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■ アンコール・ワットの夕暮れ
プノン・バケン[Phnom Bakheng]で、結局夕日は見られなかったけれど、いちおうサンセット観光が終わり、次は夕食のためにレストランへ。
ふー、レストランへ直行か。
すっごい汗をかいたので、一度ホテルへ帰ってシャワーを浴びたい気分だけど、まあ昼間無理言ってアンコール・ワット[Angkor Wat]に連れて行ってもらった恩もあるし、ここは素直に言うことを聞こう。
プノン・バケン前を出発した車は、本日何度目かのアンコール・ワット西参道前を通過する。
アンコール・ワットの環濠は、オレンジ色の夕映えが反射してきらきらと光っている。
夕映え。ああ、いつの間にかまた空に晴れ間がのぞいているのか。
車の中から西の空を見ると、青からうすい黄色、そしてオレンジへと色が移り変わる夕暮れの空に、青灰色の雲がたなびいている。
きれいだなあ。これがプノン・バケンからこれが見えればよかったのに。
まあ、ここから見れただけでもよしとするか。
アンコール・ワットの環濠沿いの道には、街灯の設備はあるが明かりはついていなかった。
アンコール・ワット自体も見学時間が終わったのだろう、シェムリアップへと帰るバイク・タクシーが続々と通る。
バイク・タクシーの後ろに乗って、奇声をあげている白人がいた。
乗り物的には危なそうだが、やっぱり楽しそうである。ちょっとうらやましい。
わたしたちはエアコンの効いた車に乗ってシェムリアップ市街へと向かった。
■ クレン・トゥーでディナー・ショー
本日の夕食は、ツアーの日程書を見ると「民族舞踊とバイキング(ビュッフェ)をどうぞ」となっている。
昨夜もビュッフェだったけど、今夜もビュッフェか。
「『クレン・トゥー』というお店です」とガイドのKさんが言う。「クレン」(Koulen Restaurant)というお店の2号店らしい。
「クレン」(Koulen)は、何か果物のことを意味していたんだったかな? 確かライチ(竜眼)のことだったはず・・・
でもカンボジアでライチは「ミエン」というらしい。うーむ、ちと記憶があいまい。
場所は、これまた不明。シェムリアップの市街にあったことだけは確か。
ツアーは自分の言った場所の位置がいまひとつよくわからないところが難点である。
さて、クレーン・トゥー。
道路から暗い駐車場へ乗り入れ、車を降りると背後に店があった。
昨夜行ったレストランのチャオプラヤよりは規模が大きいらしい。でも、屋根の稜線に沿って電飾をほどこしてあるのは一緒。こういう装飾がカンボジアの流行りなんだろか?

クレーン・トゥー。
電飾のおかげで外観がわかる。 |
店の敷地内に足を踏み入れると、右側に大きな舞台があり、そこから10メートルくらい離れたところに左側に屋根と柱だけのオープンな建物があって、そこが客席になっている。
Kさんに案内されて席に着いたら、なんと舞台のど真ん前最前列のテーブル。
おおお、これっていい席なのかな?
白いテーブルクロスの上には小さなゴザみたいなランチョンマットが敷かれ、ナイフとフォークがセッティングされていた。
席に腰をおろすと、足元に何かいた。
何だ? と思ってのぞきこむと、なんと猫。やせこけた猫が悠々と我が物顔で客席を歩きまわっている。
うーん、これっていいのか?
でも、お店の人は何も言わなかった。どうやら公認の猫らしい。
客の落とす料理を、猫は狙っているのだろうか?
しかし、そこはきちんとしつけられていて、猫はお客さんに食べ物をねだることもなく、テーブルの上に乗ってくることもなかった。
その他、この店で見た動物はコオロギとカエル。
カエル・・・なぜカエル? どーしてこんなところに?
コオロギはデカい。最初ゴキブリかと思ってびっくりした。
コオロギもカエルも、猫の遊び相手にされていて、猫に食べられてしまうのではないかとひやひやした。
料理は建物奥のテーブルに並べられている。飲み物としてミネラル・ウォーターを注文した後、さっそく取りに行く。
料理は、まあいろいろあった。カンボジア料理なのか、多国籍料理なのか、それもあいまいだが、まあおいしかったのでよかろう。
印象に残っているのは「Green Fish Curry」と英語で書かれていたカレーくらいかなあ。
これは別に緑の魚のカレーではなく、グリーン・カレーに白身のお魚が入っているだけである。
「Fish Pate Fried」と英語が書かれた料理がある。おもしろそうなので食べてみたら、ようするにさつまあげだった。
うーん、まあ確かに。
エビのフリッターもおいしかったものとしてメモに残っている。
エビかぁ。淡水のエビかな?

お料理はこんなんでした |
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まあ、ようするにエスニック |
フルーツとデザートは種類が豊富。
食べたのは、マンゴー、パパイヤ、ドラゴン・フルーツ、青いバナナ、ランプータン、スイカ、大学イモのようなもの。マンゴスチンもあったと思う。
この他にも、プリンやらなんやらのお菓子があった。

フルーツ。
右側の白地に黒の果物がドラゴン・フルーツ。 |
わたしたちが食事をはじめた頃、伝統舞踊ショーも開始。
このレストランは驚いたことに日本語のアナウンスもはいるのだった。ありがたやー。

客席から見た舞台はこんな感じ |
一番最初は「ココナッツ・ダンス」。
木琴の軽快な音と、チャルメラによく似た吹奏楽器の音が舞台に流れる。
舞台上には男女がそれぞれ5人ずつ。女性はピンク色の上着にエンジ色の巻きスカートのようなズボン、男性は水色の上着に赤いズボンをはいていて、みんな黄色いサッシュを腰に巻いている。
で、どこがココナッツかというと、手にふたつに割ったココナッツの殻を持っていて、それを打ち合わせながら踊るのだ。

ココナッツ・ダンス |
次は「真心の踊り」とアナウンスが告げた。紳士淑女の踊りだそうな。
先のとがった高さのある黄金の冠に黄色い上着、オレンジ色の巻きスカートという華やかな衣装を身につけた女性が舞台に登場。
そしていかにもカンボジアな手のしぐさで優雅に舞う。
舞台の右袖にオケ・ピットというのだろうか、ヤシの葉で囲われた場所があり、そこでお囃子の人たちが楽器を演奏している。
このダンスでは歌もはいった。オケ・ピットから歌声が聞こえてきた。
しばらくして、全身真っ金金の格好をした男性のダンサーも登場。ふたりでダンスを踊っていた。
3つ目は「漁師のダンス」。
カンボジアは水に恵まれた国で、淡水湖が多いのだそう。
そんな土地柄から生まれた踊りだそうな。
このダンスも男女5人ずつ、合計10人が舞台にあがった。
女性は水色の上着に紺色のズボン、そして手には大きなドジョウすくいに使うみたいな半分が平たくひらいたザル。
男性の方は白い上着に茶色のズボン、額に赤いはちまきを巻いて、腰にビク(魚篭)をさげている。
音楽はテンポが速く、シャンシャンと鈴の音が響いていたと思う。
ダンスは、男女仲良く踊っているかと思えば、男の人が女の人のザルをとりあげてからかったり。
最後の方では男女1組だけが舞台に残って、すねた女の人の気をひくために、男の人がザルを返してあげたり花をあげたりと、微妙なかけひきをダンスをしながら表現していた。

漁師のダンス。
女性がざるを持っている。 |
このあたりでちはる、ふたたび料理を取りに行く。
おかげでダンスのタイトルを聞き逃した。食事をしながらショーを見るって、意外にむずかしいもんだな。
というわけで、次のダンスのタイトルは不明。
でも、日本語の解説が少し聞けた。「みんなで力を合わせて木を倒したら、そこから何かが出てきた」という物語だそうな。どんなだ?
緑のズボンに金色のきらきらした長い上着、やはり金色の冠をかぶった手を弓に持った人がふたり舞台に登場。しかし、人ではなく鳥を模しているようだ。
歌舞伎のように独特のポーズを決めながらゆっくりと踊っている。

ダンス名は不明。
きんぴかな格好をしたふたりが踊ってる。 |
そのうちにふたり(二羽)は退場し、今度は着ぐるみを着た白い馬と白い猿が出てきた。
こいつらがその木の根本から出ていたものなんだろうか?
2匹は踊った(仕草をした?)後、最初に猿が舞台から退場。
そして先の鳥ふたり組がふたたび舞台に出てきて、馬を攻撃しはじめた。
何だろう? あの馬は悪い馬なんだろうか?
結局馬はやっつけられてしまった。
そして白い猿がまた舞台上にあらわれ、鳥のふたりと対決しはじめた。
おお〜、まるで孫悟空みたいだ。
猿はけっこう活躍していたので、勝つのかな? と思っていたが、やっぱり鳥ふたり組に負けてしまった。捕まって後ろ手に縛り上げられている。
何ていう物語だったんろう? わかっていればもっとおもしろいのに。
次は「カルダモン摘みの踊り」。
カルダモンはスパイスの一種。カレーやミルクティーなどに入っている。
が、このダンスの中ではカルダモンは薬としてあつかわれているそうな。漢方薬としてのカルダモンは、消化促進や解熱剤としての効能があるとのこと。
ダンスはカルダモン山に登ってカルダモンを摘む男女の様子を表現していたようだ。山笠のようなものをかぶった男女が舞台上に現れたとこまでは見ていたが、その後わたしはフルーツを取りに行ってしまい、ダンスはほとんど見られなかった。
そして最後はダンスのメインとなる「アプサラダンス」。
舞台にひとりの女性が登場。照明をうけてシルクの光沢を見せる白い上着とアイボリーのスカート。頭には金色の塔のような冠をのせ、黒く長い髪を背中までたらしている。
ふーむ、これがアプサラか。

アプサラダンス |
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アプサラダンス。
5人とも正面を向いている。 |
その後、同じような衣装だけどスカートの色が赤い4人の女性が登場し、合計5人でゆったりとした手の動きのダンスを踊っていた。
ショーは、まあメモに感想が残っていないけどおもしろかったのだろうな。
客席と舞台がちょっと離れているので、もう少し近いとよかったと思う。
最後に出演者が全員舞台に出てきてごあいさつ、で終了。
舞台前のコオロギたちが、照明の光に向かって突撃しまくっていた。
■ コオロギと...
ショーが終わるとすぐにKさんがやってきた。
車に乗ってホテルへ戻る。
その道すがら、老若男女を問わずたくさんの人が歩道で何かを追いかけている光景を見た。
いったい何をしているんだろう? ――と思っていたら、「あれはコオロギを捕まえているんよ」とKさんが言った。
「コオロギを捕まえてどうするんですか?」と訊いたら、なんと、食べるとのこと。
えええっ! 食べるの、コオロギをっ!?
Kさんによると、油で揚げたりして食べるのだそうな。
うーん。まあ、日本もイナゴ(蝗)やカイコ(蚕)を食べる地方があるしなあ。
カンボジアのお隣りタイだって、タガメを食べる地方があるというし、かたつむりを食べる国だってあるんだし。
しかし、コオロギか。
このコオロギ捕り、夜のシェムリアップの町ではあちらこちらで見られた。
街灯などで明るいところにはコオロギが集まってくるので、そこに老いも若きも集まり、みんな捕まえたコオロギを入れておくためのペットボトルを片手に大奮闘していた。
ガソリンスタンドはとっても明るいので、コオロギもたくさん集まる。よって人も集まる。
あまりガソリンを入れに来る車はいないのだろうか、ガソリンスタンドはコオロギを捕る大人と子どもがかけずりまわっていた。
レストランからホテルへはすぐだった。9時には到着。
車を降りてふと足元を見ると、ホテル正面玄関前の階段に大量のコオロギがはねている。
ひえぇ〜、明るいからコオロギが寄ってきちゃうのか。
昨日の夜は、到着したばかりなので気が付かなかった。服にくっつけて部屋に持ち帰らないようにしなくちゃ。
「明日はアンコール・ワットに朝日を見に行くので、ホテルのロビーで3時半(4時半だったか?)に集合しましょう」とKさんに言われる。
ええっ、3時半っ!?
勘弁してくれよ、今日これだけあちこち行っといてさ〜〜
どうせ今は雨季である。くもってて朝日なんか見えないだろう、ということで、サンライズ・ツアーはキャンセルにしてもらった。
それでも、明日の朝は6時半にロビー集合(笑)。
つ、ついていけるのか? このハードなスケジュールにわたしたち。
日本では3階、カンボジアでは2階にあたる自分たちの部屋に戻る。
すると、廊下の奥つきあたりにある部屋から、白人女性が「キャーっ!」と叫びながらドアを開けて飛び出してきた。
危なそうな雰囲気はなかったので、ホテル玄関前のコオロギを思い出しながら、「何だろう? 部屋にコオロギでもいたのかね」なーんて笑いながら話をしつつ、そのままわたしたちは部屋に入る。
そして荷物をおろし、ふとふりかえったわたしの視線の先に「そいつ」はいた。
人を笑わば穴ふたつ。
あー、しまった。コオロギだよ。
ホテルに入る時に服を手ではらったつもりだったのだが、身体についてきてしまったのだろうか、日本ではちょっとお目にかかれないほど大きなコオロギがカーペットの上にいた。
ちなみにわたしは昆虫類はいっさいダメ。
そこで、都会で田舎暮らしをしているマダムがトイレット・ペーパー片手にコオロギを捕まえて、無事トイレにガーッと流してくれた。
よし、これで一件落着、と思いバスルームに入る。
そして白いタイルを何気に見上げたら、そこに肌色の物体がいた。
何だろう? あれは・・・
透き通った肌色の下から黒いものが透けて見えるそれは・・・
うおおぉぉっ! トカゲだぁ―――――っ!
ばあんっ! とバスルームのドアを開け、それこそわたしは飛び出した。
トカゲ。トカゲ? なんでホテルのバスルームにトカゲ?
実際にはこれはトカゲではなく、ヤモリだったようだ。
おとなしいのかまったく動かないが、風呂に入っている最中にこっちににじり寄られてきたらたまらん。なんとか退治しなくては。
さすがのマダムもトカゲにはお手上げ。
しかし、ホテルのフロントに訴えるにしても何て言えばいいんだ?
そもそもトカゲって英語でなんて言うんだっけ?
サラマンダーか? いや、それじゃ火を吹いちゃうか。
(※Attention! サラマンダー=サンショウウオという意味もあります)
トカゲ、トカゲ。昔おぼえた記憶があるんだ。
うおー、思い出せっ、わたしっ!
そしてはっとひらめいた。
そうだ、トカゲは「リザード」(lizard)だっ!
わかったとたん、フロントに向けてダッシュである。
1階(0階)まで階段をかけおりてフロントに向かうと、途中フロント係の男性と一緒に歩く白人女性とすれ違った。
その時はとりあえず何も気にせず、とにかくフロント。その時フロントには男性がひとりしかいなかった。
それでも「Excuse me.」と声をかけたあとは中学生英語だ。
「In my bathroom, there is a lizard!」(バスルームにトカゲがいる!)
「lizard?」(トカゲ?)
「Yes, lizard!」(そう、トカゲ!)
「.....」
フロント係の男性は、無言のままドア・ボーイと目線をかわした。
どうしたんだろう? わたしの英語、通じなかったんだろうか?
ヘ、ヘルプ・ミーとかも言った方がいいのか? と悩んだが、しかし、フロント係の男性はドア・ボーイに何かを指示し、ドア・ボーイの男性がわたしの部屋にトカゲ退治に来てくれることになった。
ああ、よかった。
そしてふたりで3階にあがると、さっきフロントですれ違った女性が廊下の奥の部屋に入っていった。
ああ、さっき悲鳴をあげていたのはあの人だったのか。
ということは、彼女の部屋にもコオロギどころかトカゲが出たんだろうか?
ドア・ボーイさんにバスルームに入ってもらい、さっそく駆除開始。
バスタブにのぼったドア・ボーイさんがさっとトカゲを素手でつかもうとすると、トカゲも素早く逃げてしまった。
しかも肌色のうごめく小さな物が床に落ちた。
うわあぁっ! なんだ、何なんだっ!?
そういやあのトカゲ、腹が黒く膨らんでいたぞ。
まさか子持ちトカゲで腹の子どもが散ったとか?
勘弁してくれーっ! とわたしはバスルームから逃げ去ったが、よくよく考えればトカゲは爬虫類。子どもは卵で産まれてくるって。
そうとう混乱していたんだな、この時わたし。
床に落ちたうごめくものの正体は、トカゲのしっぽだった。
ひえぇ、トカゲのしっぽ切りってよく言うけど、本当に切ったのは初めて見た。
切った後もしっぽって動くんだ・・・うげ〜、気持ち悪い。
この後トカゲは洗面台の下に逃げ込み、そのまま姿が見えなくなった。
どうも洗面台の下にすき間があいていて、そこから逃げたようだ。
すき間か・・・ということは、あのコオロギもわたしの身体に付いてきたのではなく、このすき間から入り込んできたのかもしれないな。
実際このホテル、見かけはゴージャスなのだが施工が甘い。
壁と天上の継ぎ目などに、よくすき間があいているのだ。これじゃあトカゲもコオロギも入り放題だよ。
それにしても、あのトカゲの腹は黒くてデカかった。
まさかコオロギがそのまま入っていたんじゃ・・・ひいぃいぃ〜〜
9時40分、今度こそ入浴。洗面、歯磨き、洗濯。
11時20分、ベッドに入る。
もう、トカゲもコオロギも出ないだろうな?
不安を感じながらも就寝。
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