を毒殺するため、疫病をばらまきました。魔王がこの話をしてすぐ、また『何でも聞こえる耳』によって長男に聞かれてしまいました。
7. 三兄弟はヨモギとニンニクで疫病を防ぐ方法を考えつきました。疫病が三家族のところまで来る頃には、すでに玄関で疫病を防ぐ草が燃やされていました。こうして南山魔王の悪巧みはまたもや失敗に終りました。
8. 魔王はこういった強硬手段では目的を達成できないことを知り、また別な方法を考えつきました。魔王は山の中から『おしゃべり鳥』を連れてきて、巧みな言葉を用いて三家族の仲を悪くしようと考えました。
9. ある日の夜、『おしゃべり鳥』が長男の軒先に飛んできて怪しい声で言いました。「もしお兄さんの両耳がなかったら、お前の兄弟家族はみな死んでいた!」長男は耳障りな言葉を聴きつけ、棒をもってその鳥を追い払いました。
10. 次の日の晩、『おしゃべり鳥』が次男の家の桃木の上に飛んできて言いました。「もしお兄さんの両目がなかったら、お前の兄弟家族はみな死んでいた。」次男はこれを聞いて苛立ち、「出て行け!おれの目の前で二度とそんな悪口を言うな!」とその鳥を罵りました。
11. 三日目の晩、『おしゃべり鳥』は三男の間口に飛んできてのどを細めて言いました。 「もしお兄ちゃんの両腕がなかったら、お前の兄弟たちはだれも生き延びられなかっただろう。」三男はこの話を軽々と信じてしまい、思わず兄弟家族を罵るようになりました。これにより三家族の団結は失われ、それぞれ別々に住むようになってしまいました。
12.魔王の陰謀が成し遂げられた後、それにつづけて大風や大雨、日照りが彼らを苦しめました。三兄弟はお互いに助ける力を失ってしまったために、みんな死んでしまいました。
13.そののち、彼ら三家族の子孫はこの教訓を生かし、心を一つにお互いに団結して、悪魔が降らせた災難に打ち勝つことができました。後にこの三家族は繁栄してそれぞれ、ポウナン族とトンシャン族とテゥー族になりました。