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■ ニャック・ポアン[Neak Pean]
8時45分、次の遺跡に向けて出発。
次に行くところはニャック・ポアン。これもアンコール・トムやさっき行ったプリア・カンと同じで、ジャヤヴァルマン7世が造ったもので、12世紀末くらいのものとのこと。
プリア・カンからは舗装路を走って行ったが、その途中、草むらにハンモックを吊るして寝ている人がいた。一瞬、ぎょっとする。
あれは何なのだろう? このあたりの警備の人なのだろうか?
車は途中で右折した。すると道が未舗装路になり、とたんにガタガタと車が揺れはじめる。
丘を切り開いてつくったような道を通り、8時51分、ニャック・ポアン到着。けっこう近い。
駐車場に車を止め、さらに切り通しの道を歩いて行く。近くの子どもだろうか、小さな子どもふたりが泥で汚れるのも気にせず、道の上で転がりまわって遊んでいる。
道の先にやがてストゥーパのような形の上の方だけが見えてくる。
そして遺跡の近くにまで行くと、そこはジャングルの中に広々とひらけた草地になっていた。
草地は石垣でいくつかに区画わけされており、区画わけされたエリアはそれぞれ地面が低くなっていて、方形の階段状スタジアムのようになっている。
これじゃ水が入っていたら、まるで釣り堀みたいだ。
建物はあまりない。
目立つものは、中央の方形スタジアムの真ん中にある巨大な円形基壇の上にのった祠堂のみ。

円形基壇と祠堂 |
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水が入っていない掘割? |
今まで見てきたは、遺跡レリーフをほどこされた建物とそれを囲う周壁とが密にたてこんでいたけど、ここの遺跡はがら〜んとしている。平城京跡とか、そんな感じだ。
あまりにも趣が違うので、なんだか変な気がするが、これでもここがニャック・ポアンという遺跡なのだった。
Kさんの説明によると、ニャック・ポアンは他の遺跡とちょっと違って、病院のような役割も持っていたんだそうな。
だから、昔の診療所の小さな建物跡も残っていた。
わたしが方形スタジアムと思ったのは本来は池で、今はちょうど水が渇れているので草地になっているのだった。池の底に茂っている草は薬草で、現在も薬草として使われているという。
実際、池を囲う石垣の上には草が積み上げられていて、紐でくくって束にしてあった。これを乾燥させて薬として使うそう。
効能はなんだったかな? ちと忘れた。

薬草 |
真ん中の池にある円形の基壇はとぐろを巻いた蛇を模している、とKさん。
そして四方の池にはそれぞれ小さなほこらがあり、ほこらの中には北から時計まわりに象、人、牛、シンハー(獅子)の像があるという。
それぞれの像の口は取水口になっていて、ほこらの天井から集めた水が出てくるようにしかけられているそうな。
んで、さらにこの4つの像には陰陽五行が反映されていて(4つしかないが)、象は水、人は土、牛は風、シンハーは火に相当しているとのこと。
(※Attention! ややうろおぼえです)
五行それぞれの属性に基づいて、取水口から出てくる水には効能がある、と考えられている、という説明も聞いた。
はああ、五行か。アジアだなあ。
ここは鳥の声、虫の声も聞こえてきたが、どこからかカンボジアの伝統音楽のような響きの演奏もも聞こえた。
Kさんが、「あれは地雷で足を失った人たちが演奏している音楽です」と言った。カンボジアの政府だかなんだかが、戦争で身体が不自由になった人たちの自立支援のために、楽器演奏の技術を教えているんだそうな。
ふーん、なるほど。いろいろな支援の仕方があるものだ。
というわけで、遺跡の中で伝統音楽を聞かせてもらったお礼として、マダムがチップを置いてった。
‥‥‥‥‥‥‥‥《ニャック・ポアン図解》‥‥‥‥‥‥‥‥‥
北
↑
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伝統音楽┌―┐ | | |
演奏場所└―┘ | | |
| 象 |
診療所跡┌―┐ | |
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| | 円形基壇 | |
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| 獅 子| ◎ 神 | 人 |
| | 馬 | |
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| 牛 |
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一通りの説明を受けた後、30分ほど自由見学となる。マダムとふたり、ひとつひとつの池とそのほこらを見てまわる。
ほこらの中の像は今でも信仰の対象らしく、真新しいマゼンダ色のお線香が備えられていた。
人の像はいかにもクメール人みたいな顔、象はぱお〜んと鼻をふりあげた様子、シンハーはよく東南アジアで売っている怪物のお面(というかシンハーのお面)のような形をしていた。いずれも口から水が出てくるしくみになっている。
牛は、どーしても馬に見える。
角があれば牛に見えたのかもしれないが、ほとんど壊れていて鼻面部分しか残っていないので、残念なことに馬にしかみえなかった。
真ん中の池にある基壇と塔も見に行く。
塔の東側には何やら大きなオブジェがあった。よく見るとそれは前脚をふりあげた馬の形をしていて、その胴体や首などにたくさんの人がしがみついている。
何だこりゃ、気味が悪いなあ、と思ったが、これは船が難破して海に放り出された人々を、観音の化身である神馬ヴァラーハが助けているという、仏教説話の一場面をあらわしている、とガイドブックに書いてあった。
ああ、それでしがみついているのか。何かと思った。

神馬ヴァラーハの説話を模した像 |
基壇にのぼる。
そして基壇の西側に行くと、蛇の尻尾が2本からまっているのが見えた。
あ、そうか。ニャック・ポアンって「からまりあう蛇」って意味だっけ。
ガイドブックを読んで知ってはいたけど、この基壇そのものが「からまりあう蛇」になっているのか。知らんかった。

蛇のしっぽ。からまってる。 |
基壇の東側では神馬に気を取られていて気付かなかったが、ちゃんと見直しに行ったら、東北と東南にひとつずつ7つ頭くらいのナーガ(蛇)の頭があった。よくできている。
塔には像の3D彫刻などがほどこされていたが、アンコール・トムの南北大門と違い、鼻が途中で欠けてしまっていた。
蛇の基壇上で少しゆっくりする。
青空に風が渡ってすがすがしい。
風はカンボジアの伝統音楽の音色も運んでくる。
ここもまるで別世界のように気持ちよかった。

基壇から祠堂を見上げる。空が青い。 |
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