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■ アンコール・ワ〜〜〜〜ット(←ドップラー効果)
シェムリアップ[Siem Reap]の町からアンコール遺跡群へとまっすぐ続く道が、シアヌーク国王のドデカい肖像画が掲げられている突き当たりにまで来ると、その向こうはアンコール・ワット[Angkor Wat]の四方を囲む環濠(お堀)だった(概略図は下記)。
環濠の向こうには木々が生い茂る平たい島、のようなものが見える。
おおっ、これがアンコール・ワットかっ!
全然建物見えないけど。

アンコールワットを囲む環濠 |
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車窓から一生懸命流し撮り |
肖像画のあるT字路を車は左折し、アンコール・ワットの環濠沿いにしばらく走って今度は右折した。
すると、アンコール・ワットのある浮島のようなところから、環濠を横切って車道へと道が1本のびているのが見える。これは西参道というそうな。
アンコール・ワットは、数あるアンコール遺跡群の中でもめずらしく、西側に正面入口がある遺跡なので、西側に参道がもうけられているのだ。
建物は見えないのかなー、と思っていると、西参道が近づくにつれて浮島上の森が途切れ、あっさりとアンコールワットの一番外側を囲む回廊が見えた。
そしてその向こうには見覚えのある形の塔が。
あ、アンコール・ワットだっ! と思ったのはほんの一瞬。
じっくり見る間も感動するヒマもなく、車はすい〜っと西参道正面を通過し、アンコール・トム[Angkor Thom]南大門へ向けて走り去ってしまった。
ああっ、アンコール・ワットがもうあんな後ろにっ! Σ( ̄∀ ̄;)!
「アンコール・ワットは午後に来ますからね」とガイドのKさんが言ってくれたが、なんかまるで「おあずけ」をくっているかのよう(笑)。
アンコール遺跡群というのは、いくつか代表的な遺跡めぐりコースがあって、それにしたがうと今日の午前中はアンコール・トムの遺跡群めぐりになるのだが、アンコール・ワットを魅せられながらそこに行けないのは、なんとも生殺しのような状態だな、と思った。
■ イタチ?
アンコール・ワット前を通り過ぎ、背の高い木が両側に並ぶ道をしばらく走ると、車の正面に石造りの大きな門が見えてきた。
これが、アンコール・トムの南大門だそうな。

アンコール・トム。南大門正面。 |
車の中、遠目で見る南大門は、まあようするに石でできた大きな門で、ふうんという感じ。まだあまり感動はわきあがってこない。
それよりも、わたしはふと視界を横切った何かに気をとられた。何か、動きの敏捷な動物が見えたのだ。
何だろう、とそちらに向かって目をこらす。ものすごくほっそりした柔軟な身体付きと動きからイタチか? と思ったのだが(わたしの実家の方ではまだ出る)、どうもそうではないらしい。
そして、はっと気付いたのだが、それは猫だった。
それも、おそろしくやせこけた猫。
がーんっ! 何だ? あの骨ホネな猫はっ!?
そして車を降りると、今度は南大門前にあるお土産屋さんから犬が歩いて来た。
その犬がまたやせている。何しろ、あばら骨がすけて見えるんである。
ええっ!? どうしちゃったんだ、あの犬?
何であんなにやせてるのー?
しかし、今回の旅行中アンコール遺跡群で見かけた犬と猫、そして牛はみんなやせていた。そろいもそろって骨と皮だけみたいな姿だった。
友人(銀)の家ではアメリカン・ショートヘアの血をひく猫を飼っている。
もともとアメショーは大きくなるタイプの猫なんだけど(大きいだけで太ってはいない)、友人宅の猫もかなり体格がいい。
でも、あの猫といま目の前にいるこの猫じゃあ、同じ猫科の動物とは思えない。まるでまったく別の種類の生き物みたいだ。
日本では、最近だと野良猫でもやせている猫ってほとんど見ない。
日本の猫は食べ物には恵まれているんだなあ、とちょっと思う。
■ アンコール・トム南大門
さて、南大門。
アンコール・トムもアンコール・ワット同様、四方を水をたたえた環濠に囲まれている。
アンコール・トムには5つ門があるのだけど、そのうちの南の環濠にかかっている橋を渡るとあるのが南大門というわけである。
門の形はかわっている。
いちおうアーチはアーチなのだけど円いアーチではなく、アーチの先頭がとがったえんぴつの先みたいなアーチなのだ。
建築的に見ると、ヨーロッパなどでよく見られる(日本だと長崎の眼鏡橋とか)円いアーチは「真性アーチ」といい、石材を円弧状に組み合わせて作られている。
それに対して今わたしが見ているアーチは「迫り出しアーチ」といい、平らな石材を少しずつずらして積み上げ、擬似的にアーチを作り出しているのだ。
アンコール遺跡群にある門のアーチはすべてこの迫り出しアーチの門だった。

迫り出しアーチの門 |
そういや、中国の故宮も韓国のクァンファムン[光化門]も、門は真性アーチだった。
まあ、作られた年代が全然違うけど、同じアジアでも門の形が違うな、と思う。
![クァンファムン[光化門]](2day/7/7-kwuanghwamun.gif)
クァンファムンの真性アーチ |
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シュノンソー城の真性アーチ |
門の手前の橋を見ると、幅およそ130mの環濠にかけられた橋の両側には、欄干の代わりのように大きな石像がずらり並んでいる。
「これは、神様と阿修羅が蛇の身体を綱引きしているところ」とKさんが説明してくれる。
言われてよく見ると、おお、欄干の先頭が7つくらいの頭の蛇になっているではないか。なるほど。
カンボジアには「乳海攪拌」という神話が伝わっているそうなのだが、これはすごく簡単に説明すると、ヴィシュヌをはじめとする神々とアスラ(阿修羅)が、不老不死の妙薬アムリタを手に入れようとするお話である。
その方法は、これまたすごく簡単に説明すると、まず海の中に山を置いて、次にその山に大蛇の身体を巻きつける。で、蛇の身体を綱引きすることによって山を回転させ海を攪拌すると手に入るのだそうな。
南大門前の橋の両端にある神々とアスラたちの綱引き像は、まさにこの様子を表しているのだ。
この綱引きの像はあちらこちらで見た。だが、アンコール・トムの南大門が一番よく残っていて、そして修復されているとKさんが言っていた。
確かに他の場所の綱引き像は、どれもほとんど神様とアスラの首が落ちてしまっていた。
「門に向かって左側がヒンズーの神様。神様の顔は微笑んでいる。右側に並んでいるのは阿修羅。阿修羅は悪い神様だから顔が怖い」とはKさんの説明。
微笑んでいる・・・と言われれば微笑んでいるかも。怖い顔の神様もいた。

こちらは神様 |
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こちらはアシュラ。違い、わかる?
わたしにはわかりません。 |
橋を渡りながら、下の環濠をのぞきこんでみる。
すると、橋の左側の環濠水面は、一面の緑だった。もしかしたら水が涸れて野原になっていたのかもしれない、と思わされるほど草木が生い茂っていた。
一方橋の右側水面には睡蓮やホテイアオイの緑の葉が浮かんでいた。よく見ると、ピンクや白や紫色の蓮の花が咲いている。
へえ、こんなところで蓮の花を見るとは。
遠くに目を向けると、環濠の水辺では茶色の牛が草を食(は)んでいた。
あ〜、のーんびりした風景だ。

橋の上から環濠を眺める |
橋を渡りきった後、水面近くまで環濠の土手を降りてみる。
橋を土手から見ると、橋の基部は火山岩のように表面にぼこぼこと穴があいた赤い石で作られていた。
ふうん、道の土も赤いけど、石も赤いんだな。
橋のたもとから門を見上げる。門は白と灰色と黒のモノトーンの石でできている。
門は何やらごちゃごちゃと凹凸があるのだが、遠くから見ると何がなんだかさっぱりわからない。
だが目をこらしてよく見ると、門の一番上にくちびるのぶ厚い大きな菩薩の顔がっ!
おお、これがディズニーランドのジャングルクルーズでも見られる(←毒されきっている)あの有名な巨大な顔か。
へ〜、これってこんなところにあったのかー。

よ〜く見ると顔が浮びあがってくる |
と、感心していたのだが、それはなぜかというと、実はわたしはこの巨大な菩薩の尊顔像は、アンコール遺跡群の中ににひとつしかないものだとばかり思っていたからだ。
しかし、これは大きな間違い。
巨大な菩薩の尊顔像はアンコールの遺跡中あちらこちらにある。
しかも、尊顔像はふつうひとつの塔の4面、つまり東西南北それぞれにひとつずつ彫られているので、4つでワンセットになっているのだ。
し、知らなかった。
門の壁には菩薩の尊顔の他にも踊る女神のレリーフや、鼻が柱のように地面にのびる象の彫刻もあった。
門をくぐる。
門の中に足を一歩踏み入れると、水がくさったようなにおいがする。
上を見上げると真っ暗だが、何かが動いている。Kさんに聞いたらこうもりだそうな。
うかうかしているとフンが落ちてくると言われた。
門の中はこうもりのフン害があるわけだけど、門の外ではハトのフン害の問
題がある。
菩薩の尊顔像も女神のレリーフも、ハトのフンでところどころ白くなってしまっていた。
門を抜けると、ふたたび道の両側には大きな木の林というか森というかジャングルがある。
地上2メートルくらいの位置から幹が地面に向かって扇状に広がる巨大な白い木がある。高さは何十メートルくらいあるんだろう? とにかくめちゃくちゃデカい木だ。
「あれは何の木?」とKさんに聞いたら「ガジュマル」という答えが返ってきた。
へー、これがガジュマルなのか。初めて見た。
水辺に垂れ下がる木ってイメージがわたしにはあるけど(きっとマングローブか何かと間違えている)、こんなところにも生えているんだな。
この木、本には多く「スポアン」という名で載っていた。
「スポアン」が何語なのかは知らないが、「ガジュマル」ってのは和名なのだそうな。漢字では「榕樹」と書く。
ということは、Kさんは日本人にわかるよう和名で覚えてくれていたのかな。
初めて間近で見る遺跡をじっくりと堪能した後、わたしたちは車で次の目的地に向かった。
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