ベートーヴェン作曲  《ピアノ・ソナタ》第8番 ハ短調 「悲愴」  op.13(1798年?)

●ベートーヴェン
 ピアノ・ソナタ 第8番 ハ短調 作品13 「悲愴」
 ピアノ・ソナタ 第21番 ハ長調 作品53 「ワルトシュタイン」
 ピアノ・ソナタ 第14番 嬰ハ短調 作品27−2 「月光」
 ピアノ・ソナタ 第23番 ヘ短調 作品57 「熱情」


スタニスラフ・ブーニン ピアノ
◆ベートーヴェン/4大ピアノ・ソナタ集
東芝EMI TOCE-8460
  

ルートヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770〜1827)は、ドイツの作曲家。古典様式の大成したという位置づけであるが、ロマン派への橋渡しとも言われる。

ドイツ・ボンに生まれ、音楽家の家系であり小さい頃より、音楽教育を受け、鍵盤楽器等の楽器を学び、作曲もするようになる。演奏旅行などもしながら、やがてヴァルトシュタインの助力で、1792年ウィーンへ出る。モーツァルトの死後1年であり、当時の第一人者・ハイドンに入門。やがていろいろな音楽家に教えを受け、その後も演奏に作曲にと活躍するようになる。

30歳頃から耳鳴りが消えず、苦悩する。1802年には、ウィーン・ハイリゲンシュタットで遺言までしたためた。しかし、その不幸にめげず、創作力は高揚、エロイカ交響曲、オペラ「レオノーレ」、運命、田園交響曲を書くにいたる。
9つの交響曲を残したが、第8番から第9番までの約10年間は、ピアノソナタや宗教曲を意欲的に書いていた。そして「ミサ・ソレムニス」の完成後、徐々に交響曲作曲へ傾倒、1年をかけて第9番を書く。最後の交響曲となった第9番の後は、弦楽四重奏曲を書き続けるものの、1827年、56歳で息をひきとる。


ベートーヴェンは、日本人にとっては交響曲作曲家といったイメージも強いようだが、数々のピアノ作品も彼の作品群の中の重要な位置を占めている。
ピアノ・ソナタは32曲が知られているが、この8番ソナタは「悲愴」というタイトルで人気の高い作品。このネーミングは、初版の楽譜に「悲愴的大ソナタ」とベートーヴェン自身が書いたからであるという。
作曲は、推定1798年というので20代後半ということになる。耳の疾患の兆候が現れ始めた当時であり、重苦しい気持の反映とも見られている。

曲はハ短調、3楽章からなる。


第1楽章
ハ短調。4/4拍子の重々しい序奏は大変苦悩に満ちた雰囲気を漂わせる。続いて急速なテンポになるものの、苦悩のテーマはまだ続く。ソナタ形式であるが、印象的な序奏は、展開部では転調して再現、最後のコーダの前にも部分的に現れ、曲を閉じる。


第2楽章
変イ長調のアダージョ。2/4拍子のなめらかな音楽ではあるが、どことなく静かで暗い雰囲気がなくはない。三部形式の曲。


第3楽章
再びハ短調に戻り、急速なロンドとなる。左手の軽やかな伴奏に乗って印象的な旋律が歌われる。1楽章の重々しさから比べると、やや小規模で愛らしい感じの終曲である。


「月光の曲」として第1楽章だけをカットして聴くこともあり、耳になじんだ曲です。これならテンポも遅いので弾けるかなとも思うのですが、嬰ハ短調は♯が4つもつくので、そうは簡単に弾けません。耳の疾患に悩みながらも淡い恋心に満ちたベートーヴェンのことを考えると、特に3楽章の激情!といった雰囲気が何とも切なくも聞こえてきます。

ピアノ・ソナタといえば、1楽章に急速なテンポのソナタ形式の曲を置くことが多いのですが、これはいきなりアダージョ。作曲者自身が言うように幻想の世界に誘います。1楽章と3楽章の雰囲気を知って、この2楽章のちょっぴり明るい雰囲気の曲が挟まれると、ほっと一安心といった感じにさせられます。
そしてフィナーレは華々しいというよりは烈しさを感じます。<2003.1.10>