第1日目(2000.1.30/Dimanche)

■フランス上陸

 キンポ空港(韓国)に着くと、なんとなくキムチの匂いがする。カイタック空港(香港)は漢方薬の匂いだったか。外国人は成田空港に着くとぬか漬けの匂いがすると言っていた。パリはどんな匂いがするんだろう。

 11:50発全日空NH205便パリ行きは、7〜8割の混み具合で、あちこちに空席がある。客室乗務員(スッチーね)はみんな日本人だ。この歳になると日本語が通じる環境が楽でいい。機内食のワインもフランス産のやつで、赤でも結構おいしい。今日は偏西風が強いので約13時間のフライトになるという。現在冬時間のパリとは、8時間の時差がある。到着予定は現地時間で16:25だが、17時を回りそうだ。

今回、私は初めてのパリ、というか初めてのヨーロッパ訪問だ。東南アジアなら自信あるんだけど(どんな自信だ)。同行は毎度おなじみ橋本教授 と、お嬢K。さてどんな旅になるのやら。

 機内食は2回。機内食を全部食べると、現地についてから体調がおかしくなるという経験則があるので、普段は半分以上残すのだが、今回はパンまで食べちゃった。だいじょうぶかなあ。機内上映の映画を2本観終わったところで「おにぎりいかがですか?」いいなあ、日本のキャリア(航空会社)は。ハンバーガーじゃなかったけど。

 シャルル・ド・ゴール空港からパリ市内まではエール・フランス直営のバスもあるのだが、行先がどれもホテルから遠い。ホテルはオペラ座の近くなので、地下鉄公団が経営するロワッシーというリムジン・バスで行くことにする。約45分で料金は48FFと格安だ。

opera  終点のオペラ座脇で降り、そこからタクシーを捕まえてホテル名を告げると「ずいぶん近いところだなぁ」と運転手のおじさんがブツブツ言っている(みたい)。ホテルの場所がよくわからないので、ここからスーツケースを押して歩いて行くのは勘弁してほしい。「そんなこといわないで行ってよ、おじさん」(ちなみに今回同行したお嬢K はパリに10年以上住んでいた人で、今回は5年ぶりの訪仏になる。フランス語は「電話だったらフランス人と間違われる」くらいに完璧な人です)ということで乗りこむ。

 しばらく走るがなかなか到着しない。地図で見るともう着いてもいいころなのだが、パリ市内は一方通行だらけなので遠回りをされているのか仕方がなくて回っているのかがよくわからない(後日、後者であることが判明。どのタクシーに乗っても同じような値段だった)。

 ちなみにタクシーは初乗り13FFで、走り出したとたんにメーターが上がるほどこまめに上がる。車はプジョーかシトロエン。たまにベンツもいる。セダンとワゴン型があって、ワゴン型のほうが乗りやすい。個人タクシーはなくて、みんな会社タクシーらしいが、会社名がどこにも(車内にも)書いてない。

 近くにタクシー乗り場があるときは、手をあげてもタクシーは止まってくれない。英語はまず通じないので、行き先を書いた紙を見せるのが手取り早い。

 ホテルにチェックイン後、こちらの旅行代理店で働いているマドモワゼルM(日本人です)と合流して、近くに夕食を食べに行く。彼女も在仏10年。夕食といっても私も橋本教授 も時差ぼけで頭がぼんやりしているし、機内食をしっかり食べてしまったのであまり食欲がない。後悔。レストランより軽食系にしましょうということで、クレープ屋さんに入る。

 こちらのクレープは、日本で言うクレープとおなじ甘いおやつ感覚のものと、ギャレットといってそば粉で作った軽食感覚のものがある。ギャレットは全然甘くなくて、プレーンなものからハムやチーズを挟んだものなどたくさんのバリエーションがあるので、手軽な食事にもってこいだ。 Vin de tableをキャラフェでもらって(=ハウス・ワインをデキャンタでもらって)、パリでの初食事。ここでは何げないワインが安くておいしい。ワインについてはこの先もっと感激することになるのだが。

 4人で280FFくらい。「今日のランチより安かった」とマドモワゼルM に苦笑されたが、食欲がわかないのでしかたがない。次の夕食は豪勢に、ということでお開きにする。

 今日は時差ボケ解消のため、早めに寝ることにする。明日はパリのはずれにある博覧会施設で、お目当てのBijorhca(アクセサリーや宝飾品の展示会)を見に行く予定だ。明朝、会場に近いメトロ(地下鉄)の駅で待ち合わせするということで、メトロの乗り方と乗り継ぎのしかたを教えてもらい、「じゃ、明日」と放っぽり出された。私と橋本教授 は同じホテル(の同じ部屋)だが、お嬢Kはこちらの友人の家に泊まっているので朝は別々なのだ。ガイドブックを頼りに、寝る前に行き方を予習しながらメモしておく。


◎◎◎旅行メモ◎◎◎

●フランス人は食事、特に夕食のときにビールを飲むという習慣がないらしい(昼間のカフェではよく見かけたけど)。そのせいだろうが、フランスのビールも有名なのはクローネンブルグという地方産のものくらいで、それもあまりおいしいビールではない。むしろハイネケンのほうが一般的だ。

 おいしいワインがあるのに、わざわざ食事時にビールを飲むことはないので困りはしなかったが、「とりあえずビール」が好きな人には辛いかもしれない。もっとも、そういう日本人が多いのでビールを置いているレストランも結構あるらしいが。

 コーヒー(キャフェ)も、単に「アン・キャフェ・スィル・ブ・プレ(コーヒー1杯ちょうだい)」というといわゆるエスプレッソが出てくる。カフェ・オ・レは朝食のときの飲み物で、それ以外のときには飲まないそうだ。日本で言う「普通のコーヒー」は、こちらでは「珍しいコーヒー」であって、ついぞ見かけることはなかった。

●このクレープ屋や街のちょっとしたレストランではメニューに英語が併記されている場合が多い。ただし店員が英語がわかるわけではないので、指を差して注文することになる。

 フランス料理の好きな人なら、フランス語のメニューでも英語/ローマ字読みしてみるとピンとくる場合がけっこうある。ハムはjambon、チーズはFromagesと覚えておけば、クレープ屋さんでとんでもないものがでてくることはない。

●フランス語ではメニューは「カルト」。メニューください、は「ラ・カルト、スィル・ブ・プレ」。カルトの中にMenuとあったら、「お薦め」の意味になる。

●「フランス人はプライドが高いので、英語がわかっていてもフランス語で返事をする」というのはいかにも日本人が好きそうな話だが、実は全くの誤解で、単に英語がわからないだけみたい。どうやら出所は日本の女性旅行作家らしい。つまり彼女の勘違い。

 そういえば「店の看板はフランス語表記にすること」という条例がいまだに生きていると思っている人が多いが、『MacDonald's』も『Hard Rock Cafe』もそのまま英語の看板だ。向こうで聞いても、みんな「そういえばそんな条例、あったね」という程度。いったん植えつけられたイメージはなかなか拭えないのね。

 フランスでは日本と同じように英語は中学から勉強する。大方の日本人が英語を話せないのと同じ理屈で、旅行者が何か尋ねるような英語は簡単なので(「地下鉄の駅はどっちですか?」)、何を言っているかはわかるが、それに応えるのは難しい(「3本目の角を左に曲がって、その先の五差路を斜め右に行って・・・」)。

 旅行者には親切な人たちだから、「ワカラナイ〜」と逃げてしまうのでなく、なんとか教えてくれようとする。だからフランス語でまくしたてることになっちゃうわけだ。これはフランス生活10年のお嬢KマドモワゼルMも言っていたし、フランス人の男性は「僕たちはそんなに不親切じゃないよ」と言っていた。実際、英語がわかる人は英語で話してくれるし、英単語のやり取りならカフェのおじさんやマーケットのおばさんともできた。


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■参考文献
個人旅行「パリ」(昭文社)
「カタコトのフランス語がらくらく話せる本」(中経出版)
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