ラヴェル作曲  《夜のガスパール》 (1908年)

●ラヴェル
 ○CD1
 ソナチネ
 優雅にして感傷的なワルツ
 クープランの墓
 夜のガスパール
○CD2
 前奏曲
 ハイドンの名によるメヌエット
 古風なメヌエット
 亡き王女のためのパヴァーヌ
 シャブリエ風に
 鏡
 水の戯れ
 マ・メール・ロワ


パスカル・ロジェ ピアノ
ポリドール(LONDON) POCL-3626/7ビクター BVCC-744
 
●ラヴェル
 夜のガスパール
 ハイドンの名によるメヌエット
 前奏曲
 亡き王女のためのパヴァーヌ
 水の戯れ
 鏡

ジャン=イヴ・ティボーデ ピアノ
◆ビューティフル・スターリー・ナイト
ポリドール(LONDON) POCL-1698
 
●ラヴェル
 ピアノ協奏曲 ト長調
 夜のガスパール
 水の戯れ


ディルク・ブロッセ指揮/スーパーワールドオーケストラ2000
近藤 嘉宏 ピアノ

◆ラヴェル作品集
フィリップス
 UCCP-1015

モーリス・ラヴェル(1875〜1937)は、近代フランスの作曲家。子どもの頃からピアノや和声を学び、作曲も試みる。やがてパリ国立音楽院に進む。

ドビュッシーのようにパリの万国博覧会でのジャワのガムラン音楽に魅惑されたり、リムスキー=コルサコフのロシア音楽に深い印象を受けたりする。一方で、現代芸術にも関心を寄せる。音楽院を去った後、再び音楽院でフォーレに作曲を学んだ。

第一次世界大戦勃発(1914年)、空軍への志願をするもののかなわず、病気、母の死等の衝撃もあったが、やがてアメリカやカナダを演奏旅行(この時、ガーシュインと会ったという)するなど、活動した。

やがて、交通事故がもとで健康状態が悪化、1937年に没する。

「夜のガスパール」は、アロイジュス・ベルトランによるピアノのための3つの音詩という副題を持ち、《水の精》《絞首台》《スカルボ》の3曲からなる。
フランスの詩人・アロイジュス・ベルトラン(1807〜1842)の同名の詩集を題材にしている。ガスパールとは悪魔のこと。その詩集の中から、3つの詩を選んで作曲した。楽譜にもベルトランの原詩が添えられている。
詩の内容から夢幻性、夜の怪奇な雰囲気をピアノで表現した、大変難度の高い曲。




第1曲《水の精(オンディーヌ)》
オンディーヌは窓のしずくとなって現れ、指輪を持って結婚してほしいといい、水底の宮殿の王になってほしいと願う。自分は人間の女性を愛すると答えると、オンディーヌは恨み、涙を流し、大声で笑うと、水滴の中に消えてしまった…というような詩。
曲は、さざ波をあらわす32分音符に、ゆったりとした幻想的な旋律が聞こえる。それを縫うように幅広いアルペジオも聞こえてくる。激しいアルペジオの後、流れるように静かに曲を閉じる。


第2曲《絞首台》
絞首台のまわりで聞こえてくるのは夜風か、罪人の吐息か、こおろぎか、蠅か、蜘蛛か…。それは町に響く鐘の音、夕日を赤々と浴びて吊り下げられた罪人の遺骸…といった内容の詩。この曲では、変ロ音の持続低音が鐘の音を表すという。緊迫感、恐怖感を表現されている。ピアノの大譜表も2段では収まらず、3段で書かれている。


第3曲《スカルボ》
スカルボとは、地の底に棲む不気味な悪霊。
ベッドの下、煙突の上、戸棚の中にいるみたいだったのに、誰もいない。どうやって入り込んで、また出て行ったのか。真夜中にスカルボが何回も見た。そして鈴のついたとんがり帽子姿で急に大きくなり、青白くなり、ろうそくのように透き通って消えた…といった内容の詩。
不気味な悪霊が飛び回る様子を、ダイナミックに、時にロマンティックに、また華麗に表現されている。リズムも激しく刻む。この曲は、特に「ラヴェルの超絶技巧作品」と呼ばれる難曲。


ラヴェルというと「ボレロ」やムソルグスキーのピアノ曲「展覧会の絵」の編曲を思い出しますが、やはり忘れられないのがピアノ作品でしょう。

耳になじんでいると言えば、オーケストラ版でも聴かれる「亡き王女のためのパヴァーヌ」は有名。一時期、中学3年生の音楽の教科書に鑑賞共通教材として載っていた「水の戯れ」、「ソナティネ」など有名作品が多いですが、やはりこの「夜のガスパール」は名曲だと思います。

ラヴェルというかフランス的な夢幻性あふれる雰囲気だけでなく、このベルトランの詩の不気味さがよく現れていると思います。

ただフランスの印象派といいますか、フランスの雰囲気に溢れているということだけではないと思います。ラヴェルの父親はスイスの出身、そして母親はスペイン・バスク地方出身であり、民族主義的な作曲家であったともいえましょう。「スペイン狂詩曲」「ツィガーヌ」「鏡」などといった名作は、民族色が濃いものです。

またこの「夜のガスパール」でも、「オンディーヌ」の32分音符のリズムもどことなくバルトーク風の民族音楽風ですし、「絞首台」のメロディもよく聴くと民謡風に聞こえるように思います。しかし、通して聴くとこの夜の不気味さ、夜になると聴きたくなります。<2003.1.1>