ベートーヴェン作曲  《ピアノ・ソナタ》第14番 嬰ハ短調 「月光」  op.27-2(1801年)

●ベートーヴェン
 ピアノ・ソナタ 第8番 ハ短調 作品13 「悲愴」
 ピアノ・ソナタ 第21番 ハ長調 作品53 「ワルトシュタイン」
 ピアノ・ソナタ 第14番 嬰ハ短調 作品27−2 「月光」
 ピアノ・ソナタ 第23番 ヘ短調 作品57 「熱情」


スタニスラフ・ブーニン ピアノ
◆ベートーヴェン/4大ピアノ・ソナタ集
東芝EMI TOCE-8460
 
●ベートーヴェン
 ピアノ・ソナタ 第14番 嬰ハ短調 作品27−2 「月光」
 ピアノ・ソナタ 第23番 ヘ短調 作品57 「熱情」
 ピアノ・ソナタ 第17番 ニ短調 作品31−2 「テンペスト」

近藤嘉宏 ピアノ

DENON COCO−80850 
 

ルートヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770〜1827)は、ドイツの作曲家。古典様式の大成したという位置づけであるが、ロマン派への橋渡しとも言われる。

ドイツ・ボンに生まれ、音楽家の家系であり小さい頃より、音楽教育を受け、鍵盤楽器等の楽器を学び、作曲もするようになる。演奏旅行などもしながら、やがてヴァルトシュタインの助力で、1792年ウィーンへ出る。モーツァルトの死後1年であり、当時の第一人者・ハイドンに入門。やがていろいろな音楽家に教えを受け、その後も演奏に作曲にと活躍するようになる。

30歳頃から耳鳴りが消えず、苦悩する。1802年には、ウィーン・ハイリゲンシュタットで遺言までしたためた。しかし、その不幸にめげず、創作力は高揚、エロイカ交響曲、オペラ「レオノーレ」、運命、田園交響曲を書くにいたる。
9つの交響曲を残したが、第8番から第9番までの約10年間は、ピアノソナタや宗教曲を意欲的に書いていた。そして「ミサ・ソレムニス」の完成後、徐々に交響曲作曲へ傾倒、1年をかけて第9番を書く。最後の交響曲となった第9番の後は、弦楽四重奏曲を書き続けるものの、1827年、56歳で息をひきとる。


ベートーヴェンは、日本人にとっては交響曲作曲家といったイメージも強いようだが、数々のピアノ作品も彼の作品群の中の重要な位置を占めている。

ピアノ・ソナタは32曲が知られているが、この14番ソナタは「月光」というタイトルで知られる。作品27の1とこの2について、ベートーヴェン自身は「幻想的ソナタ」という標題を書いたという。「月光」というタイトルは彼自身がつけたものではない。詩人・ルードヴィヒ・レルシュターブの「月夜、スイスのルツェルン湖のさざ波に浮かぶ小舟のようである」という言葉が知られ、われわれに「月光」のイメージを与える。

また、当時伯爵令嬢・ジュリエッタ・グイッチャルディに心寄せていたベートーヴェンが、彼女にこのソナタを捧げたという。その頃、耳の不調を感じていたベートーヴェンは、孤独で悲しい生活をしていただけに、彼女に送ったこの曲に聴く苦悩と、か細い月光のイメージ、そして失恋…何とも言えない悲しげなイメージとして心に残る曲である。

曲は嬰ハ短調、3楽章からなる。



第1楽章
嬰ハ短調。2/2拍子で大変ファンタジックなアダージョの曲。自由な形式の幻想的な楽章(ソナタ形式ではない)。短調ではあるが、時折明るさを見せるフレーズが印象的で、暗さというよりは夢を見るような雰囲気を醸し出している。


第2楽章
変ニ長調、3/4拍子のアレグレットの楽章。複三部形式の曲で、スケルツォ風な、メヌエット風な曲。


第3楽章
再び嬰ハ短調に戻り、急速で激しい楽章。激しいアルペジオに始まる第1主題、シンコペーションを含むうねるような第2主題を持つソナタ形式。終末部にブレイクしてカデンツ風なパッセージが現れ、ベートーヴェン中期の作風の片鱗を感じさせる。


「月光の曲」として第1楽章だけをカットして聴くこともあり、耳になじんだ曲です。これならテンポも遅いので弾けるかなとも思うのですが、嬰ハ短調は♯が4つもつくので、そうは簡単に弾けません。耳の疾患に悩みながらも淡い恋心に満ちたベートーヴェンのことを考えると、特に3楽章の激情!といった雰囲気が何とも切なくも聞こえてきます。

ピアノ・ソナタといえば、1楽章に急速なテンポのソナタ形式の曲を置くことが多いのですが、これはいきなりアダージョ。作曲者自身が言うように幻想の世界に誘います。1楽章と3楽章の雰囲気を知って、この2楽章のちょっぴり明るい雰囲気の曲が挟まれると、ほっと一安心といった感じにさせられます。
そしてフィナーレは華々しいというよりは烈しさを感じます。<2003.1.10>