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■ 空港へ
5時38分、西参道を抜ける。
これで本当にアンコール遺跡群の観光はおしまい。
今回のツアーはホント、めいっぱい遺跡を観光させてくれるいいツアーだった。
空港へ行く前に、アンコール・ワットの正面前にあるお土産屋さんにちょっと寄る。
ここのお土産屋さんは、お土産屋さんというよりもギャラリーって感じで(店の名前もギャラリー何とかだったか?)雰囲気もディスプレイも商品もなかなかよかったのだが、買い物はしなかった。
さらにこのお土産屋さん、カフェが併設されている。
お茶を飲むほど時間はなかったのだが、帰国後に(確か)JALの国内線機内誌を見たら、このギャラリーのカフェが載っていた(もしかしたら『Hanako』かも)。
ほう、カフェ特集に取り上げられるほど、やっぱ雰囲気のよい店だったのか、と感心した記憶がある。
15分くらい店内をうろうろしたあと、車に乗って空港へ。
店を出ると空は暗く、雨はいっそう強くなっていた。
地図で見ると、アンコール・ワットから空港までは、真西に向かってまっすぐ続く道を4〜5kmほど行くだけだ。Kさんも、15分くらいで着きますと言っていた。
舗装路だけど、両側にうっそうと木が茂る道を西へ走る。
北西の空が白い。雨がやんできているのかな?
途中まで木ばっかりだったが、走るにつれ道の左右には民家が増えてきた。
青い壁に赤紫色のブーゲンビリアが生い茂る、なんていうど派手なカラーリングの家もある。
ヤシの葉でふいた屋根と、雨にさらされた木の柱だけでできたビリヤード場もあった。
うーむ、オープン・ビリヤード場か。ラシャが湿気を吸って痛まないのだろうか?
そんなふうに民家があったかと思えば、今度は周囲は水田になった。
広々とした水田に、背の高いヤシの木がぽつん、ぽつんと立っている。別世界のような風景。
やがて左手ななめ前に空港らしき建物が見えてきた。管制塔が、まるで赤いアドバルーンのように宙に浮いて見えた。
右手に駐機場があらわれた。
「これがタイの王女さまの専用機です」とKさんが指差す。
ほほう、これが――と感心したが、Kさん、もしかして日本に来たらワイド・ショー大好き人間になるかもなあ。
ホントに15分くらいで空港に到着。この頃には雨はやんでいた。
■ カンボジアを出国
空港の建物内に、Kさんたちは入らないらしい。
だから、車から荷物を降ろしたらKさんたちとはお別れ。
きついスケジュールではあったが、めいっぱい観光できて楽しかったし、世話にもなった。
何度もお礼を言って別れた。わたしにしてはひさびさヒットなガイドさんであった。
さて、ここから先は誰も助けてくれない。ひとり数が足りないが、マダムとふたりで文殊の知恵である。
しかし、小さな空港、手続きも簡単である。
出国手続きは、すべて10メートル四方もないような小さなフロアで行われる。そこで、手荷物チェックを受け、搭乗券をもらい、スーツケースを預け、空港使用料を納めるカウンターでお金を払えばもう終わり。出発便の待合室である。迷いたくったって迷えやしない。
2階まで吹き抜けの待合室には、青、オレンジ、黄色と色とりどりの硬いプラスチック(?)製の椅子が並んでいた。
室内にエアコンは効いていない。生ぬるく、気だるい雰囲気。
うーん、南国。

シェムリアップ空港・出発待合室 |
飛行機は午後7時30分発予定である。まだ時間があるので、椅子に座ったり写真を撮ったりしてのんびりする。
待合室の壁の一面には本を並べた書架があり、本屋さんになっていた。別の片隅にはカフェがある。
本を見に行ってみたが、意外とカンボジアの観光案内が多かったような。国内よりも、国外から来た人向けの本屋なのかな?
『ロンリー・プラネット』のフランス語版カンボジア編なんてのもあった。シェムリアップからプノンペンへ向かうフランス人向けとかの品揃えなんだろうか?
(※Attention! カンボジアを訪れる外国人は、フランス人が一番多いそうです。 by Kさん)

ロンリー・プラネットなどのガイドブック |
空港に着いた時には、まだ外は明るかったが、6時半くらいになるとだいぶ暗くなってきた。なんとなくものがなしい時刻である。
待合室から滑走路の方を見ると、空とジャングルの端境が、下からピンク、水色、紫とグラデーションを描いて夕焼けていた。
夕焼けか。さっきまで雨降ってたのにな。
7時前、搭乗案内が流れる――っていうか、係の人が肉声で叫んでいた。
荷物を肩にしょってターミナルの外へ。
外はもう真っ暗だと思っていたが、滑走路に出ると、シェムリアップの西の空は、黒い雲の裂け目から青い空がのぞいていた。
ここが夕方と夜の境目なんだなあ、なんて思う。
行きと同じプロペラの双発機は、やはり行きと同じようにオレンジ色の照明の中で乗客を待っていた。

帰りの飛行機 |
しかし、機内は行きと違ってがらがら。んー、まあ平日だからこんなものか。
座席に着いてシートベルトを締めてしばらくしたころの7時13分、ふと気がつくとすでに飛行機は滑走路上を助走しているようだった。
ええ? 出発時刻の7時30分まではまだ時間があるし、アナウンスも何もなかったぞ? 予約客が「ちょうど」なんだろうか?
そして7時17分、驚くことにもう水平飛行にはいっている(笑)。
プロペラ機ってホント、おもしろいくらいにぴゅんっと飛ぶ。
7時22分、こんな小さな飛行機でも、国際線だから食事が出る。
まずは飲み物が配られ、その次に食事。ハムと何かのサラダに、かぼちゃやにんじんが入ったシチューみたいなもの、それに緑色のパスタ(茶そばみたいな感じ)とテーブル・ロール。そしてもちろん「Wall's」製のチョコレートアイスも出る。どの料理もくせがなく、美味だったと思う。

帰りの機内食 |
記録によると、7時40分には食事の後片付けが始まっている。は、早い。
しかし、早いのもそのはず、7時55分には機体は降下をはじめているのだ。
8時3分、機体は雲を抜け、眼下にバンコクの明かりがきらめきはじめた。
おおお、夜なのにすんごい明るいっ! さまざまな色の光が、バンコクの町を彩っている。
うわー、やっぱりバンコクは都会だぜ。
8時5分、飛行機の下から車輪を出しているような音がする。
――と思ったらもう着陸である(笑)。
シェムリアップ←→バンコクは、食べたり飲んだりやることがいっぱいあって、旅の余韻を味わうには短い距離だった。
■ ドン・ムアン空港・ふたたび
ドン・ムアン空港着。飛行機からターミナルまではバスで移動する。
日本から来た時は、トランジットのカウンターを見つけるので大変だったが、今回は前回トランジットの手続きをした場所の近くで、あっさりJALのトランジット・カウンターを発見。
7時間くらい乗るので、窓側よりもトイレに行きやすい通路側がいいから、
「あいる さいど ぷりーず」(Aisle side, please.:通路側にして)で無事通路側の席Get。
(※Attention! 正しい言い方は知りませんが、これで通じました)
搭乗券を手にしてほっと一息。あとは飛行機に乗るだけである。
今回の旅行最大の懸案事項だったトランジットも、こうしてすべて何事もなく終わった。
さて、飛行機は午後10時30分発。現在時刻は8時半前である。よってあと2時間ほど時間がある。
マダム、シェムリアップでは満たせなかった買い物欲がここで大爆発っ!
んもう、買い込む、買い込む(笑)。
しかしわたしも、ついつられて買ってしまう。
スラ・スラン近くの民家の庭で、見はしたけど食べはしなかったジャック・フルーツの砂糖漬けドライ・フルーツがある。買う。
帰国後に食べたが、あまいだけで果物そのものの味はいまひとつよくわからなかった。残念。
その他に買ったのがドリアンのキャンディー。
おお、ドリアン。食べたことないんだよなあ。どっかの国では列車内に持ち込むと逮捕されるって聞いたことがあるけど・・・どんな味がするんだろう?
というわけで、ドリアン・キャンディーGet。
会社にお土産として持って行ったが、友人が口にするなり「う、ごめん」と言って吐き出した(笑)。
え、まずいの? とびっくりしてわたしも舌でなめてみたら、そのとたんに石油の味が口の中に広がった?(石油をなめたことはないが)
なんじゃ、こりゃ? ドリアンってこんな味なの?
(※Attention! ドリアンの生の味は知りません)
というわけで、このドリアン・キャンディー、会社の連中には大不評だった。
香港の亀ゼリー、韓国のドングレ茶は、あやしいながらも(笑)好評なお土産だったのに〜〜
タイ土産(カンボジア旅行だったが)のドリアン・キャンディーは完全アウトになってしまった。
しかし、「え? どこがまずいの?」と言ってふつうに食べてくれる友人もいるので(彼は味オンチではないはずだが)、すべての人にダメなのかどうかはわからない。
とりあえず、わたしの勤務する会社では、罰ゲームの際に食べるお菓子となり果てている。ううう、かわいそうなわたしのドリアン・キャンディー。
友人知人に配るお菓子を買い終わった後は、マダムは化粧品やバッグを見に別の店へ。
わたしは疲れたのでベンチで荷物の見張り番をしながら休憩する。

ドン・ムアン空港内 |
どうしてもコーヒーが飲みたいな、と思ったので売店へ行く。
でも、あ、しまった。バーツは20バーツくらいしか持ってないや(以前行ったタイ旅行の時のあまりを持ってきていた)。
しかしそこは国際空港。ちゃんとUSドルで買い物ができる店があった。
アイス・コーヒーは55バーツ(たぶんこの頃1バーツ=3円くらい)となっているが、ドルだといくらなんだろう?
アイスコーヒー、と前置きしながら、
「How much? In US dollar.」(いくら? USドルで)
とカタコトながらも売店のお姉さんに訊いたら、
「About 2 dollar.」
という答えが返ってきた。
About〜?
何なんじゃい、その「about」ってなぁ。
「about」の「about」な部分はどう処理すんの?
まさかあんたの財布に入るんじゃなかろうなっ!?
はなはだ疑問だったが、英語で争う気力も語学力も持ち合わせていなかったので、おとなしく1ドル札を2枚出す。
そして目の前に出されたのは、ごくフツーの缶コーヒーだった(しかもネッスルのイチキュー缶(190ml缶))。
これが2ドル?(約240円) なめとんのかあ?
フランスにおけるコカ・コーラなみに高いやんけ。
もう疲れてるからどーでもいいけど(なげやり)。
敗北の味がするコーヒーを飲みながらマダムの帰りを待つ。

敗北で苦さの増すコーヒー |
40分ほどでマダム帰還。
マダムもコーヒーを飲みたいというので、今度はコーヒーショップを探す。が、どこも満員御礼である。
それでもどうにか9時35分、タイ・エアーのコーヒーショップに空席を見つける。
コーヒーは40バーツ、アイスコーヒーは45バーツ。紙コップではあるが、ちゃんとしたコーヒーがやってきた。
くそー、あの缶コーヒー2ドル(55バーツ)はどう考えてみても損した。
(※Atteniton! ちはるは小銭を追って大金を失うタイプ)
ちなみに一番安いメニューはミルクの20バーツだった。なぜか「YAKISOBA」なんてメニューもあったな。日式なんだろうか? お値段は70バーツだった。

タイ・エアーのコーヒー。適正価格。 |

■ 日本へ
コーヒーを飲んだ後、トイレに行ってから搭乗ゲートに向かうと、すでに時刻は10時10分。搭乗は始まっていた。
機内に入ると真ん中あたりの席はがらがらだったが、後ろのほうは満席に近かった。
10時15分くらいには自分の席に落ち着いたが、荷物入れがいっぱいであせった。マジ? どうにか詰め込む。
10時30分発予定だったが、飛行機が動き始めたのは45分頃、飛んだのは11時6分になってからだった。
11時半過ぎ、飲み物サービス開始。今までずっとアルコールは控えていたが、もう帰りで何の心配もいらないのでワインを所望する。
疲れにアルコールが加わって、このあと軽食を食べたらもう爆睡(笑)。

おつまみとワイン |
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タ軽食。ほんとに軽食。 |
夢は見たかもしれないが、おぼえていない。
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日本時間で5月31日の午前5時頃(?)、朝食のため起こされる。
メインはえびと生姜のおかゆ。生姜が疲れた身体に効く。
それに日本そば、卵焼き、パパイヤやスイカ、メロンなどのフルーツ。
おいしかったけど、ひたすら眠い食事だった。

食事に先立って配られた
飲み物とおつまみ |
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朝ごはん |
6時11分、耳が痛い。降下がはじまったらしい。
そして6時29分、飛行機は成田空港に着陸した。ううん、まだ眠い。
しかし、なんやあっさりした旅行だったなー。
やっぱり3泊は短いなー。
12時間ほど前までシェムリアップにいたはずなのに、アンコール遺跡群で過ごした日々は、もうはるか彼方昔のことのようだ。
機体が停止し、乗客たちが立ち上がる。
わたしたちも荷物を降ろし、ドアが開くのを待って通路に並ぶ人々の列につらなる。
通路から窓を見ると、ガラスの向こうが濡れている。雨か・・・
そういや、アンコール遺跡群でもよく雨に降られた。
日本の雨はどうだろう? アンコールに降った雨とはまた違うだろうか?
通路の列が動き出す。
スチュワーデスさんにあいさつを返しながら、飛行機を出てターミナル・ブリッジに一歩を踏み出す。

ターミナル・ブリッジ |
すると、機体とブリッジの隙間から、雨混じりの風がすうっと吹いてきた。
アンコールではあたたかいと感じた雨が、涼しいと感じた風が、ここでは肌寒く、冷たかった。
――日本だ。
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