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■ 空港からシェムリアップの町へ
空港前ロータリーを出た車は、とりあえず今夜わたしたちが夕食をとる
「チャオプラヤ」というレストランがあるシェムリアップ[Siem Reap]中心部へと向かった。
午後7時を過ぎているので、すでに外は暗い。
そういえば、海外旅行で現地に夜到着するのはひさしぶりだ。
記憶の中にある夜に到着した旅行は、タイのバンコクへ行った時くらいしかない。
あの時は、夜なお煌々と明るいバンコクの街を、マイクロバスに乗って高速道路をかっとばし、市内へ向かった。もう午前12時近い深夜だったにもかかわらず、町中には人と車と屋台があふれ、喧騒かまびすしく、ものすごい活気にあふれていたのにびっくりしたっけ。
わたしの中にある東南アジアの夜、というのはそういうイメージだったので、シェムリアップもそんな感じかな、と想像していた。
だが、実際にはまったく違った。
空港を出ると、ほぼすぐに道の両側には木立が並んでいた。いや、並んでいたというよりも、正確には広がっていた、であろう。
ああ、いつかどこかで通ったポプラの並木道みたいだ、と思った時には、車の周囲は真っ暗になっていった。
先ほどの空港駐機場の、うっすらとオレンジ色の光がある暗さではない。
自分が目をつぶっているのかいないのかもわからなくなるような、真の闇である。
うおおっ、何だ? この暗さはっ!
視線を前に戻せば、道は車のヘッドライトが照らす範囲しか見えなかった。
そうか、街灯がないんだ、と思い至る。
しかし、車が走るうちに、所々明るいところがあった。どうやら家のようだ。
家といっても日本のような家屋ではない。木で高床式の家の枠を組み、それの壁と屋根をヤシの葉などで葺いた簡単な造りの家だ。
しかも、家の前面には壁がない家もある。
オープン・カフェじゃなく、オープンお家か・・・
「カンボジア人の暮らし、800年前からあまり変わっていません」と現地ガイドのKさんが言う。
はあ、なるほど、とうなずくしかない。
そのところどころにある家の明かりのおかげで、道の両側にはジャングルが広がっていることがおぼろげながらにわかってきた。
しかし、そのわずかな家の明かりから離れてしまえば、またしても一面の暗闇である。
――こんな真っ暗な中で戦争していたのかよ・・・
ふと、そんな考えが頭の中をよぎった。
その瞬間、背筋がぞくっとした。
こんな闇の中、絶えず銃口におびえて暮らしていたら、恐怖で気が狂っちまいそうだ。
正直な話、わたしはけっこうお気楽な気分でカンボジアにやって来た。
だが、この真っ暗な夜を目の当たりにして、はじめて「ああ、この国の人たちは本当に大変な時代を過ごしたんだな」と思った。
今にしてみると、かなり的外れなことを考えていたような気もするが、とにかくシェムリアップに向かう車の中で、わたしはそんなことを考えていた。
■ 国道6号沿いの風景
車は途中から国道6号という道に入ったようだ。
だからといって、周囲が明るくなったということはない。相変わらず暗いままである。
ふと横を見ると、どう見ても運転手よりかなり大柄な白人男性を後ろに乗せたバイクタクシーが走っていた。タイヤがつぶれるんじゃないか? と見ている者に思わせるほどの重量感だ。
こんな暗い中、あんな大きな人を乗せてバイクで走るか。根性だ。
道が進むにつれ、今度は家でなくホテルが道沿いに現れた。
ホテルの高さは、どれも3〜4階建てで、東南アジアのお寺風というか宮殿風みたいな造りをしていた。
そしてたいがい、屋根の稜線や端っこ、建物の角などを電飾(ネオンではない)で明るく飾り立てられている。でも、ぽつん、ぽつん、と離れて建っているので、国道6号を明るく照らすほどではなかった。
それでもだいぶ町中に近づいたようである。薄明るい闇の中に歩いている人の姿もちらほらと見え始める。
よーく目をこらすと、広場のようなところに屋台が出ているのもわかった。
しかし、屋台自身に照明はなく、青みがかった暗闇の中で営業しているので、何をうったりしているのかはわからなかった。
「この国道6号線は、オブチ首相の援助のおかげで整備がすすんでいるんですよ」とKさんが言う。
オブチって誰だ? と思ったら、なんと日本の故・小渕首相のことだった。
へえ、小渕さん、カンボジアに来たことあるんだ。
(※Attention! 小渕首相は2000年1月にアンコール・ワットなどを訪問したそうです)
このKさんだけがそうなのか、カンボジア全体でそうなのかは不明だが、とにかくKさんに限って言えば、小渕首相は大人気だった。
白い光を放つ、何かものすごく明るい建物がある、と思ったらガソリンスタンドだった。
ガソリンスタンドはふたつ見たが、どれもぴかぴかできれいだった。
この後何度か道を曲がったところに「うわー、ハワイにある高級ホテルみたい」って外観のホテルがあった。「ここはオブチ首相が泊まったホテル」とKさんが言う。
というわけで、このホテルはシェムリアップ滞在中、わたしにオブチ・ホテルと呼ばれていたが、実際にはグランド・ホテルという超高級ホテルだった。
■ チャオプラヤ
オブチ・ホテルを左手に見ながら車が左折すると、まもなくして目的のレストラン、チャオプラヤについた。

チャオプラヤ・外観。電飾がきらめく。 |
チャオプラヤって、タイのバンコク市内を流れる川の名前じゃなかったっけ? なんでカンボジアでチャオプラヤなんだ? と思っていたら、このレストラン、実はタイ料理の店なのだと後で知った。
しかし、実際には各国の料理をビュッフェ形式で食べられるレストランだったので、そんなの全然気付かなかった。もちろん、日本を代表しては寿司が並んでいた。
このレストランでは、テラス席でショーを見ながら食事もできるのだが、わたしたちは店内で食事。すでにわたしもマダムも長旅で疲れていたので、蒸し暑いテラスよりもエアコンの効いた店内はありがたかった。

チャオプラヤ・店内。きれい。 |
食事は代金に含まれているが、飲み物は別というのがツアーの基本。ミネラル・ウォーターを2本注文すると、EUROTECHという銘柄のイギリスの国旗が描かれた500mlのペットボトルがやってきた。1本1ドル。
食事は、いろいろ食べたかったのだが、いかんせん疲れた身体が受け付けない。
それでも、ベトナムの生春巻きや、どこの国かは知らないがエビのグリーン・カレー、骨の多い白身魚のフリッター、炒飯、生野菜などを食す。
その他、サティというインドネシアの串焼きやミーゴレン、ソムタムなどのサラダもあった。
一番おいしかったのはMOK-OHという料理。笹の葉で作った楕円形の型の中に、ココナッツ・ミルクがきいた鶏のつくねみたいなのが入っていた。これが辛くてうまい。何度かおかわりしに行ったと記憶がある。

左は最初に出てきたお通しの
ポップコーン |
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真ん中ののり巻きみたく見える
のがMOK-OH |
食事をしながら窓の外を見ていたら、店員の女性がココナッツ・ミルクが入ったズンドウ鍋の中から何かをすくって捨てていた。
何だろう、と思ったがすぐにわかった。虫だっ!
ひ〜、と心の中で悲鳴をあげたが、しかし、ビュッフェの料理はすべて外に並べられている。
気にしていたら食えん。ちはる、心の一部のシャッターを閉じる。
デザートは、さすが南国、フルーツの種類が豊富。ランプータンにパパイヤ、パイナップル、バナナ、スイカ、ライチなどなどなど。この店は洋菓子もけっこう種類があって、わたしはなぜかプリンを食べた。

フラッシュが届かなくて暗いけど
フルーツとデザート置き場 |
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フルーツとプリン |
途中、トイレに行く。
さあ、初めてのカンボジアのトイレ。どんなもんだろ? とちょっとドキドキしながら行ったが、とってもきれいだった。
まあ、ここはレストランだからきれいだったのかもしれないが、その後、現地の人向けトイレに行った時も、設備が古くて汚いということはあっても、不潔で汚い、ということはまったくなかった。
中国のトイレでさんざん苦労したことのあるマダムは、「国民性の違いかしらね?」とそのきれいさにいたく感心していた。
そんなこんなで、1時間ほどで食事終了。
8時45分、頃合いを見計らって、Kさんが迎えに来てくれる。
外に出たら雨が降っていた。あたたかい雨だった。
■ シティ・ロイヤル・ホテル
車で今度はホテルに向かう。
わたしたちが泊まったホテルはシティ・ロイヤル[City Royal]というのだが、このホテルはどのガイドブックにも載っていなかった。
なので、わたしもマダムも「どんなホテルなんだろう?」と心配だったのだが、Kさんに聞くと「できたばかりの新しいホテルなのできれいですよ」とのことだった。
なるほど、それで本に載っていなかったのか。
到着したホテルはKさんの言葉通り、4階建てのきれいなホテルだった。
ひろびろとしたロビーは、白い壁に天然の木材をふんだんに使ったゴージャスな造り。
うん、さすがホテルはデラックスのコースを選んだだけある。
しかし、人が少ないな・・・
ホテルの従業員は、ドアボーイがひとり、カウンターの奥にいる人がふたり、の3人くらいしかいなかった。
しかも、わたしたち以外の宿泊客が見当たらない。
オフシーズンだからこんなものなのかな、と思ったが、その後このホテルで他の宿泊客を見たのは、1日に1組がせいぜいだった。
経営はなりたっているのだろうか? と人事ながら心配したが、このホテルの持ち主はカンボジアの政治家だという。しかも、ここ以外にもいくつかホテルを持っているのだそうな。
どうやらもうかっているらしい。
わたしもマダムも疲れていたので、Kさんにチェックイン作業をしてもらった後は、ウェルカム・ドリンクもそこそこに部屋へ行った。明日は8時半にロビーで待ちあわせとのこと。ツアーにしては、けっこうゆっくりしている。
部屋は2階。中に入ると、うおおー、なんじゃこの広さはーっ! というくらいに室内は広い。
部屋の中にはベッドがふたつにクローゼット、テーブルとソファがふたつ、そのほかにテレビがのった横長の机やスーツケース置き用の机などがあるにもかかわらず、空いたスペースを使って余裕でエアロビでもできそうなほどの空間がそこにあった。
これは、ゴージャスというかデラックスというか、いたずらに土地が余っているというか。

広くてきれいな室内 |
まあ、せまい部屋よりは全然いい。
いくら散らかしても、足の踏み場がなくなるということは絶対ないという、ありがたい部屋だった。
バスルームも広くてきれい。アメニティ・グッズも各種そろっている。

バスルーム。鏡越しに撮影。 |
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アメニティ・グッズも充実 |
しかし、不思議だったのはトイレの横に設置されている銀色の金属でできたホース。先にはハンドルを握ると水が出てくるアタッチメントがついている。
水源はトイレのタンクからとっているようなのだが、これの用途が不明。
そういや、バンコクでもトイレに紙がないかわりに、コンクリで作られた水槽と手桶が置かれていたことがあったっけ・・・これもその一種なのか? つまりこれは、自動ではなく手動ウォシュレットということなのか? 謎。
(※Attention! 手動ウォシュレットの可能性が大です)

謎の手持ちホース付きトイレ。
左側の銀色のがホース。 |
とりあえずシャワーを浴びる。
お湯は出たが、しかし途中から水に近い温度のお湯になってしまった。
フロントに言いに行くような度胸もないし、完全な水でもなかったのであきらめる。
しかし、この現象は3日間ずっと同じだった。
部屋のTVは日本の衛星TVが入る。ありがたい(^ ^)。
っていうか、あちらこちらの衛星TVが入るようだ。欧米の有名どころから、近くは台湾や中国のTVも見られた。
カンボジア自体にTV局が少ないせいなのかな?

ちはる恒例冷蔵庫内撮影
(冷蔵庫のあるホテルではいつも撮る) |
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今回の旅行は現地で全然
お酒を飲まなかった。
なので写真だけ。 |
ベッドサイドのデジタル時計は止まっていた。
持参したポケット・ピカチューのアラームを朝の7時にセットしてから、午前1時頃就寝。
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